恐ろしい夢を見る。 世界中でたった一人になる夢。 空は青く晴れ、どこまでも見渡せるほどに広い。 暑くなく寒くもない季節で、見えるものは全て輝いていた。 そんな美しい景色の中、それでも突然に気が付くのだ。 自分が、一人だと。 静かな町並みを走る。 声を限りに叫ぶ。 声は返らない。 誰も、いない。 走り疲れ叫び疲れて、往来のただ中で膝をつく。 そしてふいに思い出すのだ、初めから自分は、一人だったことを。 物語は初めから始めて、終わりにきたら止めれば良い。 けれどここは物語から切り離された場所。 それなら、始まってしまったものを、どうやって止めれば良い? 良く見る夢だった。 小学生の頃と高校と、繰り返し人を探し続けた。 そして立ち止まって、飛び起きるのだった。 けれどその日の夢は。 視界の端に、何かが映った。 弾かれるように顔を上げると、誰かが角を曲がって行くところだった。 待ってと叫ぶと、くすくす笑いだけが届いた。 立ち上がって走り出す。 見失わないように。 あの声は、あの、姿は…。 背は余り高くない。 黒髪が風に煽られる。 楽しげに笑いながら逃げるあの子は…。 最後の力を振り絞って手首を掴んで捕まえる。「捕まえた!遥、くん…!」くすくす笑いは振り向いてまた笑った。 「真さん…?呼びました…?」隣の暖かい体温が眠そうに答えた。 夢を見ながら本当に呼んでしまったらしい。 「ごめんなさい。起こしてしまいましたね。」理由なぞ言える訳もなくて、出来るだけ優しく見えるように微笑む。 彼に対する時は別人の様だと言われたことがある。 当たり前だ、と思う。 「なんでもないですよ。眠って下さい。」そんな言葉に微笑んで腕にしがみ付いて、 「真さんも一緒に。」なんて言う彼だから。 「…そうですね。」今度は、心からの微笑が零れていた。 例えば。 朝起きて君が隣で微笑んでくれるなら。 一人ではないと、信じさせてくれるなら。 …きっと、世界は美しい。 |