「 赤ずきんちゃん」 昔々あるところに可愛くてとってもしっかり者の人気者がおりました。 そのしっかりぶりといえば、ミッターマイヤーさん(アルプスの少女ハイジのクララの家のメイド頭)のもとで働いたとしても、お気に入りになるどころか自信喪失させてしまうような勢いのしっかりものなのでした。 そして、自分手作りの赤いずきんがとっても似合っていたため赤ずきん椎奈と呼ばれておりました。 ところで、椎奈にはおばあさんが一人いたのですが、そのおばあさんの具合がよくないということで、椎奈は1人で森の真中にあるおばあさんのお家まで、お見舞いに行くことにしました。 「えっと、おばあさんの好きなワインは持ったし・・・。そうそう、お母さん。僕がいないときは火の始末に気をつけてくださいね。戸締りもしっかりしてください。あとめんどくさいからって、ご飯手抜きしちゃダメですからね!」 「は、はい!分かりました!」 お母さんの禄ママはなんだか背筋を伸ばして答えました。 「あと、最近この森のあたりに立ちの悪いオオカミがでるそうなんで・・・まあ、心配ないと思うけど、森には入らないようにしてくださいね。猟師さんが回ってくれているから、大丈夫だとは思うんですけどね。」 「う、うん。椎奈こそ気をつけてよね。それと、それは僕の台詞・・・」 すっかり立場なしのママは一応正当な主張をしたのですが、その語尾はどんどん小さなものになりました。 「じゃ、いってきますね。くれぐれもお願いしますね。」 「はーい。いってらっしゃーい。」 なんだか逆転親子の2人、おそらく精神年齢は同じぐらいでは?と周りの人から言われているのは、内緒内緒・・・。 さてそのころ、椎奈からたちが悪いとの烙印を押されているとは露知らず、でもぶっちゃけ性悪な(自称)実のところ悪ぶっているだけ(幼馴染談)の怜オオカミは口笛を吹きつつぷらっぷらっ歩いておりました。 「あー、天気いいなぁ。こんな日はほら吹くのにかぎるよなぁ、どっかにだまし易いガキいねぇかなぁ。」 などと、のどかな日常を謳歌しておりました。 いっそパテ(だましやすい)のとこでも行くかなぁなどと考えていたとき、怜の耳に足音が聞こえてきました。 「・・・これは、子供の足音だなぁ・・・よし、こいつにきーめた」 とニヤリと悪そうな顔を浮かべると、足音を忍ばせてそちらに向いました。 そして、よさげな木の陰に隠れるとこっそりとその子を確認するため覗き見ました。 「うげっ、椎奈かよ!?」 怜はうめきました。 なぜなら、しっかりものの椎奈は今まで一度もオオカミのほらに騙された事がないのです。しかし! ここで引いては男の名折れ! 男ならやってやれだ!と怜は椎奈に呼びかけました。 「そこの道行く赤ずきんちゃん、こんなオオカミのでる森を1人で何処に行こうっていうんだい。」 猫なで声に、椎奈が不信げに立ち止まります。 「・・・どなたですか?そちらこそ、なにをしてらっしゃるんですか?」 慎重な椎奈の物言いに舌打ちしそうになるのをこらえて、怜は続けます。 「おや、失礼。わたしはただのきこりだよ。で、赤ずきんちゃんは何をしているんだい?」 「・・・ちょっと、御見舞いに行くところです。」 「ほうそうかい、偉いねぇ。おや?でも、花束を持っていないじゃないか?お見舞いといえば花束がつきものじゃないか?そうだ!ここから少し東に行くと花畑があって今ちょうど盛りだから、それを摘んでいくといいよ。」 「お気持ちはありがたいのですが、寄り道はしないように母から申し付かっておりますので、それは出来ないのです。ご親切にどうもありがとうございました。では急ぎますので、これで失礼いたします。きこりさんもどうぞ、お気をつけてくださいね。」 その言葉遣い!ものごし!気遣い!すべて完璧でぐうの音もでません。 怜は地団太踏んで悔しがりました。 しかし!いかに椎奈が素晴らしい対応をしようとここで引くわけには行かないのです。 ここで引こうものなら、とある同僚にへたれよばわれされるのが、目に見えているとかではなく。 もちろんそれも大有りなのですが、なにより、オオカミのプライドにかかわるってもんなんですよ!とにかく! 考えた怜はすべてを可能にするマジックアイテムを取り出しました。そして、 「椎奈、椎奈!」 とそれを椎奈に向けてちらつかせます。 「そっ、それは・・・!!そうですね、お見舞いには花ですよね。急いでつんでいけば、大丈夫ですよね。はぁ(ため息)東ですね、ちょっと行ってみましょう・・・。」 椎奈はしっかり者ですから、それゆえちらりと目にした台本から逸脱する行為は慎むことにしたのでありましょう。 ここはオオカミの作戦勝ちというか、椎奈の温情というか・・・。 とにかく、椎奈は花畑へ向いました。 でも椎奈のことです。 急いで花を摘んで戻ってくることでしょう。 オオカミはダッシュでおばあさんの家に向いました。 これからは時間との勝負なのです。 「やっぱり遅くなっちゃった・・・意外に花畑遠かったし、おばあちゃん待ち疲れちゃったかなぁ・・・?」 さして遅くなったわけでもないのに、几帳面な椎奈は小走りでおばあちゃんの家に急ぎます。 そして・・・ 「おばあちゃん、遅くなってごめんなさい!ワインとお花もってきました!」 意気込んで家に飛び込んだ椎奈の見たものは―――――― 「しくしくしくしく・・・」 「あら、ワイン?やっぱりオオカミステーキには赤ワインよね。当然赤を持ってきてくれたんでしょ?」 天井からロープでぐるぐる巻かれ、逆さまに吊るされたオオカミと、包丁を研ぎながら、にっこりと微笑んで振り向いたセイカおばあさんの姿でした・・・。 「ちょっと相田?だ!れ!が!おばあさんなのかしらぁ?」 ひぃぃぃーーーすいませんーーー!!だ、だって台本に書いてあるんですよぉーーー!! 「くくく・・・小学生からしたらセイカはおば・・・」 「怜鼻そがれたい?」 「申し訳ございませんでした。(即答)」 「止めてください!舞台に血を流さないでくださいーーー!!セイカ・・・お姉さん。」 「あら、椎奈はいいこねぇ(ハート)じゃ、椎奈はお仕置きリストから外してあげるわ(ハート)」 「「裏切り者ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」」 森にダブルの悲鳴が響いたということです。 ちゃんちゃん♪ 赤ずきんちゃん〜嵐を呼ぶ祖母〜 完 |
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