『それではこれより、準決勝第二試合を始めます!』
ポケモンリーグは、白熱の場と化していた。
先ほどのブルーの戦いぶりも、多くの観客たちの心をかき立てた。
その興奮も冷めぬ内に、次のバトルが今から行われる……!
「ポケモンリーグ……まさに、お前と決着をつけるには最高の舞台だな。グリーン」
「ふっ。できれば、決勝で雌雄を決したかったところだがな。今更、そんなのはどうでもいい」
ニヤっと口元に笑みを浮かべ合い、最初に繰り出すポケモンのボールを手に取る。
これからの戦いを、誰よりも楽しみにしている者。
それは、他ならぬ戦う当人達、レッドとグリーンだったに違いない。
『マサラタウンのレッド対、同じくマサラタウンのグリーン……!』
「……っ!」
アナウンスと共に、2人はボールを頭上に放った。
『両選手、レディ……』
そして、ボールが地についた瞬間。
その時こそが……!
『……試合開始(ファイト)!!』
第13編「好敵手(ライバル)対決」
前回までのあらすじ:
ついに始まったポケモンリーグ。
ブルーの準決勝相手は、なんとオーキド博士だった。
彼女の全てを見破っていた博士だったが、ブルーは辛くも逆転勝利。
そして、ブルーの過去が明らかに。
博士は、もう泥棒をしない事を条件として図鑑を授け、ブルーは涙してそれを受け取るのだった。
「こ、これは……」
「す……凄い……」
観客達の盛大な歓声は、いつの間にか静まりかえっていた。
それだけ皆が食い入るように、そして集中して試合を見ていたからである。
「レッド……」
試合を見る者の中には、ブルーの姿もあった。
この戦いを制した者が、ポケモンリーグの決勝戦でブルーと戦う。
もっともブルーにとっては、初めから決勝に来て欲しい者は決まっていた。
彼女も最初、レッドを最初から最後まで応援し続けるつもりだったのだが……。
「今更……あたしが、何を言っても無意味よね。どっちが勝つか、静かに見届けるしかないわ」
……ブルーすらそう悟らせる程に、この戦いは壮絶を極めたのである。
始めにレッドとグリーンは、互いがオーキド博士から貰ったポケモン、フシギバナとリザードンを出した。
草タイプのレッドがいきなり不利かと思われたが、機転を利かせて炎タイプのリザードンを迎撃。
第2ラウンドとして、次に2人がしかけた勝負は、カビゴンとカイリキーによる力と力のぶつけ合い。
カイリキーの圧倒的パワーは巨体カビゴンすらも圧倒しかけたが、相応のダメージをカビゴンもお返し。
互いの戦術にただ息を飲むばかりの観客達は、自然と無闇な声を出せなくなっていたのだ。
ここまでの駆け引きは、それほどまでに想像を絶していた。
「キュウコン、熱風!」
「うわっ、ニョロ!?」
そして今、グリーンがキュウコン、レッドがニョロボンで戦っていた。
キュウコンの熱風で、ニョロボンは天井高くに吹き飛ばされてしまう。
「くっ、まだ……まだだ!」
「そうだろ、レッド。お前がこれしきで、終わるハズがないからな!」
そう、この程度ならば先ほどからすでに何度も起こった。
しかし、レッドのポケモンが追い詰められるたび、彼はその戦局を根底から覆す。
そのたびにグリーンを驚かせるが、彼もまた冷静な対処でこれを捌ききっていた。
「(さぁ、今度は何をする? 何で、俺を楽しませる!?)」
グリーンは、不思議な気分だった。
レッドは、必ず勝ちたい何よりのライバルである。
にも関わらず、グリーンは心の中で、何故か敵を応援する。
レッドに、この状況を打破して欲しいと願ってしまう。
そしてそれは、すぐに現実のものとなってきた。
レッドが自らの力で、それもグリーンが想像もつかない所から、一気に形成を逆転する。
まるで、今までレッドの首元につきつけていた刃が、一瞬にして自分に差し向け返されるかの如く……。
バトルには勝利したい……だがグリーンは同時に、この興奮にも強烈に惹きつけられていた。
「まさに、理想のライバル同士じゃな」
「……え?」
その一方で、試合を見ていたブルーの耳に、隣からオーキド博士の声が届いた。
グリーンは博士の孫……ならばやはり、博士はグリーンを応援しているのか。
それとも、どちらをも等しく見て、彼らの戦う行方に全て託しているのだろうか。
「旅立った頃……レッドとグリーンには、それぞれ弱い部分や足りない部分があった。じゃが、彼らは互いに足りないものを、互いに持っておったんじゃ。だから、ライバルとして惹かれ合っておる」
「! ライバル……」
「お互いが、お互いの師なのじゃよ、あの2人にとってはな。旅の中で、2人は各々の良き部分を吸収し尽くしてきた。手の内を知り尽くした2人なのじゃ。それ故、どちらもが思っておるはずじゃ」
自分の図鑑を託した、少年達。
その勇姿をしっかりと目に焼き付けながら、博士は述べた。
「『この試合にだけは、絶対に勝ちたい』……とな」
