道に迷ったとき・・・人はどこを進むのでしょう・・・?
光への道・・・
闇への道・・・
もしくは来た道を引き返す事も・・・
または道を自分で切り開くことも・・・
迷路なら壁を伝っていけば、きっと出口が見つかるでしょう。
これは人の進む道も同じことだと考えます・・・
歩いていけば、そこが道なのです。
だから・・・足を止めることだけはしないでください。
進むことをやめて止まってはいけません。
立ち止まっては・・・・・・・・・いけないのです。
どんなに苦しくても前に進むこと・・・・・・
それだけが、私たちの時を動かしてくれるのです。
だから、私は・・・・・・どんなに苦しくても前に進むことだけはやめたりはしません。
・・・・・・・・・答えを見つけるまで・・・・・・・・・
FOURTH
10:道しるべを
TSUYOSHIという謎のノッポ男の襲撃から3日が経過していた。
マングウタウンの町外れの小さな墓地・・・そこに一人の少女が花束を持ってゆっくり歩いていた。
しかし、ただゆっくり歩くだけではない。
柔らかな雰囲気を纏って、一点の汚れもないおだやかな香りを漂わせてだ。
それは白いロングスカートや淡いピンク色のカーディガンからも醸し出されていた。
どうやら、彼女はお墓参りに来たらしい。
「(ここ・・・ですね・・・あら?)」
彼女は一つの墓地の前に腰を下ろして、花を供えた。
だけど、その花束を備えようとしたところには、1輪の花が供えられていた。
彼女はその花と並ぶように花束を置いた。
そして、その墓標の前に立ってお祈りをした。
「(エースさんまで行方不明なんて・・・・・・)」
数十秒間の祈りをささげた後、膝をついて、空を見上げて物思いにふける彼女。
このとき、彼女が考えていたのは2人の少年の顔だった。
そこに一人の靴の音がコツコツと聞こえて彼女は振り向いた。
「あんただったのね。去年の丁度この日に花束とその1輪の花を備えていったのは」
「・・・ルーカスさん・・・」
彼女の顔を見て名前を口にした。
「はい。でも、1輪の花は私ではありません」
「え?」
予想もしなかった返答にルーカスは首を傾げた。
「それならこの1輪の花は・・・?」
「ヒロトさんだと思います・・・・・・」
と、彼女が答える。
「ところで・・・あんたのことはトキオから聞いたけど・・・」
ルーカスのほうを彼女は見た。
「オトハ。・・・あんたって私の弟・・・つまりヒロトのことが好きなの?」
「・・・・・・はい」
彼女・・・オトハはためらわずに返事をした。
ふーん・・・と、ルーカスは頷く。
「じゃあ、何でヒカリの墓をお祈りするのかな?あんたにとってヒカリは邪魔な存在じゃないのかな?」
探るようにオトハの顔を見るルーカス。
「確かにそう思ったことは何度もあります。私がヒカリさんに代わることが出来たらと思ったことも何度もあります。そう・・・彼女がいなければと・・・。・・・そのたびに私は何度その考えを恥じたことか・・・・・・」
そういいながらふとルーカスから目線を外す。
「でも、私はこう考えてきました。私がヒロトさんにとって、ヒカリさんを超えるような存在になれたら・・・って。そのためには生きているヒカリさんを超えなければならないと・・・。でも・・・」
「すでにいない人を超えることは出来ないわね・・・」
目の前にある墓地を見てつぶやくルーカス。
「はい・・・だから、私はいつまでもヒカリさんを超えることが出来ないのです。そして今、ヒロトさんがどんなことを考えて、どんなところにいてどんな想いをしているかは分かりません・・・・・・」
「弟のことだから、自分のことを責めているのかもしれないわね」
ルーカスが小声でそういう。
「代われることなら代わってあげたいのです。ヒカリさんの代わりになれるのなら、代わってあげたいのです!それがダメなら、私はヒロトさんの心の穴を埋めてあげたいのです!!」
