「 赤ずきんちゃん」 昔あるところに、とっても料理の上手で、小さな人気者が住んでいました。 いつも被っている赤いずきんがとっても似合っていたことから、赤ずきん常盤と呼ばれていました。 さて常盤にはおばあさんがいたのですが、そのおばあさんの具合が良くないと言うのです。 夏の疲れが出たのか、食欲がまったくでなくなってしまったと聞けば、常盤は黙っていられません。 常盤は、今こそ料理の腕を振るうとき!と、おばあさんのおうちまで行って、食欲の湧くような、おいしい料理を作ってあげようと思い立ったのです。 「常盤…どうしても行くのか?」 ところが、常盤には、とっても心配性の新田お母さんがいました。 お母さんは、常盤が一人で森の真中にあるおばあさんの家まで行くと言うのが、心配でたまらないのです。 なら一緒に行きゃあいいじゃねーかとも思いますが、お母さんは昔、森でそれは恐ろしい目に会ったとかで、今でも、森に入ることが出来ないのです。 いわゆるトラウマです。 「ああ〜〜心配だ〜心配だよーーー!!!」 その上近頃森に出ると言うオオカミの事を考えたら、とてもじゃないけど、平静でなんていられません。 ただのオオカミならこんなに取り乱したりなんかしないでしょう。 しかし。 相手はあの、史上最強空前絶後、悪魔でさえも道を譲ると言われている、氷の頭脳を持つ女、城島草野児童会長様オオカミなのです!!!! これは冷静でいろと言うほうが無茶です。(特に新田) 「ったく、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。オオカミさんだって、そんな無茶はしないですよ。お母さん相手じゃない限り。」 至極めんどくさそーに常盤が言います。 そりゃ、「じゃ、行ってきます。」と言ってから一時間以上もこんなふうに足止めされれば、いいかげん口調も冷めようものです。 しかしそんな常盤の不機嫌オーラに気付くことも無く、ムエタイの戦士が試合前に捧げる踊りに似た動きを繰り返しながら、新田は「心配だ―心配だ―」と、その場でぐるぐると回りつづけます。 新田の頭の中では、オオカミと言うよりも、悪の大魔王のごとき会長の高笑いと、それに攫われた常盤の「助けて、おかあさ―ん!!」と言う声が渦巻いていたのです。 ぷちっ。 おや?今何か音が…と、次の瞬間、 ドゴッ!! ハイキック一閃、常盤のつま先が新田のこめかみにきれいに決まりました。 「・…聞いとんのですか、お母さん…?」 いや、聞いてません、聞けないでしょう。 お母さんたら白目を剥いて、もんどりうって倒れましたから。 「あーあ、やっとこれで出発できるよ。それこそ日が暮れるって―の!」 普段温厚な常盤もいいかげんキレていたらしく、ちょっとキャラ違くない?な口調ですっきりと言い放ちました。 そしてお母さんにくるりと背を向けて森に歩き出したそのときです。 「!?」 「待〜って〜〜〜〜」 その足首をがしっと掴む手。 「か、母さん!?(完全に落ちたと思ったのに!!)」 「行かせないぞ〜〜〜」 何の執念やら復活した新田母さんが、常盤の腰にしがみつきます。 「!?ちょ、離して下さいよ!!これじゃ話進まんでしょうが!!」 「だってだって、森は本当に危険なんだよう〜〜〜」 常盤は嫌そうに振りほどこうとしますが、涙目になった新田はなかなか離れません。 「あーーーもーーー誰かーーーー!!!!」 とうとう常盤が助けを呼びました。 すると… 「「いいかげんにさらせ、このド変態があ!!!!!!」」 突如二人の美少女が、その肘を上空から全体重をかけて新田の背中にプレゼントしました。 「新田…あんたちゃんと台本読んだ訳?」 額の青筋すら美しい林檎舞台監督が、般若の形相で言います。 「新田…お前は私の出番まで潰す気か?」 対照的に、オオカミ耳を着けた会長は、いっそ朗らかとも言える声でいいました。 しかしその背後に、悪霊や異形の者達が三体くらい見えそうな黒い笑顔ではありましたが。 「あんた、ちょっと調子に乗りすぎたんじゃない?」 「それじゃあお仕置きが必要だな?」 「ま、待って、ちゃ、ちゃんとやりますやらせて下さい!!お願いします!!」 「「もう遅いんだよ」」 「先輩方―がんばってくださーい。」 「そんなー常盤まで〜〜〜!!うわああああああああーーーー!!!!!!」 ――――森に新田の悲鳴が響きました。 さて、今回一番不幸だったのは、いうまでも無く新田かと思いきや、 「…いつになったら赤ずきんちゃん来てくれるのかなあ?」 と、小首をかしげる遥おばあちゃんだったのかもしれません。 そして今回一番ラッキーだったのは… 「良かった…話が進まなくて、本っ当―に、良かった…」 会長オオカミを撃つという役割に心底怯えていた貴行猟師でしょうね、やっぱり。 ちゃんちゃん♪ 赤ずきんちゃん〜お母さんは心配性〜 完 |
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