その時、僕らは
               〜祐一篇〜


 その日は、絶好の天気だった。
 何処までも伸びる蒼と、包み込むような太陽。雲は、欠片もない。
 二月だというのに、寒さも軽い。
 だが、今日という日に、彼等の住むこの街が、にわかに活気づいていたのは、それだけが理由なのではなかった。


「祭りぃ?」
 その男、相沢 祐一は、素っ頓狂な声を上げると、机に寄り掛かりながら、何かよく分からないと言った風に目を細めて、相手のほうを向いた。
「ああ。そっか、お前、知らんのか。今日はな、この街の誕生記念祭なんだ。夕方から夜中ずっと、屋台やら、神輿やらが出てな、かなり賑やかになるんだぞ」
 なるほど、最近、町中がやたら騒がしかったのは、今日と言う日があったからなのだろう。祐一は納得し、頷くことで相手に返した。
 その相手――北川 潤は、癖なのだろうか、頭のてっぺんにある癖毛をちょんちょんと触りながら、そう言った。
「そうなんだよ〜、祐一」
 と、横から間延びした声が割り込んできた。
 声の持つ主の名は、水瀬 名雪。相沢 祐一の従兄弟である。
(しかし、従兄弟っても、何処かしらも似てないけどな)
 そう。何故、この少女が、自分の親戚であるか、祐一はいつも疑問に思うのだった。
 自分とは、全く似ても似つかない容姿に、何と言ってもその性格。自分は、こんなにのんびりとはしていない。
 見ると、彼女は、いつの間にか先程の男、祐一の悪友である北川 潤となにやら話している。
 さっきまでは、自分もその輪の中に入っていたような気がするが。
(しかし、あいつらもじれったいな)
 見た目は、恋人同士。でも、その実は、ただの友達。
 つまりは、彼らには、後一歩が足りないわけだ。
(仕方ない。今日は、祭りらしいし、ちょっと、テコ入れでもしてやるか……アイツとは、その後だな)
 顔には出さず、祐一は、今日のスケジュールに、二つほど新たに用事を加えた。
 再び、二人のほうを見やる。男のほうが、何やら、顔を紅くしているのが見えた。



「名雪、恋は、アグレッシブだ!」
 祐一は、潤が教室から消えるのを確認すると、こぶしを握り締め、声高々にそう言い放った。
 ざわつく放課後の教室が、一瞬静まる。
「わ。祐一、恥ずかしいこと言ってるよ」
 周りの視線が痛い。名雪は顔を紅くしながら、それでも間延びしたような声で言ってきた。
 だが、祐一は、それが気に入らなかったらしい。名雪をキッと睨んだ。
「何が恥ずかしいか!? 俺にはむしろ、あれだけ接近しときながら、未だにくっつく気配のないお前達の方が、恥ずかしいぞ!」
 よく見ると、その背景には、燃え盛る炎のようなものが見えないでもない。
 祐一の昂揚感は、今、最高潮であるかのように思えた。
「ゆ、祐一〜……」
 うろたえたように名雪。だが、それでも、祐一は止まらない。変わらず、自分のペースで爆走するのみだった。
 それは、彼のいつものやり方であった。相手を自分のペースに巻き込み、イニシアチブをとる。最も、祐一がそれを意識してやっているのかどうかは分からないが。
「しかぁし! 安心しろ、この恋のキューピット、愛☆沢 祐一に任せておくがいい!!」
「で、でも……」
 それでも、名雪は僅かではあったものの抵抗を見せた。だが、その行為は、正に焼け石に水であった。
 むしろ、火に油に注いだように、その勢いは増すばかり。
 つまりは、彼は、そんなものが通用するような相手では無かった訳であり、
「おし、名雪の同意も得られたところで、早速、本題に入るぞ」
「うぅ〜、人の話聞いてよ〜」
 勝手に話が、進められてしまうだけだった。
「まずは、状況確認だ――まず、お前等二人の関係の確認から」
 かくて、本人の意思など全く関係なしに、議論は始まったのだった。
「お前と北川は、未だ、友達同士で恋人にはなっていない。これは、いいな?」
「う、うん」
 その言葉に、恥ずかしそうに頷く名雪。
「で、ターゲットの周囲の状況はと言うとだな……」
 祐一は、わざとらしく、言葉を切って見せた。名雪は、やはり気になるのだろうか、じっと耳を傾けている。
「とりあえず、強力なライバルは居ない――」
 その言葉に、名雪はほっと胸をなでおろす。が、その時、祐一の目が意地悪そうに光った。
「と見せかけて、ちょっと、要注意の人物が一人いる」
 思わず、えっ、と声を上げる名雪。
「沢渡 真琴――アイツん家の居候だよ」
 だが、その話を聞いた名雪は、安心したかのように言った。
「でも、真琴ちゃん、北川くんのこと好きだって話、聞いたことないし」
「甘い! 確かにそうかもしれん、だが、奴は、相当のあまのじゃくだ。その上、年頃の男女が一つ屋根の下……何があってもおかしくはない」
 そのときの祐一の迫力は、恐ろしいものであった。やはり、名雪はまだ、半信半疑であったらしいが、徐々に現実味を帯びて感じてきたようだ。
 祐一は、続ける。
「が、とりあえず、まだ何もなってないだろう。でも、このままにしておくのも結構怪しいものがあるのは確かだ」
 名雪は、その時初めて、心配したような表情になった。
「でも、わたし、どうしたらいいか……」
 そんな名雪を見ながら、祐一は、チッチッチッと人差し指を揺らした。
「だから、最初に言っただろ? 恋は、アグレッシブだって」



