―――「お父さんは?」―――

 あの時の俺はまだ幼かった。
 死というものを受け入れることが出来なかったほどに。
 母さんは涙を流して答えた。

―――「お父さんは私たちを置いて遠いところに行ってしまったのよ・・・」―――

―――「遠いところ・・・?それってどこ?いつ帰ってくるの?」―――

 俺は聞くけども、ただ母さんは大粒の涙をこぼすだけだった。
 その涙はお父さんがもう帰って来ないということを表わしていた。
 その時俺はとても寂しかった。
 もう一生会えないという悲しみよりも、今会えないと言う寂しさが強かった。

―――「もう会えないの?」―――

 母さんはその問いに答えないで、家の中に入っていった。
 寂しくなって泣こうとしたけども、俺はこらえた。
 男が泣くなんてみっともないことなんて出来ないって幼いながらにそう思っていた。
 実際にそのときの俺は転んでケガをしても、泣かない子だって母さんから言われていた。
 しかし、たった一人の女の子の言葉がその幼いプライドを取り払ってくれた。

―――「泣いていいのよ?我慢することはないわよ。誰にだって泣きたいときはあるわよ。私のママやパパだって、私だって、そして、あなたもね」―――

 彼女の胸の中で泣いた。
 そのことは今でも覚えている。
 彼女の温もりと父さんを亡くしたことは一生忘れることが出来ないだろう・・・。

 

 

 

FIFTEENTH

 

 

 

 47:苦しみに憧れる者


 カチ・・・カチカチッ!!

 プシュー・・・

 キーボードを叩く音。そして、ドアを開く音が聞こえると、煙と共に中から少年の姿が現れた。

「ふわぁ・・・助かった・・・!ユウナさん、ありがとう」

「ナナキ!何でウチにはお礼言わんのや!?」

「あ!ごめん!マサミ!!」

「姉さんと呼びぃ!!」

 マサミとナナキのやり取りを見ながらユウナとファイアは苦笑いを浮かべる。

 岬の小屋が襲われてすぐにユウナとマサミはナナキを元に戻した。
 その間にマサトとファイアは小屋の中が荒らされていたために片づけをしていた。
 それから、マサミ、ナナキ、及びユウナは何のデータを引き出されたか、何のためにポケモン転送システムを利用したかのチェックをはじめた。
 初めて触るはずなのにユウナのキーボード捌きや情報を処理する能力はマサミとナナキでも度肝を抜いた。
 次々とファイルや履歴をチェックしていった。
 その間にファイアはみんなのために昼飯を作り、マサトはその手伝いをしていた。

「マサミ、ユウナさん。どうだった?」

 ファイアが昼飯に作ったものは野菜をふんだんに使ったサンドイッチだった。
 しかし、野菜以外にもツナ、タマゴなどの素材も挟み込まれていた。
 材料はマサミが先ほど買い出しに行って買ってきたものである。
 そのサンドイッチに手を伸ばす前に、ユウナは肩をすくめた。

「なかなか骨が折れそうよ。履歴とかファイルとかを調べようと思ったら、パスワードが書き換えられていたわ。まず、パスワードを見つけないことには先に進めそうもないわよ」

「それにしても、ユウナはんがこんなに機械の扱いに慣れているとは思わへんかったわ!」

「びっくりしたよ!」

 ナナキとマサミはファイアの作ったサンドイッチを頬張って、『おいしい』『上手い』とそれぞれ感想を述べながら、ユウナを絶賛した。

「ねぇ・・・・・・」

 マサトがふと声をかける。

「さっきの襲ってきた連中って何者だったんだろう・・・?」

「それは、ファイアなら少し知っているんじゃないかしら?」

 ユウナがそういうと、周囲はファイアを見る。

「・・・・・・ああ。少し知っている」

 ファイアは自分で淹れたコーヒーをコトンと置いて言った。

「・・・マサトと戦ったあいつ・・・ガンはアルミア地方で出会ったレンジャーなんだ」

「レンジャー!?レンジャーってあのポケモンレンジャーの!?」

 マサトが驚く。

「ああ。だけど、ガンはレンジャーよりもポケモントレーナーになりたかったって言ってた。だから、一度俺がポケモンを貸してバトルをしてみたんだ。奴は高い素質を持っていた。そのときの俺よりも・・・」

