タマムシシティの西から南に向けて伸びる、サイクリングロードと呼ばれる下り坂。
上からそれを見下ろすと、なんというか迫力がある。
坂の下から吹き登ってくる風が、そこに立つ少年……レッドの頬を撫でていた。
「ここを一気に下り降りれば、セキチクシティって訳だな。よ〜し!」
腕をぐるんぐるん回して、気合をこめるレッド。
そこには、ブルーに貰ったあのバンダナも巻かれている。
「行っくぜ〜!」
彼はトンっと地面を蹴ると、自転車で一気に急斜面を降りて行く。
「ひゃっほ〜♪ 気持ちいいー!」
だが、そんな彼の自転車に、横の方から1つの小型自転車が迫っていた。
それに乗る女の子の声が聞こえた頃には、もはや回避不能な状態に……。
「どいてぇぇ〜っっ!!」
「えっ……な゛!? あっ!!」
どがしゃ〜んっっ!!
※自転車でのスピードの出し過ぎは大変危険です。ぜったいにやめましょう。
第7編「形態変化(フォームチェンジ)」
前回までのあらすじ:
ブルーは、ヤマブキシティに入れないグリーンを発見。
逆ナンパ(?)を図るブルーだったが、軽くグリーンにあしらわれてしまう事に。
それと同時に、レッドに対する想いを見透かされたブルー。
彼女はグリーンと別れると、もう一度素直な気持ちでレッドに会ってみようと決めるのだった。
「ごめんなさい、もうしません!」
「いや、俺の方こそごめんな。次からは必ず気をつけるよ」
サイクリングロードの真ん中で、ぺこぺこ謝り合う2人の子供がいる。
レッドの前にいるのは、7〜8歳ぐらいと思われる年下の女の子だった。
「自転車、大丈夫かな? 俺の方はキズがついちまったけど、何とか動くみたいだが……」
「私の方も、どうにか平気みたいです。……でも、町に着いたら自転車屋さんに見てもらった方がいいですね」
「そうだな」
何となくおかしくなり、2人はくすくすと笑い合う。
「そういえば、まだ名前を言ってませんでしたね」
「あぁ、俺はマサラタウンのレッドだ」
「私はジョウト地方から来たクリスタル。クリスと呼んでください」
「君は見た所、俺より結構年下みたいだけど……1人なのか?」
「そうですよ。カントー地方にはママに連れられて来たんですけれど、せっかくだから1人で少しまわって見ようかと」
クリスと名乗る少女は、その年齢にしては大人っぽい態度で答えた。
それにしても、レッドとて11歳になって初めて旅に出たというのに、まだ7〜8歳の少女が1人でというのには驚きである。
「す、凄いね……君。1人でも平気なの?」
「はい。2年前に、ジョウト地方のスリバチ山という所で、修行の山ごもりを1人でしてましたから。それに比べれば、全然♪」
「に……2年前……(汗)」
何と言うか、クリスのレベルはレッドの想像を超えていた。
そんなに幼い頃からトレーナーの修行をしている子もいるのだと、レッドの心には驚きと感心が入り混じる。
「あ、1人と言っても、私のポケモン達も一緒だったんですけどね」
「まぁ、それはそうだろうけど……。修行って言うと、やっぱりポケモンバトルの?」
「いえ、私の場合は……」
その時。
ピョンっと……不意に1匹のポケモンが、向かい合う2人の目の前を横切った。
「えっ」
よく見れば、それは2人が初めて見るポケモンである。
というのも、そのポケモンは非常に希少で珍しい種類だったのだ。
「あれは、イーブイ!?」
「イーブイって言うと、すっごく数が少ないレアなポケモンですね! 私、初めて見ました♪」
するとクリスは、スチャっという効果音でもつきそうなシャープな動きで、モンスターボールを手に構える。
そして自転車のペダルに足をかけると、すぐにイーブイの追跡を開始した。
「捕獲、します!」
「お、おい? クリス! ……(ボールを手に持った状態で)ハンドルから片手離しの自転車運転も危ないぞ〜っと……」
とりあえず、放っておけない気持ちのレッドも後を追う。
クリスの方はもはやイーブイ以外、眼中に無い様子だ。
彼女は一気に目標との距離を縮めると、足で蹴る事によりイーブイめがけてボールを放つ。
「(けっ、蹴った!!?)」
本日のレッドは、驚きっぱなしである……。
