うちのお父さんとお母さんはとってもなかよし。 いつもなまえでよびあって、くすくすたのしそうにわらってるの。 そんなお父さんとお母さんがだいすき。 だからきっと大きくなったら、桃もお父さんとお母さんみたいになるの。 「うわ〜、きれ〜!」 キラキラ光る指輪。会社の部下の結婚式に出るお母さんがいつもと違う指輪をしてたのを桃子は見逃さなかった。小さくても女の子。特に桃子は綺麗なものやかわいいものが大好きなのだ。 「これはね、特別なときにしか着けないの。昔、お父さんがくれた指輪なのよ。」 そんな桃子に良く見えるように、お母さんはしゃがんで手を差し出してくれた。お母さんの細くて長い指に、その指輪はとってもよく似合っていた。 「お父さんがね、プロポーズの時にくれた指輪なの。エンゲージリング。だから特別なときにしか着けないのよ。」 そう言ってくすぐったそうに笑うお母さんはとっても嬉しそうで、桃子はその指輪がうらやましくなった。 「桃もえんげーじりんぐほしい〜。」 「まだ桃ちゃんには早いかな。でもきっといつか桃ちゃんもエンゲージリングをくれる人に会えるから。それまで待ってようね。」 「辰子さーん、タクシー来たよー。」 「はーい。じゃあね、桃ちゃん。いい子にしててね。お待たせ、幸ちゃん。行きましょ。」 そうしてお父さんとお母さんは一緒に結婚式に行ってしまった。 「ねえ、どうすればえんげーじりんぐもらえるの?」 お掃除をしていたお兄ちゃんは、唐突な妹の質問に記憶を探った。 「エンゲージリング?それって結婚の約束をした時にあげるやつだと思うけど。」 「けっこんのやくそくすればもらえるの?」 「いや、そうとはかぎらないけど・・・。って、桃ちゃん、どこいくのー!?」 「はるかちゃんちー!」 一番のお友達の遙ちゃんは、お家でお母さんとお茶を飲んでいた。要お母さんが桃子の分のお茶とお菓子(市販品)を持ってきてくれる。 「はるかちゃん、えんげーじりんぐって知ってる?」 「けっこんのときにこうかんするやつでしょ?」 「まあ、それはマリッジリングですわ。エンゲージリングは婚約の印ですのよ。」 要お母さんは結婚の約束をするときに男の人が女の人に送る指輪のことだと教えてくれた。ついでに自分がプロポーズされたときの話もしてくれた。 「―――と、いうわけなんですの〜。」 「すごーい。お父さんかっこい〜。」 乙女母によってかなり脚色された結婚秘話に、夢見がちな子供は見事触発された。 「桃もえんげーじりんぐほしい〜っ!」 「でも桃ちゃん、エンゲージリングはけっこんする人じゃないともらえないんだよ?」 「桃ておさんとけっこんするもん!」 「そっか〜、じゃあておさんにたのんでみようか。」 「うん。はるかちゃん、いっしょにいこ。」 「いいよ。お母さん、ておさんのとこに行ってきますね。」 「まあ、帝王さんの所へ?でしたら昨日作ったクッキーを持っていってくださいな。」 「「あわわわわ・・・・・・。」」 要お母さんの手作りクッキーを持って、桃子と遙は撰各亭に向かった。開店休業がモットーの(それでいいのか?)撰各亭に決まった定休日はなく、日々店主(代理)の気紛れによって営業されている。 その日も案の定、店主(代理)は店の奥の和室にいた。 「「てーおーさ〜〜ん!」」 二人の顔を見ると、帝王はあからさまに迷惑そうな顔をした。そしてそれは、遙の持っている包みを見た瞬間、迷惑以外の何ものでもない顔に変わった。 「ぼん・・・、この前土産はもうええって言わんかったんか?」 「言ったんですけど〜、お母さんが持ってきなさいって・・・。」 「・・・まあ、持って来てもーたもんはしゃーないけど、今度はちゃんと言えや?気ぃ使わんで結構ですって。そんでもって、食うの手伝え。」 「はーい・・・。」 どうやら帝王はたびたび要・ポープ手作りの贈り物を貰っているらしい。そしてそれを律儀に食べているらしい。