「………」

 非常に困った事態に陥っている。

『………』

 俺、北川潤の部屋には今俺を含めて六人もの人間がいる。もちろん、それ自体は大したことではない。なんとか入れる人数ではある。多少、狭くはあるが。

「……なぁ?」

『なに?』

 問題というのは、俺以外の全員が―――ちょっとアレだということだ。




わーわー





 事の発端は四月一八日、俺の誕生日の朝だった。

 ピーンポーーン。

「ん? なんだ、こんな朝早くから……?」

 時計を見る、朝の八時?こんな朝早くから俺の部屋に来るヤツなんて……多分いない。いくら今日が俺の誕生日だからといっても、いくらなんでも早すぎる。イタズラか?

 ピーンポーーン。

 そう思った矢先、もう一度インターフォンが鳴った。イタズラではなさそうだ。

「ふぁぁ……ったく」

 仕方なしに布団から抜け出てドアを開けると、そこにはCMで見慣れた制服姿の男性が大きなダンボールを足元に置いて立っている。宅配便の配達員のようだな。

「はよーございますー! ○×宅急便ですー! お届け物を持ってきまっしたー! サインお願いしますー!」

 ……テンションが高すぎる。朝からこんなテンションで一日もつのだろうか。そう思いながら配達員から借りたペンで汚い字でサインしてやった。名字の「北川」は簡単な字だが、これじゃ下手したら読めないかもしれない。

「ありあしたー!」

 だが、配達員は俺の汚い字にも惜しみない笑顔で答え足早に去っていった。本当に元気だ……。

 いや、それよりも。

「なんだこの荷物? でかすぎないか……?」

 こんなデカイもん誰が送ってくるんだろう・・・母さんにしては何の連絡もないし。ん・・・斎藤?

「さいとう……?」

 その瞬間、ものすごくイヤな予感がした。これは開けてはいけない。下手したら死ぬかもしれない。相沢とヤツになら俺を殺す理由がある……かも……まあ、ないだろうけど。

「とにかく、これは開けない方がいいな……」

 そう言って、斎藤に電話しようと携帯を探していると。

 ピーンポーーン。

「へ?」

 またインターフォンが鳴った。




 あの後立て続けに数人の配達員が来て、それぞれ大きなダンボールを置いていった。1、2……全部で5つ。一瞬、全部斎藤かと思ったが、差し出し人はそれぞれ違う。

 届いた順に、相沢祐一、美坂栞、倉田佐祐理、水瀬名雪だ。

「これはもしや、俺への誕生日プレゼントでは?」

 まずはじめにその考えが浮かぶべき状況かも知れないが、最初に送ってきたのが斎藤だったからな……。そんなことを思いながら、ダンボールを開けていくことにする。微妙に鼻歌なんか歌いながら。

「まずは、一番安全そうなのを……」

 とりあえず、水瀬名雪名義の物を開けてみた。斎藤と相沢は絶対最後だ。

「ん、なんだコレ……マネキ……ン、って……」

「おはよう、北川君」

 ……そう言いながら、ダンボールの中で美坂香里が俺を見上げている。

「な、え、ちょ……なんで美坂が俺の家に……?」

 何を言ってるのか自分でもわからない。この状況がわからない。なぜ美坂が水瀬から宅配便で送られてきたんだ? これはドッキリとかそういうヤツなのか? エイプリルフールはもう過ぎたんだぜ? ああ、俺はまだ寝ているのか?そういうことか?

「まあ、他のも開けてみたら?」

「あ、ああ、そう、だな……」

 そう美坂に促されて、俺はよくわからないままダンボールを開けていった。……なんだこれは、何が起こっているんだ? これは一体誰のイタズラなんだ? 俺が何したっていうんだ……?


