ここは迷いの森……つまりラグナとエアーが1ヶ月も彷徨い続けた場所。
 入るのは簡単なのだが、出るためには飛行ポケモンやエスパーポケモンの力を借りないと出られないといわれる危険な場所で、実際に遭難者が出ている場所だった。

 だが、この場所で修行をしている変わり者達がいた。
 エアーもここで修行をしていたから、それを言っちゃうとアレだけど(苦笑)

 青いバンダナの男がボールを持って集中をしていた。
 数秒間、目を閉じた後、ボールを開放すると、中からシャワーズが飛び出す。
 そして、木に向かって尻尾を叩きつける。

 ズドンッ!!

 特別、何の技を指示したわけではなかった。
 それなのに、ただの尻尾が切り株及び、地面さえにも3メートルほどの亀裂を残してしまった。

「お兄ちゃん!完璧だよ!」

「すげえよ……。兄貴!」

「エースさん……素晴らしいです」

 青年……エースはシャワーズを戻した。

「こんな感じか?」

「うん!完璧だよ!」

 テンガロンハットを被ったジョカがピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねる。

「これなら、どんな相手でも対抗できる……お父さんだって助けられるよ!」

「なぁ、ジョカ」

 太目の少年、プレスが不安そうな声で問いかける。

「本当にオメーの父ちゃんはSGに捕まってたって言うのか?」

「プレス君!ボクの事信用していないの?」

「いや、そんなわけじゃねーけどよー……」

「プレス……信じましょう」

 諭すようにプレスの隣にいた少女、ミナノは言う。
 そのミナノはエースに近寄った。

「はい、エースさん」

「……。 ああ、ありがとう」

 先ほどの力を使った影響で、汗をかいていたことに気がついたミナノは、そっとエースにタオルを渡した。
 エースは礼を言ってそれを使用する。
 その様子をミナノはウットリとした目で見ていた。

「おーおー。ミナノは兄貴にぞっこんか?」

 ボソッと、プレスはミナノの耳元で囁く。

「なっ!?何てことを言うかな!?」

 顔を真っ赤にしてポカポカ両手で叩きながら、大声で言った。
 このプレスの言葉はジョカとエースには聞こえていなかったらしく、2人は不思議そうにミナノとプレスを見ていた。

 普段は丁寧な口調で話しているミナノだが、不意をつかれると、急に口調が砕けるようだ。

「別に私はエースさんなんて……」

「俺はエースさんなんて言ってねーぜ?ただ、兄貴って言っただけ」

「どっちも同じじゃないかな!?」

「……そうムキになるところを見ると、やっぱそーなんだ」

「……っ!!」

 カアッと赤くしたまま俯くミナノ。
 どうやら、プレスの勝ちらしい(ぁ)

「調整もこれで終わりだな」

「そうだね。じゃあ、さっそく行こう!お父さんを助けに!!」

 ジョカが腕を差し出した。
 エースがジョカの手の上に置いて、それからプレスが、そしてミナノが置いた。
 掛け声を上げて、気合を入れたところでジョカが一匹のポケモンを繰り出した。