何という誠意。そして丈夫な胃。 今日は珍しく昼寝をしていなかった帝王は、座敷一面に細々としたものを広げていた。鏡台とそれとセットになった櫛やら手鏡の他に、簪や髪飾りといったものが所狭しと並べてある。遙は嬉々としてそれを手に取って見始めた。 「気ぃつけて触れや。壊したら承知せんで。」 遙にはよく分らないもの、根付や紙入などもあり、どれも綺麗な錦や、金銀の装飾が付いていた。 いつもならこういうものがあると、二人して夢中になって遊ぶのだが、今日の桃子は見向きもせずに、店に入ってからじっと帝王を見ていた。やっとそれに気付いた帝王が不思議そうに桃子の顔を覗き込む。 「どうした嬢ちゃん。具合でも悪いんか?」 「ておさん、桃にえんげーじりんぐちょーだーい?」 「はあ?」 「桃えんげーじりんぐほしいのーっ。」 「エンゲージリングって、・・・エンゲージリングかぁ?」 「そう!お母さんみたいなやつがほしいの〜!」 「無理。」(即答) 「なんで〜〜!?」 「エンゲージリングって婚約したときにやるもんやんか。」 「だって桃ておさんとけっこんするもん。」 「あー・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理!」 「えーっ!なんでなんで〜!!」 「・・・っと、嬢ちゃんまだ十くらいやろ?16にならんと結婚できへんやんか〜。」 「でもえんげーじりんぐほしいの〜っ!」 「まだ早いて。嬢ちゃんが大きゅうなったら、仰山くれる奴おるさかい、それまで我慢しいや。」 「いまほしいのに〜・・・。」 「今日はホンマに忙しいんや。悪いけどもう帰りぃ。あ、クッキーの礼ゆうといてな。」 「「はーい。」」 いつものように返事は重なっていたけど、桃子の声が沈んでいるのははっきり分った。押しが強いわりに、礼儀正しい子供たちは、本当に引かねばならないところを分っているらしく、仕事をしているときなどは邪魔にならないように大人しくしている。今日も簡単に引き下がった。 しょんぼりとしている桃子の手を遙が引いていく。 「しゃあないやんか・・・。」 かわいそうだと思ったが、いくらなんでもそれは叶えてやれないだろう。オモチャを与えて誤魔化されるほどガキではないだろうし、そんな風に適当に誤魔化すのが気が引けるくらいには、あの子供たちを気に入っていたので。 「まあ、そのうち飽きるやろ。」 子供というのは気紛れなものだ。そのときは他が目に入らないくらい夢中になっても、時が過ぎればすぐに飽きて忘れてしまう。自分にかまうのもそれと同じ事だ。そのうち他のものに興味をもてば、ここへ来ることもなくなるだろう。中学にでも上がれば、学校生活が忙しくなって子供の頃のことなど忘れてしまう。少し淋しい気もするが、遅かれ早かれそうなる日が来ることは間違いない。 子供たちのことは頭から追い払い、帝王は仕事に集中した。 肩を落として帰ってきた妹を見てお兄ちゃんは非常に心配した。お隣の遙ちゃんと喧嘩でもしたんだろうか。それとも誰かにいじめられたんだろうか。何にせよ事は重大だ。なにしろ、桃子が大好物の苺たっぷりの兄特製ショートケーキをいらないと言ったのだから。 とにかく何があったのか聞き出さねば。錦木家の頼れるお兄ちゃんは、妹の好きなミルクティーを差し出しながら、さり気なく尋ねてみた。 「桃ちゃん、何かあったの?」 「・・・けっこんって16さいにならないとできないの?」 「え?そうだね、女の人は16才以上じゃないと結婚できないね。」 「そうなんだー・・・。」 「桃ちゃん?」 妹は相変わらず沈んだまま、夕食を食べずに寝てしまった。その夜遅く、ほどよく酔って帰ってきた両親に話すのはためらわれた。もう少し、はっきりしてからにしよう。 まったく、出来たお兄ちゃんである。 その次の日曜日、桃子はお母さんと一緒にすこし遠くまで(きっとK越かI袋(笑))買い物に出かけた。