「・・・」

「そして、程なく奴から連絡が来たんだ。レンジャーを辞めて、アルミア地方からカントー地方に来て、SGに入ったと」

「SG?」

「SGやて!?」

 マサトは首を傾げるが、その言葉を聞いてマサミが椅子を後ろに倒して立ち上がった。

「そんな・・・まさか・・・SGなの・・・?」

 ナナキも呆然としていた。

「SGって何かしら?」

「SGはポケモン協会にも信頼されている組織の名前さ。その組織は悪徳な組織を潰したり、争いごとを調停したり、人を探したり、宅配したりするんだ」

「大きいことから小さいことまで何でもするのね」

 宅配なら他の運び屋とかを使えばいいのにとユウナは思ったらしい。

「さっきの騒動の時、ガンは『より良いまちづくりのため』とか言っていた・・・。もしかしたら、近いうちに大きな何かが起こるのかもしれない。実際にこうやってデータを盗みに来る事までしてきたんだからな・・・」

 マサミとナナキはその言葉を聞いて息を呑む。
 一方のユウナは立ち上がった。

「ユウナさん?」

「そのSGが何をする気かはまだわからないけど、とりあえず今あるデータを調べないことには始まらないわ」

 そう言って、再び情報との格闘を始めた。
 程なくして、ナナキとマサミもウィンドウに向かって悪戦苦闘をし始める。
 ファイアとマサトは部屋の片づけをするだけだった。





 その日の深夜・・・。
 もう誰も起きていないはずのこの時間帯にファイアは鈍い光で目を覚ました。
 パソコンのウィンドウの光が目に入ったようだ。
 その光が何かに見え隠れし、ファイアは気になって上体を起こそうとした。
 しかし、手をついた場所がソファの部分でもっとも柔らかく、深いところだったために、ソファからずり落ちて音を立ててしまった。

「・・・起きたの?」

 その音に反応してファイアに呼びかける声。
 その姿をよく見ると、そこに立っていたのはコーヒーカップを右手に持っていたユウナだった。
 ウィンドウの光が見え隠れしたのはユウナがうろついていたためのようだ。

「うん・・・ちょっと・・・」

「・・・? どうしたの?泣いているの?」

「え・・・?」

 ファイアは自分の眼元を拭った。
 すると、水滴が指についた。

「きっと・・・夢のせいだと思う・・・」

「夢?」

「ああ。俺が子供だったとき・・・父さんが亡くなって葬式をしたときの夢。母さんが泣いて俺は必死に涙をこらえていた。でも、女の子の言葉で我慢していた物が一気に決壊したんだ」

「お父さんか・・・」

 カップにお湯を注いで中身をかき混ぜる。
 そして、ためらわずに熱いはずのコーヒーを飲みながら、ファイアの隣に腰掛けるユウナ。

「いいわね。お父さんの夢なんて」

「いい?父さんの夢がいい?・・・そんなことなんてあるものか・・・」

 寂しそうな口ぶりでファイアはいう。

「自分の中では圧倒的に強い父さんのイメージしか思い浮かばないんだ。俺はそのイメージを超えることなんて出来ない・・・。昼にユウナは言ったよな?『あなたが自分のお父さんを気にしているうちは超えられないと私は思う』って。気にするしないの問題じゃないんだ。父さんを思い出そうとすると、それしか思い出せないんだ。だから余計に苦しいんだよ・・・」

「・・・・・・・」

 父さんを超えたい思いと、超えられない苦しみ。
 その2面性でファイアは苦しんでいることをユウナは感じていた。

「この気持ち・・・ユウナにはわからないよ」

 冷静に、しかし感情がこもった声で言った。
 それから、数分の沈黙が空間を支配した。

「・・・・・・・・・・・・そうね。きっとわからないわ。いいえ・・・・・・」

 ふとユウナが口を開き、なおも続ける。

「絶対私にはわかることなんてできないわね」

 コーヒーカップを近くの机の上に置いた。

「人の悲しい気持ち、寂しい気持ちは同じ境遇の人じゃなければわからないもの・・・・・・。そうでしょ?」

 尋ねられてファイアが「そうだな」と答える。

「だけど、私はその気持ちがうらやましい・・・」

「・・・・・・どうして?」

 素直にファイアは疑問をぶつける。
 そして、ユウナは珍しく語った。
 小さい頃・・・本当に小さい頃に裕福な研究一家で育ったこと。
 でも、お父さんもお母さんも毎日研究で忙しかったこと。
 それでも、とっても優しいお兄さんがいつも面倒を見てくれたこと。
 そして、その後の惨劇・・・。
 ロケット団に騙されたこと・・・。
 ・・・。
 現在に至るまでの経緯をファイアが口を挟みながら語り、ユウナが気付いた時にはかなりの時間が経過していた。

