22:CALL



「船は2隻停泊しているな・・・」

 ユウコとライトがトラキチの屋敷に潜入していたころ、トキオは船の周辺を探していた。
 情報屋のリクから船の中で取引するのではないか?と聞いていたために、トキオはおそらくそこを探していたのだろう。
 だが、そこにユウナの姿はなかった。
 トキオは諦めて他の場所を探そうとしていた。

”わ〜い!ついた〜ついた〜!”

「ん?」

 すると、トキオは聞いたことのある声を耳にした。
 ふと振り向いてみると、そこにはメガネを持ったポケモンが浮いていた。
 それを見てトキオは驚いた。

「ジラーチ!?(と言うことは・・・)」

 ジラーチがここにいるということでトキオはそのトレーナーを探した。
 そのトレーナーは、船をまさに降りているところだった。
 
「ジラーチ!待ってよ!」

 慌てて追いかけるのはもちろんそのトレーナーのマサト。
 走って、跳んでジラーチを抱きかかえるように捕まえた。
 その姿はとっても楽しそうだった。

「おーい!マサト!」

「え?誰?」

 自分の名前を呼ぶ声に振り向くマサト。
 そこには白衣を着たグラサンの男の姿があった。

「誰ですか?」

「俺だよ!トキオだ!」

「え!?トキオさん!?」

 グラサンをピンと弾いて額に乗せてニヤッと笑って見せるトキオ。

「・・・あ!本当だ!トキオさんだ!こんなところで何やっているんですか?」

「実は探している人がいるんだ」

「探している人・・・?」

「ああ」

 ピロリロリ〜ン♪

「ん?悪い。電話が」

 トキオは今日3度目のP☆DAの受信を受けた。

”トキオね?”

「その声はユウナさん!?探していたんですよ!」

 どうやら、相手はユウナのようだ。

”何も言わずに私の話を聞きなさいよ?まず、ユウコとライトの言う連れというのはあなた?”

「はい。俺だけど・・・」

”実はその二人が私の代わりに情報を手に入れるために潜入してくれたのよ”

「えっ!?ユウコさんとライトちゃんが!?」

”それで、あなたは今、港のあたりを捜しているんですって?”

「はい、丁度港ですけど・・・」

”その船のうちの一つにトラキチという男が密輸取引している相手がいるはずなのよ。そいつ等を抑えてくれない?”

「え!?俺が?」

”その代わり、あなたの知りたい情報を交換してあげるわよ?悪くない条件でしょ?”

「・・・!! ・・・悪くない条件だな・・・」

 その情報を知りたいのはライトだけど・・・。と余計なことは言わず、ユウナの話に合意した。

”頼んだわよ”

 そうユウナがいうと、通信が途切れた。
 トキオはツーツーと鳴るP☆DAをしまって船を見た。

「それで、探している人っては誰なんですか?」

「あ、ああ」

 ユウナとの話を考えていたためにマサトのことを忘れていたトキオ。
 マサトに呼びかけられてビクッとした。

「探し人なら見つかった・・・だけど、その前にやることがあるみたいだ」

「何ですか?」

「悪い奴を捕まえるのさ」

 そう言って、トキオはグラサンを掛け直した。

「それなら僕も協力しますよ!」

”協力するよ〜♪”

 マサトとジラーチがそう答える。

「・・・ダメだ。・・・と言っても来るだろ?」

 その答えにうんと頷く。

「わかった。じゃあ、乗り込むか!」

 そして、トキオとマサトはマサトが乗ってきた船と違う船に乗り込んでいったのだった。
 そこの船蔵の倉庫で怪しげな奴らを一蹴。
 片付けたところで黒幕のトラキチが入ってきたのだった。

 

 

 

EIGHTH

 

 

 

 23:VSシード



「何だお前らは?」

 やけにアクセサリーをつけたスーツケースを持ったおじさんとそのボディガードが船蔵の倉庫に入ると、そこには黒服にサングラスの男たちが地べたに伏していた。
 彼らの目的は船の倉庫でとある取引をするためである。
 だが、その2人の前にいたのは、メガネの少年とグラサンの白衣の男だった。