 辺りが、薄い紅と細く伸びる影達に包まれる頃、相沢 祐一は、居候先である水瀬家に到着するところだった。
 扉を開けて、いつも通りの「ただいま」。
 途端に、家の奥のほうから、凄まじい物音が聞こえてくる。
 具体的に、それを表すなら、

ドタドタドタ! グシャッ! ドスン!! うぐぅ……

 最後の方は、明らかに人の声であったようだが。
 祐一は、多少、腰を落として、とっさに動けるようにする。それは、まるで、来るべき何かに備えるかのようであった。
「祐一くんーーーーー!」
 聞こえてくる声。先程の物音が更に近づいてくる。
 そして、その持ち主の人影が見えた。それは、一直線にこちら――即ち、祐一の方に走りよって来て、
「お帰りなさーーーい!!」
 奇声とも取れなくもない大声を上げながら、彼に飛び掛った。
 とっさに半身を横にずらす祐一。当然、飛び掛った人物は、そのまま直進してしまうわけで――
 祐一が、移動してしまった今、それは、慣性の法則にしたがって、祐一の横を通り過ぎた(というよりも飛び過ぎた)。
 ドグシャアッと嫌な音を立てて、その人影は、玄関を飛び出し、外の地面に激しく衝突した。
「うぐぅ……酷いよ、祐一くん」
 顔から衝突したのだろうか、赤くなった顔を押さえながら、その人影――月宮 あゆは不服そうにそう言って来た。
 祐一は、そんな様子のあゆを半眼で見ながら、軽くため息をつく。
「お前は、学習能力というものが無いのか?」
 そうは言うものの彼女の学習能力は、悪くはなく、むしろ、驚異的というほど突出したものである。
 現在、彼女は、高校を受験するための勉強をしているのだが、その吸収力と言ったら祐一や名雪が舌を巻くほどであった。まあ、普段の様子がこのようであるため、余計にそう感じると言うのもあるのだろうが。
 だが、これなら一年は見送ろうかと思った高校合格も可能ではないのかと、祐一もひそかに期待しているのだ。
 閑話休題。
 つまり、祐一が思っていることは、その能力を何故普段から発揮することが出来ないのか、ということだ。
「うぐぅ……」
「ところで、あゆよ」
 そう言って、祐一は、未だ地に這いつくばったままの少女に向かって、視線と言葉を投げた。
 彼女は、花火などの文様が描かれた着物を着ている。多少、サイズが大きいような気もするが、意外と似合っている。
 ほお、と祐一は、声には出さず心の中で感嘆の言葉を上げた。
「あ、これね、秋子さんに買ってもらったんだよ。ちょっとサイズが大きくなっちゃったけど、きっとすぐに大きくなるって」
 あゆは、袖を上に持ち上げながらそう言って来た。その姿は、美しいと言う表現は適切ではなく、かわいらしいといった感じである。
「大きくなるねえ……まあ、期待はしておいてやるか」
「うん! ありがと、祐一くん」
 その言葉に含まれた、多少の皮肉にも気づかず、あゆは嬉しそうに頷いた。
「まあ、ともかく、その格好だと、祭りに行くんだろ?」
 あゆは、必要以上に大きく頷くと、
「うん。祐一くんと一緒に行くんだよ」
 そう言った。
 もう既に、自分が一緒に行くことは決定済みであるらしい。強引と言うか、あゆらしいと言うか……。
 祐一は、軽く苦笑いした。