最近元気のない桃子を心配した両親と長男の協議の結果、桃子の好きなもの――かわいいお洋服――で元気を出してもらい、その理由を探り出すのが目的だ。 ○川周辺にはないお気に入りの店に来た桃子はしっかりはしゃいでいた。冬に向けて新作のかわいいコートや帽子がたくさんあって、とてもじっとしていられない。 そんな様子を見て、辰子お母さんはほっと一安心した。この分ならたいしたことはなさそうだ。子供のことだから大した事ではないと思いつつも、いつも元気な桃子がここ数日沈んでいる様だったのでやっぱり気になっていたのだ。桃子は買ったばかりの服を抱えて、嬉しそうに歩いている。 「そろそろ帰ろうか。お父さんが晩御飯用意してくれてるはずだから。」 「うん!」 そうして向かった日曜の夕方の駅はとても混んでいた。人がたくさん歩いていて、桃子は人込みに埋もれながら、一生懸命お母さんの後を歩いた。ふと、前から歩いてくる人の中に帝王がいた気がして、桃子は思わず立ち止まった。気のせいかと思って背伸びをして一生懸命人波の向こうを見ると、やっぱり帝王がいる。頭ひとつ周囲から飛び出ていた。 偶然遭えた嬉しさに、桃子はこの前のことをすっかり忘れて走り寄った。寄ろうと、した。流れに逆らって少しずつ近付くうちに、帝王が一人じゃないことに気付いた。知らない女の人が、帝王の腕に手を添えながら、寄り添って歩いている。桃子の目線はちょうど女の人の手の高さと同じくらいで、その指にはまっている指輪がよく見えた。 立ち止まってそれを見つめる桃子に気付かず、帝王と女の人はどこかへ行ってしまった。 『えんげーじりんぐだ。きっとておさんはあの人とけっこんするんだ。』 「桃ちゃん!?」 「うっ、うえ〜〜〜。」 いつの間にかいなくなってしまった娘を見つけた辰子お母さんは急いで駆け寄った。すぐ後ろを歩いていると思ったのに、気付けばずいぶん離れたところに立っていた娘は、母親の顔を見るなり泣き出した。 「はぐれちゃったの?もう大丈夫よ。さ、手をつないで帰りましょう。」 結局桃子は泣き止んでもさらに深く落ち込んだままで、帰ってすぐ部屋に閉じ篭ってしまい、せっかく桃子の好きなものばかり作った幸太郎お父さんの食事は無駄になってしまった。 「どうしよう幸ちゃん、逆効果だったみたい。」 「辰子さんのせいじゃないよ。別の方法を考えよう。」 「さいきん桃ちゃん変なんです。」 「・・・・・・そうかい。」 夕方の撰各亭、店主から送られてきた仕入れ品の手入れをする帝王の元を、久しぶりに遙が訪れた。 「この前いっしょにここに来てから。」 「・・・・・・・・・。」 「ずーっと元気がないんです。」 「・・・・・・・・・。」 「ておさ〜ん?」 「どないせぇちゅーんじゃあ!!!」 磨いていた陶器の置物と布巾を座布団の上に(あくまで丁寧に)投げ出した帝王が叫んだ。 「なんとかしてくださいよ〜。」 「なんとかってどんなやねん!?」 「そんなの知りませんよ〜。でもておさんならなんとかできるはずですから〜。」 「なんとかってなんやねん。おいコラ、待たんかーい!」 言いたいことを言ってしまうと、遙は手土産を置いて帰ってしまった。 「あのガキ・・・。」 今日のレシピはシュークリーム(以外のなにものでもないように見えたもの)だった。 次の日、なんだかんだで人がいいと言われてしまう帝王は、○川学園まで出向いた。初等部はそろそろ終る時間のはずだ。校門付近で待っていようかと思ったが、自分の外見的特長を考え止めにした。通報されたら洒落にならない。 「邪魔すんで〜。」 「うおっ、どっから湧いてきやがった!?」 とりあえずどこにいるのか分らない奴より、居場所の確定している奴の方がマシと思い、保健室へと(庭に面したガラス戸から)直行する。中で机に向かって何かしていた保健医は分りやすいリアクションで驚いた。それはこの際無視する。 「静紗亜んトコの授業は何時に終るんや?」 