「ちょっとした正義の味方さ」

 ピンとグラサンを弾いて額に乗せるトキオ。
 さっきのマサトの時同様にニヤッと笑って見せた。

「トキオさん・・・。さっき言いそびれたけど、全然カッコよくないよ」

「ほっとけ!」

「どうやら邪魔をする気のようだな。シード、やってしまえ!」

「(シードだって!?)」

 マサトはトラキチの後ろにいた男を見た。
 そう、マサトはその男に見覚えがあった。

「ふっ、無意味な命令だ。ツボツボ!!」

 自らは戦わずシードに戦いを任すトラキチ。
 ツボツボが岩雪崩を繰り出して、トキオたちを襲う。
 トキオは構えるが、防御するまでもなかった。

「!!」

 一つのシャドーボールが全ての岩雪崩を粉砕してしまったのだ。

「お前の相手はこの僕だ!シード!」

 前に出たのは、マサトとそのポケモンのグラエナだ。

「マサト・・・?」

「トキオさんはあのトラキチって奴を!僕はあいつと戦う!」

「わかった」

 トキオは頷いて、裏口から逃げて行ったトラキチを追った。

「待て!」

「僕が相手だよ!グラエナ!『シャドーボール』!!」

「ちっ!ツボツボ!」

 シャドーボールがツボツボを直撃するが、ツボツボの頑丈な殻によって攻撃は全く意味を成さなかった。

「一気に仕留めてやる・・・『転がる』!!」

「グラエナ!『突進』!!」

 二つの技が激突すると、凄まじい衝撃が生じた。
 グラエナがツボツボを吹っ飛ばすが、勢いを殺さず、そのまま転がり続けた。

「なっ!?」

「2撃目だ!」

「グラエナ!」
 
 マサトの呼びかけに答えたグラエナ。
 しかし、ツボツボの2撃目の攻撃が決まった。
 そしてなお、3撃目のために転がり続けて狙いを定めていた。

「おらっ!これで止めだ!」

「させない!グラエナ!『吼える』!!」

 グラエナが咆哮した。
 すると、その影響でツボツボが吹っ飛んで転がる攻撃をやめてしまった。

「何ッ!?・・・まさか・・・『ほえる』だけでこれほどの威力だと!?」

 『ほえる』の意外な力に驚くシードだったが、驚いている暇はなかった。

 シュン!!ドガッ!!

 グラエナがツボツボに接近して、ツボツボに強烈な一撃を叩き込んだ。

「ふっ、だが・・・ツボツボは・・・」

 その強力な攻撃もツボツボは耐え切る。シードは冷汗を掻きながらもにやりとした。

「1撃だけじゃないよ!」

「!?」

 グラエナが飛び上がって、尻尾で一気にツボツボを叩いた。
 息もつく間のない連続攻撃だ。

「なっ!ツボツボ!!」

「1撃目は『しっぺがえし』。しかも転がる攻撃の2撃目のダメージを『我慢』のように利用したんだよ」

「ちっ、そして、『アイアンテール』ってわけか・・・やってくれる・・・」

 シードはフッと笑ってツボツボを戻した。
 そして、次にハガネールとサマヨールを繰り出した。

「やれっ!『アイアンテール』!!」

 マサトとグラエナは攻撃を回避した。
 だが、それを狙ってサマヨールがシャドーボールで狙い撃ちをした。

「くっ!『シャドーボール』!!」

 ドガン!!

 うまく相殺をして、マサトは2匹目のポケモンを繰り出した。ヤルキモノだ。

「ハガネールに『大文字』!!」

 マサトはセオリー通りに鋼には炎攻撃を指示した。
 だが、ハガネールは避けずに向かってきた。
 そして、攻撃を受けながらもヤルキモノに噛み付いた。

「ヤルキモノ!!」

「くたばりな!『大爆発』!!」

「っ!!グラエナ!『嗅ぎ分ける』!!」

「無意味だな!!」

 ドガーーーンッ!!!!