 祐一とあゆが、祭りが行われている場所につく頃には、辺りは、紅色の他にも、濃い蒼が混ざり始めていた。最も、祭りのせいで、光が満たされているその一帯において、それに気づくものは僅かであったが。
 とにもかくにも、二人は――これは、珍しいことだが――何のトラブルもなく、その場所に着いたのであった。
「今日は珍しく、何も起こらなかったな」
「そうだね。でも、公園の辺りで見た人だかり、何だったんだろうね?」
 あゆが言っているのは、ここに来る最中に通った公園でのことである。
 確かに祭りに行くために、大勢の人達が集まっていたようだが、その中に一つ、不自然な人だかりを見かけたのだ。
「まあ、言っていても仕方ないさ。それに、ああいうのに、お前が首を突っ込むとろくな事にならないだろ?」
 祐一は、軽く肩をすくめながら言った。
 対して、あゆは、祐一の顔を覗き込んで、それに反論する。
「それを言うなら、祐一くんが、だよ」
 むむむ、とあゆは唸った。
 このまま続けてもいいが、その場合、泥沼にはまって抜け出せなくなる恐れがある。
 祐一は、対あゆ戦用の必殺武器を用いることにした。
「お、あんなところにタイヤキ屋が!!」
 わざと大げさに、手じかにある適当な店を指差す。
 こんなチープな演技に、普通、騙されるわけはないのだが、如何せん、あゆはタイヤキと言う言葉に弱い。
 怒りも疑いも、あっさり蹴散らして、タイヤキと言う言葉は、彼女を祐一の指差した方向に向けさせてしまうのだった。が、
「あ、本当だ。タイヤキ屋さんだ!」
 祐一の意思に反して、そこには、確かにタイヤキ屋が。
(ぬお、何と、適当にさしただけだったのに!?)
 彼は、己の失策に気づいた。
 どうやら、自分は、泥沼をかわしたかわりに、落とし穴か何かにはまってしまったらしい。
「ねえ、祐一くん! タイヤキ奢ってよ!」
 そして、相手は、予想通りそう言って来たのだった。その上、もう既に自分を引きずって、タイヤキ屋に向かっている。周りの人ごみもお構いなしだ。
 落とし穴は、予想以上に深かったのだ。
 仕方なくタイヤキ屋に向かい、なけなしの金でタイヤキをあゆに買ってやる。今日は、そんなに使うつもりはなかったのだが、鼻からこの調子では、それは諦めた方が良いのかもしれない。
(でも……)
 それでも、祐一は、タイヤキを頬張りながら、幸せそうにしているあゆの顔見ていると、まあいいか、と思えてしまうのだった。
 しかし、罠やトラブルといったものは、そういったときに起こるもので……

ごすっ!

