おさげリレー小説 第1巻
その日拙者は太閤秀吉様の命令で種子島に流れ着いた「ぱいおにあつー」という異形な船の調査に向かっていた。島に近づいてみると、この世の物とは思えない姿の船が姿を現した。
story by 山桜 :2001/8/7
今回の調査隊には太閤直々の任務が課せられていた。
その内容とは以下のような内容である。
1:異国人の収容とその船の内部探索
2:集められる限りの異国の品々の回収
3:異国人に「おさげ髪」の者がいるかどうか
story by 吾蔵 :2001/8/8
ぱいおにあつう!
それを初めて至近で見た拙者は、体の震えを抑えられずにいるッ!
呆れるほど巨大な艦体に圧倒され!
そして初めてみる装飾美術にシビれたッ!
体中に脂汗が走り、脳天には雷が落ちた気分だ。
これは紛れもなく異国の産物。あるいは「異国どころかヨソの星の船ですよん」と言われれば「ああ、はいはい」とバカみたくうなずいてしまいかねない。
この中に・・・入ってゆくのか?
俺は未知の空間に足を踏み込むことを思い、つばを飲み込んだ。
「拙者どの」呼ばれて拙者は振り返った。片腕たる一の部下・ポン吉がトレードマークの出っ歯をキラリ光らせてニヤついた笑みを浮かべている。
「船の外で既に圧倒されてちゃあ困りますぜ。さっそく今から潜入しますかい?」
「行きやしょうぜ、拙者どの!」
「勇気だしてゴーだ、拙者どの!」
「拙者どのが居てくれれば、あっしら恐いものなどありゃしませんぜ!」
「拙者どの!」「拙者どの!」
部下たちから次々と熱い声があがる。嬉しいヤツらだ。拙者はおじけづいていた自分を恥じ、心の中で渇をいれた。しっかりせねば!
リーダーは俺なのだ。今我々にある道は、そう、前進あるのみなのだから!
「ようし、いいかあ!
お前らよくきけ!」俺は声を張り上げた。「まず第一に、これより船内に突入する!
そこは危険な、未知の領域だ。命の惜しい奴は今のうちに帰れ!
とめはせんぞ」
部下たちからわれんばかりの歓声があがる。誰がここで背中を見せようかと言わんばかりの勇ましい声だ。
「そして第二に!」お前ら勘違いしてるが、"拙者"ってのは俺の名前なわけじゃねえ!
そう言おうとしたせつな・・・
「やめなしゃれ!」上空から聞こえてきたカン高い声に、全ては遮られた。
story by
タクマ :2001/8/17
「な、何ィ、きさまはッ!」きさまは〜
「自称、拙者のライバル」ではないか〜
なぜ貴様がここに居るのだ〜
きさまは今、前回の失敗の責任を取らされ謹慎中のはずでは…
「さては艦内におさげがいるかもとの情報に釣られて見にきたな!!」
「いやいや、貴様ほどおさげマニアでは無いわ〜!一緒にするな〜」
「あはは、確かに…。ではなぜここの居る!」
「言わずと知れた事!!」
「なにぃ!わからん!!なぜじゃ?」
「お前は馬鹿か?ライバルとして邪魔しにきたに決まっておろう!」
「なにぃ!」
(君をライバルだと思ったことなぞ無いのに…)
「私だけが失敗してお前が成功続きなぞ。認めてなるものか〜」
って、おいっ(何か間違えてるぞ。お前…)
「って事で一足先に野郎ども行くぞ〜」
ぞろぞろと自称ライバルの部下たちが現れ見るからに怪しい艦内に
何も考えず突入する!
(おいっ!謹慎中のくせに部下まで連れてるのかい!お前…)
いかん!
そんな事を思っている間に自称ライバルとその一同が艦内に…
あまりの事に呆けている自分の部下たち…
(気持ちは痛いほどわかるが…)
ここで負けてはいかん!!