「無視かよ。なんでえ、静紗亜に会いに来たのかよ〜。やだねまったく。どいつもこいつも・・・。」 「ええから教えんかい。」 「ん〜、三年だろ。あと10分ちょいだな。静紗亜は帰りの会短いし。」 「教室どのへんや?」 「2階だけど。って、まさか行くのか?」 「いんや、行くんはジブンや。」 そう言うと帝王は机の上のわら半紙とペンを勝手に使って、メモのようなものを書いた。それを折って糊付けし、怜に手渡す。 「頼んだで。」 「ちょっと待てー!なんで俺がそんなことしなきゃなんねーんだよ。」 「先月ジブンら送ってやったとき、あのせいで洗車代幾らかかったと思うとんのや?」 「じゃ、ちょっと待ってろよ。す〜ぐ行ってくっからよ。」 「ちゃんと静紗亜からの返事も貰うて来るんやで。」 「あー、ハイハイ!ちきしょー!」 荒々しく扉を閉めて出て行く怜を見送りながら、とりあえず会うことは出来そうだと思った。どうにかしてと言われても自分は「モモちゃん」の住所も電話番号も知らないのだ。本名すら。向こうから来てくれない限り連絡の取りようもない。その辺を分ってないのか、「ハルカちゃん」は言いたい放題でとっとと帰ってしまうし、かといって待っていたところで「モモちゃん」の方から顔を出す可能性は低いだろう。というわけで唯一の接点、二人の担任の静紗亜を使うことを思いついた訳なのだが。 「おーい、『和泉』だってよ。何のことだ?」 「わーった。スマンな。ホンマ助かったわ。」 「な、なんだよ急に。気味わりーな。大体お前さん何しに来たんだ?」 「あん?内緒や。」 「なんだよー。気になるだろー。教えろよー。」 教えろと連呼する怜をあしらっているうちに、静紗亜が現れた。 「理科準備室にいるわよ。」 「おう、サンキュ。」 「あんた一体どういうつもりなわけ?」 「訳は聞くなってゆうたやろが。」 「犯罪者になるような真似しないでしょうね。」 「するか、ボケ!」 「なんだよー。なんの話だよー。」 理科準備室とやらの場所を聞いて向かう。と、その前に。 「盗み聞きしようとか考えんなよ。んなことしたら『和泉』もなしやからな。」 相手がその気になったらまったく無駄とは知りつつ、一応釘を刺しておいた。 静紗亜お勧めのルートはさすがに人気が少なかった。とはいえ、何人かの生徒とすれ違い、飾らない好奇の目で遠慮なく見られた。何でこんなことしてるのやら。普段なら昼寝の時間なのに。 理科準備室は思っていたより狭かった。まあ、小学校の準備室ならこんなものなのかもしれない。部屋の奥のパイプ椅子に「モモちゃん」が座っていた。「モモちゃん」は人の顔を見るなり慌てて逃げ出した。とは言え、理科室に繋がる扉には鍵がかかっていたらしく、もう一つの出口は現在ふさがれている。逃げ場はなかった。それでも諦めずに狭い部屋の中をちょろちょろ逃げ回るので、しかたなく襟首を掴んで引き止め、元の椅子に座らせた。自分も近くにあった椅子(たぶん静紗亜のだろう)を引き寄せ、「モモちゃん」と向かい合って座る。とりあえず話が出来そうな状態にはなった。 帰りの会の後、静紗亜先生に呼ばれて理科準備室に連れて行かれた。用があるから待っていなさいって言われて、待っていたら、来たのは静紗亜先生じゃなくて帝王さんだった。 びっくりして、なんでだろうって思ったけど、今は会いたくなかったから、急いで逃げようとした。でもドアに鍵が掛かってて、廊下の出入り口には帝王さんがいて出られなくって、しょうがないから部屋の中を走り回っていたんだけど、ひょいって引っ張られて、気が付いたら前に帝王さんが座ってた。でもどうしても帝王さんの顔が見られなかった。 「久しぶりやな。」 「モモちゃん」は頷いたものの、こっちを見ようとはしなかった。 「ぼんが心配しとったで?嬢ちゃんが元気ないゆうて。」 また頷くだけ。 「・・・なあ、わいなんかしたか?