「オトハ・・・・・・あんた・・・」
ふと、オトハの目から零れ落ちる涙。
ルーカスはその様子に驚いていた。
「(この子・・・・・・)」
ヒカリはスクールに通っていたときから、ヒロトといっしょに遊んでいた。
その様子をルーカスはずっと見ていた。
ヒカリがヒロトを好きなのは見て分かることだった。
それに、彼女はヒロトのことで相談しにきたこともある。
現にヒカリにヒロトといっしょに冒険に行きなさいと助言したのはルーカスなのである。
しかし、それをヒロトが断ることはルーカスの予想外の出来事だった。
旅立ちの朝に一人で旅に出ると言った時、ルーカスは非常に複雑だった。
彼女に理由を聞くにも旅立った後でなかなか連絡が来なかった。
そして、ノースト大会から負けて帰ったときも、ルーカスの質問には気のない返事ばかりだった。
そうしてヒカリは行方をくらましてしまった。
ヒカリがヒロトをどれだけ好きだったかは、ルーカスには分からない。
でも、彼女には分かったことがあった。
ふと、ルーカスは口を開いた。
「オトハ・・・あんたにお願いがあるわ」
「・・・何でしょう?」
涙を拭って、ルーカスを見た。
「ヒロトのことを・・・・・・救ってほしいの」
「え?」
「ヒロトのことを想っているあなたならば、救ってあげられるかもしれない・・・・・・」
「・・・・・・出来るでしょうか・・・・・・?」
オトハは表情を曇らせていた。
「今のヒロトには、道なんて見えてないと思う。それをあんたなら、私は示して挙げられると思ったのよ」
「私が・・・?」
「あんたならできるわよ!私には分かる・・・・・・きっと、あんたじゃないと出来ないかもしれないわ・・・・・・私を信じなさい!」
オトハは立ち上がって再び空を見た。
「それにね・・・・・・立ち止まって、いいことなんてないのよ」
「ええ・・・そのつらさは私も知っています。私には2つ下の妹がいるのです」
「トキオから聞いているわ。彼女もヒロトのことが好きだったんでしょ?」
「ええ。その一件から、彼女は立ち直ることが出来なかったのです。でも、今は立ち直ってある人と旅をしているようです」
「・・・そう・・・それならよかったわ・・・」
「・・・今日は辛くたって、明日は楽しいことが待っているかもしれない。そう・・・どんななことになっても立ち止まっていいことなんてないです・・・」
「ヒロトのこと・・・・・・引き受けてくれるかしら?」
「はい。・・・・・・がんばります」
2人の視線がぶつかる。
「(比べることなんて出来ないのかもしれないけど、私には感じる・・・。ヒカリよりもさらにオトハはヒロトのことを考えているように見えるわ。ヒロトがヒカリを想っているのと同じくらいオトハが自分のことを想っていると気づいてくれればもしかしたら・・・・・・)」
ルーカスは一つの可能性をオトハに託したのだった。
「湖が見えたわ!」
風を受けながら、湖を確認するのは帽子のツバを後ろ向きに被っている少女だ。
「ここはナシロ湖。ここを鳥ポケモンで飛んでいけばフールタウンの一番の近道なんだぜ!」
「それはわかったけど、なんで私の鳥ポケモンに乗っているのよ!!」
「その方がしゃべりやすいだろ!」
「別に私はあんたと喋るために行動しているわけじゃないのよ!!」
帽子の少女がドッ!っと男を押すと、あえなく男はドボン!と湖の中に転落して言った。
「ひ、酷いじゃないか!ライトちゃん!」
「元はと言えば、あんたが私に催眠術をかけなければ、エースに会えたかも知れないのよ!!」
「(・・・・・・あのときのこと・・・まだ根に持っていたのか・・・でも、あの時はライトちゃん、酷いケガだったし無理させるわけには行かなかったしなぁ・・・)」
と、湖の中で考えるのはサングラスを額にかけた男・・・トキオである。
さて、何故トキオとライトが一緒に行動しているのか?