「うん、分かる……。レッドもグリーンも、『必ず勝つ』って意志が物凄く伝わって来る……」
自然と、ブルーの手が拳を作り、力がこもっていく。
「……ちょっと、羨ましい。レッドとグリーンの、そんな間柄が」
「そうじゃな。確かに、ここまで見事なライバル関係というものは、滅多には築けぬものかも知れん」
腕を前に組み、オーキド博士は深く頷いた。
「じゃがな、ブルー。お主とて、あの2人どちらにも無い部分を、きっと持っておるはずなんじゃ」
「え……?」
「今からでも、君があの2人の間に入ってゆく事はできる。その時は、今までとはきっと違った光景が見えてくるはずじゃよ」
「! そう……ね。あたしだって、レッドやグリーンには負けたくない」
今度はブルーの方が大きく頷き、そして述べた。
「レッドとグリーンにも、あたしの事を同じように思わせてやるわ!」
……そして。
眼前で行われる決戦は、いよいよ終局の時が近づく。
「さぁ、リザードン! この炎のフィールドを引き継げるのは、お前しかいない!」
キュウコンを引っ込めるグリーンが、再びリザードンを戦闘に出した。
対するレッドも、次なるポケモンを放つ。
「なら……行け、フシギバナ!」
「っ!?」
「え……」
それは対戦相手のグリーンも含め、その場にいた多くの者にとって意外だった。
バトルし始めの時もこの対決であったが、それはお互いに最初のポケモンが分からなかったからである。
だが今、相手が炎という事が分かっているのに、レッドはわざわざ自分が不利である草を出したのだ。
「ふんっ。リザードン、やれ!」
だが、グリーンは容赦しない。
強烈な火炎を吐きつけ、レッドのフシギバナを攻撃したのだ。
ところが……ポタ、ポタ……。
「む?」
その場に、少しずつ水滴が落ちてきはじめる。
次第にそれは多くなっていき、やがて雨のようになってバトルフィールド内に降り注いだ。
「なっ、これは……ニョロボンの雨乞い!?」
「この雨の中じゃ、炎の威力は落ちる。そして……ピカチュウ!」
すかさずレッドが、電気タイプのピカチュウに交代。
「いっけぇ、かみなり!!」
「何!?」
大量の雨が降り注ぐこの中を、雷攻撃が落ちてきたら回避しようがない。
ましてやリザードンは、雨で弱まっているうえ、飛行タイプでもあるため電撃にも弱いのだ。
「くそっ、炎で押し返せ!」
落ちてきた雷に、グリーンは対抗していく。
だが前述の通り、雨乞いで炎は弱まっている。
それでなくとも、真上からの攻撃と真下からの攻撃とでは、勢いにどうしても差ができる。
状況は、一気にレッドの優勢となった。
「これで……これで、決めてやる!!」
ポケモンリーグのバトルは、1匹がダウンした瞬間に負けが決まる。
ここでリザードンを打ち倒せば、レッドの勝利なのだ。
「……ふっ、ふふっ……」
ところがグリーンは、窮地に立たされたというのに笑っていた。
それも心の底から、何故か楽しげに……。
「やっぱりレッド、お前との戦いは最高だな」
「!?」
「これだ……俺は、こういう戦いを求めてたんだ。昔から計算ずくな戦いばかりをしてきた俺にとって、ことごとく計算が外れていくお前との戦いは、本当にスリルがあるぜ」
と、ここでグリーンは別のポケモンのボールを手に取った。
「この楽しさ、お前にも味わわせてやるよ!」
リザードンは、まだ雷に炎をぶつけて耐えている。
その状況下、新たに繰り出すのは何かと思ったが……。
「!? それは……」
「そう。俺のもう1匹の炎ポケモン、キュウコンだ」
雨が降って炎が弱まる状況であるにも関わらず、グリーンが出したのはキュウコンだった。
それは、先ほどリザードンに対してフシギバナを出したのと同じぐらい、思いがけない行動だ。
「(何のつもりだ……。何でグリーンは、わざわざもう1匹の炎ポケモンを……)」
「ふっ、こうするのさ。キュウコン、日本晴れ!」
すると、どうだろう。
途端に雨が止み、逆に天井付近に太陽のような熱と光の球体が発生する。
「!? そうか……」
日本晴れになると、今度は炎の力が強まるのだ。
それまで雷にかろうじて炎をぶつけ耐えていたリザードンが、一気に巨大な炎で押し返す。
「しまった。ピカチュウ!」
「無駄だ。もう……」
猛烈な炎が襲いかかる。
それはあっという間に、ピカチュウを飲み込んだ……が。
「むっ!?」
ピカチュウの姿は、瞬時にそこから消えうせる。
代わりにレッドのすぐ足元で、ピカチュウは息切れして佇んでいた。
「ピカっ……ピカぁ……」
「身代わりだったか。だが、そろそろ体力も限界に近いな」
「くっ……!」
リザードンとキュウコン、グリーンの二大炎ポケモンが更なる追撃を開始。
「今、炎の力が最高に強くなってる状態だ! レッド、お前との勝負、今度こそ終わりだぜ!」
相手2匹の炎の熱量が、極限にまで高まった。
そして、最後の一撃が放たれる。
「オーバーヒートっ!!」
ゴオォォォォッ!!