「私は、お父さんもお母さんの顔も覚えていないのよ。そして、兄さんの顔までも・・・・・・」

「ユウナ・・・?」

 俯いているから泣いているのだと思ってユウナの顔を覗き込んだ。
 でも、その顔は無表情だった。

「最近、笑うことも泣くことも減ってきたわ・・・。だから余計そういう気持ちが私はうらやましいのかもしれない・・・」

「(そうか・・・・・・)」

 ファイアはユウナという女を理解したらしい。
 自分をうらやましかっていたのは、まだ自分が母親という甘えられる存在が居るからだと。
 彼女はずっと、騙し、騙され、めげずに一人で生きてきた。
 今は違うらしいけど、それでも一人で生きていると感じているのだろうと。
 ユウナは甘える場所が欲しいのだ。と思ったりもしていた。

「うわぁ・・・」

 ユウナはコーヒーカップの残りのコーヒーを飲んで顔をしかめた。

「ユウナ?」

「コーヒーがぬるくなってる。淹れなおして来るわ」

 立ち上がって、台所へ足を運ぶ。

「ところで、あなたがさっき言っていた夢に出てきた女の子ってリーフのこと?」

「・・・違います・・・。別の人です」

 迷わず答えるファイア。

「ふうん・・・じゃあ、初恋の人って所かしら」

「え゛?」

 ファイアが奇妙な反応をしたのを見て、ユウナは確信した。
 クスクスッとユウナは笑う。
 淹れたコーヒーを持ってパソコンの前の椅子に腰掛けた。
 そして、キーボードを叩き始めた。

「もしかして、ずっとパスワードを解読していたんですか!?」

「そうよ。一日でも早く情報を引き出して、仲間と合流して、エースを探し出さないといけないからね」

「どうして・・・?そこまでエースさんのことを探そうとしているんですか?あ、まさかユウナはエースのことを!?」

 さっきの仕返しといわんばかりに、ファイアがニヤリとして言った。

「残念だけど、そんなんじゃないわよ」

 真面目な顔をしてファイアの予想を突っぱねた。

「早く仲間を探し出さないと、元の世界に帰れなくなるから。それに、会わせてあげたいのよ。彼女をエースに」

「彼女?」

「そう、エースを探し出したい張本人にね」

「なるほど・・・・・・」

 そういって、ファイアが一つ付け加える。

「ユウナって、婚期を逃しそうなタイプですね」

「私は他人を信用しないから否定はしないわよ」

 と、ドライに言ったように見えたが、立ち上がって、ファイアの頬を抓って、ソファに転がすように放した。

「でも、失礼よ」

 ファイアはユウナの思惑通り、ソファに転がった。
 しかし、そんなことをファイアにしていなからも、ユウナは全く怒ってなかったようだった。










 48:加入


 かつて無人発電所と呼ばれる場所があった。
 そこには伝説の3鳥と呼ばれるうちの一匹、サンダーが生息していたことでも有名である。
 しかし、あるときその発電所はジョウト地方のコガネシティとカントー地方のヤマブキシティをつなぐためのリニアの発電所として建て替えられた。
 それは今でも動いていて日夜人々のために役立っている。


 そこから程なく行ったところに洞窟があった。
 しかし、洞窟と言っても構築されて中は、石柱が並んでいたり、ドラゴンの銅像が立っていたりと、まるでゲームに出てくるジョウトリーグチャンピオンのワタルの部屋みたいだ。
 そのような通路を通ると、いくつかの分かれ道があるが、まっすぐに進んで行く。
 そして、辿り着くとそこには普通の民家の家っぽく、小さかった。