それは以下のようなことがあったからである。
11:ナシロ湖
今から1日前に遡る。
マングウタウンの研究所へライトがやってきた。
彼女は服がボロボロだったのにもかかわらずそのまま来たらしい。
「ら、ライトちゃん!?そのボロボロな格好はどうしたんだい!?」
「はぁはぁ・・・私の格好なんてどうでもいいわよ!!そんなことよりも・・・エース・・・エースの情報を知っているんでしょ!!教えて!!」
必死の形相にトキオは気圧されて、急いで彼女を応接間へと連れて行った。
そしてトキオはライトをイエローに紹介した。
イエローがエースの母親であるかもしれないということも。
ライトがここに来たということで、ルーカスやオトハもその場に居合わせた。
なお、トミタ博士はまだ帰ってきていないらしい。
「何だ・・・エースは見つかってないのね・・・」
「ごめん・・・でも、手がかりがあるんだ。イエローさんは別次元の世界から来た人かもしれないんだ・・・・・・」
「別次元の世界・・・・・・?」
「そう。トキワシティやマサラタウンがもう一つある世界・・・でも、こっちにしかないものがあったりと、2つの世界を比べて若干違いが生じている世界・・・パラレルワールドみたいな・・・」
「まさか・・・・・・あいつらも、そのパラレルワールドから・・・?」
「ライトちゃん?どうしたの?」
ルーカスがライトの様子を見て尋ねる。
「私・・・エースに会ったの・・・」
「え?」
視線は自ずとライトに集まる。
「5日前に私はライズシティでエースを見つけたの・・・。でも、3人組が邪魔してきて、エースを連れて行っちゃったの・・・」
「まさか・・・・・・誘拐!?」
「エースさんが!?」
「そんな・・・・・・エースが・・・」
ルーカスとオトハとイエローは口々に声を上げる。
「そいつらの一人と私は戦ったんだけど・・・・・・全く歯が立たなくて、そのまま気絶されられちゃったの・・・」
「それじゃ・・・エースの行方は・・・・・・」
トキオは俯いてしまった。
「だけど、トキオが言った手がかりとあわせると・・・エースがどこにいるかがわかったわ!」
「えっ?」
一同がライトを再び見た。
「そのパラレルワールドよ!」
「!?」
ライトの発言に皆驚きを隠せない。
「何でそんなことが分かるんだい?!」
「3人組の中の一人・・・ミナノって女と戦って負けて気絶する直前に、明らかに空間が歪んでその中に入って消えて行ったのを見たの。恐らくそれがパラレルワールドへの入り口・・・・・・」
「そうか・・・それなら、エースを探すにはその世界に行くしかないな!」
と、トキオ。
「ちょっと!それじゃ、一つ言えることがあるじゃない!」
「えっ?ルーカス姉さん・・・何ですか?」
「この前来たノッポな男・・・TSUYOSHIといったかしら?あいつももしかしたらパラレルワールドから来た奴の一人じゃないの!?」
「そうか!!そしてそいつは・・・イエローさんを明らかに狙っていた・・・・・・」
「そう考えると、イエローさんとエースには繋がりがありそうね・・・」
ルーカスがイエローを見ていう。
「こうしてはいられないわよ!私たちもそのパラレルワールドへ行くのよ!!」
「ええ、ボクも一刻も早くその世界に戻ったほうがいいみたいですね!急ぎましょう!」
ライトとイエローは立ち上がる。
二人とも燃えていた。
「ライトちゃん、イエローさん落ち着いてください・・・。とりあえず、どうやってパラレルワールドに行けばいいのでしょう?」
オトハの一言で皆唸る。
「確かに・・・でも、イエローさんがこっちの世界に来た方法を使えば・・・」
「ごめんなさい・・・どうやってボクがここへ来たか分からないんです・・・」
ライトの考えは無理だった。
「俺に一つ手掛かりがある」
すると、意見を出したのはトキオだった。
「オートンシティに行ってくる」
「オートンシティ・・・?トキオ・・・まさか”あいつ”の所に行く気!?」
「ルーカス姉さん。今はどんな情報も集めないといけないんだ。だから、直接行って来るよ!それまで研究所をお願いします!」
「トキオ・・・・・・分かったわ」
ルーカスは承諾した。
「オートンシティ・・・?それなら、私も行く!!」
「ら、ライトちゃん!?」
「そこに何があるかなんて分からないけど、行動あるのみなのよ!じっとしてなんていられないわよ!!」
「わかった。じゃあ、俺とライトちゃんでオートンシティへ向かう」
「トキオさん・・・私も何か手伝えることがありますか?」
オトハがトキオに聞く。
