いつだって、どんなムチャを言ってもこなしてくれた。

 

ため息一つで・・・・。

 

 

 

SELFISHNESS】

 

 

 

「さすがにそれは無理だろう?」

「人間諦めたら終わりよ!」

どこぞやの教主にでもなった気分で言い放つパメラ。

しかし、フューレはため息をつくだけ。

「ちょっと聞いてるの?」

「聞いてる」

返事をするのも面倒臭そうだ。

いや・・・事実面倒臭い!

彼女を本気で相手していては、こっちの体力がもたない。

しかし、反応がないと怒るのは分かっているのである程度の反応は返しておく。

「なら、やってよ!」

「だから・・・無理だろ?」

「なんでよ!」

「なんでよって・・・」

なんでこんな事で言い争わなくちゃならないんだ。

たかが卵くらいで。

されど卵。

彼女の要求は無謀だった。

普通の10倍の大きさのオムレツが食べたいと言うもの。

はっきり言って家にそんなに卵を買ってくる余裕はない!

近頃卵の価格が上がってきている。

ただでさえ高いものが更に高い。

「あきらめろ!」

ポンッと肩を叩くがパメラはキッとフューレを睨んだ。

「あきらめろですってーー!いやよ!だいたい何日卵食べてないと思うの?」

「二日!!」

大袈裟に言うほどの日数ではない。

しかし、パメラの中では大事らしい。

「そう!二日もよ!ふ・つ・か・も!」

「たった二日だろ?」

ため息をつきながら言ったフューレの肩をつかみ前後に揺らす。

「たったとは何よ!二日も食べてないのよー!」

「おい!」

放せと続けるはずだった言葉はパメラによって遮られる。

「あの黄色いふわふわした癒しの食べ物をよ?」

「分かったから・・・」

「ケチャップをたくさんかけて〜」

「そろそろ・・・」

「あっ!ケチャップで絵を書いちゃったりするのもいいわよね〜」

「気持ちが悪い」

前後にぐらぐら揺られ続ければ気持ち悪くもなる。

「そんで〜〜」

まだまだ続くオムレツトークに呆れながら、フューレは揺れに慣れようと必死だった。

 

 

 

 

 

「たくっ!フューレったら私の話も聞かないでバイトに行っちゃうだなんてー!!」

ブーブー文句を言いながら床に寝っ転がった。

バイトの時間だからしかたがないとは思うが、やはり悔しい。

無理を言ってるのも分かってる。

本気の部分もあったが、構ってほしい部分もあった。

「はぁ〜たまご〜」

「そんな所に寝てると踏むぞ?」

「うぇっ?わっ!!フューレ!!」

「そんなに驚くか?」

「いや・・なんつ〜か。もう終わったの?」

「ああ、終わった」

「そっか!おかえり」

「・・・ただいま」

言い慣れてない言葉。

思わず視線を逸らした。

「どうしたの?」

急に視線を逸らしたフューレを不思議そうに見た。

しかし、フューレはなんでもないと言って抱えていた包みをパメラに渡した。

受け取ったはいいがこれが何か分からない。

「何これ?」

「見れば分かる」

「答えてくれたっていいじゃんーー」

と小声で文句をいいながら包みを開いていく。

そこにあったのは丸い白い物が五個。

パメラの大好物。

「タマゴだーー!」

パメラはとびっきりの笑顔を浮かべた。

嬉しそうに一つ手にとって、マジマジと見た。

「どうしたのこれ!!」

嬉しさのあまり声も弾む。

喜怒哀楽が表にはっきり出るパメラ。

喜んでいるのは一目瞭然だった。

「今朝、食べたいって言ってただろ。10倍は無理だが2倍ならなんとかなるしな」

「買ってきてくれたんだ!!」

「まあな・・・」

フューレは自分の頬が赤くなるのが分かった。

パメラに気付かれたくなく、背を向けた。

「さっさと作るぞ」

フューレの背を見ながらパメラは微笑んだ。

フューレが自分から視線を外すときは、嘘をついてる時や照れ隠しが多い。

今は後者の方だろう。

パメラはフューレの背中に抱きついた。

「・・・なんだ?」

「えへへ。なんでもない」

「変な奴」

「その変な奴の為に卵買ってきてくれたのは誰かな〜?」

意地悪な笑みを浮かべる。

するとフューレの頬が少し赤くなった。

「照れてる〜!」

「うっさい!!いらないなら別にいいんだぞ?俺一人で食べる!」

「にゃーー!横暴よ!!嫌だな〜冗談よ!冗談〜嬉しくって・・・つい」

パメラの言葉にため息をつきながら再び調理を再開する。

そんなフューレを見ながらパメラは言った。

「ありがとう」

「っん・・」

小さくうなづくフューレ。

「ねぇ?五個あるって事は三個は私のよね〜?」

「なんで、そうなる?」

「当然じゃない!私がリクエストしたのよ?それに、こういうのは女の子優先でしょ?」「これは俺が買ってきたんだから俺のじゃないか?」

「なんでそうなるのよー!」

「当然じゃないか〜」

ニヤリと笑みを浮かべる。

パメラは悔しそうに抗議した。

 

 

 

 

 

結局、フューレがパメラに三個譲った。

ほくほく顔でオムレツを食べるパメラをフューレはじっと見た。

「なに?私にみとれてたの?」

「まずありえないな」

「なんでよ!」

「・・・幸せそうに食べるな」

パメラの言葉を無視する。

「んっ?そう〜?」

「ああ」

「だって幸せだし〜フューレのおかげねっ!」

「その恩人から卵取り上げたくせに・・」

スプーンに軽くすくい口に運ぶ。

「男が小さいことをぐずぐず言わない!!」

「はい、はい」

適当に返事をする。

「まったく心が狭いわね〜はい!!」

自分のお皿に乗っているオムレツを一すくいすると、フューレの目の前に差し出した。

「なんだ?」

「心の広〜い、パメラちゃんが一口だけ心の狭〜い、フューレにあげようと思って!」

自分で心広いかいうか・・・普通。

そう思いながらも敢えて言わない。

一の事を言ったら十で返ってくる。

「へいへい。ありがとう」

差し出されたオムレツを食べた。

「どういたしまして」

パメラは満面の笑みを浮かべた。

 

 
 

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