「・・・こんなに狭いの?外から見たら凄そうだったのに・・・」

「♪いや〜テツマのおっちゃんが〜ここが狭い部屋がイーって言ったからさ〜。だから、おっちゃんの部屋は狭いのさ〜。広いところならフィールドくらいの広さがあるぜぃ〜」

「・・・・・・ギターがうるさい」

 ライト、ハルキ、ユウコの3人は謎のギターリストのモトキと冴えない少年のエレキにこの場所へと連れて来られた。

「良くぞエレキを探して来てくれた!さすがだ、モトキ!」

「♪ユウコ〜どっかデートに行こ〜」

「いいわよ♪私、温泉がいいわ〜」

 口元に髭を生やした歳をとっていそうな割に筋肉質のお爺さんはモトキを褒めていた。
 しかし、偉そうな口ぶりでモトキに話しても、当の本人はマイペースでギターを弾き、しかも、ユウコとイチャイチャしていて話を聞いていなかった。

「モトキー!テツマさんの話を聞くでヤンス・・・。テツマさんが怒るでヤンスよ?」

 相変わらずギターの先端に止まって、モトキにひそひそと助言するのは、ペラップのトラン。
 しかし、トランの助言も虚しく、テツマは激昂した。

「人の話を聞かんかーーー!!」

 ハイパーボイス並みの衝撃が巻き起こり、大気が震えた。

「(このじじいもうるさい・・・)」

「(ヒ、ヒィー)」

 ハルキはテツマもモトキ同様の印象を覚え、エレキはテツマの気迫にビビッていた。

「それで、一体こやつ等はなんじゃ!?我輩はエレキのみを連れて来いといったはずじゃぞ?何故余計な者も連れて来た!?」

「♪それは〜この人たちが〜伝説に語り継がれる3人のゆ〜しゃ(勇者)だからです」

「ボケナス!!そんなの聞いたことないわッ!!」

 あっさりとテツマは伝説を否定した。

「モトキ・・・あなたがこの子達を連れてきたのには何か理由があるのでしょう?」

 すると、このフロアに入ってきた女性がメガネをきらりと光らせて聞いてきた。
 エレキはふとカンナさんと呼んだ。

「♪ま〜な」

「その理由を我輩にわかりやすく教えろ!」

「♪だ〜か〜ら〜行ったじゃないですか〜!この3人は伝説に語り継がれるゆ〜しゃだって!」

「モトキお兄さん・・・その説明ではだめです(ズズッ)」

「・・・誰?」

 ライトが後ろを振り向くと、フリルのついた白いワンピースを着た女の子がいた。
 その女の子はとても幼く見えた。
 そして、その手には『シズオカのお茶』とプリントされているペットボトルをお茶会で飲むように丁寧に正座して飲んでいた。

「三人の伝説の勇者じゃなくて、救世主です」

「ハナ!根本的に説明になってないでヤンス!!」

 ハナと呼ばれる女の子にトランがツッコミを入れる。

「え〜と、それなら・・・3人の漫才トリオ?3バカ?」

「全然違うでヤンス!」

「無名の怪盗?それとも、破壊者?」

「悪い人たちじゃないでヤンスよ!!」

「じゃあ・・・・・・あわ〜」

 ハナが何かを喋ろうとしたところで、カンナがハナを押しのけて言った。

「・・・あなた達が何者か、そろそろ話してくれないかしら?」

「♪だから〜」

「もうお前には聞いとらん!」

 テツマがモトキを一括。
 モトキは軽いノリで「♪ちぇ〜」と舌打ちをして、口を閉じた。

「私達は、森で迷っていたところをモトキに助けられました。そして、モトキさんは私達がとってもバトルで高い素質を持っていることを見抜いてくれたの。だから、私達はバトルを教わるためについてきたの!」

 ライトは一編にそう話した。
 しかし、ライトの話した内容は事実とはちょっと違っていた。
 本当なら、「別世界からエレキの背中に落っこちてきて、何だかわからないうちにバトルに巻き込まれて、モトキに助けられて、何も言わずにモトキについて来いといわれた」という所。
 その事実を話さなかったのは訳がある。
 この場所に来るまでにライトは自分たちのことを簡潔にモトキに説明をした。
 モトキは少し考えると、ライトに先ほどテツマに言った内容を話せと言われたからである。
 モトキが何を考えているかはわからないけど、ユウコにメロメロになっているあたり、裏切って厄介なことにはならないだろうという自信がライトにはあった。
 それに、万が一、モトキとバトルすることになったら、勝機は0だということも承知していた。
 敵を増やすことよりも、味方を増やすことが先決だとこのときライトは思ったのである。