「オトハさんはイエローさんの護衛をお願いできますか?正直、あのTSUYOSHIレベル以上の奴が再び来て戦えるのはこの中でオトハさんだけです」
「分かりました」
「それにしても、オトハさんが丁度来てくれて助かりましたよ!何するか思い出すまでいてくださいね」
「ええ・・・・・・」
ところでトキオはオトハが何の目的もなくここに来たわけでないことを知ることはなかった。(ェ)
「で、トキオ・・・どうやってオートンシティへ行くわけ?」
「もちろん、まず北東のナシロ湖を越えてフールタウンへ・・・それからオートントンネルを通らず、オートン山を越える予定ですけど・・・?もちろん飛行ポケモンで一気に」
ルーカスに聞かれて、トキオはルートを伝えた。
「確かに・・・そのルートは速いからいいわね・・・だけど、気をつけないさいよ」
「分かってるって♪」
「別にあんたの心配はしてないわよ。あんたがいないとコーヒー淹れてくれる人がいなくなっちゃうじゃない」
「え゛」
さらっとルーカスは言った。
ルーカスにとって、トキオの存在価値はそんなものだったらしい。(ぁ)
そして、夜遅かったので休んだ後出発して、現在、トキオとライトはナシロ湖を横断していた。
「ナシロ湖って大きいわね」
「ノースト地方最大の湖だからね。それ故にいろんな種類のポケモンが住んでいるんだ」
湖を見ると、ミニリュウやタッツーが泳いでいたり、テッポウオが水面から飛び跳ねて遊んでいたりと、トキオの言うとおりたくさんのポケモンが姿を見せていた。
ところでトキオは、一度ライトにチルタリスから蹴落とされたのを反省してか、今度はしっかりとエアームドに乗っていた。
「ところであんた、ラティオスを持っていなかった!?何でテレポートで一気にオートンシティまで行かないのよ!!」
「仕方がないだろ!あいつは妹思いのラティオスなんだ。たまにアルトマーレへ帰るのを約束で俺の手持ちポケモンになっているんだ。そこらへんはきっちりけじめをつけないといけないだろ!」
「なるほど・・・ラティオスもシスコンで、トキオもシスコンというわけね」
「別にシスコンじゃない!ラティオスも俺も単に妹のことが心配なだけだ!!」
「そーゆーのをシスコンて言うんじゃない」
ライトが口を尖らせていう。
「以前アゲトビレッジに戻ったときなんか、カレンがハルキと一緒に温泉旅行に行くって言ってたんだぜ!俺はハルキに悪いことされないか心配で心配で・・・・・・」
「真髄のシスコンね。言っておくけど、そんなに心配されたら、カレンは何も出来ないわよ。それにカレンはうれしいと思ってないわよ」
「俺は別にカレンを喜ばせるために心配しているわけじゃない!俺はあいつの将来が心配なんだ!それに何を考えているか分からない無口男の思うようにされるのが嫌なだけなんだ!!」
「要するに、あんたはハルキのことが嫌いなだけね」
「そうさ!俺はハルキのことが嫌いだ!!」
プイッ!っとそっぽを向くトキオ。
「あんたがハルキのことが嫌いでも、カレンがハルキのことを好きならどうしようもないことよ」
「それでも俺はイヤなんだよ!」
「もし、私がカレンだったらあんたなんてケチョンケチョンのペッチャンコにしてやるんだから」
「・・・えっ!?それ脅し!?怖いから!!(汗)」
おどけてトキオは言う。しかし、ライトはキッとトキオを睨んだ。
「言っておくけど、私もあんたのこと嫌いだから」
「え?(汗)」
面と向かっていわれてショックだったか、トキオは黙り込んでしまった。
しかし、その空気もそれほどもたなかった。
「ライトちゃん!!危ない!!」
「えっ!?」
ナシロ湖を半分超えた所でトキオがエアームドでライトのチルタリスに体当たりを仕掛けた。
しかしそれは下から撃って来た破壊光線をかわすためだった。
「あれは・・・ギャラドスの群れ!?」
ライトは下を見て確認する。
「いや・・・それだけじゃない・・・ハクリューやミロカロスの群れまでいる・・・」
「!?」
すると、いっせいにポケモンたちは襲い掛かってきた。
それも主にドラゴン系が使う『竜巻』の嵐だった。
「ぐっ!!」
「きゃぁ!!」
強力な風に吹き付けられて、うまくコントロールが効かないエアームドとチルタリス。
「とりあえず、こいつらを戦わないと・・・!!ゲンガー!!『10万ボルト』!!」
「くっ!チルタリス!!『竜の息吹』!!」
二人の攻撃がミロカロスに届くがそのミロカロスの前には鏡のような壁が・・・
「ま、まずい!!ゲンガー!!」