しかしながらボールは外れ、イーブイは器用に飛び跳ねながら体勢を立て直す。
「くぅ〜……。やっぱりサイクリングロードの急斜面上じゃ、まだ難しいなぁ。平地でだったら、絶対今ので捕らえてたのに」
「おーい、クリス!」
「あ、レッドさん」
後ろから追いかけて来るレッドの方へ、クリスは振り向く。
追いかけた距離は大した事なかったが、クリスの圧倒的な行動力を前に、レッドは精神的に疲れた気分だ。
「だっ、大丈夫か?」
「任せてください。捕獲には、絶対の自信があるんです」
だが、イーブイも防戦一方ではなかった。
いきなり体から炎を出すと、それをクリスとレッドに向けたのである。
「危ないっ」
2人は、間一髪で攻撃をかわす。
「ふぅ。炎を出したって事は、奴は炎タイプのポケモンだな!」
「(あれ? 確か前に読んだ本で、イーブイはノーマルタイプって書かれていたような……)」
「ここはお前の出番だ、ニョロ。イーブイを弱らせろ!」
レッドが繰り出したのは、炎に対し抵抗力を持つ水ポケモンのニョロボン♂。
これなら少なくとも互角以上に戦えると、レッドは踏んでいた。
ところが事態は、思いも寄らぬ方向に進んでゆく。
「シュウゥ!」
「……ん?」
「シュシュッ!」
バチバチバチッ!!
鳴き声を共に放たれた電撃が、ニョロボンを捉えた。
「なっ!?」
レッドもクリスも、まさかイーブイが電気タイプ技を放てるとは思ってなかっただろう。
当然それは攻撃されたニョロボン自身も同じであり、目をまわしながら倒れてしまった。
「そ、そんな〜」
そしてイーブイは、この隙にピョンピョン飛び跳ねながら姿をくらませてゆく。
クリスも斜面の影響から、これ以上は積極的に追う事ができなかった。
仕方なくレッドとクリスは、そのままサイクリングロードを下り切ってしまう事に。
そして夕刻辺りになると、2人はセキチクシティに到着した。
「私は今日、この町で泊まります。一度体勢を立て直して、明日改めてイーブイを捕獲しに行きますから」
「……え、まだ捕まえる気なのか?」
どうやらクリスは、まだイーブイを諦めてなかったらしい。
「当たり前ですよ。何たってイーブイは、超希少ポケモンですからね。明日なら、まだそう遠くへは行かないはず。ここで諦めてしまっては、捕獲(ゲット)のスペシャリストの名が折れます!」
「捕獲のスペシャリスト?」
「そう。私は、ポケモン捕獲のスペシャリストです! ……正確には、その修行中なんですけどね」
苦笑いしながら、クリスはなおも話す。
「さっき言った、スリバチ山に1人でこもって修行したっていうのも、捕獲の技術を極める為だったんです。でも私、そこで両腕を大怪我してしまいまして……。そんな時に、足技でボールを操り、ポケモンを捕獲する技術を身につけたんです。それ以後はもう、足技でボールを放たないとしっくりこなくって♪」
「それで、ボールを蹴ってたって訳か」
「後は、出来るだけ色んな土地を自分の足で見てまわって、色んなポケモンに触れる事も大切だってママに言われて。だからカントー地方をまわっているのも、捕獲修行の一環なのです」
「へぇ……頑張るなぁ……」
「そうですか? レッドさんだって、ポケモントレーナーとして旅してる訳ですよね」
「ん、まぁ……そうなんだけどさ」
コリコリと、人差し指で側頭部のあたりをかくレッド。
本当にクリスは、年下とは思えない凄さだ。色んな意味で。
「俺の弟が、丁度君ぐらいの歳だからさ。それと比べると、つい何もかも君の方が大人っぽく見えちゃって。俺だって君ぐらいの歳には、そこまで明確な目標は持ってなかったと思うよ。きっと」
「レッドさんは今、どんな目的で旅をしてるんですか?」
「そりゃやっぱ、トレーナーとしての腕を磨いて、ポケモンリーグを目指す事かな。……本当は、もう1つあるけど」
そう言って、レッドは紅く染まる空を仰いだ
「この前まで、一緒にいた子がいてさ。あいつは勝手に去っていっちゃったけど、何か訳ありみたいな所があって、心配っていうか気になるんだよな」
レッドが思い浮かべたのは、ブルーの事だった。
どうも彼女の事を考えると、放っておけないような想いになる。