 ハガネールの爆発を止めることは出来ず、船蔵の倉庫は爆発して吹き飛んだ。
 いや、船蔵だけではない。船の半分が崩壊してしまった。

「うわぁーーー!!」

 マサトは爆発の影響で海へと投げ出された。
 一方のシードはネンドールにしがみついて、爆発を逃れていた。

「ちっ、無意味な時間を使っちまった。これでツボツボ、ハガネール、そして、サマヨールが戦闘不能か・・・。あのガキ・・・やられる間際に『嗅ぎ分ける』でサマヨールのゴースト属性を無くして相打ちを狙いやがった・・・。だが、目的はトラキチを守ることだからな。これ以上ガキの相手なんてしてられねえんだ」

 すると、ネンドールのままシードはトラキチを追っていった。















 24:VSログ



「待ちなさい!!」

「・・・・・・」

 チルタリスに乗ってライトはログを追っていた。
 一方のログは器用に屋根から屋根へ飛び移って移動していた。
 やがてログはとある海の近くの建物の屋上に飛び移ると、ライトを見据えた。

「やっと観念したわね!!」

 ライトも同じくしてその屋上に降りた。

「さっきはよくもやってくれたわね!おかげで酷い目に遭うところだったじゃない!」

「それは君が余計なことに突っ込んだからだよ。違うかい?」

「余計なこと?違うわね!誰かが悪いことをしていたら止めるのが通りなのよ!!」

「悪いことか・・・」

 ログはフッと笑った。

「何よ!何がおかしいのよ!」

「お金を稼ぐのが悪いことなのかい?」

「は?そんなの稼ぎ方によるじゃない!人に迷惑をかけるお金稼ぎは悪いことよ!」

「僕にはどんなことしてもお金を稼がないといけないことがあるんだよ。そう、例えどんなに悪いことをしようともね!」

「・・・・・・間違っているわ!どんな目的があろうとも、悪に手を染めてはいけないのよ!」

「本当に君はそう思うかい?」

「え・・・?」

 ログがふと悲しそうな目をしたのを見てライトは驚いた。

「だとしたら、君は悲しい人だね」

「なっ!どういう意味よ!!」

「目的を持っている人ならね、どんなことでもしてしまうんだよ。悪魔の声に耳を傾けてしまうのさ。君はそのような目的を持っていないんだね」

「っ!!そんなことない!!私だって目的は・・・」

「それじゃ、君はそのためにはどんな事だってするんだろう?」

「!!」

 確かに・・・。ライトはそう思ってしまった。

「(自分はエースを助けるためなら、何でもしようと思っていた・・・。だけど・・・だけど、あいつみたいに悪いことをしてまでしたいとは・・・)」

「もし、その目的が悪事に手を貸すことでしか出来ないことだったとしたら、君は諦めるのか?・・・君のその目的と言うものはその程度なのか?」

「・・・・・・」

「僕は昔、フィオレ地方でレンジャーとして働いていた。だが、その活動の給料なんてたかが知れている。だから、よりお金を稼げる方法を考えた。それがこれさ!」

 ログはスタイラーを使ってグ〜ルグ〜ルと群れて集まっていたキャモメをキャプチャした。
 その数、ざっと30匹。

「!!」

「自分のキャプチャの腕を使って、高いお金で雇ってもらう。それが、僕の考える金儲けさ」

 キャモメ達ががログの上を旋回している。

「そして今回の目的は、トラキチさんの邪魔をするものを排除しろということさ。だから、君にはくたばってもらうよ!」

 ログがライトを指差すと、キャモメは一斉に水鉄砲を放つ。

「くっ!!」

 ライトはチルタリスに飛び乗って、水鉄砲を回避した。
 だが、息をつくまもなく、キャモメたちが体当たりを仕掛けてきた。

「チルタリス!『白い霧』!!」

 霧を出現させて、自らの姿をくらました。
 野生のキャモメたちは慌てる。

「チルタリス!最大パワーで『竜の波動』!!」
 
 大きなエネルギーの塊を放ち、キャモメたちを一撃で吹っ飛ばした。

「あれだけのキャモメを一撃でだって!?」

 ログは驚いた。だが、すぐに切り替えて、次の手を打ってきた。

「ムクホーク!」

 モンスターボールからムクホークを繰り出したログ。
 フィオレでポケモンレンジャーをやっていたといえ、ここに来てからポケモンを持ち歩いているらしい。

「『鋼の翼』だ!!」

「チルタリス!『竜の波動』!!」

 だが、チルタリスの攻撃は当たらない。
 ムクホークが華麗に回りながらかわして攻撃を叩き込んだ。

「っ!!なんてスピードなの!?」

「『ツバメ返し』!!」

「こっちも『ツバメ返し』よ!!」

 2つの技がぶつかり合う。
 一度や二度ではない。何度も何度もぶつかる。