 何かのぶつかる音、それが何か、すぐには祐一は分からなかった。
 分かったのは、その僅か1、2秒後。
 後頭部に、激しい痛みを感じた祐一は、その何かが自分にぶつかったのを悟った。ついでに、その何かが小さな石っころであるのが分かったのは、更にその数十秒後であった。
 とりあえずその時すぐに分かったのは、涙でにじむその視界に、ツインテールの少女らしき人影が、そそくさと逃げ去っていくのが映ったのと、祭りの光に照らされたあゆが心配そうな顔でうずくまる自分を見ていることだけだった。


「くそっ、さっきのは何だったんだ!?」
 祐一は、怒りを隠そうともせず、そう言った。
「そうだね……でも、大丈夫? 祐一くん」
 それに、あゆは心配そうな声でそう返した。
「ん? ああ、大丈夫だ」
 いつもの彼女らしくない、しおらしいというか、大人しい様子に、祐一は、すっかり毒気が抜けたように、怒りが収まっていくのを感じた。
 それに、実際、それほど大したことは無かったのだ。投げた相手の力が弱かったのか、それとも加減してやったのか、或いは両方か。どれにせよ、祐一の実際に受けたダメージは、そう大きいものではなかった。
 後頭部にでかいたんこぶが出来ただけですんだのだった。
「ま、まあ、腹は立つが、何時までもそんなこと言ってても仕方ないしな」
「そう? 祐一くんがそういうなら、もういいけど」
 まだ半分心配といった表情のあゆを見ながら、祐一は、自分がこの娘に精神的に支えられている部分は大きいのだと、改めて、確認させられていた。



 事件は唐突に起こるものだ。
 だから、この祭りの最中、二人の前でそれが唐突に始まっても、おかしくはない訳である。
 それは、祐一も良く知っていた。何せ先程にも、そう、つまりは「事件」が起こったのだから。
 だから、油断していたのだ。とは、言い訳にしかならないだろうが……
「どこだ!? あゆーーーーー!」
 祐一は、突然、行方不明になったあゆの姿を探すために、祭りの人ごみの中、大きな声で、彼女の名を呼んでいた。
 ことの始まりは、祐一が、たこ焼きでも買おうかと、少しの間、あゆから目を離したことから始まった。
 彼女は、その「少しの間」で、いきなり彼の前から消えたのだった。
 最初は、どうせすぐにうぐうぐ言いながら姿を見せるだろうと、楽観的に考えていた祐一だが、いくら待っても出て来ない。
 さすがに危機感を覚えたのか、あゆの姿を探し始めたのが、数十分前。だが、一向に姿を現さないあゆに、祐一は、正直、焦りを感じていた。
(どこ行ったってんだ? 家にも帰ってないみたいだし)
 一応、家の方にも連絡は入れた。答えは、NO。つまり、帰ってきていない。
 まさか、あのあゆのことだから。
 と、考えを変える。
(あゆだからこそじゃねえか!?)
 そうだ、彼女の性質から考えれば、もしかしたら、何か厄介ごとに巻き込まれているのかもしれない。
(いや、そう考えるのは、まだ早い)
 祐一は、思考がネガティブになっていくのを強制的にシャットダウンした。
 自分でも、いつもからは考えられないほど、悪いほうに考えをもっていってしまっているのが分かる。分かるのだが……。
「くそっ! あゆ! どこだ!?」
 どうしても、焦りが思考の大部分を占めてしまっており、それを止めるのは困難なようであった。
 焦る、でも、焦って混乱していては、見つけられるものも見つけられない……だから、余計に焦る。
 正に、ジレンマ。泥沼も、落とし穴も、このループする悪循環と言う名のラビリンスの前では、優しいものだと、祐一には思えていた。
(本当に、何かに巻き込まれたのか? あゆ……)
 そう思っていても、見つからないものは見つからない。焦りは、更に増えるばかり。
 と、ざざっといったような、マイクの音割れのような音が聞こえてくる。
 そして、そこから飛び出してきた言葉は、祐一を脱力させ、真っ赤にするには、十分な程の威力を秘めていた。
 きっと救いの手を差し伸べてくれた神様は、相当意地が悪いのだろう。それとも、これも罠か何かだったりするのだろうか?
 だが、どちらにせよ、祐一は、放送を聞きながら、しばらく呆然とするばかりであった。
『迷子のお知らせです。ただいま、こちらで、月宮 あゆちゃんを預かっております。保護者の相沢 祐一さんは本部までお越しください――』