部下たちに向かって一言カツを入れる。
「シャキッとせんか!!」
「あやつらに負けては末代までの恥!!」(確かに…)
「艦内に侵入するぞ〜!」
拙者の一言に部下たちが我に帰る。
「オオー!!!」
拙者と部下たちが侵入しようとしたその瞬間…
「グハー!」「ギャー!」「ウゲー!」
自称ライバルとその一同の悲鳴が鳴り響く。
story by
SENEI :2001/8/21
勇気を出し艦内に進入した。拙者と部下たちが見たものとは…船内に忍び込んだ拙者等は異様な様子に立ち竦んだ。
思わず声が漏れる。
「ここは・・・隔世でござろうか?」
鈍色に光る摩訶不思議な板で仕切られた道に、行燈とは思えない
光り輝く仕掛があり、道を照らし出している。
既に異国人の姿はなく、そこは別働隊の面々が倒れ、呻き声を
上げている惨状が広がっていた。
拙者は相手が決して友好的な考えを持っていない事を悟り、
取り敢えず怪我人を収容し引き返すよう、配下の者を指図した。
気絶している喜三郎(先ほどから妙な競争心で迫ってくるこの男は
そういう名前らしい)のそばへ近づき、語りかける。
「全く、功に焦るからこのような事になるのだ。」
ちなみに拙者も煽られて押し出した事は胸に秘めておこう。
素早く撤収するため子細を見ている時間は無かったが、外傷
として刀傷や銃で撃たれた様子は無く、どのような攻撃を受けた
のか、皆目見当がつかない。
そう言えば、この不思議な道にも血がついている形跡は無い。
仕方なく、近くにいた一人に声を掛ける。剣も抜かずにへたり
こんでいるようだが、幸いにも口をきくことは出来そうだ。
拙者「おい、どうした。ここで何があった!!」
足軽「か、雷様だ・・・雷様のお屋敷に忍び込んじまった!!」」
拙者「雷様?おい、しっかりしろ、貴様が何を言っておるのか、
さっぱり分からん。」
足軽「そっただ事、分かんねーよ!でも確かに見ただ。雷様の手から
稲妻が飛び出しておら達に罰を与えたんだ!!」
拙者「・・・。」
******** そのころ ********
船内のとあるロビーでは...。
「おいおい、原住民に手を出してはいけないというのが総督からの
通達だったろ?」
「だって・・・びっくりしたんだもん。」
「まあ、いきなり押し掛けられれば驚くけどさ。」
「大丈夫よ、一番弱いギゾンデだからダメージはそうないはず。」
少し顔を火照らせつつ少女はそういって悪戯っぽく笑った。
ぱっちりとした碧色の瞳。
ほんのりと色づく小さい朱の唇。
好奇心が満ち溢れる端正な顔立ち。
透明感の有る金色の髪の毛は丁寧な三つ編みによって纏められ、より
強い色彩を帯びて流れ落ちている。
「それにしても...。」
褐色の瞳を持つ青年が呟いた。
「あの人達、やっぱり誤解したよなあ。」
「そ、そうね...。」
二人は目を見合わせると、はあーっとため息をついた。
************************
(つまり、これは船ではなく城ということか)
拙者は認識を改めた、正攻法による正面突撃をあきらめ、機会を
伺い忍び込むのだ。
「ポン吉、いるか?」
「へい、拙者殿。こちらに。」
音もなく傍らに跪く姿は乱波として世の中を渡り歩いてきた
証ともいえる。
相変わらずの”拙者殿”という言い方には引っかかるものがあるが、
敢えて無視して話を進める。
「お主ならこの船、どう見る?」
出っ歯で飄々とした顔つきの目の奥が鋭く光る。
「左様、一筋縄ではいきませんでしょうなあ。」
「やはりそう思うか。」
「入り込める隙間でもあれば話は別でござるが・・・。」
「むむ・・・。」