 ライトは落ちないようにチルタリスにしっかりとしがみついていた。

「『冷凍ビーム』!!」

「『エアスラッシュ』!!」

 だが、攻撃は相殺に終わる。
 技の威力は互角で決着はつかなかった。

「くっ!どうやら・・・最大の技で行ったほうがいいみたいだ・・・。ムクホーク!『ブレイブバード』!!」

 ムクホークが赤いオーラを放って、チルタリスを見た。

「(うっ!凄い威圧感!並の技じゃ勝てないわ!)チルタリス!あの技よ!!」

 チルタリスは頷いて、息を吸った。そして、吐くと不死鳥のようなものが飛び出していった。

「『フェニックスウェーブ』よ!!」

 そして、二つの技が激突した。
 ムクホークはその技の爆発で落ちて行った。

「くっ!ムクホーク!!」

 ログはムクホークを戻して屋上に降り立つライトを見た。

「”もし、その目的が悪事に手を貸すことでしか出来ないことだったとしたら、君は諦めるのか?”」

「・・・?」

「さっき、あんたが行ったでしょ?私もその状況を考えたけど、私の答えはやっぱり手を貸さないわ」

「・・・それなら君は諦めるのか?」

「いいえ・・・私だったら別の道を探す!例えどんなに苦しい道だろうとも!もし、その悪の道に手を差し伸べたとしたら、私は納得しないもの・・・(いえ、私だけじゃないわ・・・エースだって私が悪いことをしてまで助けて欲しいなんて思っていないはずだもの・・・)」

「君はそうだろうけれど、僕はそうは行かない!金を稼ぐためだったら何でもする!!」

「・・・・・・」

 ログは辺りを見回していた。
 どうやら、キャプチャするポケモンを探しているようだ。
 ふと、ライトは思いついた。

「ねえ、あんたは別に好きで悪いことしているわけじゃないんでしょ?」

「・・・・・・?」

「それだけの腕があるんなら悪い奴を捕まえるために使いなさいよ!私がいい仕事知っているわよ!」

「え?本当?」

「ほ、本当よ!(多分・・・)」

 根拠がなくライトは言っていた。

「それなら、やめようかな・・・」

「えっ!?」

 意外なログの言葉にライトはキョトンとした。

「実はあのトラキチは覚醒剤の密輸をしていたんだ」

「覚醒剤・・・」

「あ、覚醒剤と言うのは、ポケモンの覚醒剤。ポケモンの力を増幅させる薬なんだ」

「え?それならタウリンとかと同じ効果が・・・?」

「いや、それ以上の効果があるんだ。だが、ただ能力が上がるだけではないんだ。それは使ったポケモンの寿命を縮めたり、狂暴な性格になったりと副作用があるために裏にしか出回っていない代物なんだ」

「つまり・・・トラキチはそれを売り捌いて金を稼いでいたわけね・・・。ポケモンを何だと思っているの!!」

「・・・・・・」

「あんたもあんたよ!ポケモンがどうなっても言い訳!?」

「言っただろ。僕はお金を稼ぐためならどんなことをするって。だけど・・・うしろめたかったよ。他人の邪魔をしたり、騙したりとこの仕事は気に入らなかったし。選挙の邪魔をするのだって、僕がキャプチャで操っていたんだ。ムクホークに見張らせてね」

「(・・・そんなに離れても操ることが出来るわけ!?)・・・そこまでなんであんたは金を稼ぎたいのよ!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 しかし、それに関してはログは口を開かなかった。あるいは口にしたくはなかったようだ。

「喋りたくないならいいわ。行くわよ!」

「えっ!?」

 ライトに引っ張られて、チルタリスに乗せられた。

「トラキチを捕まえるのよ!でしょ?」

「あ、ああ」

 そして、彼らは空へと飛び上がって行った。















 25:マサトの実力



「トラキチはどこへ行った?」

 ネンドールに乗って街を見回すのは、先ほどマサトをまいてきたシード。
 だが、突如の炎攻撃で、ネンドールはバランスを崩して地面に落ちた。

「追いついたぞ!シード!!」

「ガキが!!」

 ネンドールが回転して体当たりを仕掛けてきた。
 だが、マサトが乗ってきたポケモン、ギャロップがネンドールを弾き飛ばした。

「なっ!」

「追撃だ!『炎の渦』!!」

「ちっ!ネンドール!」

 炎の渦を仕掛けるが、ネンドールは高速スピンで渦をかき消してしまった。

「・・・つくづく俺はお前と縁があるらしいな」

「ロケット団が解散しても悪いことをしているなんて懲りないね!」

「ロケット団が解散して、ほとんどの仲間は捕まった。しかし、俺みたいに捕まらなかった奴は何人もいる。そして、俺は今はトラキチのボディガードとして働いている。お前みたいな邪魔者を排除するためにな!」