真っ赤な空気が、一気に押し寄せてきた。
「これで終わり……か。あぁ、そうだな……」
静かに、レッドは口にする。
「ふん、お前らしくもない。だが、さすがにこれには諦めたか?」
「……その逆だ、グリーン。これを押し返して、俺が勝つって事だよ!」
「なら……やってみろッ!!」
もうグリーンの攻撃は、目前にまで迫っていた。
すでに、何か細工を仕掛けている余裕はない。
「純粋に、パワーだけで決着をつける。ニョロ、ピカ!」
ニョロボンの水の力と、ピカチュウの電気の力。
レッドは、その2つを目の前で融合させたのだ。
「今だ……押し返せーっ!!」
ズドォォォンっ!!
直後に、巨大な爆音が鳴り響く。
レッドもグリーンも、彼らのポケモンも、そこから発生した煙に飲み込まれていった。
「きゃっ!?」
「むっ……」
煙はブルーとオーキド博士がいた場所にまで流れ込み、辺りを包む。
もはや、戦う2人の姿は確認できなかった。
「ど、どっちが……!?」
無論それは、ブルーのみならず誰もが抱いた想いだ。
この壮絶なバトルの行方は、煙が晴れた時に明らかとなる……!
「……!!」
次第に視界が回復してきた時……。
まだ、2人の立つ姿を確認できた。
だが直後に、両者の足がぐらつく。
「あっ……」
しかし、その後の動きには違いが表れた。
レッド、ニョロボン、ピカチュウは、よろけながらも腕を地面について耐えしのぐ。
逆に……グリーン、リザードン、キュウコンの方は……。
「……さすがだな、レッド……」
ドサッ!
揃って、その場に体を伏したのである。
『……きっ、決まったー!! 準決勝第二試合、レッド選手の勝利!!』
アナウンスが、けたたましく会場内に響いた。
その途端、これまで静まり返っていた観客達から、ワァァっと盛大な声が沸き起こったのである。
「や、やった……やったぁ!!」
元気よく飛び上がったのは、レッド……ではなく、ブルー。
むしろレッド本人は、疲れ果てて立ち上がる事が出来なかったのだ。
「へっ、へへへっ……やったな、みんな……」
へとへとな口調で、レッドは自分のポケモン達全員にそう声をかけた。
しかし、彼の記憶もここまで。
直後にレッドの意識は途絶え、疲れた体は安息の眠りへと陥ってゆくのだった。
続く
ブルーのタッツーが、実は本当はシルバーのポケモンであると最近知りました。
この物語では、デオキシス・レベル2戦でブルーがゲットする話を作っちゃったのに(ぁ)。
……ま、いいや(苦笑)。
レッドvsグリーンの戦いでしたが、今回は大したこと書いてない気がします(何)。
というのも、わざわざポケスペ原作の描写をなぞるだけではつまらず、また著作権問題がより強まる(爆)。
だったら、原作にあった場面は極力カットし、後は自分なりにバトルの味付けをしてみようと思ったのです。
実はその味付けも大した事はしておらず、本当に単なる通過点的な話になってしまいました。−−;
本当はこういう話はできるだけ避けて、進展性のある話を作るべきなのですが……。
今回は場面が場面だった事もあり、なかなか難しかったです(まるっきり原作と変えるのも抵抗あったし)。
次回、第14編「ブルーちゃん爆進レポート(謎)」をお楽しみに。