してぃおぶメルヒェン劇場3

「 赤ずきんちゃん」



昔あるところに、男の子だか女の子だか、とりあえず可愛い明るい人気者がいました。
 お気に入りでいつもしている赤いずきんがとてもよく似合っていたことから、赤ずきん遥ちゃんと呼ばれていました。
 ところで、遥には一人暮らしのおばあちゃんがいたのですが、そのおばあちゃんの具合が良くないと言うことで、遥は一人でお見舞いに行くことにしました。


「ねーお母さーん、こっちのスカートと、こっちのキュロット、どっちが可愛いと思う?」
 高々おばあちゃんのお見舞いなのに、遥は余念がありません。
 だって、いつだって可愛い格好でいたいからです。
「…とりあえず、スカートはやめなさい。」
 お母さんのセシアママはなんだか痛むこめかみを解しながら、ため息混じりに言いました。
「ふむ、そうだね、遥君にだったらその赤いキュロットのほうが似合うんじゃないかな?赤いずきんとの取り合わせとしても、そのほうが美しい!!」
 お父さんのしおんパパは、最後のほうはどっか遠くを見つめながら熱く言いました。
「はーい、じゃあキュロットにするね!」
「はいはい、とっとと着替えてらっしゃい・・・。」
 セシアママは疲れたように答えました。と、次の瞬間射るような視線を客席に向け、
「誰だ!!年齢的に微妙に合ってて生々しいとか言った奴は!!…よーし、顔は覚えた。後で待ってなさいよ?月のある晩も無い晩もね…くくく。」
…それはそれは、凄惨な微笑でありました。
「やれやれ、セシア君。確かにその表情も美しくはあるけれど、子供たちが泣き出してしまうからね。子供には、その美はまだ理解できないのだろう。」
 しおんパパは、そういって肩をすくめます。
「うっさいわね!大体あたしはこんなもんに出たくは無かったのよ!なんで教師まで出なきゃならないわけ!?」
「いいじゃないか、仲良きことは美しきかな!助け合い埼玉と言う言葉を知っているだろう?禄だっておばあさんとして出ているんだから、僕らも協力しようじゃないか!はははは!!」
 しおんパパは朗らかにそう言い、客席に向かってベストポジションを取る。
…もちろん角度は斜め45度だ。
 そして、客席の向こうに居るファンたちに向かって、「いつもありがとう!」などと答えて見せる。
 その姿を見て、セシアママは今日一番大きなため息を吐いた。
「…ここにも、バカが一人…。」


「いーい、道は分かってるわよね?基本的に一本道だから迷わないとは思うけど。」
「いいかい、寄り道や道草をしてはいけないからね、帰りが遅くなってしまう。」
 パパとママが交互に注意をします。
「はーい。大丈夫ですよー、そんなに心配しなくてもー。」
と、ここまでは遥もにこにこ聞いていたのですが…。
「それから、最近森にはオオカミが出るらしいから、そこも気をつけるのよ。」
 というママの言葉を聞いた途端、その笑顔が凍りついてしまいました。
「・…え?」
 ギギギ、という音がしそうな感じにママの顔を見る遥の顔は、心なしか青くなっています。
「だから、オオカミが出るのよ。最近。」
「おおおオオカミって、あの、茶色くて大きくて、お肉大好きで、でっかいお耳で、牙があって、がおーってする、あのオオカミ?」
「「そのオオカミ。」」
「ふえ、ふええええん!!怖いよー!遥、やっぱ行かない―!!」
 遥は大きな目から、涙をこぼしました。
「何言っての。そうそうオオカミになんか遭いやしないわよ!!大丈夫だからさっさと行って来なさいよ!!」
 ママは何の根拠も無い慰めを言って遥の背中をぐいぐいと押します。
「ほんと?ほんとに出ない?」
 遥は鼻をぐすぐすいわせて渋ります。
「出ない出ない。あーもー全然でない!」
 とっとと自分の出番を終わらせたいママは適当に言い募ります。
「…分かった。じゃあ、いってきます…。」
 遥はようやくとぼとぼと森に向かって歩き出しました。