「ごめんね〜、祐一くん」
 先程からずっと、謝り続けるあゆの前で、祐一は、未だに不機嫌なままだった。
「まあ、いいけどさ、でも、助けてもらった相手の名前くらい聞いておけよ」
 とは、言いつつも、やはり、まだ、不機嫌さが顔に残っている。
 正直に言えば、祐一自身にも、何故、自分がこんなに不機嫌なのか、分からなかった。
 あゆが勝手に何処かへ行ってしまったからか?
 あんな放送で自分を呼び出したからか?
 だが、どれも違うだろう。祐一には、そう思えた。しかしそうだとしたら、一体何なのか、この不快感は?
 祐一は、軽くかぶりを振って、その考えを打ち払った。
「うん、細い眼鏡をかけたお兄さんと、黒髪の美人なお姉さんだったのは覚えてるけど、あ、どっちも背が高かったよ」
 あゆは、思い出すようにそう言って来た。
「細い眼鏡の兄ちゃん、黒髪の美人……ねえ」
 思いつく組み合わせが一つあったが、きっとそれはないだろう。祐一は、あえて口には出さなかった。
「ところで……」
「ん?」
 ふと、あゆの方を見やる。彼女は、何やら意地悪そうな表情をしている。
(な、何だ?)
 その様子に、祐一も思わず気圧される。いつもなら、こんな表情などしないあゆだけに、余計にそう感じられた。
「心配してくれた?」
 その口から飛び出してきたのは、祐一から言えば、かなり予想外のものだった。
 思わず、口ごもる祐一。
 だが、彼女は、そんなのはお構いなしに、更に突っ込んでくる。
「ボクが居なくなって、心配してくれた?」
 何なのか、この展開は? いつもとは全く逆になってしまっているではないか。
 普通なら、自分の手のもとにあるイニシアチブが、今は、相手が掌握しつつあることに祐一は驚いた。
「心配なんて……」
 していない。そう言おうとしたのに、何故かその言葉は出なかった。
「心配なんて……どうなの?」
 あゆはしつこく聞いてくる。祐一は、正直に言わなければならないような、よく分からない衝動に突き動かされ、こう言った。
「心配……したさ……」
 心配の後の部分は、それこそボソッとしか言わなかった。
 あゆに聞こえたかどうかは分からない。
 刹那、あゆががばっと祐一の顔に取り付いた。
「ぬぐっ! てめっ、何すんだ!?」
 顔の上にしがみつかれているため、表情はうかがえない、だが、えへへーとか言う笑い声が聞こえてくるのだ。きっと、相当意地の悪い笑みでも浮かべていることは、想像に難くなかった。
「ねえ、もう一度言ってよ」
 祐一は悟った。これは、この日、最大の罠だと。
 あゆが、唐突に離れる。
 彼女は、祐一のすぐそばに立つと、微笑んだ。それが、何を意味するのかは分からないが……
 間違いなく、今日は、祐一の完敗であった。
 刹那、上空に、閃光の花が散った。あらゆる色の光を含んだそれは、二人を照らす。
「……心配したよ、だから、もう勝手に居なくなるなよ」
 そして、二度目の花火。
 光に照らされながら、多くの者達が点を見上げるその中で、二人の影は、一つに重なり合っていた。
 ずっとそばに居る。聞こえてきたその台詞は、どちらが紡いだものか――それは、きっとこの二人にしか分からないことだろうが。

             FIN


SSインデックスに戻る