「太閤様もご無体なお下知をなされたものですな。」
「そういうな。あのお方の考えは拙者等に分かるものではなかろう。」
結局拙者等は夜を待ち、再度検分を行うこととした。
然し、大きな誤算がある事に気づくまで大して時間は掛からなかった。
夜の帳が降りつつある周囲は静寂に包まれ、水平線に落ち行く夕陽が
異国船を朱に染める。
大きな船の影から密かに入口を盗み見た拙者は驚いた。
開かれた入口からはどんなに篝火を焚いてもかなわない程の光が
溢れ出しているのだ。
しかも、遙か高くに伺える船の上部からは眩いくらいの光点が数限り
なく明滅し、この世のものとは思えない景観を醸し出していた。
拙者は聚楽第を見た事はなかったが、きっと聚楽第よりも明るいの
だろうな、と頭の片隅に考えがよぎる。
それにしても...。
「これでは夜陰に乗じて潜入することも出来ぬではないか。」
「む...そうだ、喜三郎に一働きして貰うか。」
拙者の脳裏に上手く検分する為の秘策が閃いた。
それは...。
story by
舞 :2001/8/24
「ポン吉、喜三郎たちに流言を流せ」
そばに控えているポン吉に「ニヤリ」と笑って見せる。
「は。流言でございますか?」
一瞬いぶかしげな表情を浮かべるポン吉に、拙者は言葉を続ける。
「左様。『我々が海側より再度侵入を試みている』とな。きゃつらは必ず我々に先んじようと、侵入路を探るだろう。お前はその後をつけて侵入路が見つかり次第報告せよ。」
ポン吉もニヤリと笑みをこぼす。
「合点承知いたしました」
拙者は闇夜を煌々と照らし出す「ぱいおにあつぅ」を見上げた。
「奴等も異人(とおぼしき者達)と、すでに接触を果たしている。今度はうまくやるだろう。」
あれでいて喜三郎もただの無能者ではない。
ま、運には恵まれてはいないようだが…。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「なぁ、この星の事だけどさ。やっぱあれかな?次元航行のミスかな?」
褐色の瞳にまだ幼さを残す青年は、隣を歩く少女を覗き込むように話し掛けている。しかし少女の方は「心ここにあらず」といった表情だ。
「何度観測してみても、ラグオルから見えるはずの星座じゃないんだよ。総督府もなんの発表もしてないし…。ましてこんな小さな島に軟着陸…。たまたま大気の組成がフォーブ(母星)と同じだったから良かったものの、ろくな調査もしないでこんな星に着陸するなんておかしいよ」
青年は、不安を吐き出すように一気にまくしたてた。
しかし、それでも少女は聞いていない様子だった。
時々独り言のようにつぶやいては、腕組みをしてそっぽを向く。
しきりに通路の中を行ったり来たりする少女。
その後ろを付いて歩くように話し続けてきた青年だったが、さすがにイライラしてきているようだった。
「ねぇ?タクさん聞いてる?」
突然金色の三つ編みが青年の鼻先をかすめたかと思うと「タク」と呼ばれた少女が青年の顔を覗き込んでいた。
その表情は「イタズラを考え付いた子供の顔」に似ていた。
「ね。セネイ。ちょっと降りてみない?」
「ええええええええええええええええ!?」
セネイと呼ばれた青年は、その台詞よりも「タクの表情」を見て悲鳴に似た声を上げた。
彼が知りうる限り。
過去、この表情をしたタクがしでかした事にロクな事は無かった。
先日の簡単な船内クエストの時も、タクのこの「表情」のあと、大事件に発展した。あの時の惨状が脳裏によみがえると背筋を冷たいものが走った。
「だめ!絶対だめ!!」
青ざめたセネイは必死に食い下がる。