「…良かったのかい?あんなふうに送り出して。」
「しょうがないでしょ、あの子が行かなかったら、話進まないし。それに…。」
「それに?」
「オオカミはあいつだし。まず心配は無いかなって。」
「はは、それもそうだね。じゃあ僕らはもう出番が無いから、これからお茶でもどうかな?」
「………そおね。」
と、両親は肩の荷が下りたとでも言うように、家の中に入っていきました。
 ただ、後から入るパパがふと振り返り、
 (グッドラック、遥君)
と、親指を立てたのに、客席以外は気がつきませんでした。


 遥は、森の中をとぼとぼと歩いていました。
 普段は気にならない鳥の鳴き声や、木々を揺らす風、茂みの影も、怖くて怖くてたまりません。
 いまにもオオカミがその大きな口を開けて襲い掛かってくるのではないかと、遥は心配しているのです。
「うう、やっぱり怖いようう・・・。」
 それでも遥は自分を待っているであろうおばあちゃんのことを思って、森を進んでいきます。
と、そのときです!!
ガサガサ!!
「!!!??」
 ビクリッと振り返った遥の目に、茶色くて、大きくて、…こわーい、オオカミが居たのです!!
「き、きゃーーーーーー!!!!!!!」
 遥は飛び上がると、一目散にそこから逃げ出したのです。
 オオカミが、言った一言も聞かずに…


「はあ―…」
 時間は少し戻ります。
 この森に住む、貴行オオカミは、深いため息をつきました。
「一人ぼっち、だなあ…。」
 そう、生まれてこの方、貴行は一人ぼっちで暮らしてきたのです。
 ちなみに言うのなら、今まで貴行は人なんか食べたことがありません。
 血を見るのが苦手だからです。
 オオカミの風上にも置けません。
 だから、オオカミ仲間からもハブ。
 そんなことは知らない他の人からすれば、貴行だってオオカミ、近寄ってくるわけがありません。
 おまけににょきにょきと伸びた身長は、余計に恐ろしさをかもし出すらしく…。
 でも、貴行だって、努力はしたのです!
 森であった人に話し掛けて、自分は怖くないと分かってもらおうとしました。
 でも、みんなみんな、貴行を見た途端、逃げ出してしまうのです。
 でも、こんなことじゃいけない!今日こそはなんとしても友達を作るんだ!
 そう握りこぶしを作った貴行の目に、一人の可愛い、優しそうな子が映りました。
 その子は赤いずきんがとても似合っていて、新田オオカミに見つかりでもしたら、大変なことになりそうな子でした。
 だから、貴行は何か考える前に、とりあえず飛び出していたのです。
「あの!」
 でも、その子は貴行が続けようとした言葉を振り切って、一目散に走っていってしまいました。
「ああ…やっぱり、か。そうだよね…あれ?」
 またも落ち込みそうになった貴行は、うつむいた拍子に、地面に何かが落ちているのを見つけました。
 そして、それを拾い、しばし何か考えると…
 ダッ!と、その子の後を追いかけました。


 怖いよう怖いよう!!
 遥は必死で走っていきます。
 後ろから、オオカミが追いかけてくるからです。
 でも、遥はまだ小さくて、こんなに走ったのは初めてです。
 息が上がって、足ががくがくします。
 もうだめだ、走れない!遥、ここで食べられちゃうんだ!!
 真後ろまで迫った足音に、遥はぎゅっと目をつぶりました。