今どこにいるのかは分からないが、きっとカントーのどこかで今も……。
「とりあえず旅を続けていれば、きっとまた会う機会も来るんじゃないかと思うんだよな。会って何か用事があるって訳でもないんだけど……うーん、うまく表現できないや」
「…………。もしかしてその子って言うのは、レッドさんの好きな女の子なんですか?」
「えっ!!?」
奇襲攻撃の如き発言に、レッドは飛び上がりかける。
本当にレッドは、何もかもクリスのペースに乗せられてしまう。
「す、好きっていうか……その、何て言うか……」
「いいんじゃないですか? 好きって事にしちゃっても」
「!」
「だって、気になるんでしょ? だったらレッドさんは、多かれ少なかれ、その子に好意を持っているって事なんですよ」
「ク、クリス……」
「だったら、もっと素直になりましょうよ。今のまま次に会っても、きっとまたチャンスを逃して同じ気持ちになっちゃいますよ。まずレッドさん自身が、しっかりその子の事が好きであるのを自覚して、その上で彼女と会ってみましょうよ。そうすれば少なくとも、今このままで会うのよりかは何かしらプラスになるんじゃないかと思います」
「……ホント、君には敵わないや」
その言葉に宿る気持ちは、半分諦めとでも表現していいだろう。
だが同時に、クリスの言葉に納得してしまった部分もある。
今のままブルーに会っても、自分は一体何がしたいのだろうか?
それが分からない内に会う事で、何か意味を成すのだろうか?
「そうだよな……俺は……」
今一度、レッドはブルーの顔を思い浮かべる。
可愛らしいブルーの表情と、そんな彼女が見せる表と裏の性質。
彼女の場合は、詐欺や泥棒まがいの事をしていた時の方をあえて『表』と称した方がしっくり来るだろう。
だがその『裏』では、彼女は深く重いものを抱えこみ続けているのだ。
「あっ、それじゃ私はこの辺で。その子に、また会えるといいですね」
「あぁ……。っと、そうだ。よかったら明日、あのイーブイを探すのを俺にも手伝わせてくれないか?」
「え?」
「いや、何て言うか……あのままじゃ気になるし」
このレッドの申し出に、クリスは快く了承する。
「いいですよ。私としても助かりますし♪」
そんな訳で、翌日。
2人は、改めて昨日のイーブイを探す事になった。
……というか、その予定だったのだが……。
「……ん゛?」
再びクリスと合流したレッドは、町中を飛び跳ねる影を発見する。
そのシルエットは、間違いなく……
「レッドさん、あれ……!」
「イーブイっ!!」
こうもあっさり見つかっては拍子抜けだったが、イーブイは素早く彼等の前から姿をくらます。
すかさず2人は、イーブイの後を追いかけた。
「東の方へ逃げたぞ」
「捕獲、します!」
イーブイの方も逃げる中で、レッドとクリスが追いかけて来るのに気づいていた。
開けた道路に出ると、振り返って戦闘体勢をとってくる。
「!! 来るぞ、気をつけろ」
「はい。カラぴょん、行って!」
クリスが繰り出したのは、地面タイプのカラカラ♂。
手に持った骨を使っての攻撃を得意とするポケモンで、イーブイに攻撃を仕掛けていく。
「(昨日、イーブイは炎や電気で攻撃して来たからな。イーブイがどちらのタイプだったとしても、弱点をつけるカラカラは一見正しい選択のように思える。けど、何かが……)」
その様子を見ていたレッドは、どこか引っかかるものを感じる。
しかし確証の持てない不安感を口に出す事ができず、しばらく静観するしかなかった。
「カラぴょん、骨こん棒!」
だが、レッドの不安は杞憂などではなく……。
次の瞬間、攻撃をかわしたイーブイは水の攻撃を放って来た。
「えっ!?」
「しまった。クリス!」
気づいた時にはもう手遅れで、水攻撃に弱いカラカラは一撃で倒されてしまう。
「カラぴょん! ……そんな、どうして?」
「……まさか、あいつ!」
「レッドさん?」
「あのイーブイ、3つの力を1匹で持っているんじゃ!?」
「えぇっ!!」
「つまり、炎・雷・水の3タイプだ。そして相手のタイプに応じて、自分のタイプそのものを……自分の形態を変化させて戦ってきている」
「形態……変化……!?」