「総督から通達来てるだろ!?『いかなる事があっても他文明との接触は総督府の許可なく行ってはならない』って!さっきもそのお陰でコテンパンにしぼられたばっかりじゃないか!?」
首をぶんぶんと横に振るセネイ。
しかし彼はよく知っている。彼女は一度言い出したら最後。実行するまでは止まらないという事を。
彼女は爽やかな笑顔をたたえてセネイの手をそっと握り締めた。
「じゃ上層の空気ダクトのハッチを開いて外の空気をちょっと吸うだけ。それならいいでしょ?ね?」
微笑むタクの表情には明らかに含みがある。「絶対なんか企んでる」セネイには確信があったが、その「企て」が何かわからぬ限り、一人では行動させられない。
うつむきながらセネイはつぶやく。
「あーぁ。ライセンス剥奪も、そう遠くはないかなぁ…」
story by
吾蔵 :2001/9/10
船内のハンター達の動きが活発となっていた。
「侵入者が海側から侵入する」という情報が流れたのだ。
船の護衛を依頼されたハンター達はことごとく海側の侵入口の防衛に回った。
その強固な防衛網を遠巻きに見る影が一つ現れ、船外へと消えていく・・・・・・・。
「拙者殿!」
呼ばれて振り返ると、トレードマークの出っ歯をキラキラさせながらポン吉がたたずんでいる。
「うまくいったか?」
拙者が問うとポン吉は何も言わず出っ歯をキラっと光らして見せた。
「よし!いくぞポン吉!」
ポン吉は鳩が水鉄砲を喰らったような顔をしている。
「いくぞというに! はよ支度せい!」
ポン吉は恐る恐る問うてみた
「・・・行くって?・・・旦那!?・・・・あっしら二人ですかい?」
「いかにも!」太い低い声で拙者は言い放った。それは決死の決意、確たる自信を思わせるものであった。
ポン吉は黙ってうなだれた。忍者というものは現実至上主義者である。勝ち目の無い勝負は挑まない。数が違いすぎる!ましてや妙な技まで操る敵の根城にたった二人で戦いを挑むなどもっての他だ。
しかし、拙者殿の「いかにも!」はそんな忍者の計算もはねのける程の自信に満ちた言葉であった。
二人は予め目を付けて於いた場所から侵入を試みた。大きな光の輪がある付け根に大人2,3人がなんとか入れるデッキがあるのだ。
周囲に誰もいない事を確認するとポン吉はにやにやしながら言う。
「うまいこと、護衛は海側に釘付けですぜ 旦那」
「うむ、だが気を抜くな!」と言いながら拙者はデッキにとりついた。
その刹那!デッキの奥にあるドアがひとりでに開いたのだ!
「!!」拙者とポン吉は慌てて身を隠す!
やがて真っ暗な船内から年端もいかぬ男女2人が姿を現した。
story by 山桜 :2001/10/1
邂逅!
それは運命の出会い!
昨日とは違う今日を歩み始めるためのきっかけ!
薄い金属の扉が開かれ!
原住民ふたりと異邦人ふたりが、今! 顔をあわしたのだ!
突然の異邦人の出現に、拙者はガラにもなくあわてふためていた。
「あ・・・はじめまして。拙者は拙者と申す。天高く馬肥ゆる秋、皆様如何お過ごしでしょうか。ボクは元気です」
言葉が通じるのか通じないのか、きょとんとしている異邦人たち。
どうしたものかと画策している拙者の前に、ポン吉が足を踏み出した。出っ歯がキラリと光る。
「フッ、拙者どの。挨拶なんぞ必要ないですぜ」
「な、何ィ、ポン吉お前…」いつにないポン吉の自己主張に、拙者は言葉をつまらせた。
「あの手前の女!
あの女を見てくだせえ」彼が出っ歯で指し示す先には…
「わかっている。見事な三つ編みおさげだ。一刻も早く、報告をせねばならぬ」
それを聞いてポン吉はカッと目を開いた。「否!