「モトキが推薦するほどの腕を持つ3人ねぇ・・・・・・」

 カンナがまじまじと順番にユウコ、ハルキ、およびライトの顔を見る。

「♪もし3人ともTCに入ってくれるなら13人になるぜ〜」

「ふふっ、いいんじゃないかしら?テツマ」

「カンナも認めるならそれでいいだろう」

 ライトは深い息をしたときだった。

「俺は信用できないぜ!」

 いつの間にか、壁に寄りかかった男が鋭い目つきでモトキを睨んでいた。

「し、シラフさん・・・?」

 エレキは少々怯えて、その男の名前を呼んだ。

「何が信用できないというんじゃ!?シラフ・・・お前、説明してみろ!!」

「第一に、モトキ!てめーが一番信用できねぇ!!目的もなくTCに加わりやがって、一体何を考えていやがる!?」

 モトキのことなのに、当の本人は口笛を吹いていて、しかも妹はのんびりとお茶をたしなんでいた。

「第二に、ガキばっかりじゃねえか!こんなんで、SGに対抗できると思ってんのか!?このメンバーで本気で勝てるとでも思ってんのか!?」

 シラフの鋭い眼と感情を剥き出しにした声にエレキはより怯えている。
 ハルキはさほど興味なげにそっぽを向いている。
 ライトはといえば、ガキという言葉にムッと来ていた。
 「ガキでもあんたよりは強いわよ!!」と言おうと前に出ようとしたけど、次の声に遮られた。

「別にいいじゃない〜ねぇ〜モトキ〜♪」

 ユウコの声である。

「♪そ〜だよな〜!大事なのは、実力さ〜。アレだよ〜あれッ!女の子が〜外見じゃなくて中身が大事なのと同じさ〜」

「さっすがモトキ♪よくわかってるぅ〜」

 そしてイチャイチャとユウコとモトキ。
 トランは「また始まったでヤンスか」とげんなりとしていた。
 またライトはその様子を見て、イライラもしていた。

「そういうことじゃ。我輩の決定に文句があるのか?シラフ!!」

 テツマにそういわれると、シラフは不快感を露にして舌打ちをした。

「アクアといい、この前入ってきた”あの二人”といい、生意気なガキばかりだ!!とにかく俺はてめーらを信じてないからな!!」

 そう吐き捨てると、シラフはこのフロアを出て行ってしまった。










 49:TC


「モトキ!しっかりと説明してもらうわよ!!」

 バンッ!と机を叩いて、話を聞きだそうとしているのはライト。
 しかし、当の本人はユウナとイチャイチャの真っ最中である。
 当然、彼女は怒りに燃えて、モトキの頬に拳をぶつけた。

 ゴキッ!!

 骨が砕けたような音がした。

「♪ちょっ!痛いじゃないか〜!」

「そうよ!!ライト!こんなにきれいな顔が傷ついたら、あんた、どう責任を取るの!?」

「それなら、ちゃんと話を聞きなさいッ!!!!」

 このライトの形相に、エレキとトランはテツマの先ほどの剣幕よりも恐怖を感じたと言う。





「サーティーンカード?」

「そ、そう。ぼ、僕達が所属している組織の名前は、サーティーンカードって言うんだ」

 モトキが相変わらず、説明したがらないのを見て、ライトはエレキにこの集団を説明してもらうように言った。
 本当なら、この場所に来る前に話してもらおうと考えていたのだが、モトキがエレキに口止めしていたために、それは出来なかった。
 エレキはモトキから了解をもらって、ライト達に説明をしていた。
 そして、エレキは『THRTEEN CRAD』とスペルを書いた。

「・・・エレキ?スペルはこうじゃないの?」

 ふと、ライトは気付いて、『THIRTEEN CARD』と書き直した。
 間違いを指摘されて恥ずかしくなったか、さらに顔を俯かして前髪で顔を隠した。

「なるほど・・・だから『TC』なんだ・・・」

「ほ、本当なら、『サーティーンガード(TG)』になるはずだったんだけど、テツマさんが間違えて、『サーティーンカード(TC)』って書いたのが始まりだったらしいんだよ・・・。こ、これはアクアさんから聞いた話なんだけどね・・・」