ぼんは嬢ちゃんの元気がないの、わいのせいみたいなこと言うとったけど、ホンマにそうなん?」 「モモちゃん」は何も言おうとしない。 「そうやったら、ゆうてくれんとわからんで?」 この前あったことといえば、『エンゲージリング』しか思い浮かばないが、思い返しても何も思いつかない。まさか指輪をくれてやるわけにもいくまい。自分ではあの対応で良かったと思っているのだが・・・。 「もしかして、まだエンゲージリングが欲しいんか?」 そういうと、「モモちゃん」は顔を上げた。びっくりするくらい真剣な顔をしている。 「ておさん、あの女の人とけっこんするの?」 「は?」 「ておさん、あの人にえんげーじりんぐあげたの?」 「ちょ、ちょお待て。女の人って何のことや?」 思わず焦った。きっと、子供の癖に変に真剣な顔で問い詰められたせいだ。多分そうだ。後ろめたいことなんかないぞ。 「にちようびの夕方女の人とあるいてたでしょ?」 「ああ、なんや。あれか。」 つい先日のことで、言われてすぐに思い出した。途端に「モモちゃん」が泣きそうな顔を・・・むしろ、もうすでに目に涙が溜まっている! 「やっぱり・・・・・・!」 「ちゃうちゃう!結婚なんてせえへん!エンゲージリングもあげてない!」 「ほんと?」 「ほ・ん・と・に!ハハオヤ以外の女に物送ったことなんぞないわい!」 「だってゆびわしてたもん。」 「そりゃ持ってるやろ?自分で買ったり、他の人から貰ったり。嬢ちゃんのおかんやっていくつか持っとるんやないか?」 「・・・あ。」 「なんでそんなことで・・・。」 とりあえず謎の誤解(誤り過ぎだ)は解けたらしい。頭が痛い。もしかするとこれは嫉妬になるんだろうか。いやいや、相手は小学生。きっとお気に入りのオモチャを盗られたような気になっていたんだろう。しかしこんな子供と女の入り混じったような妙な誤解を受けたのは初めてだ。・・・最後でいい。 「だって、ておさんえんげーじりんぐくれないんだもん。」 「モモちゃん」はめいっぱい頬を膨らませている。 「しゃあないやろ。嬢ちゃんはまだ子供なんやから。」 「じゃあ、16才になったらくれるの?」 「・・・・・・そんときになっても嬢ちゃんの気持ちが変わっとらんで、わいが結婚したいと思うようなイイ女になっとったらな。」 「うん!じゃあ、あと7年まっててね!!」 「ははっ、はははは・・・・・・。はぁ・・・。」 きっとその頃には高校生になっていて、新しい生活の中で、子供の頃のこんな約束なんて忘れているはずだ。だから少しくらい、これくらいなら言っても平気だろう。 「まあ、がんばれや。期待せんとまっとるさかい。」 「うん!」 あれよあれよと言う間に「モモちゃん」はすっかり元気になっていた。 「ところで嬢ちゃん、わい嬢ちゃんの名前、ちゃんと聞いたことないんやけど。」 「錦木桃子だよ〜!」 初めて会ってから約三ヶ月越しの自己紹介は笑顔とポーズ付きだった。 「辰子さん、何だか知らないうちに元気になっちゃったね。」 「まあ、いいじゃないの。元気になったんだから。」 「うん・・・。それはそうなんだけど、・・・「ておさん」って誰さ〜!?」 「桃ね〜、16才になったら〜、ておさんのおよめさんになるの〜!きゃー!」 そうして、錦木桃子は両親(特に父親)を本格的に悩ませ始めましたとさ。 そしてその日の夜。 「おいコラ、静紗亜。ちっとは遠慮せんかい!」 「奢りでしょー。あんまつべこべ言うと星華にばらすわよ。」 「別に星華は怖くない・・・って、怜!ゆうとくけどお前の分は払わんからな!」 「なんでだよ〜。俺だって協力したじゃんか〜。」 高級料亭『和泉』では、男女三人(正確には二人)のどんちゃん騒ぎが繰り広げられたという。 「それ何本目じゃー!ちっとはこっちの懐具合に気ぃ使えー!」 |
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