ミロカロスはチルタリスとゲンガーの攻撃を弾き返した。『ミラーコート』だ。
ゲンガーはライトのチルタリスにダメージが行かないようにと、自らダメージを受けに行った。
しかし、その瞬間、一匹のミロカロスは倒れた。
「『攻撃を受けて止めてくれてありがとう』・・・なんていわないわよ!」
「(いや・・・言ってるじゃないか)」
心の中でさりげなく突っ込むトキオ。だが、油断できない状況には変わりない。
「ところで、何でこいつら強いの!?ゲンガーが『道連れ』を使ってなければ、さっきので終わりだったわよ」
「ここのナシロ湖のポケモンは頭がいいんだ。弱いトレーナーが出てきたときは進化前のポケモンがでてくるんだけど、強くなれば強くなるほど、それに応じた野生のポケモンたちが現れるんだ」
「そんなのありィ!?私、普通にあの水系ポケモンたちに対抗できるポケモンがいないわよ!!」
ライトの残りのポケモンは水中専用のゴルダックと後は陸上で戦うバシャーモぐらいだった。
「それなら、ここは俺に任せてくれ!ジュゴン!!ローガン流・・・『氷の世界』!!」
空中でジュゴンを繰り出して、水中に向けてその技を放つ。
すると、一瞬にしてカッチーンと水面が氷付けになった。
水面にいたミロカロスやギャラドスたちは一瞬にして動けなくなった。
「すごい・・・でも、まだ飛んでいるハクリューの群れがいるわよ!!」
「ライトちゃん!早くこっちへ!!」
氷に降り立ったトキオはこっちへ来るように行った。
急いで降り立つが、もちろんハクリューは空から襲い掛かってくる。
「じゃ、行くぞ!サンダース!!例の技だ!」
トキオがサンダースを繰り出すと、瞬時に背中の針を立たせながら、放電し始めた。
すると、その針が一斉に飛び出して、ハクリューにダメージを与えていった。
しかし、ダメージだけではない。その針には電気も纏ってあり、痺れさせる効果まであった。
攻撃を受けたハクリューたちは、凍った水面の上で痺れていた。
「我流『サンダーランス・ショット』だ」
とトキオが言うと、ミロカロスとギャラドスたちは氷漬け、そして、ハクリューは氷の上で痺れていた。
「ランス?・・・ランスというよりもニードルの方がいいんじゃない?」
「まあ、細かいことは気にしさんな!先へ急ぐんだろ?」
「そ、そうね・・・。でもそれにしても、こいつのポケモンたち・・・おかしくない?」
「確かに・・・湖のポケモンたちが異様に殺気立っていた・・・・・・。しかもよく見ると傷だらけだ!?致命傷には至らない傷ばかりだけど。何があったんだ!?」
氷漬けになっているギャラドスやミロカロスを見てトキオはそういう。
「あれ?」
「どうしたの?ライトちゃ・・・」
トキオとライトが見ると、ハクリューがこっちを睨んでいた。
「忘れてた・・・ハクリューの特性は『脱皮』・・・つまり麻痺は・・・」
「トキオ・・・詰めが甘いわよ!!」
すると、ハクリューたちは一斉に飛び上がった。
「に、逃げるぞ!!」
エアームドとチルタリスを再び出して、全速力で彼らは逃げていった。
「追いかけてくるわ!?」
「しつこいぜ・・・・・・でも見えたぜ!」
トキオが指差す先には湖の終わりが見えた。
「このまま一気に行くぜ!!」
「ええ!」
トキオとライトはスピードをさらに上げて、ハクリューたちを引き離しにかかった。
しかし・・・
ヒュッ!シュン!ブワッー!
「なっ!!」
「きゃあ!!」
突如の衝撃波にエアームドとチルタリスはバランスを崩して湖のほとりに落ちていった。
一方のハクリューの群れはその衝撃を見て恐れて戻っていった。
「いてえ・・・さっきの衝撃は何だ?!」
「ポケモンの技・・・?」
「否・・・違う。それは拙者の剣技である」
「誰だ!?」
トキオがそういうと、森の中から一人の男が出てきた。
格好は銀色の袴を羽織っていて腰に2本の刀を携えていた。
「拙者の名はクサナギ。剣士の高みを目指す者だ」
「クサナギ・・・?」
「剣士・・・?」
「今ここで高みを目指すために修行を積んでいる。つまり、拙者の相手をしていただきたい」
「まさか・・・野生のポケモンにあれほどの傷を負わせたのも・・・」
「傷?傷をつけぬ程度に手加減しているつもりだが・・・くっ、やはりまだ拙者は未熟ということか・・・」
「どっちにしてもお前の相手なんてしている暇はねえ!!」
「そうか、だが、相手をしないならここは通さん!通りたくば、拙者の屍を超えていけ!」
一歩、クサナギが踏み込む。
その瞬間、トキオの視界からクサナギが消えた。
「!?・・はやっ・・!!」
ドスッ!
