破壊光線とストーンエッジとストーンエッジが俺に向かって飛んできた。

 ヌケニンで防御に出ようとするが、傍らにはエアーがいる。

 さすがの俺も、ガキとはいえ女子供を放っといて自分だけ逃げる真似はしねぇ。どうでもいい男だったら話は別だが。

 奴を抱えて、攻撃をかわそうとしたが、奴らのその攻撃の威力は俺の予想を超えていた。

 破片が頭に当たり、しかも破壊光線を右足に当たり、爆風で吹っ飛ばされちまった。

 奴らから逃げることは出来たものの、ダメージは大きく、俺は数分歩いたところで倒れてしまった。

 奴らは追ってくるだろうか?

 思案を浮かべようとも痛みで、意識を奪って行きやがった……










 …………?

 あれ……?

 ここは……?

「気がついたか?」

 ラグナが目を開けると、1人の男の顔が映った。
 緑髪の色をした頭に穏やかな表情をした男だった。
 そして、ラグナはその男の名前を呼ぶ。

「……ヒロト?確かてめぇはヒロト!?」

「ああ。俺はヒロトだ」

「ここはどこだ?」

 上体を起こして周りを見ると、2匹のドラゴンポケモンが目に映った。
 2匹のドラゴンポケモンのうちの1匹はボーマンダ。
 もう1匹はカイリュー。
 いずれも、ドラゴンタイプの中でも屈強な部類に入るポケモンである。
 そして、カイリューに乗っている男をラグナは見覚えがあった。

「てめぇ……リュウヤ!?」

「……ようやく目を覚ましたか。……ラグナ」

 青くさらさらとした長さの髪を持つ男、リュウヤ。

「一体ここは……うっ!」

「ラグナ、ちょっと寝てろよ。お前、ケガしているんだぞ?」

 ラグナは頭を抑えると、包帯がぐるぐる巻かれているのに気がついた。
 右足に当たった攻撃も処置済みだった。

「ラグナを見つけたし、これで行動に移せるようだな」

「それで、どこにいるんだ?リュウヤの想い人って奴は」

「そうね。そろそろ話してもらってもいいときね」

 ボーマンダに乗ってエアーを抱えていた女が話に加わってきた。
 ラグナはその女を見ると、呆然とした顔になった。

「お、おい……。その女は”なん”だ?」

「”なん”だとは失礼な言い方ね!」

 ラグナに”なん”だと言われた女が怒ると、ヒロトは穏やかな表情で彼女を見ていた。
 リュウヤは口元が緩みそうになったが、引き締めてポーカーフェイスを保っていた。

「私の名前はアクアよ。ラグナって言ったわよね?私を幽霊を見るような目で見ないでくれる?」

「……。な、なんだ……幽霊じゃなかったのか……驚かせやがって……」

 ようやく、ラグナは一息をついた。
 気絶する寸前まで、敵に追い詰められていたという状況だったために、今のこの状況が彼を安心させたのである。

「(そうか……。そういえば、俺はこの二人と一緒にこの世界に来たんだ。その後俺は何らかの影響で吹っ飛ばされて、迷いの森に入った。こうして俺はヒロトのフライゴンに乗って…………え゛?フライゴンに?)うっ……ちょ……ま゛で……」

「……!?どうしたラグナ!?」

 安心したのも束の間だったが、急にラグナは苦しそうに口を押さえた。
 アクアとリュウヤも心配そうにラグナを見た。

「お……降ろしてくれ……俺……乗り物に乗ると……うげぇ……」

「の、乗り物酔いか!?」

 下を向くラグナ。
 ヒロトと2人を乗せているフライゴンは慌てる。
 しかし、全ては徒労に終わる。
 結局全ては手遅れで、ラグナは下界に向かって吐き出してしまったのだから……。

 

 

 

EIGHTEENTH

 

 

 

