血塗られた戦い 4
本拠地に戻り、すべての処理が終わった後、マッシュの部屋にアレンとグレンシールが尋ねてきた。
「我々の解放軍の参加を認めていただきありがとうございました。」
アレンとグレンシールは唱和して言った。
「いえ、この国を良くするという志を持つものならば、誰でも解放軍に入れる資格をお持ちです。」
マッシュは穏やかに笑って言った。
「それでも、我々を帝国に仕える者として見るものは多いです。その中で、我々の誓いを信じてくださったのはありがたいです。」
アレンは感謝しているような目で言った。
「それと、テオ様を殺していただいたことも。シキ様に言おうと思ったのですが、それを言申し上げる前に「いい」、とおっしゃって言葉を挟めなかったもので。」
グレンシールの言葉に、マッシュは息を呑んだ。
「テオ様はもしあの時負けていたとしても自害の道を選んだでしょう。あの時、テオ様を殺していただいたことでテオ様の名誉は守られました。」
「テオ様はそのような事を気にはしませんでしょうが、それでもバルバロッサ様に忠誠を表せないまま死ぬことは無念を覚えたでしょう。その間を短くしてくださいました。」
グレンシールとアレンは次々と言う。
それをマッシュは呆然と、しかしそれを表に出さずに聞いていた。
次に尋ねてきたのはビクトールだった。
「シキは大丈夫だってよ。」
ビクトールは本拠地に堂々と戻ったシキの元にリュウカンを連れて行ったのだった。
「リュウカンはじっとしてろって言ったのにもう動き回っているがな。」
ビクトールはため息をついた。それは、彼には似合わないものであった。
「なんで受けたんだろうな。受けなくても勝っただろうに。」
ビクトールは疲れたように言った。またそれも彼には似合わなかった。また、剣の傷、と言うことを明白に言わない彼も珍しかった。
「それに、テオが死んだ一瞬、何があったんだ? あいつは子供だっていうのにめったに顔色を変えないからな。それだけ何かあったんだろう。」
「もうすぐシキ殿がいらっしゃるであろうからその時、尋ねてみます。」
やっとマッシュはそれだけを言った。
「そうだな、それなら俺は退散するとしようか。もう大丈夫そうだしな。」
分かっていたようにビクトールは言った。
「マッシュ、悪かったね。お前の意向を無視してしまって。」
シキはマッシュに会うと開口一番言った。
「でも、後悔はしていないよ。あれが一番犠牲が少なかった。」
大人びた口調だった。
「私も謝らなければならないことがあります。あなたを信じきれなかった。」
「しょうがないよ。それは僕のミスだ。穏やかなお前を軍師に仕立て上げたのだからね、その目の前でむごいごとをした、いや、火炎槍というむごいことをさせてしまった。」
「それは軍師になったときから覚悟していたものです。」
シキは笑っているだけだった。
「シキ様。」
マッシュはシキの目を真正面から捉えた。
あの時、まっすぐ見られなかったシキの目を。
「私たちの目的は民たちが幸せになることです。それまで、私は、シキ殿と共に戦っていこうと思います。」
マッシュは他のことは何も尋ねなかったし、言わなかった。その目的のために戦う、それだけで十分なことが分かっていた。
それでもあえて、忠誠を誓う、というだけでなく、共に戦う、を選んだのだった。
「ありがとう、マッシュ。マッシュ、僕の軍師は君だけだよ。」
いたずらっぽい目でシキはマッシュを見る。
「あの時、僕に声をかけたのはお前だけだった。」
それ以上シキは何も言おうとはしなかった。マッシュもまた。
いや、言う必要がなかったのであった。
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