「どこかで聞いたことあるような間違いね・・・。ところで、アクアさんって?」

「あ、アクアさんは僕をこの組織へ入れるのに進めてくれた人で、僕の先輩なんだ・・・・・・」

「ところで、俺たちが入ると13人になるって言っていたが、他にはどんな奴がいるんだ?」

 ライト同様に立っていたハルキがエレキに尋ねた。

「えーと、テツマさん、シラフさん、カンナさん・・・あっ!カンナさんは昔四天王のメンバーだったほどの実力なんだ・・・。後は、僕、アクアさん、モトキさん、ハナさん・・・」

「それに私とユウコとハルキ・・・残りの3人は?」

「そ、それが・・・僕は知らないんです・・・」

「どういうこと?」

「ちょ、丁度そのとき僕はいなかったんで・・・」

「♪そ〜言えば、そんときエレキは彼女のことを探していたんだよなぁ〜」

「わわわっ!!も、モトキさん!!余計なことを言わないでください!!」

 顔を真っ赤にして慌てるエレキをユウコは面白そうに見ていた。

「残り3人がわからないのか・・・・・・」

「♪アクアが2人をつれて残りの1人を探しているらしいぜぃ〜」

「えぇ?あ、アクアさんが!?」

「♪エレキその時いなかったからなぁ〜。彼女を探していて〜」

「に、二度も言わないでください!!」

 すでにエレキは半べそ気味だ。

「じゃあ、次の質問ね。SGって何?」

 ライトは真面目に聞いた。

「え、SGというのは略称で正式名称は『スカイガーディアン』と言って、ポケモン協会の公認の組織なんです。そ、そしてプテラのシンボルを掲げています」

「・・・?何でプテラ?」

「そ、それは、10年前くらいにある有名なトレーナーがなくなって、そのトレーナーが使っていたポケモンの一つがプテラなんです。そ、その人は僕の父さんの・・・」

「そうか。で、この組織は何をする組織なんだ?」

「あ、はい」

 エレキの話に割って入るようにハルキが尋ねる。

「大抵はテツマさんから任務をもらって、各地を調査するんです。でも、最近はSGを邪魔する仕事が多いんです・・・」

「SGを邪魔する!?SGはポケモン協会公認の組織なんでしょ!?その邪魔をするって事は・・・」

 ライトは何かと正義感が強い。
 つまり、TCのやっていることは悪いことなんじゃないかと考えた。

「き、近年になってSGが奇妙な活動をし始めたんだ。そ、それがどうもポケモン協会に見つからないところで動いているんだ。ち、近くに住んでいる住人はSGは正義を遂行する組織だって信じている。だ、だから、僕はテツマさんを信じて動くことしか出来ないんだ・・・」

「・・・要するにSGに対抗するための組織と言うわけか」

「結構面白そうな仕事しているのねぇ〜ダーリン〜♪」

「♪そうなんだよ〜ハニー」

「そ「そこッ!!うるさいわよ!!」

 トランが突っ込もうとした所に割ってライトの拳が入る。
 しかし、今度はモトキの顔じゃなくて腹に一発入った。

「ちょ!?大丈夫!?モトキ!?」

「♪う〜」

 苦しそうにうめくモトキ。
 でも、ユウコの膝枕でとっても幸せそうだ。

「じゃあ、エレキ・・・最後の質問よ。エースって知ってる?」

「え、エース・・・?トランプのカードですか?」

 ガゴンッ!!

「殴るわよ?」

「ヒッ!!し、知りません!!し、しかも殴ってから言わないでください・・・」

 本人真面目に答えたのに、殴られる始末。
 すでにエレキの目からは涙を滲ませていた。

「♪さぁ!!はじめようか!!」

 突如弾け出したようにモトキが立ち上がった。
 ユウコにお腹を摩られて苦しそうだったモトキだが、まったくなんでもないようである。

「何を始めるんだ?」

 ハルキがモトキのテンションに白けながらも聞いた。

「♪何って、シュギョ〜(修行)さ〜。だって、ここに連れて来たのはライトちゃんたちにバトルを教えるためなんだぜ〜!教えなかったらつれて来た意味ナッシング〜じゃないか〜」