 56:俺とリュウヤ


 今、こうやってこの空でアクアやリュウヤ、そして、ラグナといるのは成り行きだった。
 全てを説明すると、結構かかると思うけど、説明することにしよう。



 時はだいぶ遡る。
 俺とリュウヤは”アワ”のホクト地方の東端、クシキ岬という場所で対峙していた。

 ここで説明しておかなきゃいけないのは”アワ”。
 ”アワ”というのは世界の区別する名前のことだ。
 俺が元々いた世界は、”アワ”と呼ばれている。
 そして、アクアたちがいる世界(現在、俺たちがやってきている世界)を”ティブス”と読んでいる。
 この語句を口にしていたのは、リュウヤとリュウヤの祖母アマネらしいが、彼らさえもこの名前の語源は知らないらしい。



 海を眺めながら、悲しみで沈んでいた。
 彼女の形見をみて、自分の小ささを悔やんだ。
 いっその事、彼女の後を追おうと何度考えたことか……。
 だけど、そんなこと俺には出来なかった。
 少なくても、俺が亡くなると悲しんでくれる人が少なからずも一人くらいはいることを知っていたから。

 そんな時、リュウヤは攻撃を仕掛けてきて、俺の力を試してきた。
 チルタリスを繰り出してきたのに対して、フライト(フライゴン)で戦った。
 フライトのスピードには自信があった。
 チルタリスの攻撃をかわしながら接近して、爪を叩き込んで一撃で倒した。

 しかし、チルタリスが倒れたのにもかかわらずリュウヤは少し微笑んだ。
 どうして笑ったかはわからないが、リュウヤはすぐに表情を引き締めて言った。

「俺に協力して欲しい」

 話を聞くと、俺の力を見込んで、協力して欲しいことがあるらしい。
 リュウヤは俺がヒカリを助け出せなかったことを知っていた。
 そして、彼が俺と同じ境遇にいることを語った。

「俺も……いや、僕も君と同じさ。……大事な人を……守ってあげられなかった」

 さらに、世界崩壊の危機であることも……。

「僕は……守りたい……。彼女も……この世界も……。だから、協力して欲しいんだ!」

 自分を”俺”と呼んで使命を果たそうとするリュウヤと自分を”僕”と呼んで不安の中に内なる芯の強さを感じさせるリュウヤ。
 世界を守りたいという言葉が俺のヒカリの言葉を思い出させた。

―――「私は……あなたが死ぬのが一番嫌なのよ!!だから、生きて!私の分まで!私が愛した世界を守って!」―――

 ヒカリを助けられなかったことが罪ならば、俺は彼女が好きだった世界を守ることでその罪を償おうと思った。
 その覚悟は、半端なものではない。
 そう、俺は命を賭ける覚悟で挑もうと思った。










 57:俺とラグナ


 ”ティブス”へ行く前にリュウヤはもう1人連れて行きたい人物がいると言った。
 その男の名前はラグナと言った。
 ラグナはノースト地方のブルーズシティでお尋ね者を探し回っているところだった。

「何だてめぇら?俺になんかようか?」

 チラッと見ただけで、あまり俺とリュウヤに関心を持たず、あちこち歩き回るラグナ。
 黒い髪に、黒いGパン、黒いコートを羽織っているだけの格好だ。
 ラグナが一歩挙動するたびに、コートがはだけて、鍛えている体を見える。
 お腹周りには白い布のようなものが巻かれていた。

「俺に力を貸して欲しい」

 そんなラグナにリュウヤが何の説明もなくズバッと言った。

「今忙しいだよ!後にしろ!」

 諦めるのかと思いきや、リュウヤはボールからリザードンを繰り出した。
 ラグナに向かって引っかいた。
 だけど、ラグナはリザードンを出した気配に気付いて、間合いを取って、引っかく作動に入った頃にはポケモンを繰り出していた。
 ピクシー対リザードン。
 相性の優劣はあまり関係なかった。
 だけど、リザードンの力が勝っていたようで、ピクシーを押し飛ばした。
 さらに間髪を入れず、火炎放射を叩き込んだ。
 俺のザーフィ(リザードン)と威力はそれほど変わらない火炎放射だった。
 並の相手だったら、ダウンさせていたか、致命傷を与えていただろう。
 しかし、ラグナのピクシーは攻撃を耐えてきた。
 そして、10万ボルトでの反撃。
 リュウヤのリザードンは右にかわしたが、ピクシーがすぐに接近して、腹にパンチを叩き込んだ。
 リザードンは悶絶し、怯んだ。
 それから、再び10万ボルトを叩き込んだ。
 倒れはしなかったが、そこでリュウヤはボールを戻した。

