ぽかぽかと日差しはあったかいけども、ぴゅうぴゅうする風はもうつべたくて、わしは顔だけ小屋からだして、うつらうつらしとった。 そうこうするうちにばたばたしたあわただしい足音が近づいてきた。 あの足音は坊ちゃんやな、今日はまたえらい急いで。 「たっだいまー!!お父さんあれだしといてくれたー?」 「お帰りたらちゃん。用意しといたよ。でも、本当にこれでいいの?」 「いいの!だってコロとおそろいなんだもん!!」 ああそうか、今日は前から言っとったやつやな、ハムとかウィンナーとか。 そんなことを考えていると、坊ちゃんが庭に駆け込んできた。 「じゃーん!コロ見て!おそろいだよ、にあう?」 「ばふ?」 そう言った坊ちゃんの頭には茶色の三角の耳、ふさふさの尻尾が上着のすそから垂れて、手には同じ色のふかふか手袋までしとって、それはまるで、今にも勝手に動きそうな位・・・ 「わふ、ばふ!(坊ちゃん、よう似合うとりますわ!)」 わしが小屋から出て言うと、言葉がわかったかのように、 「にあう?ありがとーコロ!」 と、本当に嬉しそうに坊ちゃんは答えた。 ああ、尻尾がぶんかぶんか振れとるように見えるのは気のせいなんか・・・。 「・・・せんせぇも、にあうっていってくれるかな・・・?」 「わふ!?」 せんせえやて!?そ、それってもしやあの匂いのお人のことなんか!? 最近の坊ちゃんはおかしい。 帰りが遅いのは今までと同じやけども、時々、嗅いだ事の無い匂いがすることがある。 それは高そうな匂いで、そんなんつけたまま、 「コロには言ってもいいよね?きょうね、せんせぇのおくるまにのせてもらったの!」 なんぞと、大層嬉しげに言いよる。 誰!?誰なんや、せんせえて!そんな高そうな匂いのするお人で、車て!ずいぶん大人なんとちゃうのん!?わしには言うてもええて、ほかの人にはダメってことやろ?そんな親に言えないようなお人に!あかんーーーー、坊ちゃんーーーーーー!!! ・・・なのに、今度の言葉はわからんかったみたいで、 「いってっきまーす!!」 坊ちゃんは元気に出て行ってしもた。わしは!わしはどうすればいいんや!ご主人になんて言えばいいんやあーーーーーー!!! 「あお〜〜〜〜〜ん!!(ぼっちゃ〜〜〜ん!!)」 「コロ〜、まだ夜じゃないよ〜?おなか空いたの?」 ・・・だんなさん、そんなのんきな〜〜〜〜!ご主人〜〜〜、はよ帰ってきてんか〜〜〜!! そんな家族の一員の悲痛な遠吠えも多良葉には届かず、仲間と合流した多良葉は学校へと向かいました。 今日はハロウィン、1年悪がきカルテットは思い思いの仮装に身を包んでいます。 パテットはドラキュラ。「れーせんせーの血をすうのー(はあと)」 圭はジャックランタン。「売ってたやつだけどにあうだろー!ヒーホー!!」 でも、竺は普段どおりの格好です。 「ね、竺はそのままなの?」 「うんー、圭が、おれはそのままで十分だってー。」 「ふ、ふ〜ん」 4人は一先ず近くからせめて行くことにしたようです。 その最初の被害者は・・・ 「「「「とりっくおあとりーと!!!!」」」」 突然なだれ込んできた4人に怜はいやそうな顔をして、ぶっきらぼうに 「いたずら」 と答えました。 しかしそんなことにひるむ4人では当然ありません。 圭が、 「よしいけ!パテット!」 と叫ぶと、渡りに船とばかりにパテットは怜に飛びつこうとしました。 「れーせーんせー!!(はあと)」 「どわ!来るな!分かったこれをやる!」 怜は赤い手のひらサイズの缶を開けると、一粒ずつ4人の手のひらに乗せてやりました。 「これなーにー?」 竺の疑問に怜はそっけなく、 「肝油」 と答えました。 「てい!!」 べしっ!!と圭はそれを床に叩き付けましたが、 「いいのか?肝油は・・・背が伸びる。」 と言う怜の重々しい言葉にあわてて拾い上げて口に放り込みました。 「あー、圭おなかいたくなるよー?」 「うるさい!ひとつぶでもむだにできるか!!と、いうわけでみなのしゅー!いくぞ!!」 「「おおーーーー!!」」 「れーせーんせー!!(はあと)」 「どわ!!」 一斉に襲い掛かってきたちまいのの波状攻撃に、まさか本気で出れやしない怜はあっさり陥落してしまいました。 「みなのもの、ずらかるぞ!!」 「「おおーーー!!」」 「れーせんせー、まったねーーーー(はあと)」 「二度と来るなくそがきどもーーーー!!」 と、まんまと肝油を缶ごと強奪していったちびっこギャングどもに叫びながら、保健室にも新しい鍵とドアスコープを取り付けるべきかと真剣に考える怜なのでした。 「「「「とりっくおあとりーと!!!!」」」」 「うわあ、みんな可愛いねー、良く出来たねーーー!!」 次に向かったのは先生の溜まり場、職員室でした。 