「おはよう北川君」

「おはよう北川君」

「おはよ、北川」

「おはようございます、北川様」


 出てきたのは挨拶の違うヤツはいたけれど、全員美坂香里だったのだ。
















 ここで、文頭の状況に戻る。確実に目が覚めているんだ。これは夢じゃない。幻なんかじゃない。僕達ははっきりと生きてるんだ。……じゃなくてっ、目の前にいるのは生物学的に言えば確実な人間だ。そうだ、そうなのだ。なのに……。

「お前ら、全員美坂なのか……?」

『そうよ』

 ……怖い。B級ホラー映画を見ているようだ。美人でも五人同じ顔でこっちを見ていると不気味さしか感じない。正直、俺は今すぐ逃げ出したかった。ああ、太陽の光が恋しい……。などと現実逃避している場合でもない。どうにかこの状況を説明してもらわないと。

「……なぁ、お前らは一体何なんだ……?」

「そうね、じゃあ自己紹介でもしようかしら」

 そう言って一人の美坂が立った。他の全員がそっちを見る。本気で怖い。




「あたしは名雪から送られてきた『クラスメイト美坂』よ」




 ……真面目な顔だ。ギャグではなさそうだ。そのまんますぎる名前、クラスメイト美坂。確かに彼女はいつもクラスで水瀬と話している美坂に違いなかった。

「じゃあ、次はあたしね」

 クラスメイト美坂が座ると、その隣の美坂が立ちあがった。




「あたしは倉田先輩から送られてきた『優等生美坂』よ」




 ……確かに、美坂は優等生だけど。もしかして、送り主から見た美坂の性格が出ているのだろうか。倉田先輩から見た美坂。うん、確かに優等生というイメージが強いだろう。……とすれば、斎藤・相沢の美坂はなんだ?




「あたしは栞から送られてきた『お姉ちゃん美坂』よ」




 いつのまにか三人目の美坂の自己紹介が終わっていた。栞ちゃんから送られてきた美坂だ。大丈夫、これも問題ない。次だ。次からが本当の恐怖だ。よく考えれば挨拶が違った二人は残りの二人のような気がするし、顔つきもちょっと違う気がする……。















「わたしは斎藤から送られてきた『女王様美坂』よっ!」















サイトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!









 この瞬間、斎藤は俺の中の殿堂入りが決定した。素晴らしい。彼は素晴らしい人間です。ええ、わたくしが証明します。彼はどこに出しても恥ずかしくない人間です。日頃から皆さんそう思ってたはずでしょう? だって、彼は僕の義兄弟なんですもの。自慢の義兄弟、いつまでも一緒に生きようね。


 そう勝利者インタビューの練習をしていると、ラストの美坂が立ちあがった。相沢・・・俺はお前を信用してるぜ。俺の期待を裏切るじゃねぇぞ……。見せてみろ、お前の心意気を!!















「私は、相沢さんから送られてきた『メイド美坂』です……」












ッイザワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!<裏声









 相沢、お前は変態だ。ああ、変態だ。だがそれのどこが悪い? 例え世界中のクソッタレどもがお前の敵になったとしても、俺はお前を裏切らない。絶対に裏切らない。ほら、こんな近くに俺がいるんだ。お前は一人じゃないんだ、怖がらないで一歩踏み出すんだ。俺と一緒に世界へ飛び立とう。




「……ねぇ?」

「え、あ、なんだ? えっと、優等生美坂?」

「違うわ……あたしはお姉ちゃん美坂よ」

「あ、悪い悪い。で、なんだ?」

 もう一人の俺、相沢祐一からのナイスセンタリングのおかげでかなりの時間妄想にふけっていたようだ。やばいやばい。とりあえずは今の状況を楽しまないともったいない。なんせ普通の人間がこんな経験することはないんだからな。

「何か頼みはないの?」

「へ、頼み?」

「あたし達はあなたの頼みを聞きにきたのよ」

 横から今度こそ優等生美坂が話しかけてきた。

「頼み……?」

「送り主に聞かれたでしょ?誕生日プレゼントは何がいいかって」

「あ……」

 そうだ、俺はみんなに誕生日プレゼントを聞かれた。思い出した。確か、何て答えたっけ……?





「なぁ、北川」

「なんだ、斎藤。二秒で用件を言わなければ殺すぞ」

「誕生日プレゼント何がいい?」

「美坂っ!!」

 一瞬の問答だった。

「そうか……」

 そう言って斎藤はブツブツ言いながら歩いていった。なんだ、ツッコミもなしかよ。そんなことを思ったんだっけ。





「……その後それが何回か続いたような気がする……」

「それであたし達が送りこまれたのよ」

 今度はお姉ちゃん美坂だ。

「なるほど……と言うよりも根本的に五人も来るって所がおかしいような気がするけど……」

 しかし、あまりそんなことを気にしてはいられない。電波なのだから。……とはいえ、急に言われてもなぁ……う〜ん、この美坂ズは俺の頼みを聞きにきたのか。そうか……。















 6P?