「邪魔者って・・・密輸なんて悪いことじゃないか!」

「・・・おしゃべりはここまでだ。正直無意味だ。なぜならお前は俺に倒される。忘れたか?お前は以前2度俺と戦い、負けている」

「・・・・・・」

「ネンドール!やれっ!」

 ネンドールが突っ込んで行く。
 だが・・・

「!!」

 ギャロップが角を回転させてネンドールを一突き。
 一発でダウンさせた。

「さっきのグラエナといい、ギャロップといい、少しは腕を上げたようだな。だが、俺に勝てるとは限らない」

「勝つさ!僕はお前の知っている僕じゃない!この2年の間に強くなったんだ!!」

 ギャロップが炎の渦を繰り出す。
 だが、見えない刃が渦を切り裂く。

「かわせ!!」

 いち早くマサトは気づいて回避を指示した。ギャロップはそこから離れて攻撃をかわした。
 ギャロップがいた位置の後ろの壁には切り傷が刻まれた。

「カブトプスの『鎌風』だね!その技には当たらないよ!!」

 マサトはこのシードとは何度か戦ったことがあった。
 その中で一番マサトが厄介と考えていたのが、このカブトプスの『鎌風』だった。
 『かまいたち』とは違い、軌道が全く見えない真空切りみたいなものなので見極めることが難しいのである。

「『鎌風』の前に別の技を繰り出せば、技の変化で技の軌道を見極めることが出来る。それを見てかわせばいんだ!」

「攻略は万全と言うわけか?それなら、連続で放て!!」

「ギャロップ!『高速移動』だ!!」

 素早く動いてカブトプスは狙いを定めさせない作戦だ。
 しかし、ギャロップの動きは素早く動くレベルではなかった。

「・・・なるほど。残像が見えるほど早く動けるのか・・・だが、無意味だ!!」

 お構い無しに連続で鎌風を放つ。

「早く動けば動くほど、見えない刃の餌食になるだけだ!」

「そうかな?」

 マサトはメガネをクイッと動かして光らせた。
 カブトプスの攻撃は全てに当たった。
 だが、それは全て消えてしまった。

「・・・!?まさか、『高速移動』をしながら『影分身』!?本物は・・・後か!!『原始の力』!!」

「チャージ完了したね。『ソーラービーム』!!」

 原始の力の方がやや早かったが、ソーラービームが直後に攻撃をぶち抜いて、カブトプスにヒットした。
 しかし、効果は抜群なはずなのに倒れない。
 でも、倒れないことをマサトは予想していたようでギャロップがそのまま突進して行った。

「とどめだ!!『メガホーン』!!」

「舐めるな!!『アクアジェット』!!」

 ズドンッ!!!!

 水を纏ったカブトプスの速攻だったが、逆にそれが仇となった。
 突進してくる勢いをギャロップがそのまま利用して角で突いたのだ。
 さすがのカブトプスもその一撃で倒れた。
 舌打ちして、シードはカブトプスを戻した。