「ろく先生おかしをくれないといたずらするぞ!!」 「あ、そうだったね、えーと、あ、五家宝しかないんだけど・・・」 「禄じじむさ!!」 「そんな星華さ〜ん!偶然です!さっき早乙女さんに貰って・・・!!」 「せーか先生もなんかちょーだい?」 「えー、しょうがないわね、手ぇ出しなさい。」 おとなしく並べて出された4っつの小さな手のひらに、星華はマー○ルチョコを一粒ずつ置いてやりました。 「しょぼ!保健医にならぶセコさ!!」 「けーいー?・・・・・あら、なに禄、手なんか出しちゃって。」 「いでーいでー!!」 思わず失言を口にした圭のこめかみをぐりぐりしながら、にこにこと両手をそろえて差し出した禄に星華は聞きました。 「星華さん、僕すっごく大事に食べます!」 ・・・どうやら、自分もチョコが欲しいようですね。 「・・・さっきので最後。」 「そんな星華さ〜ん!!・・・いいもん、2月に期待するし。」 もじもじと呟かれた(別に可愛くない)最後の言葉に、星華は首を傾げました。 「2月・・・節分?」 そうですよね、日本人なら節分ですよ!(力説) 「星華さぁ〜ん(泣)!!」 「あ、静紗亜、あんたもこいつらになんかやんなさいよ。」 「何かっていわれても・・・こんなものしかないわよ?学校なんだから」 そういって静紗亜が差し出したものは、採れたて新鮮、産地直送の・・・ 「先生、なあに?これー」 「ぐみ。食べられる。」 その言葉に、圭はおそるおそるその実を口にしました。 「ほんとうだ!けっこううまいぞ!ためになるぅ〜!!」 「僕たちと態度違くない?先生寂しいよ・・・」 「やあ君達楽しそうだね。今日はハロウィンか。」 「あー、しおん先生だー」 「とりっくおあとりーとー」 「なんかくれー」 「お菓子か、それなら取っておいたのがあるよ。君たちに食べてもらえたほうがお菓子も喜ぶ・・・さあ、持ってお行き。」 しおんは机の中を探り、江○名物の・・・埴輪サブレを4人に渡しました。 「埴輪サブレ・・・?ひどい!!しおんがそんな人だったなんて!!」 「静紗亜!?なぜ!おいしいじゃないか、静紗亜ーーー!!」 「ところでさあ、(無視)パテットはドラキュラよね?多良葉が狼男で圭がジャックランタンていうのも判るんだけど、竺はなんなの?」 「あ、それ僕も気になってた。どうみてもいつもと同じなんだけど・・・」 「あ、おれはー」 「バカには見えないかそうです。」 「「!?」」 突然割り込んできた圭の言葉に二人の教師は慄然としました。 (ていうか、信じるなよ) 「け、圭〜〜〜?」 「しっ!ばかだまってろよ!(小声)」 「見える、見えるわよ私には!えーと、えーと。」 「ぼ、僕だって!」 「あんたさっきいつもと同じって言ったじゃない!」 「あ〜、先生たちみえないのかー、たいへんだったのにな〜。な〜?竺?」 「あ〜う〜」 「(た、大変!?大変な仮装なのね)そ、そうね、手が込んでるわ!」 「(大変て言うと・・・ミイラとか?)そーだね、とっても時間掛かりそう!」 一所懸命な教師と、にやにやする圭、困る竺を遠巻きに見ていた多良葉は、傍らのパテットに話しかけました。 「あーあ、圭ったらすっかりたのしんじゃってるね。あれ?パテットどうしたの?」 パテットはなにやらそわそわしています。 「あの、あのね、ぼくまたれーせんせーのとこいってくる!だいじょうぶだよね?」 「うん、たぶん。」 「じゃーね、ばいばい!」 にこにことマントを翻して飛び出していくパテットを見送ると、 「・・・いるかな?」 と、本当は一番に向かいたかった場所へ、多良葉はそっと向かいました。 こんこん、とノックをしても返事はなく、高すぎるノブはガチャガチャいうだけ。 「おるす、なんだ・・・せっかくきたのに・・・」 多良葉はがっかり、と肩を落としました。 「・・・あいたかったのにな。」 多良葉はそれでもそこから離れがたくて、ドアの横にしゃがみこみました。 「おでかけかな、もどってくるかな・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 多良葉は時計を持っていませんし、見えるところにもありません。 だから、時間がどれだけたったのかは分かりませんが、気がつくと辺りはだいぶ寒くなっていました。 「ねちゃったんだ・・・もうかえろうかな・・・」 三角座りしたひざに顔をうずめて多良葉は呟きました。 「帰る?捨て犬じゃなかったのか。」 「・・・え?」 学園長はその日、公務で近年合併したS市に行っていました。 それが少々長引き、終わったのはもう夕方になろうという時間。 直接家に帰ってもよかったのですが、これも虫の知らせというのでしょうか、学校に寄った学園長は自分の部屋のドアの横に、見慣れた見慣れぬものを見つけたのです。 