「ぶっ、ぐお、ぐはあああああ……」

 想像しただけで世界を制する左を打てるようになった気がする。それぐらい強烈なピンク色の世界が俺を包んだ。人生ってこんな大逆転があるんだね、神様。今まで蔑ろにしててゴメンナサイ、今日から僕はキリシタンです。隠れ。

「そうだな、ろ、ろくぴ」

ドバキャアアアアアアア!!!!!!!

 天井と床が8回ぐらい逆転した。今の一撃は自分の愚かさ、醜さ、浅はかさを実感するには十分な一撃だった。調子に乗りすぎました、ゴメンナサイ。だからそんな目で見ないでお姉ちゃん美坂。あと、冥福を祈らないで他の美坂達。

「次そんなこと言ったら、本気で逝くわよ」

 ちょっと赤くなった顔も美人だけど、鼻からドバドバと流れる血から判断しても次は本当に逝くと断言できる。俺は狂ったように首を縦に振った。へへへ、なんかライブに来てるみたいだな。Tシャツは自分の鼻血で真っ赤になっている。

「もっと、それぞれの特徴を活かしたお願いをしなさい」

「と、特徴……?」

 そうか、なるほど。だからこんな人数がいるのか。全ての俺の欲求……一部を除くだが、それを満たしてくれるためにいるんだ。なるほど。さすが誕生日。

 とはいえ、名前だけで特徴を考えろと言われてもなぁ……。結局そう簡単には思いつかないので、俺はこう提案した。

「じゃあ、適当に自分の特徴を活かして俺のために働いてくれよ」












 失言だった、と今になって思う。

「………」

 カリカリカリカリ……。

 優等生美坂はさっきからずっと勉強をしている。俺の問題集を解いてくれているようだ。その気持ちは嬉しい。だけど、それって俺に何の利益があるんだ。俺がやらないと意味ないだろう……。

「ふーん、ふふふーん♪」

 一番期待していたメイド美坂はずっと掃除をしている。さすがメイド。俺は本来のメイドの仕事を忘れていたようだ。普通のメイドはこうなんだよな……。でも、それならダスキンを呼びます。

「………」

 クラスメイト美坂は小説を読んでいる。確かに時々美坂は休み時間に小説を読んでいた。というか、今って休み時間と同じ扱い?俺の誕生日って授業の合間の十分と同じですか?

「……ふん」

 女王様美坂は何もしない。ソファーに座ってふんぞり返っている。確かに女王様だ。だけど、何かが違う……。はっきり言って、アレができないと一番の役立たずといわざるを得ない。いるだけで邪魔だ。

「それでね、栞がこう言ったの、あのね」

 お姉ちゃん美坂はさっきからずっと栞ちゃんの話をしている。というか、一方的に喋っている。俺は相槌を打つだけ。これも愛の表現……なわけない。そりゃあ話を聞くのは楽しいが、誕生日にコレだけ? もっと心ときめくことはないのか??

 などと考えながらも、時間は過ぎていった……。















 ― 三時間後 ―















「ここがね、こうなってね……」

 カリカリカリカリ……。

「あ、そうか……なるほど」

 カリカリカリカリ……。

 見知らぬ女の子がいる。優等生美坂は家庭教師のアルバイトを始めた。俺の部屋で。

「ふーん、ふふーん♪」

 窓の外からメイド美坂の声が聞こえる。前の道路を掃除しているようだ。

「……は、その時……だった」

 優等生美坂は小説家を目指しているようだ。さすが優等生。

「ふん、ふん!!」

 パシィ、パシィ!!

 ……例のアレは、いつのまにかムチを持っていた。

 さっき以上に酷い事態に陥っている……。ここまでやるということは、俺に何か恨みでもあるのだろう(断言)



 ただ、少し意外な展開だったのは。



「北川君、いつも何食べてるの? レトルト?」

「いや、俺結構料理得意なんだ。いつも自分で作ってるよ」

「そうなんだ? あたしも時々作るけど、毎日はちょっと……」

「まあ、慣れれば大丈夫さ」

「そう? じゃあまた今度教えてもらおうかしら?」

「ああ、いつでもいいぞ」

 俺とお姉ちゃん美坂が良い雰囲気になったってことだ。話してみると、本当に普通の美坂だった。ただちょっと、いつもは見れない優しさを見せてくれる美坂だな。栞ちゃんに対してはいつもこうなのだろう。少し嫉妬に似た感情を覚える。

「ここがね、こうなるのよ、わかるでしょ?」

「この、このっ!」

 パシィ、パシィ!!

