すべき事 2
「シキさん、僕は自分を英雄だとは思えませんけど、それでも今このとき彼らの英雄であってよかった、そう思えますよ。」
瞬きの鏡で戻る直前彼はそう言って微笑んだのであった。
◇◆◇
タキという少年は発作にみまわれていた。セイは励まし続けた。
タキの発作はまだ終わってなかった。それでも、セイは行かなくてはいけなかった。戦争の指揮を取るために。
「ごめんね、僕行かなくちゃ行けないから。」
「いえ、ケホ、来ていただいた、ケホ、だけでも、ケホ。」
タキは弱々しく微笑んだ。
「それにトランの英雄様にも、ケホ、会えましたし、ケホケホ。」
タキはつらそうだった。後ろ髪を引かれながら、シキとセイは診療室を出た。
「あの、シキさん、ここにいてあげてくださいませんか?」
セイは恐る恐る聞く。
「だめだよ。僕は君が戦場に行くまで護衛しなければならない。」
「でも。」
「君は盟主なんだ。分かっているのだろう?」
「でも。」
「いいかい、あの子供は僕にもあこがれているけど、君にあこがれているんだ。君は英雄だ。」
せいは唇をかんだ。
シキは子供たちに医者の迷惑にならないようにするんだよ、と言って何事もなかったかのように振舞った。
◇◆◇
「君も甘くなったものだね。」
セイを戦場に送った後、シキは戻らずにルックの元にいた。ルックの手助けをするためである。
「テレポートの余力を残すために君が出張るなんてね。」
本来はビッキーがいれば用が済むのだが、ビッキーはシュウが酒で眠らせていて見つからない。そのためサポートすることにしたのである。
「頼りになるだろ?」
確かにシキの魔力はルック、ジーンに続きメイザースと同じぐらい強い。しかしそれは問題ではなかった。
「話をすりかえないでくれる?」
「やっぱりルックには分かってしまうか。私、と言う方が地の一人称だって気が付いたのも君だったしね。」
「それほど聞かれるといやなことなんだ。」
シキがのらりくらりと回答を避けるなか、ルックは眉間を寄せる。
「僕は今でも厳しいつもりだよ。あの子はすべき事をなした上でしていることだから。」
ポツリと漏らした言葉にルックはまだ眉間を寄せたままであった。
「君はまだ、あのときのことを後悔しているのかい?」
シキは微笑んで答えなかった。
◇◆◇
戦争は同盟軍が王国軍を追い返して終わった。
そしてすぐ、シキとソラ、ルックは診療所にテレポートしたのであった。あれから3日たっていた。
シキは着いたとたんタキが死んだことを悟った。右手が疼く。しかし顔には出さなかった。
子供たちはまだ何も知らされてないのだろう、彼らは普通に過ごしていた。
「間に合わなかったんだ。」
セイはタキの部屋にまず行った。しかしそこで待っていたのはタキの死、だった。
「君は間に合ったんだよ。死ぬ前に君の顔を見れた。」
淡々とシキは言った。ルックは解放軍時代のときのことを思い出していた。同じようなことがあり、シキはいけなかったのだ。急に戦争が起きたせいで約束の日に行くことができなかった。
その間に、シキに会いたかったと言って一人の少女が死んでいったのだった。
先ほど聞いた後悔はこれのことであった。
シキがセイに甘い理由が何となくルックには分かった気がした。
セイはすべてのことを成し遂げてしまうかもしれない、すべてではなくてもシキができなかった多くのことを。だからこそシキはセイに甘いのだろう。
ルックはセイの慟哭を聞きながらそんなことを思った。
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