英雄


セイはコウを助け、一度本拠地に戻った後、マクドール家にやってきた。
「一緒に戦っていただけませんか?」
シキはセイの目をじっと見つめる。セイはじっと見返す。無言の時がしばらく続いた。

「君は英雄の名前が必要なのかい?」
口を開いたのはシキからだった。
「英雄のなではなく、あなたがほしいのです。」
「僕? 僕を死神と分かっていて?」
「だからです。」
再びシキはセイを見つめた。セイは目をそらさない。珍しいことだった。たいていはシキが見つめるだけで気後れする。

「理由を聞こうか。」
再び口を開けたのもシキだった。
「デュナンは今、統一に向け、人々の意識が高まっています。人々だけではなく、大きな歴史の流れや、紋章が。ハイランドの皇帝はたぶんジョウイになるはずです。」
シキには言いたい事が分かった。しかし、先を促す。
「今、調停を結ぶと、その条約はすぐに破られ、小競り合いが続くでしょう。今の波をつかめば、どちらが勝ったとしても、この地に平和が降りる。」
「それは傲慢と言うものじゃないか?」
シキは笑みを浮かべた。
「僕はそう信じています。」
「それで、僕が参加すると?」
シキは笑った。心外だというように。
「あなたの話はルックやテンプルトン、フッチに聞きました。解放軍時代のことを。あなたはすべてのものを押し殺し、民のために戦ったと。あの戦争の中で一番民のことを思っていたと。」
「僕はそんなできた人物じゃない。」
真剣なセイに低い声を出し、シキは答える。
「あなたは勝つためなら味方から恨まれ、自分に近しいものを見捨て、尊敬する人と戦った。鬼、と言われていた。しかしその根底には民の平和を考えていた。」
「言っただろう? それほどできた人物じゃないと。それ以外の方法を思いつけなかった。それだけだよ。」
シキは肩をすくめる。
「僕はシュウにまかせっきりにしています。」
「それでもいいんじゃない? それが軍師の役目だ。」
取って代わったようにシキは明るい声で言う。
「そうですね。・・・・・・あなたにも期待してはいけませんか? 僕は戦争をよく知らない。」
「僕もよく知らない。とはいえ、将軍家に生まれ、二つの戦争を見てきた。継承戦争と解放戦争。君より知っていることはある。いいだろう、手伝ってやる。」
「ありがとうございます。」
セイは頭を下げた。
「君のためじゃない、民のためだ。」
「それでも礼を言わせてください。ありがとうございます。」

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