 周りは少しうるさかったけど、今の時間がとても楽しい。誕生日なんてもうどうでも良いや、この時間よいつまでも続け、そう素直に思えた。つうか、周りのヤツ早くどっか行け。















ジリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!!















「わっ、なんだぁ?」

 いきなりの騒音。誰だよ、せっかくお姉ちゃん美坂と音楽の話で盛りあがってる時だってのに。

「時間ね」

 優等生美坂が立ちあがって言った。知らない女の子はいなくなっている。時計を見ると・・・夜の8時。時間? 終わりってことか・・・? そうか、ちょうど12時間なのか。

「あたし達の勤務時間は終了よ」

 やっぱりそうか。12時間中、それこそメイド美坂の料理を食べてる時でさえ、ほとんどずっとお姉ちゃん美坂と話してただけだが、終わってみれば結構いい誕生日だったように思う。みんなに感謝、と言うより栞ちゃんに感謝だな。

 他の美坂も立ちあがって俺を見ている。もちろん、お姉ちゃん美坂も。これでお別れか。いや、これが出会いだったのかも知れないな。たった数時間だったけど、本当にありがとう。

 俺がそんなことを考えていると。


「と言うことで……飲むわよっ!!!

「へ?」

 と、言いながらすでに冷蔵庫からビールが十本近く放り出されている。ちょっと待て!! それは俺が酒屋のおやじさんに頼みこんで譲ってもらったものだぞ!? 週末の唯一の楽しみだぞ!? と言うか、勤務時間が終わったんだったら早く帰ってくれよっ!!



「ツマミないのー?」

「あ、私作りますぅ」

「このビールの1L当たりのアルコールをαと仮定すると……」

「ほら北川。早く注ぎなさいよ」

「あら、これ美味しいわね」



 って、全員飲んでる!? 優等生美坂まで。ちょ、そんなペースで飲んだらすぐなくなっちまうだろーが!!