「……てめぇ……何故戻す?バトルする気ぃあるのか!?」

 ラグナはポケモンバトルを楽しんでいたようで、突然の中断に怒った。
 リュウヤの胸倉を掴み、彼の顔を見たところで、ラグナははっとした。

「そういえば、てめぇ……あの時のジョウトリーグのドラゴン野郎……!!」

 どうやら、ラグナとリュウヤは初対面ではなかったらしい。
 後で2人に聞いた話によると、彼らは一度、ポケモンリーグの決勝戦で戦ったことがあるそうだ。
 結果はリュウヤの棄権だったらしい。

「そして、いっしょにいるてめぇは……ヒロトか!?」

 まだ、名乗ってなんかいなかった。
 それなのにラグナは俺の名前と顔を知っていた。
 これも後から聞いたことだけど、ルーキーズ時代にヒカリから俺の写真を見せてもらったことがあるらしい。
 ところで、一体ヒカリはいつの写真を持っていたのだろう……?
 幼い頃にいっしょに遊んだ時の写真だろうか?
 ラグナがその写真でわかったということは、俺はそんなに変わっていないということだ。
 ちょっと、へこんだ。





「で?どうやって、ティブスに行くんだ?」

 リュウヤは俺ほど詳しく話さなかったが、強い奴と戦えるということを聞いた時点で、ラグナは協力することになった。
 先ほどまで追いかけていた賞金稼ぎは後回しにするらしい。
 本人曰く、「賞金首はいくらでも見つけられるが、本当に強ぇ奴はなかなかみつからねぇ」と。
 それほどまでに、ラグナは退屈な放浪の旅に飽き飽きしていたらしい。

「これから、こいつの力を使って、異空間をワープする」

 リュウヤがそういって繰り出したのは、あの無限ポケモンと呼ばれるラティオスだった。
 ラティオスを見たのは2度目だった。一度トキオに見せてもらったことがある。
 しかし、トキオのラティオスとは雰囲気というかレベルがまったく違っていた。

「頼むぞラティオス」

「(うん!)」

 俺とラグナには、ラティオスの喋っている声は聞こえない。
 しかし、リュウヤには自分の手持ちポケモンの話す声がわかるらしい。
 というものの、リュウヤの持っているポケモンの一部だけらしいが。

「『トランスゲート』!!」

 ラティオスの目が光り、力を解放させると、空間に扉が姿を現した。
 どうやら、そこからティブスへ行くらしい。
 リュウヤ、俺、ラグナの順番にその扉へと入っていった。

「なんか……不気味だな」

 周りの空間はよくわからない状態だった。
 そう、何て言葉にしていいかわからない……人はそれを混沌の世界とかカオスとか呼ぶのだろうけど。

「まっすぐ歩けよ。目的地に着かないぞ」

 後ろで何かに手を伸ばそうとしていたラグナに釘を刺した。
 触れようとしていたものは、不思議な色をしたシャボン玉みたいなもの。
 紫とか、赤とか、黄色とか……他にもいろんな色が混じったものだった。
 そんな景色が30分ほど続いた。

「なぁー!まだつかねぇのか!?」

 周りの景色に飽きたのか、ラグナが文句を言い出してきた。
 さすがに俺も飽きてきたけど、文句を言っても何も始まらない。
 その文句にリュウヤは黙っていた。

「空間の移動だから、それなりに時間がかかるんじゃないのか?」

「……そうだな」

 意外にもラグナはそういって、黙ってしまった。

「あと10分ほど歩けば着くはずだ」

 リュウヤがそういったときだった。
 突然、空間が歪み始めた。

「何だ!?」

「どうしたんだ!?」

「まさかこんな時に……?ヒロト、ラグナ、飛行ポケモンを出せ」

「何があったっていうんだ!?」

「とにかく早く出せ!」

 リュウヤはそう言いながら、ガブリアスを繰り出した。
 飛行ポケモンといいながら、飛行系じゃないガブリアスを繰り出したということは、速く移動できるポケモンなら何でもいいのだろう。
 俺は迷わずフライトを繰り出した。
 