「次で最後のポケモンだろ?」

「そうだ。最後だ。これで終わりにしてやるよ!『とげキャノン』!!」

 シードの最後のポケモンはパルシェン。
 その凄まじい連続攻撃がギャロップを襲う。
 だが、それをかわした。

「ギャロップ!『ソーラーショット』!!」

 ソーラービームより1ランク落とした草系の技を繰り出すギャロップ。
 パルシェンはそれをよけもせず、弾き飛ばした。

「無意味!!」

「これならどうだ!『炎の渦』!!」

 炎がパルシェンを包み込んで捉えた。

「無意味って言ってんだろ!」

 あっけなく、その渦を払うパルシェン。
 『高速スピン』だ。

「くっ・・・・・・」

「くたばれ!!『トライアタック』!!」

 3種類の属性を持つ攻撃がギャロップを襲うが、攻撃はギャロップをすり抜けた。

「影分身か・・・。だが、かわしたところでお前のそのポケモンではパルシェンにダメージは与えられねえ」

「・・・ギャロップ!戻れ!」

「・・・戻すか・・・だが、他のポケモンにしたところで無意味だ。以前の様にネイティの『ナイトヘッド』ではやられん」

「そんなことはしない!真っ向勝負でパルシェンを倒す!ラルトス!!」

「ラルゥ!」

 そう言って繰り出したのは、実質、マサトの現在の最高のパートナーであるラルトスだ。

「ラルトス・・・?そんなポケモンで倒せるとでも思っているのか?」

「僕のラルトスを甘く見ないでよ!準備はいいかい?」

”いつでもいいよ”

 テレパシーでラルトスはマサトに言葉を伝える。

「無意味だ!殻にこもって高速スピンで弾き飛ばせ!!」

 殻にこもった状態ではどんな攻撃も外からではダメージを与えることは出来ない。
 さらに、高速スピンで回っているならなおさらである。

「『サイコキネシス』!!」

 しかし、高速スピンは止められて、さらにパルシェンは自由を奪われた。

「何ッ!?」

 さらにそれだけではない。殻が徐々に開き始めたのだ。
 それはラルトスのサイコキネシスの力だということは言うまでもない。

「決めるよ!『10万ボルト』!!」

 右手でサイコキネシスを発動したまま、左手で10万ボルトを繰り出した。
 狙いは弱点である中身。
 攻撃は命中して、パルシェンは一撃で沈んだ。

「ぐっ!まさか・・・・・・」

「僕の勝ちだ!」

「ちっ!」

 シードはパルシェンを戻した。そして、煙玉を投げた。

「あっ!」

 辺りは煙に包まれた。
 そして、煙が晴れたとき、シードの姿はそこにはいなかった。

「逃しちゃった・・・。でもいいか。あいつのポケモンは全部倒したし・・・。急いでトキオさんを追おう!!」

 マサトはシードに勝利した。















 26:トラキチの最後



「ぐ・・・一刻も早くジュンサーさんに・・・」

 トラキチは走って警察署に駆け込もうと考えていた。
 それは、逃げている時、屋敷のほうに連絡したのだが、『メイドの少女が何者かに全滅させられました』と連絡があったのだ。
 つまり、不法侵入として捕まえてもらおうと考えていたのだ。

「逃がさないぜ!」

「ヒィッ!」

 エアーカッターが地面に刺さり、トラキチは尻餅をついた。

「お前も屋敷に侵入した奴らの差し金だな!?お前たち、私を誰だと思っているんだ!?」

「裏で密輸している狡賢いオッサン」

 さらりとトキオは言う。

「ば、バカにするな!やれっ!ガルーラ!ニョロゾ!」

 トラキチの2匹のポケモンが襲い掛かる。
 一方のトキオもガルーラとエアームドで対抗した。
 余裕ぶっていたトキオだったがそうは行かなかった。

「なっ!?」

 ガルーラは一撃で撃沈。
 エアームドはニョロゾの凄まじい水攻撃であっという間にノックアウトされた。

「つ、強い!?」

 しかし、同時にトキオは感じていたことがあった。

「(あのガルーラとニョロゾの様子がおかしい・・・・・・)」

 異常に興奮して力が入りすぎているのが、トキオの目に見てとれた。

「一体、そのポケモンたちに何をしたんだ!?」

「力を与えてやったんだよ」

「力だって?」

「遠くの地方に伝わるポケモンの力を引き上げる秘薬だ。まぁ、それを人はポケモンの覚醒剤と呼ぶがな。私はそれを取引して売り捌いているのだ。多少なりポケモンに副作用があるが、たいした問題ではない。ポケモンは戦うことでしか意味を見出せない存在だからな。私の邪魔をしたことを後悔するがいい!!」

 しかし、トキオはその言葉に怒った。

「ポケモンが戦うだけの存在だって・・・?違う!!決して戦うだけの存在じゃない!一緒に暮らしたり、遊んだりするもっと素晴らしい存在なんだ!お前にポケモンの存在理由なんて語らせない!!」