「だからこちらが何のタイプを繰り出そうとも、それと戦うのに最も適した形態になって攻撃して来る。厄介な相手だぞ、こいつは」
イーブイは、なおもこちらを警戒して睨み付けて来る。
そして一気に跳んで、こちら側に突っ込んで来た。
「うわっ!?」
突進をあやうい所で回避するレッド。
クリスの方は、次に打つ手がつかめず困っているようだ。
「レッドさん、どうしましょう……?」
「…………。ニョロ、行け!」
「えっ!」
それは、昨日も電撃形態のイーブイに敗れたはずのニョロボンだった。
レッドの行動意図が分からず、クリスは疑問の声をあげる。
「な〜に、見てな!」
「シュシュッ!!」
案の定、イーブイは電撃を放ち攻撃に出た。
それを、左手の拳によるパンチで受け止めるニョロボンだが……やはり電気タイプ技は苦しい様子だ。
「頑張れ、ニョロ。水タイプに電撃は苦手だろうけど、お前の力は水だけじゃない。その圧倒的なパワーも、お前の武器だ!」
ニョロボンは水タイプを持つと同時に、格闘タイプも持ち合わせている。
と同時に……ニョロは、残った右腕を大きく振りかぶって地面に叩き込む事で、この技を放つ事も可能だった。
「いっけー、地震ッ!!」
「そ、そっか。相手が電気タイプになってる、今なら……」
案の定、効果は抜群だった。
ニョロボンの強靭なパワーもあって、地響きを立てながら発生する地面の割れ目の衝撃波に、イーブイの体は吹っ飛ばされる。
「今だぁぁーッ!!」
そう叫んだのは、クリスだ。
すかさずモンスターボールを蹴飛ばし、イーブイに命中させる。
イーブイの体は、そのままボールに取り込まれた。
「ほ、捕獲……完了……!」
「やったぜ、クリス。さすがは捕獲のスペシャリストだな」
最後の鮮やかな捕獲技術に、レッドは心底感心した様子で言った。
「レッドさんのおかげですよ。それにまだ、捕獲のスペシャリスト修行中の身ですってば♪」
「ははっ、そっか」
何にしても、無事にイーブイは捕獲した訳だ。
さっそく2人は、イーブイの状態を確認してみる事に。
「さっ、イーブイ。出てきて」
「……! クリス、ちょっと」
「え?」
レッドは何かに気づいた様子で、そっと弱った様子のイーブイの耳辺りを調べてみる。
するとそこには、小さな機械のような物が人為的に取り付けられているのが見つかった。
「え……これって、一体……」
「もしかするとコイツ、形態変化の能力は最初から自分で持っていた訳じゃないのか?」
「…………。あの、レッドさん。私、前にイーブイについて書かれた本を読んだ事があるんです。それによると、イーブイはノーマルタイプのポケモンなんですけれど、炎・電気・水といったように、複数のタイプに進化する可能性を秘めたポケモンだとかって、その本には載ってた気がして……」
「!」
「形態変化だなんて、そんな能力は普通じゃおかしいとは思ってましたけど。もしかしたら……」
「相手のタイプに合わせて、進化と退化を繰り返す事が可能な能力を植え付けられていたって事か……それも、人為的に!」
グッと、レッドは怒りをこめたような拳を握り締める。
「でも人為的って、一体だれがこんな事を」
「決まってる……! こんな、ポケモンを改造するみたいに酷い事をできる奴等は、あいつ等しかいない。ロケット団だ!」
「ロケット団……!?」
「きっとこのイーブイは、ロケット団の元から逃げてきた実験ポケモンってところなんだろう。全く、酷い事を」
レッドはそう言って、イーブイをそっと抱き上げた。
その様子を見て、クリスは再びそっと話しかける。
「…………。あの、レッドさん。相談があるんですけれど」
「ん?」
「そのイーブイ、レッドさんに任せてはだめですか?」
「え、でも……このイーブイはクリスが」
「さっきも言ったように、私1人で捕まえたポケモンじゃありません。それに、この子の世話を見るのに私では役不足だと思うんです。私はあくまで、捕獲のスペシャリスト……の、修行中。この子はもっと、ちゃんとこの子の事を見てあげられるような人が連れて行くべきなんじゃないかと思ったんです」
「…………」
「め、迷惑……ですか?」