「急いで進むぞ!!」

 そういって、スピードを出してまっすぐ進んでいった。

「一体どうしたんだ?」

「『空間の捻れ』だ」

「何だそれ?」

「たまに生じる現象で、この異空間に入り込んだ者を掃除する現象だ」

「掃除する現象って……まるで、空間そのものが生きているみたいだな……」

「ああ。この空間は生きていると言ってもいい。俺の空間を移動する方法は少々危険な方法なものなんでな」

 ”俺の”と言う当たり、他にも空間を移動する方法はあるらしく、安全な方法もないこともないのだと思った。
 そんなことを考えているうちに、出口に近づいてきた。しかし、大変なことに気付いた。

「リュウヤ!ラグナがいないぞ!」

「何!?」

 止まって、後ろを見ると遥か後方で、走っているラグナの姿が見られる。

「なんであいつはポケモンを使わないんだ!?」

「まさか……飛行ポケモンを持っていないのか?」

 ラグナのことを意識したのがまずかった。
 次の瞬間、空間が光った。

「まずい!!ヒロト!ポケモンを戻せ!」

「え!?」 

 リュウヤの言うとおりにフライトを戻し、リュウヤもガブリアスを戻した。
 そして……何かが弾けた。

「くっ!」

「うっ!」

 次の瞬間……まるで落とし穴に落ちたような感覚に陥った……。










 58:俺とヒカリ……?


 そう、これはほとんど落とし穴だった。
 急に足場がなくなって、落下した。
 突然のことに抗うことが出来ず、ポケモンを出すことも忘れていた。

 ズドンッ!!

 激しい音を立てて、地面に落ちたと思った。
 でも、敷き詰められた藁がクッションの役割になって、たいしたケガはしなかった。

「大丈夫か?」

「ああ……」

 同じようにリュウヤも藁のクッションに落下していた。
 藁を払った手で俺の手を掴んで起こしたが、リュウヤは誰かの気配を察して、ボールを構えた。
 俺はゆっくりとその人物を下から見ていった。
 青いタイトスカートと白色に赤色のチェックが入ったシャツ。
 それほどスタイルがいいとは言わないけど、その人が似合いそうなサイズよりもワンサイズ小さめにしているせいか、胸とお尻が目立っているように見える。
 そして…………俺は顔を見て絶句した。

「ヒカリ……?」

 彼女の顔を見て、ポロリとそう一言言った。
 その女性は不思議そうに俺のことを見ていた。
 リュウヤが俺になんか言ったけど、聞こえなかった。

 濃い目のブルーの髪の毛はまさに彼女のもの。
 髪型がストレートとツインテールの違いはある。
 けれどあの別れ際に見た唇、鼻、耳、頬、眉……そして灰色の瞳はヒカリに間違いはなかった。
 とっさに俺は彼女に近づいていった。

「ヒカリッ!!」

 メキッ!!

 抱きつこうとしたが、顔にチクチク刺さるものが当たった。

 痛い……。とっても痛い……。箒……?

 ヒカリの攻撃がモロに入ったようで俺は気を失った。





 目を覚ましたとき、俺は小さな部屋のベッドに寝かされていた。
 なんで、こんなことになったんだ?と思いながら部屋を出て、リビングにやってきた。
 そこに、リュウヤがいた。そして、もう1人……
 俺は今度こそと思った。

「ヒカリ!!」

「ヒロト、待った!」

 女性に飛びつく寸前でリュウヤが俺のシャツを掴んで止めた。

「その人はヒカリじゃない」

「何言ってんだよ!!ヒカリじゃなければ、その子は何だっていうんだよ!!」

 怒鳴って俺は言う。

「私はヒカリっていう人じゃないわ」

 初めて彼女の声を聞いた。

「私の名前はアクア。ヒカリって言う人がどんな人だか知らないけども、私はヒカリではないわ」

 彼女はそう言う。
 ……でも、俺はやっぱり信じられない。
 喋り方はともかく、声質はそっくりだったから。
 俺は彼女の顔をまじまじと見ながら、近くにあった椅子に腰掛けた。
 少し冷静になって、ヒカリと彼女の違いを見つけようとした。
 でも、ヒカリと違う点は、十字の形をしたピアスをしてる所、髪型がストレートである以外、外見的には何の違いも見つからなかった。

