人は誰しも思い出を持ち生きるもの。 では、この人の場合は? ピッ! 笛の号令に合わせて5年生と6年生が動く。 風車、扇、ピラミッド。 身体だけでそれらを表現する、つまりは組み体操である。 すごいすごいと単純に喜ぶ4年生以下の子供たちとは対照的に、救護テントの怜は、空きっ腹を抱えて至極面倒そうに見ていた。 「もー、怜君てば!子供たちががんばってるんだから、ちゃんと応援してよ!」 「だってよ、腹減ってんだよ。朝食ってねえし。ちゃんと拍手はしてんだろうが」 「怜君の拍手は心がこもってないの!」 「なんつーか、得点入るわけでもねえし!燃えねんだよなー」 「えー、楽しいじゃない!昔あんなのやったなとか、思い出さない?」 「そう…思い出すね、あの美しい日々を…。怜はバランスを取るのがとても上手だった…」 答えたのはいつのまにか隣にいたしおんである。 持っているバラが朝と違うのは、すでに誰かに上げてしまったためであろう。 さすがフェミニスト! そしてさすが天然の禄は、イノセントにひどいことを言ってのけた。 「本当だよねー、怜君別に小さいわけじゃないのに、いっつも上だったもんねー。バランス感覚よかったよね?サボテンとかさぁ」 …言葉から槍が出てくるのが、私には見えるようです。(泣) さらに確信犯しおん。 「ピラミッドも一番上だったね…それ以外出来なかったから。いや、勇気を称えているのさ。あんな高いところばかり、ね」 …ほーら、刺さってる刺さってる。怜、瀕死? 「そーだよねー、目立ってたよね!怜君!」 「て、てめーらなんてーーーー!!!」 止めを刺された怜が走り去った後には、 「ど、どうしたんだろ怜君、いきなり…?」 と、天然そのもので目を丸くした禄と、 「ふっ、思い出の甘美さは時に人を奇妙な行動に駆り立てるものなのさ…!」 と、分かったよーな分からないよーな、とりあえず適当には答えるしおんが残されていた… 喜びも悲しみも幾歳月。いろいろ知り尽くした幼馴染みは貴重だけど、だからこそ恐ろしい。 そう思いつつも、つれづれなるままに運動会は中盤を迎える。 |
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