玉入れと言えば思い出す人がいる…。 日本に玉入れがあったばっかりに…。 日本に、来てしまったばっかりに…。 こちら本部テントでは学園長と児童会長が並んで運動会をご覧になっていらっしゃいました。 お一人は仏頂面で、お一人は裏に何か隠し持っていそうな微笑を浮かべて。 まあお二人とも楽しんでいらっしゃるのは確かなんですけどね。 なんだかんだこの学校と子供たちが好きなわけですから。 「今のところ黄色が一歩リードといったところだな。」 「そうですね。…時に、勝負は混戦が面白いと思いませんか?」 「何を考えている?」 「いえ、ただ林檎の父上が見えている様なので。」 「次は玉入れ、だったな。」 「ええ。…いかがです?」 「いいだろう。」 「では、私が。」 ・…日本語は、主語とか抜かしても十分通じる言語なんです。だからだもん、怖くなんか無いもん!!(泣) 「貴行、マイクを」 「か、会長!はい!ただいま!!」 条件反射のごとく相田貴行は会長に席を明渡し、傍らに控える。 …骨の髄まで染み込んだ反応はさすがである。 『全校児童に告ぐ』 スピーカーから会長の声が流れると、途端に話し声がぴたりとやんだ。 それは小うるさい1年生共も例外ではなく、如実に会長の影響力を語った。 だがしかし、続く会長の言葉で、静けさは破られることになる――― 『突然ではあるが、次の玉入れに特別ルールを適用したい。よく聞いてくれ。玉入れには、各組一名の助っ人を認める。生徒、教師、父兄問わず、この3分間で見つけること!以上。では、3分間スタート!!』 会場が歓声で揺れた。 彼ら彼女らが目指すのは――― ちょっとだけ戻って、こちら父兄席。 「ライガさん、玉入れですって!思い出しますわね…あの頃。」 「…そうだな。まあ、小さい奴ら多かったからな。」 多少ほろ苦くとも、今となれば良い思いでにすぎない。 ライガは傍らの妻に微笑んだ。 しかし、そんなライガの耳に、悪魔のような声が届いたのだった。 「ぁんの娘はーー!!」 以前から林檎の友人として家に来ていたので草野のことは覚えている。そう…なんだか侮りがたい印象とともに。 「すいません、そこの人―!!ぜひ赤組にー!!」 「いいや、青にお願いしますーー!!」 「黄色は優遇しますよーー!!」 「まぁ、、ライガさんたらもてもてですわね!」 「悠長なこと言ってないで、逃げるぞ要!」 「何で逃げますのー?」 「ちょっと待った!逃がさないわよ、父さん!!」 「り、林檎!父の退路をふさぐとは!!」 「ふふ、勝負の前には親子の情なんてもろいものよ!さあ、赤組を手伝うと言って!さもなきゃ今日帰ってからゆたを仕掛けるわよ!」 「くぅっ!わが娘ながら!!…分かった。お前がそこまで言うのならば、赤組を手伝おう…」 「最初っからそう言えばいいのよ。と、言うわけだからみんな引いてくれる?」 「「はーい」」 「副会長が言うんじゃあな」 「ああ、しょうがねえよな。」 「さっすが副会長!」 「これで玉入れはいただいたも同然だな!」 (ライガさん、ひょっとして林檎ちゃんに助けられたんじゃ…?) と、要はおとなしく引き上げていく児童たちを見て思った。 また同じ頃。 「なー、頼むわ、離してんか」 「や!赤組手伝ってくれるまで、もも離さないもん!」 「ダメ!帝王さんは青組を手伝うんだもん!遥だって離さないから!」 (はあぁ…何でのこのここんなところに来てしもうたんやろ…) 帝王は両手に桃子と遥をぶら下げたまま、深いため息をついた。 いくら怖い女たち(静紗亜&星華)に厳命されたからと言って、こんな目にあうとは… (ほんまに、どないしょ…) 考え込む帝王に救世主が現れた。 「桃ちゃん、赤組は遥君のお父さんがお手伝いすることに決まったから、帝王さんを離してあげなさい。助っ人は一人だけなんだからね?」 「えーーー、そうなの…?じゃ、しょうがないんだぁ…」 桃子はしぶしぶと手を離した。 「そーそーしょうないわ、な?嬢」 (た、助かった…) と思ったのもつかの間、 「というわけで、大変申し訳ないんですが、もしよろしかったら青組を手伝っていただけないでしょうか?」 「あぅ・…」 至極申し訳なさそうに、非常に丁寧に、けれどそつなく椎奈に言われ、哀れ帝王は陥落した。 合掌。 そして結局… 「ねー、貴行兄ちゃん、黄色はどうすんのー?」 「大丈夫だよ多良ちゃん!僕が助っ人するからね!」 「えー、禄先生なのー?」 多良葉は他の助っ人たちと禄を交互に見た。 赤組、ライガ・ホープ(198cm) 青組、羽場戸帝王(196cm) 黄組、諏訪禄(185cm) 「えーーーーー、絶対勝てないってーーー!!」 「ダメだよ多良ちゃん、そんなこと言っちゃ!他の助っ人に比べて著しく見劣りするとか思っても、せっかく張り切って手伝ってくれるって言うものを無下には断れないでしょ?笑顔で迎えてあげなくちゃ!」 「うんーーー、そうかもしれないけどーーー」 「き、君たち、僕だって別に小さいわけじゃないのにっ…!」 よろめいて胸を押さえる禄を見て、星華と静紗亜が大爆笑していたのは、禄には秘密秘密! (ばれてるけど) 女の世間話って毒舌だよなぁ?あっ、禄は重々承知だったよね! 奴らが大きすぎただけだから、気にすんなって! 切ない思いを抱えても、人生と同じように運動会は続いてしまう。 |
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