自分が自分であるために


「僕は何で生きているんだろうか?」

セイは呆然としながら部屋の中でただ一人つぶやいた。
一人、という孤独に身を震わせる。
ナナミがいなくなった今、一人で耐えなければならない。

なぜなら僕は軍主なのだから。


今死ぬわけには行かない、それは分かっている。
今自分は必要である、それは分かっている。

それでも考えてしまう。
今じゃなく、最初から自分がいなければ?
ナナミは、死ななかった?
キバは、死ななかった?

「僕は何で生きているんだろう?」

「それは冒涜だよ、死者に対して。」
誰もいないはずの部屋にその声は響いた。
シキの声であった。

「でも、最初から僕がいなければ・・・・。」
言ってはいけない言葉、分かっているのにセイの口からあふれてくる。

「ま、心のよりどころは必要だしね、軍主といえども人なんだから一人ぐらい泣いている姿を見られてもいい人を作ってもいいんじゃないか?」
その言葉はそっけなかったがセイは一筋涙が出た。
ただ、それ以上は流さない。
それが軍主としてのプライドであった。

「セイ、ナナミは君がいなかったら、あんなにお姉ちゃんお姉ちゃんしていなかったんじゃないかな?」
シキは優しく語りかける。
「最初っから君がいなかったら、ナナミは君が好きだったナナミとは違うナナミになっていた。」

セイはまた涙があふれてきた。それを必死にこらえようとするが一筋、また一筋と流れ出る。

「だから、というのはおかしいかもしれないが、自分がいらないと考えることは死者に対して冒涜だよ。誰かが死んで心を動かされるとしたら、君自身もその死んでしまった人に影響を与えているんだ。」

セイはその力強い言葉に励まされた。
まだ、セイの心は自己否定をしている。
理解はしても心は納得していない。
それでも、前に歩き出せそうな気がしたのだ。

「ありがとうございます」
セイは礼をした。
そして前に歩き出したのであった。


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