否ですぜ拙者どの!
相手は見るからに弱っチぃ若造二人組。ここはテキパキとひっとらえて、男の方は海に投げ込み、女の方は我らで散々味見した挙句、お上に献上するのがカシコい忍者のありかたってモンでしょう・・・」
みもふたもないポン吉の言い方に、拙者は少々あきれかえった。相手が異人で言葉を理解できるハズもないので、容赦が無い。
しかしその時!
「なんですって…」おさげの女がボソリとつぶやいたのを、拙者とポン吉は聞きのがさなかった。ギョッとして異邦人の方を振り返る。
「あたしを味見して献上品にする…?」
「フッ、言葉が通じるみたいだな」ポン吉が肩をすくめて向き直った。「ならばしょうがねえ。ズバリ言ってやるさ。オメーは今から俺らと一緒に来るんだ。俺らのボスに献上だ。たっぷり可愛いがってもらいな。クックク…」
ポン吉はここまで言うと、相手の出方を待った。ここまで言われた人間の行動パターンは、たいてい似通っており、こちらとしてもマニュアル的に対処しやすい。今日の場合は成り行きだったが、こちらのペースにのせるために、わざと相手を挑発することもあるのだ。
しかしおさげ女は、ショックを受けて座りこむでもなく、絶望して泣くでもなく、駄目元で襲い掛かってくるでもなかった。
彼女は姿勢を低くすると、足元の金属製のタイルに爪をたてはじめたのだ。
「……? 何やってんだ?
こいつ」ポン吉は不振そうにその手元を覗き込み、ギョッとした。
おさげ髪と一緒にいた青年もそれに気づき、あわてて彼女の行動を止めようと背中から押さえにかかった。「やめろタクッ!
爪が割れ、指先から肉が削げ、血が吹きでているぞッ」
しかしおさげ髪はそれをはねのけ、ヒステリックにかなきり声をあげた。「うるセェェェェェ!
あああああたしはッ!
生意気なヤツを見ると虫唾がはしるのよッ!
なんでもイイからむしりとって気をはらすようにしてンのッ!
他人の髪の毛だろうが!
鋼鉄のタイルだろうが知ったこっちゃあないワッ!」
そこまで言い放つと、今度は急に痛みを感じたかのようにヒィヒィ泣き声をあげはじめた。涙でグチャグチャになった顔で、血にまみれた指先をペロペロ舐めながら、拙者とポン吉の方をジロジロ見ている。「痛いよう、痛いよう………あんたらのせいよ…あんたらが生意気言ってあたしを困らせるからッ!
ここここんなに血がでて! パックリ肉も裂けてッ!
ジンジン痛みが走ってんじゃああああないのサ!
どォオオオオオオしてくれるんでスかァァァァァ?」
「……」もはや予想を越えているどころではなかった。ポン吉はゾッとした。こいつ…狂ってやがる!
story by
タクマ :2001/10/7
以下、4月27日追加
驚いているのは突然豹変を遂げた少女の傍らに位置する少年・・・
セネイも同じだった。
「どうしたんだよタクっしっかりしろよ!!」
そう言って俺は、未だにタイルを剥がそうとして血まみれの腕を
必死に押さえつけようとした。
「もう止めろよ!
お前、今までそんなことした事なかっただろ?・・・うわっ」
然し、その細い腕からは想像も出来ない荒々しい力で俺は吹っ飛ば
された。
妙な呼吸音を響かせながら立ち上がり、まるで生気を感じさせない
三白眼で俺を見下したように一瞥するとタクは普段の鈴の音の様な
綺麗な声ではなく、変わり果てたダミ声で叫んだ。
「うるセェェェェって言ってんだろォォォォォ!」
「・・・タク・・・。」
「クスクスクス・・・・フォイエ・・・。」
バシュッ!