「え?その話・・・ほんとのことだったの!?」

「♪これでも〜俺はショ〜ジキ者なんだぜぃ〜」

「さすが私の王子様〜♪」

 いっそうユウコはモトキにべっとりとくっついた。

「♪ついでに、エレキもシュギョ〜すっか?」

 少し、エレキは戸惑いながらも頷いた。

「ぼ、僕も強くなりたいです!!」

「私も行くわよ〜ダーリン!」

「興味ないな」

「え?」

 ライト、エレキ、ユウコが修行を決意する中、ハルキがそう言った。

「何でよ!?ハルキ!!」

「目的を見誤らない事だな。目的は強くなることではない。エースを探し出すことだ。そんなこともわからないのか?」

「わかっているわよ!!・・・でも、今の実力じゃ・・・勝てないのよ・・・」

「それなら勝手に修行しているがいい。俺は自分のやり方でエースを探し出す。それに一刻も早くカレンと合流したいからな」

「(・・・まさか・・・早くカレンと合流したいだけなんじゃ・・・?)」

 ライトがそう思ったとき、ハルキは何も言わず出て行ってしまった。

「♪ま〜仕方がないな〜。この4人で修行をすることにしよう」

「で、どうするんですか?」

「♪ちょっと、ユウコ、離れてくれ〜」

「え〜!!・・・は〜い・・・」

 渋々とモトキの腕に絡み付いていた腕を解いて、ライト達に並んだ。
 モトキは懐からとある本を取り出した。

「何それ・・・?」

「♪行くぜ〜『ヤヘノ=キトトン=シイセ』!!!!」

 モトキがおかしな呪文を唱えたかと思うと、ライト達の体におかしな現象が起きた。

「ちょっと・・・これ・・・」

「か、体が・・・本に・・・」

「吸い込まれてるぅ!?モトキィ―――――――!!!!」

 3人の体がスゥ〜ッとその本の中に吸い込まれていった。

「モトキ・・・エースって・・・」

「トラン」

 モトキがとっても珍しく真面目な口調で話し始めた。

「ライトちゃんにこの話をするにはまだ早い・・・。修行が終わってからでも遅くはない。 ♪ハナー」

「はい(ズズッ)」

 いつの間にかモトキの部屋に入ってきていたのかわからないが、ハナが湯飲み茶碗でお茶を飲みながら座っていた。

「♪ハルキを頼むぜぃ〜」

「はい。わかりました」

 はにかんでその場を立ち去るハナ。

「♪さぁ〜俺達は、彼女達のシュギョ〜をしてあげないとな〜」

 すると、モトキは競泳選手のように飛び込みをして、その本の中へと入っていったのだった。

「(♪そういえば、あの3人はどこまで探しに行ってるんだろ〜)」

 残りのライト達の見知らぬメンバーのことを気にしながら・・・。










 to be continued










 キャラデータ


 テツマ(58歳)・・・TCの創始者でTC一番の年長者。
            髭オヤジで見るからに頑固者である。
            腕っ節が強く、50代後半とは思えない身体能力の持ち主である。腕相撲は最強レベル。
            しかし、少々融通が利かないのが難か?
 手持ち・・・カイリキー(♂)など





 アトガキ


 前半がユウナサイド。後半がライトサイド。そして、ノンバトルでお送りいたしました15話。
 ファイアの話はECでも書きましたが、あえてDOCでも書きました。ECではファイア目線でのお話でしたし。

 今回から、モトキの妹、ハナが登場しました。
 サイトめぐりをしている人ならわかると思いますが、彼らはPFの登場人物です。
 PFの登場人物はわりとマイペースな連中が多いので、少々厄介です。(ェ)

 次回は時間がかなり進みます。てか、跳びます(汗)
 とりあえず、次回もよろしくお願いしますね。

 

[一言感想]

 襲撃を受けてからというもの、ユウナは大忙しです。
 考えてみたら、彼女のように情報技術に特化したキャラはレアですからね。
 一方でモトキとユウコは、常にいちゃつき状態……信頼を得にくいのは無理ないか(汗)。
 しかし、本来正義であるはずのSGの影の部分が見え隠れして、今後目が離せません。
 ……エレキは、ライトの前でエースに関するボケをしてはならないという、良い教訓となったでしょう(ぇ)。

 

戻る