「頼むよ!ラッル!」

 オスのキルリアからしか進化しないといわれるエルレイドだ。
 すると、エルレイドはテレポートを繰り出す。
 迷いの森を抜け出すのに、数秒たりとも掛からなかった。





「着いたよ」

「ジョカ……。目的地から遠いんじゃねーか?」

 ラッルこと、エルレイドを戻したジョカに向かって、プレスが言う。

「プレス、ばれない様に進入するんだから当たり前じゃないですか。エースさんもそう思いますよね?」

「……ああ」

 ミナノに振られてエースは素直に頷く。

 SGの本拠地の近くにある深い森にやってきた4人。

「さて、これからどうやって……」

「『マッドショット』!!」

「っ!!」

「ハリテヤマ!!」

 ジョカを狙って放った攻撃をプレスのハリテヤマが間一髪で防御した。

「いってーだれだ!?」

「……今の攻撃は茂みの中からのようですね」

 ミナノも相手の次の攻撃にあわせて出せるようにポケモンを準備している。

「お兄ちゃんは下がってて。気をつけるんだよ!ミナノ!プレス!」

「わかってる!」

「了解です」

 じっと茂みを見ている2人だったが、ふとジョカが叫んだ。

「上!!」

「なっ!!」

 不意打ちというべき、空から破壊光線が向かってきた。

「サイドン!」

 しかし、とっさにミナノが『まもる』を指示して、攻撃をブロックした。

「『ストーンエッジ』です!」

 サイドンが反撃のストーンエッジを上空にいるポケモン……カイリューに向かって放つ。
 しかし、岩の破片は飛んでいるカイリューになかなか当たろうとはしない。

「あれだけの動き……トレーナーが乗っているみたいだね」

「……。やっぱり俺がやろう」

 と、エースが前線に出ようとした瞬間だった。

「……エース?あなた……エースでしょう!?」

「……?」

 自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、茂みの方から出てきた女性に目を向ける。
 ズボンとワンピースを重ね着してセミロングよりやや長めの髪を所々寝癖みたいに跳ねさせている女性だった。

「ファイア!攻撃をやめて!」

 彼女がそういうと、カイリューのトレーナー……ファイアは地上に降りてきた。

「あなたを探していたのよ。エース」

「……確かあんたは……ユウナ?」

 エースの目の前に姿を現したのは、ハナダシティの北の岬の小屋でデータをずっと解析していたユウナとファイアの二人だった。

「……何でここにいるんだ?」

「あなたを助けにここまで来たのよ!でも、これはどういうことなの……?」

 ユウナが言うのは、エースの隣にいる3人のことだった。

「何で、SGの左腕”レフトアーム”のジョカ、ミナノ、プレスの3人といっしょにいるの!?」

 ユウナがそういうと、ジョカがエースの前に仁王立ちになった。

「ボクたちには、お兄ちゃんの力が必要なんだよ!」

「お兄さん……?え……?えぇ!?」

「お兄ちゃんを連れて行く奴は、ボクが相手になるんだよ!!」

 ジョカが敵意を剥き出しになるが、エースが前に出る。

「助けに来てくれたこと悪いが……俺は戻るわけにはいかない」

「どうして?」

「やることがあるからだ」

「そのやることというのは、ライトよりも大事なことなの……?」

「…………」

「あなた……ライトがどんな気持ちでいたか知らないの!?」

「助けなくちゃならないんだ。俺の父さんを」

「あなたのお父さん……?」

「ボクが話すよ」

 すると、ジョカは今まであったことをユウナたちに話し始めた。

 

 

 

TWENTY SECOND

 

 

 

 69:儚く幼き日の記憶(回想) 〜LONELY CHILDREN〜


 ボクが物心をついた時に、側にいたのは、当時ジョウト地方に住んでいたママをよく知るおじさんだった。
 近くにあるのは釣堀で、そのおじさんが若い頃から練習のために使っていた釣堀だった。
 ここで、ボクのママも釣りの練習をしたのだという。

 そのママはボクを産んですぐに行方不明になってしまい、パパはボクに噂を聞きつけない場所へと雲隠れしてしまった。
 おじさんにパパやママに会いたいと駄々をこねて、困らせたことがあった。
 その度に「もうすぐ会えるよ」と言われて慰められた記憶がある。
 でも、結局会えることはなかった。

 さらに、おじさんは急病で亡くなってしまい、ボクは本当に一人になってしまった。
 そんな時に勇気付けてくれたのは、幼い頃から一緒だったピチューとおじさんのドードーだった。
 2匹とは家族同様に過ごしていたから、ボクは寂しくなんかなかった。
 森の中で木の実や果物を食いつないで、何とか生き延びることができた。





 そんなある日、ボクは2人と出会った。

「オメー、1人なのか?」

 ボクよりも一回り大きい男の子が話しかけてきた。
 あまりに突然のことでボクは萎縮してしまった。
 ここで手を出されたら、分が悪いと思って体を小さくした。
 でも、彼は意外にもそんな乱暴なことはしなかった。
 一つのリンゴをボクに差し出した。