「待って!あの、怖がらなくていいから!落し物を届に来ただけだから!」
 思いもかけない言葉に驚き、オオカミが差し出した手のひらを見ると、そこには、白い貝殻の小さなイヤリングが乗っかっていました。
 それは確かに遥のもので、お友達の桃ちゃんとおそろいの、大のお気に入りです。
「うわあ、ありがとう!!」
 遥は、驚きと安心に、満面の笑顔を浮かべオオカミを見上げました。
「ッ…!!」
 笑顔の直撃を受けたオオカミは、赤面しそうになるのをこらえるのにいっぱいいっぱいでした。
 何しろ、そんなふうに微笑まれたことも、御礼を言われたこともなかったのですから。
と同時に、この子なら…!!という思いが急浮上して、ついその言葉を口にしました。
「あの!あのね、突然なんだけど、お友達になってくれない?ぼ、僕、人を食べたりしないし!タンパク質は大豆からとってるし、今は栄養サプリメントとかも色々あるし!だから、そーゆー心配はしなくて平気だよ!?…あ、嫌・…かな、?や、ヤダよね、やっぱ。僕なんか何言ったってオオカミだし、そのくせキャラボイスだし…。」
 勢い込んで言ったくせに、言っているうちにいつもの消極虫が顔を出し、しまいには関係の無いことまで持ち出して落ち込んだオオカミの耳と尻尾が、しゅん、と音がしそうなほどに急に垂れたのを見て、遥はとうとう我慢できずに吹き出しました。
「あはは、おかしい!なんだ、オオカミさんて、思ったより怖くないんだね?」
 それを聞いて慌てたのはオオカミのほうです。
 そんな調子で他のオオカミに近づこうものなら、まず間違いなくただではすみません。
 しかもそれは、誤った認識を与えた自分のせいなのです。
 オオカミといえどそれぞれで、そこをこの子は分かっていないのです。
 ここは自分が知識の強制をおこなわなければ!
「だだだだだダメ!オオカミは怖いんだよ!?食べられちゃうよ!」
「さっき食べないって言った!オオカミさんうそつき?遥のこと、食べちゃう?」
「え、いや、僕は食べないよ?だから、そうじゃなくて、一般的なオオカミというのはね、その、オオカミにも色んなのがいて(高笑いする会長オオカミと目を光らせてカメラを構える新田オオカミを思い浮かべてください。)僕はちょっと特殊って言うか、平和主義って言うか、そのね、」
「えーと、それって、オオカミさん以外のオオカミさんには近づいちゃダメって事?お友達になるなら、近づかなきゃだもんね?あ!そうだ!あのね、お友達になってあげるから、他のオオカミさんに会ったときに、遥、大声でオオカミさん呼ぶから、助けに来てね?」
「え、それって…あの、お友達に、なってくれるの…?あ、た、助けるよ!いつだって、どこにいたって駆けつけるから!だから、その、」
「うん!今から遥とオオカミさん、お友達!じゃあね、約束ね?ゆーびきった!」
 遥はオオカミと小指を絡めたまま、ずいぶんと上のほうにあるオオカミの顔を見上げ、にこっと笑うと、言いました。
「じゃ、落し物のお礼ね?一緒に踊ろうよ!」
 そして、楽しげにくるくると踊りだしました。
 オオカミは急展開に目を白黒させましたが、楽しそうに踊る初めての友達を見ていると、とっても嬉しい気持ちが起こって、自分まで楽しい気持ちになっているのに気が付きました。
 そして、ぎこちないながら一緒に回り始めたオオカミと遥は、ニコニコしながら疲れるまで踊りつづけたのでした。


…ところで、遥ちゃん何か忘れてなあい?

 そのころ、すっかり待ちくたびれた禄おばあさんと杏猟師は、草加煎餅でお茶をしていました。
こちらは、最近のゴミ事情について語り合っていました。
 どうやら、遥ちゃんののんびりは、おばあちゃん似だったようですね!


「ねえ、これ、何の話だっけ?」
 心底あきれたようにお母さんは言いました。
「赤ずきんのはずだが?」
 お父さんは優雅に紅茶のカップを傾けつつ返します。
「…よね。こーゆー話だっけ?」
「ずばり、相田君は、森の熊さんと泣いた赤鬼と赤ずきんをまとめて覚えていたようだね?そこが敗因といったところだろう。」
「というよりも、メインの二人が天然だったのが一番の間違いなのよ!」
「ははは、いいじゃないか。美しくまとまったことだし!僕はこちらのほうが好きだよ。」
 そういって紅茶を飲み干すと、ファン悩殺ものの笑顔でお母さんに手を差し伸べました。
「さ、僕たちも踊ろうじゃないか!これぞ大団円さ!」
「一人でやってろー――――――!!!!!」


・…喧嘩するほど仲がいい、と申しますし、仲良し同士で、今日も森は平和です。
ちゃんちゃん♪


メルヒェンメルヒェン劇場
赤ずきんちゃん〜愛は世界を救う〜


完!!


星・ぽえむ献上の赤ずきんネタ第三弾!
個人的に一番痛かった作品。・・・愛ってなんですか?
たかハル(貴行×遥の略)なんですか?
っつ〜か、お前らどこのバカップルだよ!!
恥ずかしいんじゃボケ〜!!


back top next