馬が車に突っ込んだ!
馬が車に突っ込んだ!



 ある朝、あるところの少年が「本当ににんじんで馬は釣られて走るのか」と疑問を抱いた。
 気になって仕方が無いため、少年は家の飼い馬にまたがり、目の前ににんじんをつるした。
 結果は大成功。見事に馬は走りだした。それも今までに見たこともないスピードで。
 あまりの速度に驚いた少年は、目をつぶり、必死になって馬にしがみついた。
 それからどれくらいの時間がたっただろうか、空も暗くなり始めた。馬の走りが遅くなったので、少年は顔をあげてみた。

 ――絶句した。

 今自分は、都会のど真ん中にいるのだ。馬に乗りながら。
 家は北海道十勝だ。あたりにこのような都会など存在しない
 馬が都会まで走ってきたというのか?信じられない。だが、事実自分は都会に来ている。
 そこでふと、あたりの人間の視線と喧騒に気づいた。
 そして流れるパトカーのサイレンの音が耳に入る。まずい、きっと僕たちを追っているんだ。そう少年は思った。だから逃げ出した。
 すごい勢いで車道をかける。近づいてくるパトカーのサイレン。
 まずい。これは一旦道をそれて、歩道から逃げるべきだ。少年が思ったその時――
 馬は突然に、対抗車線へと突っ込んだ。理由は全く分からなかった。
 近づく対抗車。それに怖気づくことなくつっこむ馬。
 そして、タイミング的にぶつかるであろう黒い車が目に入った。

 ――結果から言うと、馬は車に突っ込んだ。

 少年は歩道まで吹き飛ばされ、それから救急車で運ばれた。
 彼はいまだに不可解でいるが、吹き飛ばされる寸前に、理由とおもわしきものを一瞬だけ見ていた。
 でっかいニンジンのぬいぐるみ。車の補助席に座っていたPiaキャロットへようこそ!3のともみ※1みたいな女の子が、年甲斐も無く抱えていたものだ。大きさで彼のニンジンが負けたからかもしれない。
 その後女の子がどうなったかはわからない。馬は死んでしまったから、今は少年の腹の中だ。
 そして馬はもう過ぎた事だし、馬に突っ込まれた車の持ち主もなにも言ってこないというので、あとは回復を待つのみとなった。
 そんな少年にとっては、入院しているいまこの間も、デブでバンダナしてて美少女のプリントされたシャツを着たデブっぽい人※2が打つような、抗議のような内容のメールが、嵐のように自分の携帯へ降り注ぐのだけが気がかりだった。

(おわり)


※1 おっきな目の女の子が出てくるゲームの登場人物。でっかいニンジンのぬいぐるみがお気に入り
※2 どうみてもヲタクでしょ

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