「食べろよ」

「え……?」

「腹減ってんだろ?」

「で、でも……」

 何か裏があると思い、ためらっていると、

「食べないなら、俺が食っちまうぞ!!」

 脅すような声で言われた。
 あまりにも怖かったから、彼の持っているリンゴをひったくって噛り付いた。

「1人なら、俺たちと来いよ!一緒に暮らそうぜ」

 威圧感のある声や一回り大きい体格に似合わず、彼は優しい性格の持ち主だった。
 さらに、同じ歳だと聞いてボクは驚いた。
 そして、もう1人の女の子とであった。
 この2人こそが、プレスとミナノ。
 今まで運命共同体してきた2人だった。





 やがてボクらはジョウト地方を転々とすることにした。
 ポケモントレーナーとして旅を始める年齢が、11歳が基本だったのに比べて、ボクたち3人はそれよりも随分低い年齢で旅をすることになった。
 笑ったり、泣いたり、時にはケンカして、仲直りをして……充実した時を過ごした。

 同時にそれぞれの境遇も語った。

 プレスは、両親に捨てられたのだと言う。
 彼の家がカントー地方にあり、だいぶ裕福な家で育ったのだと言う。
 しかし、ジョウト地方へ(つまり、ボクたちが今いる場所)旅行に来た時、置いてきぼりにされたらしい。
 原因は彼もよく知らないみたいだい。でも、あまり両親にかまってもらった記憶がないと聞いている。

 ミナノは小さい頃からずっと親にこき使われて、両親から逃げてきたのだと言う。
 こき使われる上に、本人はとてもおっちょこちょいで何度も失敗して、両親に虐待されたのだと言う。
 そこで、逃げる途中でミナノはプレスとであったのだと言う。

 そう考えるとボクは一体どうなんだろう?
 ママが行方不明になって、パパが雲隠れをしたのだと言うのだから、ボクも捨てられたのだろうか……?
 真実が知りたくて、親を見つけ出したかった。
 けど、ミナノは言う。

「もし自分の子がどうでもいいと思っている親だったら、傷つくのはジョカですよ?」

 一方でプレスは言う。

「良い方で考えれば、何か理由があったんじゃねーか?それこそ、悪い奴らに狙われているとか……」

 ミナノは「それって、”良い方”っていうんですか?」とツッコミを入れた。
 悪い奴らに狙われていると言うのはプレスのいう可能性の一つだけど、それってどんなことなのだろう?
 もし、ボクを巻き込みなくないとして、パパが雲隠れをしたのだと言うなら、ボクはパパに愛されていたと言うことになるのだろうか……?





 やがてジョウト地方の旅を終えて、カントー地方に辿り着いた時、ボクらはそれぞれ11歳になっていた。
 ちょうど、その時にSGにスカウトされた。

 ジョウト地方でそれなりにポケモンを捕獲したり、バトルさせたりして、すでにジムリーダークラスの実力をボクたちは持っていた。

”君達みたいな強い子達の能力を私達の組織で伸ばしてあげるよ”

 断る理由なんてなかった。
 冒険とか、スリルとかそういった楽しみがなくなるのが残念だけど、衣食住の全てが保障されているこの場所なら、今までより楽な生活ができると思った。

 それから、バトルの特訓やたまにある任務をこなしていくと、すぐに3年の年月が重なった。
 その3年の年月の中で、ボクは特別な力に芽生えた。
 ポケモンの気持ちを知ることができ、ポケモンの傷をも癒してしまう特別な力。
 さらに、気を高めることでポケモンの力も上昇させると言う特殊な能力だった。
 このことを知るのはミナノとプレスだけで、他の誰もこの能力は知らない。
 SGの文献を調べると、10年に1人の確率でトキワの森の力を受けて産まれる子供が持つ能力らしい。
 その力の名は”トキワの力”と呼ばれるものらしい。
 ボクは知った。パパとママがトキワに縁のある人間なのだと。
 これで、ボクの両親を探す手掛かりが一つ増えたと喜んでいた。
 だけど、このことは知らなくても出会いは思わぬところから舞い込んで来た……。