「ちょっと待て、お前ら!! 勤務時間が終わったんだったら……」

「余計なことはいいのよ!! ほら、早く注ぎなさい!!」

「バカっ、髪の毛を掴むなっ! む、胸を押しつけるなぁーっ!!」

 イカン、役立たずの女王様美坂がすでに酔っている。これはさっきよりも性質が悪い。

「そうそう、北川君。飲みましょう?」

「ちょ、だからっ!!」

 俺は必死で逃げようとしたんだ。したんだけど……。

「ぜっかくの誕生日なんですからー♪」

「はっ、まさかこのビールにはあたしの計算を圧倒するだけの人類の知識が詰め込まれているというの!?」

「うん、美味しい」

「………」


 一瞬で全員がヨッパライ美坂に変身していた。そんなヤツらから無傷で逃げられるわけもなく。ただただ飲んで注いで、飲んで注いでの弱い俺がそこにいました。



「あはははは!!! 今日は実にいい日ねえ〜!?」

「ばかっ、服を脱ぐんじゃないっ!!!」

「ん〜……」

「そのまま寝るなっ!!」


「香里ぃ〜……」

「何、香里ぃ〜?」

「どっ、同一人物同士で抱き合うなっ!!!」

「じゃあ北川君もどうぞ〜……」

「そーゆー問題じゃねぇぇぇぇぇ!!!!」


「一番、美坂、歌いまぁ〜す♪」

「ばか、これ以上騒ぐなあああああ!!!!」

「オッス!! オラは死んじまっただぁ〜♪」

「フォーククルセダーズ!? 古すぎるわあああ!!! しかも悟空かよっ!?」


 そんなこんなで……。


「はぁっ、はぁ……」


 ……もうこれ以上は収拾つきません。おやすみなさい。

 ぽてっ。

 そして、千鳥足でメイド美坂がダンボール詰めのビールを抱えてきた所で俺の記憶は消えた。















「う……ん?」

「あら、起きた?」

 っと、いつのまにか眠ってしまったようだ。頭がぼーっとしてる。一瞬朝かとも思ったが、まだ外は真っ暗だった。

「今……なん……じ?」

「二時よ」

 俺をじーっと見下ろす顔、これは多分お姉ちゃん美坂だな。

「って、膝枕……してくれてるのか?」

 確かに俺は膝枕されていた。後頭部の辺りが何とも言えない暖かさに包まれている。いつからかはわからないけど、膝枕をするのって結構疲れるんじゃないだろうか。

「うん……北川君つらそうだったから」

 やっぱり優しい。いつもは栞ちゃんに向けられている優しさが、今だけは俺に向けられていることが嬉しかった。

「他の美坂は……?」

「もう帰ったわよ」

 周りを見渡すと確かに誰もいなかった。ビールの缶も綺麗に片付けられて、いつもの俺の部屋そのものだ。まあ、時間が時間だからみんないなくなってるのは当然だろう。だったら、なぜお姉ちゃん美坂は俺の傍にいてくれるのだろうか。

「じゃあ、なんで……」

「あのね」

「うん?」

 急に美坂の声が小さくなったような気がする。それに、なんだかさっきよりもよそよそしいような・・・。

「さっき殴ったのは、六人なんて恥ずかしかったからなの」

「さっき……?」

 ……もしかして、あの顎を的確に狙った拳のことだろうか。

「だけど、その……本当は、北川君となら……いいの」

「………」

 これは……何と言うか、男ならいきり立つべき(色んな意味で)場面じゃないか……?

 チラッとお姉ちゃん美坂の顔を見上げてみる。

「………」

 やばい。はっきり言って可愛すぎる。真っ赤な顔が可愛い、視線を逸らす仕草が可愛い、ちょっと震えているところも可愛い。このままでは理性が消えそうだ……。

 しかし、そこには誕生日だからって理由があるんだ……。やっぱり俺はそんなことで美坂を汚したくない。そう正直に言おうとした。

「でもね……」

「え?」

「誕生日プレゼント、とかじゃないの……」

「………」

「だって、もう……」


 そうだ……今は午前二時。俺の誕生日は……終わっている。


「美坂っ!!」

「北川君……」

 もう駄目だ。その瞬間、俺は……美坂を強く、強く抱きしめていた。















 えー、それで……何と言うか、アレがナニで。簡単に言えば、4ホーマー?















 チュンチュン……チュンチュン……。

 鳥の鳴き声が窓の外から聞こえてくる。

「……朝、か」

 そして、窓からの光で起きる。いつも通りの休日の始まりだ。だけど、唯一違うのは、隣に最愛の人がいるってこと。それがどんな美坂だとか、そんなことはどうだっていい。美坂はとても暖かい。それだけで十分だ。

「北川君……?」

 横で寝ていたはずの美坂がいつの間にかこっちを見ている。

「ん、起きたか? メシでも作るな」

 そう言って俺が立とうとすると、急に美坂に手を掴まれた。なんだ?も、もしかして、朝から……?

「な、なんだ?」

「あ、あのね……」

 恥ずかしがっている。明らかに恥ずかしがっている。こ、これはやっぱり?

「えと、あたしが作るわ。その……子供のために料理の勉強もしないといけない、し。」

 は?

「あの、一体何を言ってらっしゃるのか……?」

「北川君ばっかりに作らせるわけにもいかないでしょ?」

「…………え、それはどーゆー意味でしょうか…………?」

「だって十ヶ月もすれば、あたしもお母さん美坂にレベルアップするんだもの♪」















 ………………ぇ?<声になってない















「だからダンナ様は寝ててねっ」

 そう言って下着姿でお姉ちゃん美坂(?)が台所に消えていく。しかし、俺の頭の中は眩しいぐらい真っ白だった。さて、もう一度よく考えてみよう。これからの自分を。

 ふむ……。

 う〜ん……。

 そうだなぁ……。

 はいはい……。















 ……ふぅ……。















……安全日って言ったじゃんっ!!











 その後、お姉ちゃん美坂はお母さん美坂→お母さん北川へと進化したそうな。







なんだこのオチは……自分では結構気に入っておりますが(笑)

それにしても文章が下手で泣けてきます……精進せねぇば〜。

10/15文章の改訂をしました。