運命の扉
「シキさん、来てほしいところがあるんです。」
そう言ってセイはシキを連れ出した。シキなら何とかしてくれるかもしれない、そういう思いを込めて。
そこは小さな村であった。セイはシキを連れ、慣れた道を通うかのように歩いていった。
そして一軒の家の前に立った。
「こんにちは。」
セイはそうやって中へ入っていく。シキも無言でついていく。
「あらあら、またエイトと遊びに来てくださったの?」
そう言って、一人の女性が出てきた。その腕には赤ん坊を抱き、足の後ろには5,6歳ぐらいの子供がいた。
「そうです。えっと、この人は僕と一緒に戦っていただいているシキさんです。こちらはアンジュさん。」
「セイに誘われて来ました。お邪魔じゃないと言いのですが。」
そう言ってシキはぺこりと頭を下げる。年相応に見えるようにシキは演技をしていた。
「まぁまぁ、気にしなくていいのよ。じゃぁエイトのことお願いしますね、シキさん。」
そう言ってアンジュはエイトの背を押した。エイトはもじもじしたように出てきた。
「ほら、エイト。」
「一緒に遊ぼうか。」
シキは屈んでエイトに手を差し出す。エイトはその手をそろそろととった。
「じゃぁ、行こうか。」
三人は外に出た。
「あらあら、気をつけていきなさいね。」
外に出ると一人の女性が声をかけてきた。アンジュとよく似た女性だった。
「ハイ、エンジュさん。」
セイは大きな声で返事をした。エイトはうれしそうに手を振る。
そして、三人は本当に家を出た。
「君の名前はエイトでいいの?」
シキはしばらくはなれたところでエイトに尋ねた。
「ぼく?ぼくはレイヤだよ。」
アンジュにエイトと呼ばれていた少年は首を振った。
「でも、ぼくはエイトとも呼ばれるよ。」
レイヤはそう言った。
「ぼくの名前はどっちなんだろ?」
「どっちなんだろうね。ねぇ、君のお母さんはどっち?中であった人?外であった人?」
「外であった人だよ。ねぇねぇ、お姉ちゃん、それよりお姉ちゃんのことを教えてよ。」
「ボクは男だよ。」
「え、お姉ちゃん、お兄ちゃんなの、本当に?」
シキはレイヤに質問攻めに会う羽目になった。
「セイさん、シキさん、お茶にしませんか?レイヤもおやつの時間よ。」
そう言ってレイヤの母、エンジュが三人を探してやってきた。
「わーい。」
レイヤは走り出した。
「走ると危ないわよ。」
エンジュはレイヤを追いかける。
「君はどうしてほしいんだい?」
急にシキはセイに尋ねた。
「ボクはレイヤが自分の名前を呼んでもらえるようになってほしいです。そして、自分の名前が分かるようになってほしい。」
「もうちょっとしたら分かるようになると思うよ。今、彼らは幸せかもしれない。」
シキはセイの目を覗き込む。
「多分、違うと思います。アンジュさんがレイヤって呼ぶとき何か悲しそうな顔をしています。」
セイはぼそぼそといった。
「たぶん、それは間違いない。」
「えっ」
シキがぽそっと言った言葉をセイはよく聞き取れず、聞き返した。
「いや、僕には人に救いを与えるやり方はできない。」
そうシキは言った。
「それでも、お願いします。」
「君にお願いされてなくてもやるさ。同属嫌悪、見たいなものだからね。」
頭を下げたセイに、暗い調子でシキは言った。
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