 ある日、ボクはボスが廊下を歩いているのを見た。
 ボスの顔を見たことはあったけど、実際に会ったのは初めてだった。
 でも、ボクが目を惹かれたのはボスがいたからではない。
 どこかで見覚えがある赤っぽい髪の男がいたからだった。
 見覚えがあるんだけど、全く思い出せなかった。
 気のせいだと思ったけど、どうしても気になり、ボスの後をついていった。

 行き着いたのは、牢屋のような場所だった。
 ボスはしっかりと鍵をつけて、その人を閉じ込めた。
 ボスがこの場からいなくなるまで隠れて、ボクは思い切って話しかけた。
 彼がボクを見ると、目を円くして言った。

「……まさか……ジョカなのか……?」

 彼はすぐにボクが誰なのかを的確に当てた。

「どうして……?どうしてボクの名前を……?」

「……! そうだよな……。覚えているはずないよな……。だけど、そっくりだ。子供の頃のイエローに……」

 彼は少ししょんぼりした顔で言っていた。
 だけど、ボクは声と内容を聞いて、思い出した。
 そして、とても小さい時、彼の胸の中で抱かれたことを思い出した。

「……まさか……パパ?……パパなの……?」

「……!!」

 これ以上声が出なかった。
 パパが声を出す代わりにボクを抱きしめた。
 硬い鉄の棒で遮られているけど、何とか抱きしめてもらうことができた。

 だけど、ここで疑問に思う。
 何で、パパはここに捕まっているのだろう……?と。

「俺は、”あいつ”に操られている……。ここを出る度にマインドコントロールをさせられて、そのときの意識がない。……悪かったな。……ずっと連絡できなくて」

 幼い頃から今まで心の中でずっと知りたがっていたパパの気持ちを知った。
 ボクは捨てられていたわけじゃない。ボクの事を想っていてくれたんだと認識することができてうれしかった。
 だから、一刻も早くここからパパを出したくて、鍵を探そうとした。
 でも、パパは止めた。

「駄目だ。今は我慢しろ。そして、お前はここに近づくな!機会を待て!」

 そういって、ボクをこの場から追い立てた。
 この真実をボクが知ったとわかれば、ただでは済まないことをパパはわかっていた。
 ボクに捕まって欲しくないからそう言ったのだろう。
 仕方がなく、ボクは牢屋をあとにした。

 しかし、パパの牢屋を出たところでボクはすぐに見つかってしまった。
 ボールを取って警戒する。
 そのマフラーで口元を隠した男の名前はアウト。
 彼のことは写真で見たことがあった。
 何せ、SGのトップチーム”ヘッド”のうちの1人だったから。
 ”ヘッド”のメンバーはSGのボスとボクのパパ、そしてアウトの3人。
 つまり、ボクは大変な男に見つかってしまったのだ。
 恐れていた事態に萎縮するけど、アウトは意外な言葉を放った。

「父親を助けたいのか?」

「え……?」

 呆然とするボクにアウトはさらに言葉を続ける。

「お前の兄がいれば、父親を助けることなんて容易いだろう」

「お兄……ちゃん……!?」

 ボクに兄がいることは亡くなったおじさんから聞かされていたからさほど驚きはしなかった。
 でも、アウトからお兄ちゃんの話が出たことに驚いた。

「まさか……お兄ちゃんがどこにいるか知っているの!?」

 答える代わりに、アウトはボクにひとつの石を手渡した。
 虹色に見える石だったけど、見る方向を変えると、気持ち悪い色に見えたり、また色を失ったり、とても不思議な石だった。

「その石をエスパーポケモンに持たせて、人や場所を思い浮かべると、その場所にテレポートができる。それが、例え世界を隔てていても……」

「……世界を隔てる……?」

「要するにお前の兄を見つけ出せると言うことだ」

「!!」

 ボクはもう迷うことはなかった。

「でも、この石は……?」

「もらっても構わないよ」

「ありがとう!」

 何でアウトがこんなことをするかは全く考えていなかった。
 そんなアウトの考えよりもお兄ちゃんに会えるという気持ちの方が強くてどうでもよくなったのだ。
 そして、急いでミナノとプレスにこのことを報告した。