パチンコ玉くらいの火の玉がタクから放たれる。
「フォイエ。フォイエ。フォイエ。フォイエ。フォイエ。フォイエ。」
「フォイエフォイエフォイエフォイエフォイエフォイエェェェー!!」
放たれる火の玉は除々に大きくなり、四方八方に飛び散る。
夜空吸い込まれる火の玉は、この異常な事態とはうらはらに花火の
ようでとても綺麗だった...。
「止めろ、タク!もうやめておけ!!」
「あーハハハハ!!みんなみんな、燃えてしまいなサいィィィィ!!」
タクのテクニック技術は伊達ではない。このまま歯止めが利かなく
なれば、腰を抜かしている原住民だけでなく、俺も、パイオニア2
だったただではすまなくなってしまう。
「ケラケラケラケラッ次はラフォイエよぉ。あんた達、炭くらいは
残るかしらねぇ。」
もはや躊躇している暇はなかった。
俺は既に少女とは呼べないそれに向かって突進した。掠めていく
炎の玉が髪の毛の一部を焦がし、熱気を吸い込んだ胸はむせかえる。
「バッラバラに砕けてしまいなサイィィィ!
ラァァフォォォイィィィ・・・。」
「・・・・。」
爆発は起こらなかった。
間一髪で俺はタクの口を封じた・・・俺の唇で。
驚きに見開かれるタクの目。
その瞳の奥には憎悪と混乱と恥じらいと安堵の炎が交錯し、複雑に
揺れた。
それを間近で見ながら気が付いた。
俺はその瞬間に目を閉じることすら忘れてタクにキスをしていたの
だった。
そして、少女は静かに頽れた。
腕の中で眠るタクからは狂気の色が消えていたが、涙と血でぐしゃぐしゃになった顔は、今までの出来事が全て現実である事を俺に思い出さ
せるのに十分だった。
「・・・レスタ。」
タクの手を取り、治癒のテクニックを施す。
みるみる肉芽が盛り上がり、可憐な少女の腕は生気を取り戻す。
ふと見れば、そこには呆然とした顔つきで腰を抜かしている
原住民の姿。
(こいつら、特にこの出っ歯のヤツが変なことを言わなければ
こんな事には..!)
黒い怒りの衝動がわき上がる。
必死に神経を集中し、その意志を拒絶する。
燃える想いを言葉に乗せ、漸く紡ぎ出した。
「失せろ...。」
まだ惚けている二人の間近にフォイエを放つ。
バシッ!
火の玉がタイルで弾け、一人の顔に当たった。その瞬間我に返った
ようだ。
そっちのヤツに憎しみの眼差しを見せながら、もう一度聞こえる
ように呟く。
「失せろと言っている...。」
もう一度ギリギリの場所にフォイエを放った後、腕の中で眠るタクを
起こさないようにしながら、俺は後ろへ振り向くと、船に向かって
歩き出した。
やがてハッチが閉まる。俺たちはそのままメディカルセンターへ
向かった。
(俺、ずっとタクの事が好きだったんだ。だからキスした事は後悔
していない。
でも...ごめん。こんな形でキスするつもりじゃなかった。
だから目をさました時に覚えていないでくれるとうれしい...。)
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、可愛いトラブルメーカーは
すやすやと穏やかな寝息を立てていた。
それにしてもあの変わり様は・・・。
一体タクの身に何が起こっているのだろう。
メディカルセンターの職員にタクの身を預けると、今回の報告も兼ねて、俺は総督の元へと向かうことにした。
一方その頃、パイオニアの外では・・・。
story by 舞 :2001/11/3
夜も更け、真っ暗な海岸にぽつっぽつっと明かりが灯る
異国の船が放つ真昼のような光とは対照的な揺れ動く焚き火の明かりだ
焚き火の近くに人らしき姿が見え隠れする
