躍動する若い魂は美しい。 だから、その限りある瞬間を切り取っておきたいと思うのも、分からないでもない。 分かるよ、分かるけど… やりすぎには、ご注意です。 「大漁大漁!!今日はいい日だー」 そう爽やかにのたまったのは新田一である。 彼がにっこりと掲げたのはカメラ―――彼の愛機である。 「うふふー、桃ちゃん遥常磐―。一年生たちも可愛いしー」 それらは皆本日の戦利品、きっと、とてもよく撮れていることだろう。 さて、先ほど挙げられた名前からも分かるように、新田の嗜好はちょっと特殊だ。 彼は小さくて可愛い子だったら、男も女もお構いなし、節操なしな人間なのだ。 そんな可愛い下級生たちの姿を大漁にゲットし、新田はご機嫌だった。 しかし、それは余にもおおっぴら過ぎたのだ…。 「え〜ん、会長〜!!」 「桃子か、どうした?遥と常磐まで。」 「どうにかなりませんか、アレ」 「僕達、特にいっぱい撮られたんですぅ〜!」 「桃もういやーーー!!」 「しくじったな、競技に気をとられ過ぎたか…」 「いえ、こちらの本部からは見えないように巧妙に動いていました。」 「なるほど…どうやら私は喧嘩を売られたようだな。いーい度胸じゃないか…」 「…何の話だ?」 「ああ、学長はご存知なかったですか。まあ、今まで初等部の行事には殆どいらっしゃいませんでしたから?知らないのも無理ないと思いますけど?」 「お前な…まあいい。で?」 「6年生に危険人物がいるのです。新田一というのですが…。とにかく小さくて可愛い子が大好きで、事あるごとに写真を撮りまくってはコレクションしていると言う変態ぶり。奴にかかれば大半の下級生はターゲットなのです。再三注意はしているのですが…」 「新田…か、覚えておこう。どいつだ?」 「今お呼びします。常磐、そういうわけだから貴行に。」 「分かりました。呼び出し放送ですね。」 新田は息を切らしつつも、おそるおそる現れた。 「あのー、新田ですけど…」 「そうか、お前が新田か、覚えたぞ。」 声と視線の年季の入った凄みに体が硬直した。 (か、会長で慣れたと思ったのに…!この人、ただもんじゃない!!) 「新田、なぜここに呼ばれたか…分かっているな?」 にっこり、と会長に言われ、硬直は第二段階に突入した。 …全然慣れてないじゃん。 「さあ、「出してもらおうか」」 …いくら自分が悪いとはいえ、この二人に迫られて心に傷がつかない(多分、相当深い)人間がいるのでしょうか? (こここここ怖いよう〜〜〜〜!!)「は、はい…!!」 新田は泣く泣く(実際泣いて)ポケットから5,6本の使用済みフィルムを取り出した。 「本当はカメラも闇に帰したいところなんだが…」 「そんな!これだけは!!父ちゃんの爺ちゃんの形見のお祝いの!!」 「どうしてもダメか?」 「これだけは!!」 「そうか、ではお仕置きコースだな。」 嗚呼新田!!命よりカメラを取った男!! 「はう…!!」 「どうするつもりだ?」 「そうですね、次は棒倒しですから、新田にその棒になってもらうというのはどうでしょう?」 「それは…さすがにな。父兄の目もあるし。」 説明しよう!!棒倒しとは男子の行う競技で、2チームに分かれて相手の棒を先に倒した方が勝ちという、少々手荒な競技なのだ!!説明終わり!! 「…まあ、それもそうですね。」 「ほっ…」 助かったとばかりに息をつく新田。なんたってこの競技はガタイのいい男子中心に行われるので…。男の一番星部の卵たちがそろってるので…。 しかしほっとしたのもつかの間、 「では、棒倒しをする生徒たちの写真を撮ってもらうというのはどうでしょう?新田は写真が得意なようだから。」 「それはいいな。きっといい写真が取れるだろう。」 「引き受けてくれるな?な、新田?」 「ひ、ひぃぃぃぃ・・…」 棒倒しの選手たちはサービス精神旺盛!いい顔をしては撮影に協力してくれました。 それによる新田の精神的苦痛は…まあ、言うまでもないでしょう。 どっちがマシかと聞かれても、身体も心も大事だし。 でも、白い歯を見せてポージングする奴らなんて、私なら絶対撮りたくないね!!! 消えない傷も、たまにはある…。 輝きを集めながら、運動会は大詰めを迎える。 |
| back | top | next |