「だが、ジョカの兄貴はお前の顔を知らないんだろ?」

「大丈夫だよ!顔を見ればすぐわかるはずだよ!」

「でも、もし向こうがついて来ると言わなかった場合はどうするのですか……?」

「……そのときは……無理矢理連れて来ればいいんだよ!」

「それ、本気で言ってんのか?」

 プレスとミナノの質問もボクにとってはそんなにたいしたことではないように思えた。
 2人を説得した後、お兄ちゃんの所へ行くための報告のためもう一度パパの所へ足を運んだ。
 手掛かりを見つけたと言うと、パパは言った。

「お前の兄、エースを見つけても、絶対ここへ戻ってくるな!わかったな!?」

 パパはそう言ったけど、そうはしない。
 絶対にボクは助けに戻ってくると心に誓っていた。
 そして、エルレイドを繰り出してワープする瞬間、パパは聞いた。

「だが、その手掛かりをどこで見つけたんだ?」

「それはね、アウトさんが教えてくれたんだよ!じゃあ、行ってくるよ!」

 そういい残してボクたちはお兄ちゃんのところへテレポートをした。

「待て!アウト……だと!?」

 最後にパパのその驚いた声だけが印象に残った。





 それからは、すぐにお兄ちゃんを見つけることが出来た。
 結局強引にバトルする羽目になっちゃったけど、何とか3人がかりでお兄ちゃんを気絶させることに成功した。
 さすがボクのお兄ちゃんだけあって、バトルの腕も相当のものだった。
 もし、お兄ちゃんの”トキワの力”が完璧だったとしたら、バトルは長引いていたかもしれないし、もしかしたら返り討ちにされていたかもしれない。
 しかもお兄ちゃんのことを知っていそうなお姉さんが襲い掛かってきたけど、ミナノが撃退してくれた。
 お兄ちゃんのことをどんなに想っていても、家族の絆に勝るものはないとボクは思う。

 それからは、お兄ちゃんに”トキワの力”のことを教えた。
 ほぼ4週間の間にトキワの力を使いこなせるようになった。
 ボクとお兄ちゃんが修行をしている間、ミナノとプレスは周りの見張りをしていてもらった。
 SGのメンバーが急に消えたボクたちを探しているかもしれなかったから。

 見張りは無駄ではなかった。
 SGかTCかわからないけれど、プレスが語尾に特徴のある女と目つきの悪いツンツン頭の男と遭遇した。
 女の方はたいしたことはなかったみたいだけど、男の方はプレス1人で負けそうになった。
 修行の成果を見せるためにお兄ちゃんが飛び出して、その場を一転させたから良かったものの、油断は出来なかった。

 こうして、お兄ちゃんが修行を完成させた今、ボクたちはSGへと突入する。
 SGのために働くためではなく、パパを助け出すために……。










 70:”レフトアーム”vs”ライトアーム”


「……なるほどね」

 一通り状況を聞いたユウナは頷いた。

「要するにあなたは父を助けるためにエースを誘拐したと言うのね」

「誘拐じゃなくて、連れて来たって言って欲しいんだよ!」

「エース。あなたはどうしたいの?自分の弟のために力を貸してあげるの?」

 さっきからずっとエースは黙り込んでいた。しかし、やっと口を開く。

「俺は……ここに来るまでずっと何者かがわからなかった。”トキワの力”という不思議な力が使えて戸惑っていたし、なんで親が俺を捨てたのかと疑問に思っていた。……でもその考えは違った」

 エースはジョカを見る。ジョカはうんうんと頷いている。

「俺もジョカと同じ考えで、父を助けたい」

「それじゃあ、父を助けた後はどうするの?この世界に残って家族と一緒に暮らすの?」

「それは……」

「ライトはどうする気なの?」

 エースはユウナから顔を背けた。

「ある男に言われた。世界を隔てて結ばれることはいけないことだと。もしそうなったら、過酷な試練が待っていると……」

「…………」

「いけないことだから、ライトのことは諦めようと思う」

「あなたのライトを想う気持ちは、その程度だったの?」

「…………」

 エースは答えなかった。ただ、黙り込んでいた。

「……呆れた。私、あなたがそんな人だとは思わなかった。ヒロトやハルキ……トキオでさえどんなことがあっても相手を想う気持ちを諦めたりはしないのに、その程度の障害であなたは諦めるなんてね」