「……いや、そんな事は無いさ。分かった、このイーブイは俺がちゃんと面倒を見るよ。ロケット団の実験ポケモンだなんて悲しい過去も、俺が吹き飛ばしてみせる」
「レッドさん……!」
クリスは、レッドの心意気に感謝した。
「じゃあ、私はそろそろ行きますね。レッドさん、今日は本当にありがとうございました」
「あぁ。気をつけてな、クリス。それと、捕獲のスペシャリストへの道……頑張れよ」
「任せてください。3年も経ったら、一人前の捕獲のスペシャリストとして名乗りを上げて見せますよ♪」
拳を空高くに持ち上げるようなポーズで、クリスは答える。
「レッドさんも、早くその好きな女の子に再会できるといいですね」
「えっ!? あ、まぁ……」
「ふふっ♪ それでは、ごきげんよう〜」
明るい振舞いのまま、クリスは別れの挨拶を告げる。
始終、年下とは思えない大人びた印象をレッドに与えた彼女は、こうして去って行った。
「……やれやれ。それにしてもホント、今ブルーってどこにいるんだろうな」
「っっ!! レッド〜!!」
「へっ……?」
……いた。
今レッドの名を呼んだのは、明らかにブルーの声だった。
そしてレッドは、不意に後ろからブルーに押し倒される。
「危ないッ」
「!!?」
ドシュゥッッ!!
直後、レッドの体すれすれの位置に光線のような攻撃が通過する。
「なっ、なっ、なっ……何だ? ブルー! お前っ、一体……」
あまりの事に、上手く話もできないレッドだった。
だがブルーの表情には、尋常ではない何かが込められている。
「ごめん、レッド。でも、今はそれどころじゃないのよ」
「何っ!?」
「……!! も、もう追いついて来たわ」
彼女のやって来た方角より、ズシズシと歩いて来る1匹のポケモンの姿が。
それを見たレッドも、表情を変えた。
「あいつはっ……!! デオキシス!?」
「フゥゥオォォォ……!!」
オレンジの体に、胸の辺りに埋め込まれた紫の水晶体らしき物……。
その姿は、間違いなく先日戦ったデオキシスだった。
「……でも、なんか前と姿が違うような?」
以前はもっとスマートな体つきで、右には腕、左には腕の変わりに2本の触手がついていた。
ところが今の姿はずっとガタイが良く、両腕もこうらのように頑丈そうな太い棒状の腕になっている。
“……レベルアップ……完了……”
「何だと!?」
頭の中に直接響いて来るような、デオキシスの不思議な言葉。
するとデオキシスは、レッドとブルーが見る目の前で光に包まれ姿を変える。
「なっ!!」
“……ディフェンスフォルムから……スピードフォルムへ変更……アップデート処理終了……”
そして見せた姿は、初めてレッドが見た時よりも更に細い体だった。
両腕はもう腕とは呼べないような、1本ずつの細長い触手となり、全体的にも小柄になった印象を受ける。
「スピードフォルムって……何だよ!?」
「気をつけて、レッド。あいつ、何か普通じゃないのよ!」
「(まさか、イーブイが自分のタイプを形態変化させたように……こいつも自分の能力を、形態変化によってチェンジさせる事が出来るっていうのか!?)」
それも……デオキシスの能力は、人為的ではなく天然のもの。
未知なる脅威の存在に、レッドとブルーは思わず後ずさり。
デオキシスはこちらを向いて構え、明らかに戦闘体勢へと入っていた。
“……Lv3(レベルスリー)……攻撃準備完了……”
続く
レッドが一人っ子だという、確かな情報は聞いた事がありません。
兄弟がいるなんて話も聞いた事ないけど(ぁ)。
それはそうとクリス、11歳の彼女が5年前スリバチ山で修行してたと原作では言ってましたが……。
6歳で山ごもりする女の子とか、とんでもない子な気がします(苦笑)。
現在レッド11歳という頃に置き換えると、クリスはこの時8歳、スリバチ山での修行は2年前になります。
しかしこの頃、150匹しかポケモンが正式確認されてない時代なのに、すでにクリスはムチュールを(汗)。
さて、以前はLv1(レベルワン)では対処不能と言い残して去ったデオキシス。
今度のデオキシスに、果たしてレッドとブルーは……!?
……でも次回は、ちょっと話が脱線します(何っ)。
第8話「欺く(あざむく)者」、お楽しみに。