「ん? そういえば君は……」

「いえっ! 何でもないんです。今度の金曜日が確か妹の誕生日だったかなー、なんて思い出してて。そっちの話とは関係無いんですよ? あはは。っていうか、あー、それにしてもいい天気ですね〜。……はははは……は……ふぅ」

 ため息が出た。自分が凄くバカらしく思えたから。

「確かにいい天気だなあ。所で君は、どこかで見たような」

「え。気のせいじゃないですか? 気のせいですよ。今日始めてお会いしたと思います」

「ふむ。そうか」

(どうやら教頭は、俺が制服を着ていることにはまるっきり気づいていないようだ。頼む……気づくな、気づくな、気づくな……)

「ああ、この子は今日転入してきた草辺純一君ですよ」

(言うなよこうちょおぉぉぉぉ〜)

「……ああ。君がソレ! ああ、アレが君だったのね。道理で見覚えがあるわけだ。なるほどなるほど。よろしく、私が鍵山工業高等学校教頭、厳無双芳光(げんむそうよしみつ)だ」

 なにやらすごくカッコイイ名前の教頭は、俺の手を握ってきた。

「え……あ、どうも。草辺純一です」

「君のうわさは常々聞いていたよ。アレの継承をした者とはねぇ……まさに我が校にあるべき……いや、あの日のためにある存在というわけか」

「アレってなんですか。それに、さっきから言ってる『あの日』ってのは」

「え、まさかアレを聞いていないのか。継承者なのに」

「継承も何も、そんな話全く聞いたことがありません」

 教頭は納得したようにうなずいた。

「はぁぁ、なるほどなるほど。お父様も考えが深いようです。あなたの才をズバリ見抜いているのでしょうね」

「だから、なんなんですか。それは」

「いや、あなたは恐らく、聞かない方がいいでしょう。おのずとわかる事ですし、お父様の考えを尊重したい」

 教頭は真剣なまなざしで俺を見据えた。もう何を言っても語らない。そう瞳は俺に訴えている。俺はあきらめてため息をついた。

「わかりました、それはその時に気付くんでしょ。ならもう聞きません。じゃあ、さっきから言っている『あの日』って言うのはなんなんですか」

「え? あの日を知らない?」

「だから、そう言ってるじゃないですか」

「ああ、先生。この子は我が校の風習について知らなかったから、恐らくその日も知らないのです。草辺君、送られた書類に目を通していないでしょう」

「あ、すみません。なにぶん時間が無かったもので……」

「いいんです。これからお教えしますから……と言っても、習慣の方はもう貴方にお見せした通りですな」

 まさか、あの集団が襲い掛かっていたのが。

「この、朝の挨拶としての戦闘。これこそが我が校の特徴ある風習の一つなのですな」

 トンでもな校長ながら、またとんでもない風習だ。生徒たちが「おはようございます」って言っていたのも、聞き間違いではなかったわけだ。

 そして、さらに校長は興奮気味に付け足した。

「そして、その習慣こそ、『あの日』を盛り上げるためのものなのです!」

 その後、校長は大きく息を吸い、俺の運命を変える『あの日』の名を口にした。



『STUDENT!』


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