「篠田先生、トップで今ゴールイーン!!これで青組の優勝が決まりましたーーー!!!」 結局仕切りなおしとなった縦割りリレーは、またも同時に教師へとバトンが渡ったが、愉快な3人組が出なかったため、まっとうなレースとなり、サバイバルで鍛えている静紗亜がゴールテープを切った。 その瞬間青組からは歓声が上がり、他の組からは落胆のため息が漏れた。 「おめでとう、椎奈」 「ありがとう、林檎ちゃん」 「また負けちゃったわ。あんたって、いっつもさり気に勝って行くんだから」 「でも今回はがんばってくれたみんなと静紗亜先生のおかげだし。それよりも何とか無事に終わってくれて良かったなあって、それだけだよ、本当に。」 「…無事、だったけ…?でも、まだ終わったわけじゃないわよ、閉会式あるし。」 「閉会式とかなら少なくとも怪我とか事故は怒らないでしょう?」 「あんたって本当に…」 「「「キャーーーー!!!おめでとうございますーーー王子――――!!!!」」」 「あ、新たな危機だ…がんばれー椎奈―」 「疲れてるのにーーーーーー!!!」 「「「きゃーーーーーー!!!!!」」」 「…椎奈って、本当に苦労人よね…」 林檎は増えたファンクラブのお嬢様方(前日比1.5倍)に追われて逃げる椎奈を見送り、しみじみと思った。 しかし、そんな林檎の後ろに、邪悪な気配がすっと立った。 「林檎、のんきに見てる場合じゃないぞーー」 「「「きゃーーーー、お姉さまーーーーーー!!!残念ですうーーーーー!!!!!」」」 「だったら何で笑顔で追いかけてくんのよーーーーー!!!」 「はっはっは、人気者は辛いな、はっはっはっは」 こちらも1.5倍に増えたファンを引き連れて走り出した林檎を満足げに会長は見送っていた…。 「せんせぇ…まけちゃったあ…せっかく、せんせぇがてつだってくれたのに…ごめんなさい…」 いつもの元気はどこへやら、しょんぼりしょんぼりして謝ってくる多良葉を見て、学園長は、まず周囲を見渡しました。 うまい具合に役員は帰り支度などで散っていますし、何よりも児童会長はお気に入りたちをからかうのに忙しく、今ここにはいません。 それを確認すると、学園長はふにっと軽く、多良葉のぽよぽよのほっぺたをつまみました。 「こら、負けたのはお前のせいではないだろう。自分が悪いんじゃないのに謝るな。」 「れも…」 学園長はちょっと名残惜しいながらも、やわやわした頬から手を離し、ぽんぽんと撫でるくらいに優しく2度、日にさらされて暖かい多良葉の頭をたたきました。 「お前はがんばったよ。ちゃんと見てたから分かる。お前がMVPだ。」 その穏やかな言い方に、多良葉はやっと少し、くすぐったそうに笑いました。 そしてちょっと両手の指先で、離れてしまった大きな手を惜しむみたいに頭に触れながら、上目遣いに問いました。 「せんせぇ、おこってないの?」 「ああ」 「せんせぇ、ずっとみててくれたの?」 「ああ」 「えむぶいぴいってすごいの?」 「ああ、一等賞だ。」 「じゃあ、オイラせんせぇのいっとうしょう?」 喜びを隠し切れない多良葉の言葉に、学園長は一瞬だけ躊躇しつつも、キラキラした眼で見上げてくる子供を見ると、まあいいか(よくねえよ!!)という気持ちになり、 「ああ」 と答えました。 破顔一笑嬉しさのはじけた笑顔で 「じゃあね、せんせぇもえむぶいぴいね!」 と、少し照れながら言う子供の頭を、学園長はさらに撫でました。 ここに居合わせなかったら役員たちは己の幸運を喜び、神に感謝を捧げるべきでしょう。 こんなものを見たら人生観は変わり、世の中が信じられなくなり、3日はうなされること必至。 出払っていたことは、まさしくナイスディフェンスと言えるでしょう。 良かったね、役員☆! 「結局お兄ちゃんのところが優勝かあ、がんばったもんねー」 「あら、みんながんばったよ」 「うん、みんながんばってた。お兄ちゃんも桃ちゃんも多良ちゃんもみんな一等賞だよね!」 「今夜はご馳走ね!よーし、腕を振るうわよー!!」 「うわぁ、辰子さんの料理?それだけでご馳走だよー、子供たち、きっと喜ぶよ!!」 「もう、こぅちゃんたら大げさなんだから!」 「だってぇー。あははははは」 「もー、うふふふふふ」 …最後までバカップ…いやいや仲良し夫婦で、まさしくご馳走様でした。 え!?おかわり?それはごめんですたいーーー!! 「はるかちゃん、おめでと」 「桃ちゃん…今日はライバルだったけど、はるか、桃ちゃんの恋路は応援してるから!だって、はるか、チアリーダーだもん!」 「はるかちゃん…ありがとう!!」 「じゃ!帝王さんとこいこ!」 「うん!!」 帝王…逃げてーーーーー!!!(笑) 「楽しかったですわね…ライガさん」 「そうだな…」 ライガは今日一日を思い出していた。 危険薬物と水際の攻防を繰り広げ、昼食の弁当の餌食にあい、娘には脅され、突然玉入れをさせられ… 長女は今年卒業する。 しかし次男はまだ1年生… (玉いれ…恒例にならなければいいがな…) ライガは暮れ始めた空のかなたを見つめながら思った。 その願いが叶わないことは…来年にならないと分からないことではある。 「優勝か…ふっ、勝利とは美しく甘美なものだね。」 「しおん君〜、のんきにしてるけど、僕たち…」 「なんであたしがこんなことしなきゃなんないのよ!禄!あんたがいけないのよ!!」 「そんな〜、星華さ〜ん」 「じゃあ二人とも元気を出して黒板のチョーク受けを掃除しようじゃないか!」 「ふざけんじゃないわよーーーーー!!!」 どうやら3人組は先ほどのペナルティに、教室の黒板のチョーク受けの掃除を命じられたようですね。 え?全教室?この学校のですか? …がんばれ(はぁと)! 「この学校の教室、いくつあると思ってんのよーーーーー!!!」 O川学園は初等部から大学までの一貫教育…まあ、これも自業自得って事で! 色んなところで、色んな人の、それぞれの運動会が終わっていきます。 いい思いをした人も、ちょっととほほな人も、いつか思い返せば… ほら、きっといい思い出…ね? 「そんなこと言えるかーーーーー!!!!」 ちゃんちゃん♪ |
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