「うっ!!」
「トキオ!?」
腹を小突かれて、トキオは気絶してしまった。
「ちょっと!卑怯じゃない!あんたは剣を持っていて、こっちは丸腰なのよ!?正々堂々と勝負しなさいよ!!」
「正々堂々か・・・これは失礼した。いつもの癖で」
「(どんな癖よ)」
「それなら、お主と戦うのはポケモン同士でやろうではないか!!」
すると、クサナギはポケモンを繰り出してきた。
「・・・私たちは急いでいるのに!!タテトプス!!」
ガキン!!
金属の音が響き渡る。
ライトはタテトプス。そして、クサナギはカモネギだ。
「なるほど・・・硬いな・・・」
「(こいつ・・・ポケモンにまで剣士まがいなことをしているわけ!?どこまで侍バカなのよ)」
「カモネギ!見せてやれ!鉄をも切り裂く抜刀術を!!」
「やれるものならやってみなさい!!『鉄壁』からの『メタルバースト』で弾き飛ばしてあげるわ!!」
クサナギはカモネギに二つのネギを渡した。それはどちらも長ネギだった。
長ネギは急所に当たりやすくするアイテムである。
「いざ、行かん!」
ズバ!ズバ!ドカン!!
「えっ!?」
タテトプスに反撃の余裕はなかった。
一瞬にして斬りつけられて、ダウンさせられた。
「そんな・・・防御力には自身があったのに・・・」
「ふっ、こいつの攻撃に防御など無意味だ。長ネギのクリティカルヒットでそれを無効化する」
「(・・・こいつ・・・強い!?あのミナノと同じくらい!?)」
「どうした?もう終わりか?」
タテトプスを戻して、ライトは次の攻撃に入った。
「プクリン!!『水の波動』!!」
クサナギとカモネギは余裕で構えていた。
「その程度の攻撃・・・無に等しい」
カモネギがネギを収めたと思った瞬間、水の波動が切り裂かれて、プクリンにまで達した。
「え!?プクリン!?」
致命傷にまではいたらなかったが、ライトにはその攻撃が見切れなかった。
「一体何を・・・!?」
「『真空波・一閃』・・・風をも斬り裂く斬撃だ。正確には風だけではない。火も水も風も目に見えないものまで切り裂くことが出来る必殺剣だ」
「・・・?」
「どうした?」
ライトは首をかしげていた。
「何故、こうも簡単に相手に技を教えるわけ?」
「そんなの愚問だな。戦いをより面白くするためだ」
「・・・つまりあんたは修行バカで侍バカでバトルマニアというわけね・・・」
「何とでも言うがいい。拙者は自分を高めるためならなんだってする!!『五月雨突き』!!」
「プクリン!『リフレクター』!!」
打撃攻撃と読みきって、壁を張るプクリン。
だが、カモネギの猛攻にあまり保つことは出来ないようだった。
「耐えて!!」
「引け!『時雨抜き』!!」
ネギを思い切って一振りした。しかし、それだけで何も起こらなかった。
「(え!?一体なんだったの!?外したの??でも・・・今のうちよ!!)プクリン!まるくなって『転がる』!!」
「『居合斬』!!」
ズガン!!
強力な二つの技が激突。
そして、立っていたのはカモネギだった。
「(つ・・・強い・・・)」
しかし、カモネギも剣(ネギ)をついて息をしていた。
「なるほど・・・相当のダメージを受けているのか・・・。さすがに無傷で切り抜けることは出来なかったようだ」
クサナギはカモネギを戻して、今度はバシャーモを繰り出してきた。
もっているのは厚みはあるがどこか質量が軽そうな剣だった。
しかも、左右に一つずつ持っていた。
「剣を持っているなんて反則じゃない!!」
「アイテムをもたせることは別に悪いことではない」
「・・・アイテムというか武器じゃない!!」
ライトのツッコミもクサナギの前には無意味だった。
「じゃあ、行って!ゴルダック!!」
気合十分で飛び出すゴルダック。
だが・・・
ズバッ!!!!