「……そんなにヒカリって子に似ているわけ?」

 俺のピリピリした雰囲気を抜け出したかったらしく、彼女は聞いてきた。

「ああ……。似ているなんてレベルじゃない……。本当にヒカリじゃないのか……?」

「残念ね。私の名前はアクアだし、君のことも知らないわ」

「…………」

 ただ、唸るしかなかった。
 こんなに声も顔もヒカリなのに、それが別人なんてあんまりだった。
 こんな俺を尻目に、リュウヤとアクアは何かを話していた。
 俺はただ、この現実を受け止められずに困惑し続けた……。





「おい、ヒロト」

「……え?」

 だいぶリュウヤとアクアは話し込んでいたらしく、窓から外を見ると、太陽が沈もうとしていた。

「話を聞いていたか?」

「……わりぃ……聞いていなかった」

 リュウヤがため息をつく。

「今日はここに泊まって、明日からラグナを探しに行くって話だ。アクアさんも協力してくれることになった」

「え……?」

 ふと、彼女の顔を見ようとした。
 しかし、彼女の姿が見当たらない。

「アクアなら台所だ」

「そうか……。明日出発なら、今日はもう寝ていいよな?」

「……好きにするがいい」

 最初に眠った部屋に向かって歩き出した。
 すると、彼女がポットを持って入ってきた。
 自然とすれ違う。



 ……甘い香り……女性特有の甘い香りがした…………

 そう、この香りはどこかで嗅いだことがある。

 あれは……そう……



 無意識のうちに、その匂いに惹かれた。
 そして、自然と手が伸びて抱きしめた。
 キャッと彼女は声を上げる。

「ヒロト!」

 リュウヤが慌てて立ち上がる。
 後から聞いたけど、アクアが怒って殴ろうとしていたらしい。
 でも、そんなのどうでも良かった。
 ただ、この世でもっとも愛した女の子の匂いに触れていたかった。
 匂いが手に入った時、もう俺は、目から零れ落ちる涙を止める事ができなかった……。

「なんで?……なんでヒカリじゃないんだよ!?」

 下を向いて泣いた俺には彼女がどんな表情をしていたか分からない。
 ただ、わかることは彼女が優しく俺を撫でてくれて、気の済むまで泣かしてくれたこと。
 こんなに泣いたのはヒカリが亡くなったとき以来だった。
 そして、泣いた俺はそのまま眠ってしまった。
 だけど、ふと、リュウヤとアクアの会話が夢の中で聞こえてきた。

「ヒカリって、どれだけ私に似ているの?」

「さぁ。ヒロトの行動を見ると、顔、体、声、それに匂いまでそっくりらしいな」

「それで……?そのヒカリって子は……?」

「……それを聞くか?わかっているはずだ。こいつの反応を見れば」

「…………」

「そうだ。どれだけ似ているかは、そのラグナって奴の反応を見ればわかるかもな。ヒカリのことはラグナが知っているはずだ」

「……どういうこと?」

「俺はあまりヒカリの話は知らない。あと、わかっていると思うが、ヒロトには聞かないほうがいいと思うぞ」

「そんなのわかっているわよ……」

 彼女に出会った事……これは全て夢なんだと思いたかった……。










 59:俺とTC


 次の日、リュウヤとアクアはポケモンバトルをした。
 フライゴンVSエレキブルのバトルで結局、リュウヤのフライゴンが勝ったが、エレキブルは相性の悪さをも感じさせない強さでリュウヤと互角の勝負を展開していた。

 でも、俺は考える。
 リュウヤはここまでのバトルをどれくらいの力でやっているのか?と。
 リュウヤの実力を知ったアクアは言った。

「あんたの強さ、TCでも十分やっていけるわね!」

 リュウヤと俺はTCのことを聞いた。
 TCはSGに抵抗するために作られた組織なんだと。
 それを聞いて、リュウヤはTCに入ると言い出し、アクアはそれを承諾した。
 あろうことか、リュウヤはヒロトも同じ実力を持っていると言いだし、巻き込まれる形でTCに加わることになってしまった。