「…………」

「ライトは今でもあなたのことを想っていると言うのに……。2年もの間、1人であなたを探し続けたのよ?」

「…………」

 なお黙り込んでいるエースを見て、ユウナはため息をついた。

「まあいいわ。とりあえず、あなたがライトを諦めるかどうかは、ライトに会ってからよ」

「俺は」

「「もうライトに会わない」なんて言わせないわよ。何の言葉も無しにライトと別れるなんて私が許さない」

 ユウナはエースを睨みながら言った。

「私はあなたとライトを会わせなくちゃいけないの。それが今回の私の仕事だから」

 エースから視線を外して、今度はジョカのほうを向いた。

「あなたたちと父親に会わせるのを協力してあげる。目的は同じSGでしょうから」

「え……?」

 ユウナの言葉にジョカやプレス、ミナノは意表を突かれたように驚く。

「何で、あなたたちがSGに……?」

「ちょっとワケありでね」

 そういって、ユウナはファイアの顔を見た。
 ずっと彼は本部のあるほうを見ていた。
 表情はずっと険しかった。

「とりあえず行きましょうか」

 何故かユウナが指揮を取ることにみんな異論はなかった。
 この中で一番の年上はユウナ(20歳)だし。
 エースも考えながら足を動かし始めた。

「おっと!!ここは通さないぜ!!」

「!!」

 バンッ!! バンッ!!