「・・・子犬が落ちている。捨て犬か?」 ならばもう拾うしか! とそのとき、茶色の子犬がみじろぎをして目を覚ましました。 顔をうつむけたまま、帰ろうかなどというものですから、学園長はあまり考える暇もなく言葉を発していました。 「・・・え?」 がば、と顔を上げた子犬は、少し目じりの上がった元から大きな目をさらに大きくして、 「・・・せんせぇ?せんせぇだ!!ほんもの?」 と言いました。 「じゃあお前は本物の多良葉か?・・・尾まであるのか、よくできた犬だな」 「犬じゃないもん!おおかみおとこだもん!おかしをくれないといたずらするぞ!!」 「いたずら?どんな。」 「とおぼえしておしごとのじゃまをする!」 「そいつは困るな。で?他には」 「いろんなものをかくすの。はんこをかくしておしごとできなくして、かぎをかくしておうちにかえれなくしてやるぞ!」 「それも困るな。他にもあるのか?」 「まほうもつかうの。ドアがあかなくなるんだから!」 「ますます困った。それからどうするんだ?」 「ええと、ええと、あしもとにまとわりついてうごけなくしちゃうんだから!」 「どうにもならないな。それで?」 「えっと、うんと、・・・あ、せんせぇのことかじってやるんだ!」 とうとう学園長は笑いをこらえることができなくなりました。 「ああ!わらったなあ!?こわいんだぞう!?」 多良葉はほんのり赤くなって、ぽかぽかとだだっこパンチを繰り出しました。 当然痛くも痒くもありません。 「わ、悪い確かにそれは怖いな、お菓子をやるからそれで勘弁願えるか?」 学園長はまだ笑いが収まらなかったけれども、なんとかそう言いました。 学園長は大人ですから、多良葉が挙げたいたずらの、本当の意味がちゃんと分かったのです。 それはつまり―――構って欲しいということ。 どうやら今日学園長は、この子犬にずいぶんと淋しい思いをさせてしまったようでした。 「さいしょっからそういえばいいの!」 ぷい!と横を向きはしたものの、嬉しそうな多良葉を抱え上げると 「食べていくか?」 と、学園長はドアを開けながら問いました。 「うん!」 多良葉は小さな身体を丸めて大人しく預けながら、ちょっと前とは正反対、元気に返事をしました。 いいのかしら?もう結構遅い時間なのに… でも。 「すっかり冷えてしまったな、済まなかった。」 「えへへ、せんせぇあったかい」 …二人ともそんなこと微塵も気にしてないみたいですね…。 その頃の錦木家では 「あわわわわわ椎奈ぁー、たらちゃんがまだ帰ってこないんだよーーーーーー!!!!」 「…こんな時間なのに?さっきパテット君は帰ってきてたし…もしかして…コロ?コロ、多良ちゃん何か言ってなかった?」 「ば、ばふ…(そ、それが…)」 「…ひょっとして、学長先生とか言ってた…?」 「ば、ばふ!?わふ!(ご主人、なぜそれを!?)」 「やっぱり…父さん大丈夫です。ちょっと遅くなるかもしれないけど、ちゃんと帰ってくると思います。多分…学校だから。」 「そ、そう?椎奈がそう言うなら…」 「…安心?なのかなぁ…むしろ…はあぁぁ…」 「くうん…(ご主人、元気出してくだせぇ…)」 こんなに家族が心配しているってのに…。 「しかしよくこんな耳だのなんだの持ってたな。」 「かいちょうがね、くれたの。げきでつかったのが、もういらないからって。」 「児童会長がか…?」 絶対、思惑込みだと確信できましたが(口元を扇子で隠し笑う会長が脳裏にばっちり浮かびましたし。)、まあいいか、と、学園長はさして不愉快でもありませんでした。 なんたって多良葉ときたら、その位(おそらく新田に見つかったら大変なことになるかもしれないくらいには。)似合っていましたから、ね? 「ね、せんせぇにあう?」 「ああ、どこから見てもちゃんと子犬に見えるぞ。」 「いぬじゃないもんーーー!!!」 当然、素直になんか言いませんけど。 その頃職員室では… 「えーと、えーと、し、白い…」 「しろい?先生ほんとにみえてるのー?」 「けーいー、もうやめようよー、かえろーよー」 …まだやってたのね。 でも大丈夫!12時が来るまで、今日はハロウィンのお祭りなんだから… ![]() はい、ということで、甘い、あっま〜いハロウィンです。 あますぎるんじゃぁ〜!!っと思ったことは内緒です。 今さら私一人が言ったところでどうしようもないし・・・。 あぁ〜、でもケペはいいねぇ。すごくいいねぇ。アホで!(笑) でも、今回けっこう・・・つ〜か、かなり多良葉がかわいいと思ってしまいました。 あははっ。末期になる日も近い・・・かな? それ以上にパテットが可愛いとか思っちゃったんだけど!! あぁ〜、末期だぁ〜(泣) |