 ここまで来たら、わかるだろう。リュウヤはラグナもTCに入れようとしていることが……。
 それから、俺たち3人はTCの本部に移動した。
 そのとき俺とアクアは、一度も話が出来なかった。





「♪おっ!ひっさしぶり〜!アクア!」

 TCの基地に着くと、エレキギターを掻き鳴らし、歌う男の姿があった。
 彼の名をモトキと言った。
 マイペースだが、とても実力のあるトレーナーだという。
 どう見ても、ただのネジの外れたミュージシャンにしか見えないが。

 他にも、TCのリーダーのマッチョなおっさんのテツマ、元カントー四天王の1人のカンナ、そしてモトキの妹のハナを紹介してくれた。
 外に出ているが、エレキという少年もいるということを教えてくれた。

 アクアの推薦でテツマはTCへの加入を了承してくれた。
 だが、1人の男がそれに反対した。

「アクア!またどこの馬の骨をつれてきたんだ?しかも今度は2人か!」

「シラフさん……」

 声の方を見ると、壁に寄りかかった30代くらいの男がこちらを睨んでいた。

「この前連れてきたエレキは雑魚中の雑魚だったじゃねぇか!今度という今度は信用ならねぇ」

「……試してみるか?」

 リュウヤはボールを構え、シラフを睨んでいた。
 でもリュウヤを見て、シラフは鼻で笑った。

「度胸だけは達者だな。とにかく、お前らを信用したわけじゃないからな!」

 そういって、シラフは離れて行った。
 テツマのおっさんが、シラフは人を信用しないところがあるのだと言う。
 でも、その信用しない度合いがユウナとは異質であると俺は感じていた。
 そう、何かが違うと……。





 そして、その後すぐに俺とリュウヤとアクアはラグナを探しに出かけた。
 ”ティブス”も”アワ”と同じでカントー、ジョウト、ホウエン……と地方が存在していた。
 俺たちはそれぞれ、フライト、カイリュー(リュウヤのポケモン)、リザードン(リュウヤのポケモンでアクアが乗った)に乗って空からラグナを探した。
 リュウヤの話によると、ラグナと俺たちの異空間にいたときに落ちた距離を予測すると、カントー地方のどこかにいることは間違いないらしい。
 しかし、ラグナはなかなか見つからなかった。





 TCを出て数日が経ったある日、俺たちはグレンタウンのポケモンセンターに立ち寄った。
 十数年前位に火山が噴火し、街が壊滅状態に陥ってしまったことがあるらしいが、今は復興されていた。
 そのポケモンセンターのロビーで俺が休んでいると、彼女が隣に座った。
 グレンタウンの温泉は健康にいいらしく、彼女は入浴してきた後のようで、頭にはタオルを被せていた。髪の毛が程よく濡れていた。
 それに頬を上気させている彼女の顔を見ると、どうしてもヒカリのことを思い出してしまう。

 リュウヤは今は外で海を見ている。
 最初に会った時から今日まで俺とアクアはリュウヤが介しないとまったく喋らない状況にあった。
 だから、アクアが隣に座った時、何をしゃべればいいか迷ってしまった。

「…………だったわよ?」

「え?」

 彼女から話しかけてきたことはわかったがよく聞こえなかった。

「いいお湯だったわよ。ヒロトも入ってきたら?」

「あ、ああ……」

 ちょっと焦って返事をした。
 部屋に戻るのかと思ったら、その気配はまったくなかった。
 ただ、俺の隣に座っていた。
 ちょっとした沈黙の後、俺はずっと言わなければならないことを口に出した。