「グワッ!!」
「えっ!?」
次の瞬間、ゴルダックは戦闘不能になった。
「(何で?そのバシャーモ・・・一体何をしたの!?斬りつけたような音だったけど・・・あのバシャーモ動いてないじゃない!?)」
「不思議そうな顔をしているな・・・教えてやろう。今の攻撃はカモネギの『時雨抜き』だ」
「まさか・・・時間差攻撃!?」
「実際振った時間と当たるまでに時間差があるというわけだ」
「しかも・・・まさか一撃で倒れるような威力なんて・・・」
「終わりか?」
「まだよ!!」
クサナギのバシャーモが剣を振り下ろしたとき、ライトのバシャーモがそれを受け止めた。
「なるほど・・・同種族同士の戦いか・・・」
「言っておくけど・・・このポケモンであんたの全てのポケモンを倒してあげるわよ!!」
「そうか・・・。バシャーモ!!『メテオレイン』!!」
「接近して!!」
剣から放たれる強力な火球をかわしていくバシャーモ。
そして、相手のバシャーモに照準を合わせて炎の蹴りをお見舞いした。
「『ブレイズキック』・・・決まったわね!」
「ヌルい」
「!?」
ズサーッと蹴りの勢いで地面を刷りながら後退したバシャーモ。
ライトのバシャーモの蹴りを二つの剣でガードしていた。
「このバシャーモの剣『兎爆』の力・・・見せてしんぜよう」
「『賭博』?賭けでもするの?」
と、ライトが言うけど、クサナギは無視した。(ぁ)
「この剣には2つの能力がある。一つは炎と爆発の能力。バシャーモの本来の炎を引き出して、剣の力を増幅させている。そしてもう一つは・・・・・・」
クサナギのバシャーモは一気に切りかかった。
「えっ!?」
そう、斬りかかっているのだが、そのスピードが全く見えなかった。
そして、地面に転がるライトのバシャーモ。
「ウサギのような瞬発力を持つ剣だ。ゆえにこの剣の名前は『兎爆』。理解できたかな?」
「もともと、剣の名前や能力なんてどうでもいいのよ!バシャーモ!!『大文字』!!」
だが、クサナギのバシャーモは大文字を突き抜けて、ライトのバシャーモに切りかかる。
その剣のスピードになす術はなかった。
「終わりだ!『デュアルエクスプロージョン』!!!!」
バシャーモの二つの剣から凄まじい炎が吹き出して、クロスするようにライトのバシャーモに放った。
そして、大爆発を起こす。
「きゃあ!!バシャーモ!!」
ライトとバシャーモは吹っ飛ばされるが、間一髪のところで踏みとどまった。
「どうやら・・・攻撃を耐えたらしいな・・・お主もお主のバシャーモも・・・」
ボロボロながら立つ、ライトとバシャーモ。
「だが、これで止めだ。『デュアルエクスプロージョン』!!!!」
「はぁはぁ・・・(半端な攻撃じゃ・・・あの攻撃に太刀打ち出来ない・・・これで一気に倒す!!)バシャーモ!『オーバードライブ』!!!!」
全ての炎と闘気を右拳にあつめて、それを相手の交差する2つの剣にぶつけた。
その瞬間、先ほどよりも凄まじい大爆発が起きたのはいうまでもない。
そう、その衝撃はナシロ湖全域に伝わったといってもいい。
野生のポケモンたちはその衝撃にざわついた。
「はぁはぁ・・・」
「やるな」
バタリ バタリ
こうして両者のバシャーモは倒れた。
「うっ・・・」
バタリ・・・
そして、ライトも倒れた。
「あれほどの爆発を真近で受けて平気なはずがない。それを知っていてやったのか・・・この女は?」
自分のバシャーモの持っていた剣の欠片を拾った。
「それに『兎爆』をここまでバラバラにするとはな・・・いい勝負だった。今日の修行は満足だった。またお主と戦いたいぞ」
「待ちな・・・さい」
「ん?」
「はぁはぁ・・・一体・・・どうやったら・・・私はあんたみたいに・・・強くなれるの・・・?」
ライトが聞く。
「お主・・・強くなりたいのか?」
「この先・・・私には助けたい人がいるの・・・そのためには倒さなければならない奴がいっぱいいるの・・・そのためには強くならなければならないの・・・」
「それは、お主が自分で気づくことだ。強さとは教えられるものではない。自分で見つけるものだ」
「自分で・・・?そんな時間なんて・・・」
「与えられる強さなど、真の強さではない。拙者に言えるのはそれだけだ」
その言葉を聞いてライトは気を失った。
「つつ・・・お前・・・ライトちゃんに何をした?!」