傷を癒す喜三郎達の陣営である
「喜三郎様・・・・傷はもうよろしいのですか?」
「あ・・・ああ・・・・」力の無い返事だった
喜三郎は今回の失敗で太閤秀吉様に叱られるかもしれない不安の方が傷の痛みよりも重大だった
遠くから馬の蹄の音が聞こえる
その音がだんだん大きくなり、すぐ近くで止まった
「たのもーーー!!」
若武者らしい姿が焚き火の光にゆらゆら揺れている
「喜三朗殿はおられるかー?」
「喜三朗様 客人ですぜ」喜三朗はそう言われて初めて気が付いたようだ
「あ?アンタ誰?」間の抜けた問いに客人は呆れ返るように言った
「拙者は太閤秀吉様の使い 吾蔵宗匠 と申すもの」
「秀吉様より貴殿を手伝うように言われて馳せ参じたのじゃ」
秀吉様の名前を聞いただけで喜三朗は手で顔を覆ってしまった
「その様子ではうまくいってないようでござるの・・・」
喜三朗はハッとして 慌てて弁明する
「んだこといっだっでよ! 奴ら人間じゃねえだど! 雷様だど!」
吾蔵はあまりの慌てぶりを見かねたように言う
「誰か 変わりに説明出来るものはおらぬか?」
「は!拙者が!」
前に踊りでた喜三朗の部下から事の次第を事細かに聞くと吾蔵は乗ってきた馬に乗り闇の中へ消えて行った・・・・・
story by 山桜 :2001/11/20
焼け焦げた砂浜に呆然したままと残された、拙者殿とポン吉。
あの恐ろしい娘の豹変ぶりに完全に腰が抜けてしまっているようだった。
しばらくは、呆けた表情の二人を海風がやさしくなでていた。
どれ位経ったころだろう、二人の背後から馬のいななきが聞こえてくる。はっと我に帰ったポン吉は背後を振り返る。誰か着た。
「拙者殿ー!拙者殿はおられるかぁ!?」
聞きなれた声のようにも感じる。拙者殿もやっとのことで立ち上がり、声のするほうに向き直った。
「おぉ拙者殿!…ど、どうしたのですか?!このありさまは!」
やってきた男は、周囲の焼け焦げた砂浜を見回しながら、馬を下り、拙者殿たちに近づいてきた。
「おぉ!これはこれは吾蔵殿ではござらんか!」
「だ、大丈夫ですか?」
実は二人は旧知の仲である。ともに同じ道場で修練を重ねた同輩だった。道場名は確か「軋骨格…」
ま、この際思い出話はさておき。
思い直した拙者殿は、かいつまんで今までのいきさつを吾蔵に話して聞かせた。
「うーむ…事態はやや複雑になってしまっておりますな…。」
「うむ、正直手の出しようがありません。異国人は奇妙なあやかしの術を使い、対する我々には成す術がありませぬ。」
困った表情の拙者殿に、思い出したかのように吾蔵が話し始める。
「あ、そうでした。拙者殿。実はわたくし、今回は太閤殿より使者として遣わされまして、ご命令を賜ってまいりました。その内容というのが…。」
懐より書面を出す吾蔵。
「えー…コホン。『汝、橘
喜三郎と共に異国船の調査にあたれ。調査内容は現状で変更なし。協力して調査を進行せよ。なお、使者として遣わした吾蔵
宗匠も傘下に編入するものとする。必要と思われる物資をもたせた故、早期の報告を期待するものなり。太閤』って…えぇええええええええええええ!私もですか!?太閤様!!」
愕然としていたのは吾蔵だけではない。拙者殿もあごが外れたように口をアングリとあけてその命令書を読み返す。
『橘 喜三郎と共に異国船の調査にあたれ』
何度読み返してもそう書いてある。
「なんてこったぁ…」
思わずポン吉も声を漏らす。
こうなった以上、有無を言わさず協力するしかないようだ。
作戦が必要だな…。
見上げる夜空には満点の星が輝いていた…。
story by 吾蔵 :2002/1/6