「じゃあ、勝って証明しろよ」

「そのつもりだ!ゲンガー!ヘルガー!」

 ゲンガーが『10万ボルト』。ヘルガーが『火炎放射』を繰り出すが、2匹はいとも簡単に回避して反撃してきた。

「ゲンガー!」

 ニョロゾの攻撃がゲンガーにヒットしたが、トキオの呼びかけで道連れが発動して、ダウンさせた。
 しかし、ガルーラが問題だった。

「ヘルガー!『だまし討ち』!!」

 打撃攻撃を打ち込もうとするが、あっけなく弾き返される。
 火炎放射を打ち込んでもダメージはそれほど受けていなかった。

「やれっ!『ピヨピヨパンチ』!!」

「ヘルガー!『オーバーヒート』!!」

 最大パワーで炎を打ち出すが、ガルーラはもろともせずに突っ込み、ヘルガーを殴って気絶させた。

「どうした?倒すんじゃなかったのか?」

「思ったよりもタフなガルーラだ・・・」

 しかし、ガルーラは苦しそうだ。
 その苦しみはトキオの攻撃によるダメージではない。
 トラキチに与えられたという薬の影響だった。

「(苦しいだろうけど・・・これで終わらせるからな・・・)」

 そして、繰り出したのはサンダースだ。

「一撃で片付けてやれ!!」

 ガルーラが咆哮して、サンダースに突っ込んでいった。

「サンダース!『トリックサンダー』!!」

 電気の帯を打ち出してガルーラを捉えた。
 その電気の帯はまるで鞭のようにガルーラを巻きつける。

「そんな子供だましが効くかッ!!」

 だが、ガルーラはそれを力だけで振りほどいてしまった。
 体は麻痺状態になったにもかかわらず、ガルーラはサンダースに向かっていく。

「それならこれでどうだ!!ローガン流『ドラゴンサンダー』!!」

 ジュゴンの『ドラゴンフリーズ』と同じく、ドラゴンが現れた。
 しかし、ジュゴンの技と違う点は、氷で出来ているのではなく電気で出来ているという点である。

「行けッ!!」

 ガルーラに噛み付くようにその電気のドラゴンは襲っていった。

「ガルーラ!!『逆鱗』!!」

 それに対して凄まじいオーラをまとい、電気のドラゴンに向かっていくガルーラ。
 その威力は互角だが、ドラゴンサンダーの攻撃は確実にガルーラに届いていった。
 でも、最後には逆鱗で電気のドラゴンをかき消してしまった。

「くっ!!これでもダメか!?」

「これで終わりだ!『ギガインパクト』!!」

 力を溜めて、サンダースに向かって行く。
 ガルーラは息を切らしている。
 すでに正気ではなかった。
 暴れれば暴れるほど、理性は失い、混乱状態という領域を超えていた。
 これ以上、その状態が続けば、ガルーラの命までもが危ないだろう。

「(助ける・・・。ガルーラを助けたい!こうなったらこの手しかない!!)サンダース!!」

 サンダースは頷いて、足を踏ん張り放電を始める。
 さらに、背中の数十本の針が電気を帯びて鋭く尖った。
 その針が電気の力で一本にまとまった。

「行けッ!!我流『サンダーランス・アタック』!!」

 地面を蹴りだし、次の瞬間にはサンダースが消えた。

 ズゴン!!

「終わったな。お前のサンダース」

「・・・」

 ガルーラの腹部辺りにその針が命中した。
 しかし、ガルーラは倒れなかった。
 針が刺さったまま、ガルーラは懇親の一撃をサンダースに叩き込んだ。
 サンダースは、2度3度地面をかすめて最後には壁にぶつかった。

「ポケモンは戦うだけの生き物だ!!分かったか!!」

 ピキーン!!

 しかし、次の瞬間、ガルーラは氷漬けになった。

「なっ!?何をした!?」

 トラキチが見ると、その目線の先にはジュゴンがいた。
 そのトキオはサンダースを抱えて撫でていた。

「サンダースのさっきの技はジュゴンの大技『絶対零度』を決めるための囮さ。本当はそんなことはしなくなかった。だけど、そのガルーラを止めるためには仕方がなかった」

「ガルーラ!そんな氷なんて砕いちまえ!!」

 ピキ・・・バギ!!

