―――それは、長くは続かない―――−
これは、ある人物の屈折した人生、および、トラウマについて書かれた物語である。ただし、ある人物の屈折した人生とは、「プラモ好き」という一面を揶揄した表現ではないことを、はじめにお断りしておこう。
彼は、広島県広島市に住む中学生であった。
彼自身は、児童会長・生徒会長、そして後に、高校でも生徒会長を務めるといった、どこから見ても「社交的」な明るい少年であった。
彼は、プラモ好きであった。登校前、シンナーの「香り」を体にまとい、母親から「臭い」と罵詈雑言を浴びせられつつ登校することが、毎日の日課でもあった。
この時彼は、結婚するなら鼻の悪い、または、シンナー臭の好きな女性(←それって危なくねーか?)と、と心に誓うのであった。
事件は、ある日突然起こった。彼は、行きつけの模型店で店長に声を掛けられた。
この模型店は、HJなどのモデル誌に広告を出している「ニイ○ニ」と言う店であったため、彼は緊張した。「ちぃ、万引きが見つかったか!」(←うそ。一度たりとも無い。念のため)
「君!、うちの完成見本を作って見ないかね?」
「えっ!」
自分の作ったものが店頭に並ぶ。考えただけで「ぞくぞく」した。
舞い上がった彼は、もちろん、
「はい、はい、私のようなものでもよければ。」
彼に渡されたキットは、バンダイ製、ミニメカコレクション(ヤマト、
999など)であった。急いで彼は作成した。数日後。
「店長、出来ました。いかがでしょうか?」
「うん、いいね。でも、もっと手を抜いてやってくれ。」
「えええっ」
「お客さんは、完成品を見てキットを買ってゆく。そして、作る。ところが、見本と余りにギャップが大きいと、見本と違うと苦情が来るんだ。」
店長の言葉は、当時のプラモ人口の多さ、選定されたキットの購入層、等など状況を考えて、実に的確なものである。
しかし、相手は少年である。不幸なことに彼は
「わしゃぁ〜、そんなに上手なんか!」
(もちろん、接着線さえも処理していないのだから大きな誤解。)と感じてしまった。不幸の始まりであった。
その日、彼は完成品
1個と引き換えに、同メカコレ2個(キット)を手に入れた。(オイ、オイ、売値
100円のキット、完成見本の手数料は、仕入れ値40円?分位のキットかい?詐欺や子供だましに近くないか?あっ子供だから良いのか?^.^)ご満悦の彼であった。
その日を境に、彼は天狗になった。僕は「上手いモデラ―」だと。接着線を処理し、パテ埋めなどするようになってからは、「超一流」「世界一」位に感じていた(さすがに、口に出して他人に言ったことは無いが ^^;)。しかも、近所の模型屋さんからも同様な依頼を受け、気持ちはほとんど「プロ」のつもり…・(こっちの報酬は、店の規模、近所と言うことも在って、同等品キット
1個。しかし、なんて良心的なプロなんだろうね ^0^)。そして、こんな彼に「火に油を注ぐ」事件が起こったのである。
なんと、彼の「同級生」が「自分の作品と彼の作品は同等である。」と言い放ったのだった。
穏やかに、しかし、心の中で激怒しながら「彼」は言った。
「ほらここのところとか、ここよ!こういう所の処理が違うじゃろう?」
しかし、「同級生」は
「えー、一緒じゃろーが!」
彼は、愕然とした。既に「ますきんぐてーぷ」まで導入していた彼にとっては、プラ成型色(すなわち無塗装)に、ぐにゃぐにゃと塗りたくったライン(もちろん本来直線部)、キャノピー枠さえ(もちろん、ヒコーキね)塗装されていない「同級生」の物と、自分の作品は明らかに違う。しかも、「同級生」は負け惜しみで言っているのでは無さそうだ。
このとき、彼は悟った。
「製作スキル、(中学生!スキルなんて言葉ではない!せいぜい「腕」程度^^;)次元が極端に違うとき、下位のレベルから上位のレベルは計れない、理解できない。上から下は見えるが、下から上には見えないこともある。」と。
自分は明らかに上位であるという自負が、さらに高まったのである。このまま、彼の人生が終わっていれば、ある意味とても幸福な人生であったに違いない。(爆)
しかし…・
後年、この経験が、彼にとって大きな「トラウマ」になるとは、この時誰が予想しえたであろう。(いや、誰も予想できなかったに違いない(笑))
受験も終わり、社会人となった彼は、細々と続けていた「プラモ」に本格復帰を果たした。
彼を待ち受けていたものは、余りに大きな試練であった。
最愛の「LS」は既に無く、頼りの「クラウン」も、更に、クォリティの高さの「オオタキ」までもが…・
あせった彼に、次の悲劇が訪れ、「彼」が「殻に…」そして「貝」に、なっていくのはもうすぐであった…・。
つづく…
(えっ!つづく?まだ書くのか!)
次回、貝になった彼は如何にして戦線復帰するのか!
こう ご期待!(もう止めて…・)
注:文中に登場する模型店の手数料は、現在でも「妥当」であったと思っています。
中学生に「現金」を払うのは「ヤバイ」し、「需要」と「供給」のバランス等当然であると思っています。また、登場する
2店舗とも現在は存在しませんが、とても感謝しています。ちなみに「ニイ○ニ」さんは、同店の一部スタッフにより、名前を変え、移転して現在も商売を続けていらっしゃいます。がんばれ!ホビーセンター○○○○!
この物語は、実話に基づくノンフィクションです(はぁ?それって「実話」)。