子供に希望を与える日


クリスマスイブ。
人が浮かれ騒ぐ日。
家族に、恋人に思いを寄せる日。

そして、子供に希望を与える日。

◇◆◇

「なんか、お前、うれしそうじゃねぇ?」
いつもと違って邪気のないシキの顔にシーナは驚いたように言った。

そこは食堂の片隅。
クリスマスにあぶれたシーナは女の子を捜して食堂に行ったが、すでにもうそこにはカップルばっかりだった。
カップルじゃなくても、親子や女の子の小さなグループなど、一人なのはシーナだけだった。

女の子たちには声をかけてみたのだが、つれなくふられ、うろうろしていたところにシキを見つけたのだった。

その顔がいつもと違って邪気がなく、しかも、やわらかく微笑んでいたところにシーナは驚いたのだ。

「この空気に毒されたのかもね。」
シーナはその言葉を否定しなかったことに再び驚いた。

「ねぇ、シーナ、手伝わない?君は器用そうだし、何より暇そうだ。」
その時のシキの顔はもういつものシキの顔だった。

◇◆◇

シキは何も言わずに先に立って歩き出した。
シーナがついてくることを疑わなかった。

シーナもシキとアイリーンには弱く、ぶつぶつ文句を言いながらもついていく。

そうして着いた先は台所だった。

「何するんだ?」
「クッキーを作るんだよ。」
シーナの問いにシキはつまらないことを聞く、とばかりに答えを返した。

◇◆◇

「また、何だって、急に?」
シーナは粉をこねながら言う。
「急に、じゃないよ。今日はすべての子供が幸せになって当然の日だからね。ホントは全世界の人がが毎日、幸せだったらいいんだけどね。でも、それは無理だから、せめて解放軍にいる子供たちだけでもね。」
シキはそういいながらクッキーの型を抜く。

「へぇ、サンタクロースになるつもりか。」
「以外?」
シキもシーナもクッキー作りに忙しく、お互い、顔を上げたりはしない。
「ああ。」
それでも、お互いがどんな顔をしているか何となく想像がついた。

「僕はサンタクロースを知らなかったから。」

◇◆◇

それはクリスマスイブからもう、クリスマスに変わり、どうにか解放軍にいる、子供たちにクッキーを配り終えて戻ってきた時だった。
何か、部屋に違和感を感じた。

そこはいつもの自分の部屋。
たった一人で眠るのには大きな部屋。

その違和感が分からずに、ベットの近くの机に近づくとそこにはワインが置かれていた。

「確かにたまにサンタクロースをするのもいいかもな。」
といったメッセージと共に。

そして、その横のベットにはそのプレゼントの主が寝ていた。
多分、待ち疲れて寝てしまったのだろう。

思わず笑いそうになる口元を引き締めながらシキはシーナに毛布をかけ、横にクッキーを置き、自分は横のソファーに眠った。

クリスマス。
それはすべての子供に希望を与える日。

◇◆◇

ちなみにその次の日、シーナが軍主の部屋のベットをしていたことがばれて、レパントにこってり怒られたのは別の話だ。

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