「ごめんなさい……」

 彼女が俺の顔を見た。

「あの時、急に抱きついたりなんかして……」

「…………」

「どうしても、あなたがヒカリにしか見えなくて……それでもうどうしようもなくて…………」

 その後の言葉が続かない。だけど、彼女はずっと黙ってその話の続きを待っていた。俺から目を離しているが。

「だけど……もう大丈夫。もう間違えないよ。ヒカリはヒカリ……アクアさんはアクアさんなんだって……。そう自分で思うことにするよ」

「…………」

「だから、もうあんなことはしないよ。ヒカリは……だって、ヒカリは……俺の心の中にいるんだから……」

「…………」

 俺は立ち上がって、アクアさんを見た。

「明日からは普通に話しかけるんで、出来るだけ普通に話してください」

 会釈をして、その場を立ち去った。





 以降、それからアクアさんは普通に俺と接してくれるようになった。
 いっしょに笑い、考え、バトルし、飯を食べながら喋るようになった。
 これでよかったんだと思う。
 これで、俺はアクアさんとヒカリを区別することなく、アクアさんを1人の女として見ることが出来るようになった。
 …………そう頭では思っていた。




















「……それで、お前を見つけたってわけだ」

 今までの説明をラグナにした。
 と言っても、ヒロトがラグナに話したことは、TCに入ったことだけであるが。

「聞いてないんじゃないか?」

 リュウヤにそう言われてラグナを見ると、確かにラグナは気持ち悪そうにお腹をさすり続けていた。
 ヒロトの話を聞く余裕なんてラグナにはなかった。
 ちなみに今は、ポケモンたちを休憩させるために、陸へ降りていた。

「飛行ポケモンを持っていない当たり、よほど乗り物酔いするタイプなんだな……」

 ヒロトは苦笑した。
 すると一方で、飛び起きた者がいた。

「アル?あれ?ここはどこアル?」

「目が覚めたわね。エアー」

「あれぇ!?ここはどこアル!?確か、私、ラグナたんと一緒に修行をしていたアルよ!?そして、なんで私の名前を知っているアル!?」

「え?……そ、それはあなたの持っていたポケモン図鑑を見たからよ?」

 ちょっと、慌てたようにアクアが言った。
 でも、リュウヤはアクアが図鑑を見て彼女の名前を言ったのではないことを見抜いていた。
 彼女が知らないところで、一度会っているのだな……と。

「よし、ラグナが気絶している今、一気に本部まで戻ろうか」

「そうね。早く移動しなきゃいけないし」

「どっちにしても、ラグナには我慢してもらわないとな」

 そういって、それぞれ飛行ポケモンを出して、飛び乗った。

「どこへ行くアル?君達は誰アル!?」

 エアーの質問にアクアは一緒について来たら教えてあげるわよと答え、エアーはアクアといっしょにリュウヤのリザードンに乗った。
 ヒロトはラグナを落とさぬようにフライトに乗せ、リュウヤはカイリューに乗った。
 そして、ヒロトたちはTCの本部へと移動を再開した。










 to be continued










 キャラデータ


 アクア(19歳)……マサラタウン出身の有名なトレーナー。
           親はあの有名なグリーンとブルーで、彼らが留守の時に留守番を引き受けている。
           12歳の時にジムバッジを集めてポケモンリーグを制覇した。
           リーフの姉で、何かとファイアとリーフを茶化す。
           彼女自身はまだ恋愛には興味ないらしい。

 手持ち……エレキブル(♀) マンタイン(♀) バクフーン(♂)など





 アトガキ


 ようやく、前回の主人公のヒロトが登場です。
 そして、今回は大半をヒロト目線でお送りいたしました。
 
 リュウヤとの出会い、ラグナとのファーストコンタクト、そして、ヒカリとそっくりなアクアとの出会い……
 ヒカリとアクアが似ていることはかなり前から決まっていたことでした。
 決して、某野球漫画の設定を真似たワケじゃないんですよ?(汗)

 ヒロトの前に現れたアクア……彼女の存在がどんな意味を果たすのか?
 これが何の意味も持たずに終わったら、笑ってください(ェ)

 次回から、いよいよ激しいバトルのスタートです。

 

[一言感想]

 ヒロトがリュウヤ、ラグナ、アクアと出会っていくお話でした。
 エアーは完全に巻き込まれモードですね。

 雪さんのサイトの『エレメント&カラー』や、『Days to Drift 〜漂う日々たち〜』を見ると、この話とのつながりが垣間見れます。
 特にアクアとの遭遇シーン(?)は、エレメント&カラーの水の章の最後にも、断片的に載ってましたし。
 TCのメンバーが徐々に集まってきたようなので、今後が楽しみですね。

 

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