ちょうど、トキオがお腹を抑えながら立ち上がった。
「拙者の修行に付き合ってもらっただけだ。そんなことよりも、お主・・・あいつをしっかりと導いてやるんだな」
「は?」
クサナギはそれだけ言葉に残して、歩いてその場を去って言った。
トキオはエアームドを繰り出して、とりあえず、近くの町のフールタウンへと向かったのだった。
to be continued
キャラデータ
クサナギ・・・元ロケット四天王の一人。WWS第64話でも登場。しかし今はただひたすら強さを求め歩く侍。
他人と戦うことで修行をしているらしいが、他人に迷惑をかけていることを彼は知らない。
悪意があってやっているわけでないので、なおさらたちが悪い。
ちなみに、それほど悪い奴ではない。
手持ち・・・ニドキング バシャーモ(♂) カモネギ(♂)
オリジナル技
トキオ
『氷の世界』・・・ジュゴンの技。ローガン流奥義。一瞬にしてアイスリンクのように地面や水面をツルツルに変えてしまう技。当たったポケモンを氷漬けにすることが出来る。
『サンダーランス・ショット』・・・サンダースの技。我流。つまり、ローガンの技とは別に自分で生み出した技らしい。サンダースの体毛の針に電撃をプラスさせて無数に飛ばす技・・・つまり『ミサイル針』に電気がプラスした技。
ライト
『オーバードライブ』・・・バシャーモの技。正真正銘、ライトのポケモンの中で使える最大の破壊力を持つ最強の技。『オーバーヒート』の威力と『起死回生』の威力をあわせて拳にあつめてぶつける技。物理クラスでは最強と言っても過言ではない。
クサナギ
『真空波・一閃』・・・カモネギの技。以前の『真空波』のパワーアップバージョン。風の刃を飛ばす技。新しく出てきた技と被らないようにするためでもある。
『五月雨突き』・・・カモネギの技。雨のように鋭い突き技。特に以前と威力も速さも変わっていない。
『時雨抜き』・・・カモネギの技。『みらいよち』のように後から出す技。『時雨抜き』と『真空波・一閃』は同じ構えのため、組み合わせて出すと効果が倍になる。
『居合斬』・・・クサナギのポケモン全てが使える。一見、秘伝マシンで覚える『いあいぎり』のようだが、実はカウンター技である。
『メテオレイン』・・・バシャーモの技。火球を雨のように打ち出す炎系の技。
『デュアルエクスプロージョン』・・・バシャーモの技。2つの『兎爆』に斬られたものを爆発させる。威力は大爆発にも引けをとらない。
主な登場ポケモン
ライト・・・チルタリス(♀) タテトプス(♂) プクリン(♀) バシャーモ(♀)
トキオ・・・エアームド(♀) ジュゴン(♀) サンダース(♀)
アトガキ
今回から序盤の『ノースト地方(トキオ)編』が始まります。
一応、10話までが序盤と結構短いです。中盤が長いかも。
えーと、括弧の中にトキオが入っていますが、別に彼が主役ではありません。
それに、WWSにもノースト地方編があったのでそちらと区別しようという意味も・・・あ、でも作品名が違うから別にいいか。(ぁ)
ぶっちゃけ、序盤は懐かしいキャラのオンパレードで行きたいですね。(ェ)
そういうわけで、最初のキャラはクサナギです。
覚えているでしょうか・・・?まぁ、別に覚えてなくてもいいですけどね。何気にお気に入りなんですよ。(笑)
今回はWWSの第一章で出てこなかったナシロ湖です。
設定上はノースト地方1広い湖となっていますが、伝説のポケモンがいるかどうかと聞かれると・・・・・・どうだろう・・・?(ェ)
とりあえず、次回はフールタウンです。
そして、フールタウンといえば、ヒロトとトキオがはじめて会った場所なのです。(何)
[一言感想]
デュアルエクスプロージョンって……爆・竜・連携?(ぇ)
ちなみに『するどいくちばし』とか『どくばり』とか、武器っぽい名称のアイテムは割とあります。
ポケモンに持たせると、どのように使っているのかは分かりませんが……。
ライトもさすが実力者だけあって、元ロケット団四天王クサナギと五分の戦いを見せました。
個人的には、みんなから嫌われるトキオが哀れですね(何)。
オトハはこれから、ぜひヒロトの支えになってほしいという個人的願望が(ぇ)。
もっとも、そのヒロト本人が未だ行方知れずな訳ですけど……。