「・・・!!」

 ガルーラは自力でその氷を砕いてしまった。

「そうだ・・・奴を潰せ!!」

 トラキチはトキオを襲うよう命令をする。

 ズドンッ

「なっ!!」

 だが、ガルーラはよろけて倒れてしまった。
 トキオはガルーラに歩み寄って様子を見た。

「・・・どうやら、すでに体力の限界だったようだな・・・・・」

 そして、トキオはキッとトラキチを見た。

「お前のやったことは、ポケモンの虐待・・・密輸・・・。許されることではないぜ!!」

「くっ・・・くそっ・・・」

 トラキチはがっくりと膝を落としたのだった。















 やがて、マサト、ライトとログが来た。
 そして、ユウコがジュンサーを連れて来て、最後にユウナがジュンサーに事の全てを話した。

 マサトとシードが戦った船は警察が差し押さえ(といっても半分が崩壊しているが)ポケモンの覚醒剤を全て押収した。
 トラキチの屋敷もムラサメを中心にした人々が捕まり、屋敷内も捜索された。
 すると、トラキチの悪行は密輸だけではなく、偽ドーピングアイテムを売り捌いていた事なども次々明らかになっていった。

 やがて、その情報は他の街にも流れることになるだろう。
 その影響を最も受けるのは兄のクラキチだ。
 トラキチが捕まったことにより、その兄であるクラキチは悪い噂が流れて評判はガタ落ちになってしまうことだろう。
 そして、その選挙はジムリーダーのナルミの兄のナルトが当選することだろう。















 to be continued















 キャラデータ



 シード(20代後半)・・・元ロケット団の幹部。『鉄壁のシード』の異名を持っていた。
              最初の登場のときから、マサトと激突することが多く、実質上一番出番が多いロケット団員といえるかもしれない。
              当時マサトは歯が立たなかったが、今回ついに勝利。
              シードの出番はもうない?
 手持ち・・・パルシェン ハガネール ネンドール カブトプス サマヨール ツボツボ



 ログ(16歳)・・・元フィオレ地方出身のレンジャー。
           しかし、金を儲ける為にレンジャーを脱退。
           金を稼ぐために何でもしてきた。
           ライトの説得によって、変わる・・・かも?
 手持ち・・・ムクホーク(♂)など





 オリジナル技


 ライト
 『フェニックスウェーブ』・・・チルタリスの技。漢字で書くと『不死鳥の波動』。フェニックスの形をした鳥のように形作った竜の波動を打つ技。ドラゴンタイプ。

 トキオ
 『トリックサンダー』・・・サンダースの技。電気の帯で相手を拘束する技。
 『ドラゴンサンダー』・・・サンダースの技。電気で形成したドラゴンを打ち出す技。ドラゴンは意思があるように動くとか。
 『サンダーランス・アタック』・・・サンダースの技。『サンダーランス・ショット』の派生系でショットが無数に打ち出すのに対して、アタックは一つにまとめて攻撃をする打撃技である。

 シード
 『鎌風』・・・カブトプスの技。かまいたちとは違い、見えない刃で敵を切り裂く技。

 マサト
 『ソーラーショット』・・・ギャロップが使用した。ソーラービームのタメなし版。もちろん威力はソーラービームより劣る。




 主な登場ポケモン

 ライト・・・チルタリス(♀)

 トキオ・・・エアームド(♀) ガルーラ(♀) ゲンガー(♀) ヘルガー(♀) サンダース(♀) ジュゴン(♀)

 マサト・・・ジラーチ グラエナ(♀) ヤルキモノ(♂) ギャロップ(♂) ラルトス(♀)





 アトガキ


 さて、序章のバトルはこれで終わりです。
 それにしても、何で草系に火炎放射のような威力95の特殊技がないんだろう・・・。
 まあ、DPにエナジーボールや草結びが登場したのであんまり文句は言えないですが。

 序章もいよいよ次で最後になります。
 さあ、果たしてライトたちはパラレルワールドへの道を開けるのか?
 つづくッ!!(誰)

 

[一言感想]

 マックスアップとかは、厳密にはドーピングではありません。
 ゲーム中、どこかのオッサンがジュース代わりに飲んでた場面があった記憶ありますし(ぇ)。
 けれども今回、トラキチが行っていたのは明らかなドーピングだったようです。
 それをこらしめたトキオ、珍しく(?)カッコよかったですね。
 マサトも見事、仇敵撃破。
 ライトは問いかけられるようなシーンがありましたが……今後の伏線になってくるのでしょうか?

 

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