 銃声の音が2発響いた。
 ユウナは落ち着いて後ろに飛び退き、銃弾をかわした。
 その銃弾は地面に当たると電気を帯びて破裂した。

「おーおーよくかわしたな!俺の『エレクトリック・リボルバー』をよ!」

 6連式リボルバーを持った大柄の男が肩にパチリスを乗っけて上空から降り立った。

「ガン!!」

 ファイアがふと彼の名前を呼ぶ。

「ファイアか!遊びに来たのか?それとも……」

「ガン……余計な話は無用だ」

「そうよ!ガン!」

 ストッ、ストッ……と、ビキニのように露出の多い服装をしている女のラムとオーラと冷静さを醸し出す美少年のアルが順に空から降りてきた。

「”レフトアーム”には処分命令が出されている。同じ仲間だと思っていたが、消えてもらうしかない」

「そゆこと!」

「侵入者も同じことだとよ!ファイア!」

 そうして、攻撃態勢に入るアル、ラム、ガン。

「お姉さんの名前はユウナって言ったよね?」

「え?」

 ふと、ジョカが尋ねてきた。

「あの3人はボクたち3人が抑えるよ!だから、お兄ちゃんを連れて3人で先に行ってほしいんだよ」

「……大丈夫なの?」

「ジョカ……」

 エースも心配するが、ジョカはにっこりと頷いた。

「わかった」

 ファイアとエース、そしてユウナは先の道へ進んで行った。

「それとユウナさん。ボクはお兄ちゃんの弟なんかじゃないんだよ?」

「え?どういうこと……?」

 ジョカたち3人を置いて、先へと進むユウナ、ファイア、エース。

「ジョカは弟じゃない。妹だ」

 ふと、エースはユウナに言った。





「食らいやがれ!『エレクトリックリボルバー』!!」

 ガンが先ほどの銃で電気を帯びた弾丸を連射した来た。
 しかし、銃弾に装填できる弾数は最高6発。
 3人はその攻撃を何とか回避した。

「3つに分かれましょう」

 ミナノが提案した。

「そうだね」

「気をつけろよ!特に、ミナノはドジすんじゃないぞ!」

「プレス!いつまでも私をドジッ娘扱いしないでください!」

 プレスの軽口に真面目に答えながら、その作戦を決行した。

「逃がすか!」

「あ!ガン!」

 ラムが止める間もなく、ガンはジョカを追っていった。

「アル……どうしよう?」

「……とりあえず、ジョカはガンに任せよう。他の2人を俺たちが倒せばいい」

「でも、アルならともかく、ガンじゃジョカには敵わないと思うけど……?」

「それでもいい。”とりあえず”だからな」

「わかった。私はミナノを倒すわ!!」

 そうして、ラムはミナノをアルはプレスを追っていった。










 71:vsガン


「どこへ行った……?」

 肩にパチリスを乗せて、右手に銃を持ったガンがいつでも発砲できるように神経を研ぎ澄ませていた。

 ガサガサッ……

「そこか!!」

 凄まじい反応で茂みの中を早撃ちする。
 茂みの中で電気が炸裂し、茂みが発火した。

「引っかかった!」

「何!?」

 ガンの目の前が光とともに真っ暗になった。
 いや、真っ暗と言うよりは、視界がぼやけると言うか、頭がくらくらし始めた。

「(くそっ……『怪しい光』か……)ハリーセン!ヤンヤンマ!」

 自分が動けなくなり、攻撃が出来ないと悟ると、自分が攻撃を受けないように護衛のためにハリーセンとヤンヤンマを繰り出した。
 ガンは混乱して前が見えないが、真正面の方向に先ほど怪しい光を放ったユキメノコとジョカがいた。
 ハリーセンとヤンヤンマは弾丸のような水鉄砲とソニックブームを放った。

「ユッキ!『氷のつぶて』を連射だよ!!」

 連続で放つ氷のつぶては、勢いよく水鉄砲とソニックブームに命中した。
 ソニックブームは相殺することが出来たが、水鉄砲は逆に押し返されてしまった。
 ユキメノコは命中し、ダウンした。
 だが、次の瞬間に、木の上からヤンヤンマとハリーセンに強力な電撃が落ちた。
 木の上にいたのは、ジョカがあらかじめ木の上に忍び寄るように指示を出しておいたピカチュウだった。

「ピッチ!よくやった!」

 ピカチュウを抱き寄せているところで、ガンがようやく混乱から復活した。

「くそ……まさか不意を突かれるとは思わなかった!こっからが本番だ!」

「マッグ!!」

 銃口を見て、ジョカが新たにポケモンを繰り出す。
 カタツムリのようなポケモンだが、属性は水ではない。
 炎、岩タイプのマグカルゴだ。
 電気の銃弾をマグカルゴはリフレクターと光の壁の両方を一瞬のうちに張って、攻撃を軽減して受け止めた。

「防御か?だが、そんなの何回も持たないはずだ!俺の銃の威力は伝説級のポケモンでも致命傷を負わせるほどの威力を持つんだぜ」

「知っているよ。だから、ボクはあらかじめ2匹のポケモンを忍ばせておいたんだよ」

「何?……また上か!?」

 ガンは銃を上に向けた。
 ピカチュウが上にいたのを思い出しての行動だった。
 しかし、今度は違う。
 不意に下から、地震の様な揺れ動く感覚がしたと思うと、ポケモンが飛び出してきた。

「しまった!下か!」

 銃を慌てて下に向けようとするが……

 ガギンッ!!

 鋭い前歯を持ったポケモンが銃を噛み砕いてしまった。

「そのまま『アクアテール』だよ!」

「くっ!」

 ガンは状態を逸らして、辛うじて攻撃をかわす。

「パチリス!『スパーク』!」

 ガンの肩を踏み切りにして、捨て身タックルのような一撃が入った。
 水タイプであるこのポケモンにとって、この一撃は耐えられるものではなかった。

「ビッダ……ありがとう」

 ビッダというニックネームのビーダルを戻して、ジョカはエルレイドを繰り出した。

「ガンの銃はポケモンの技を装填、圧縮して一気に打ち出すもので、それが無くなれば、ボクにだって勝機はあるんだよ」

「どうだかな!俺を舐めんじゃねーぞ!!」

 パチリスとともにミカルゲを繰り出すガン。
 一方のジョカもピカチュウを繰り出して、2対2のバトルになった。

 しかし、決着は早く着いた。

「これで、もう手持ちはゼロのはずだよ!」

 戦いを制したジョカがピカチュウとエルレイドを戻して言った。

「あなたの手持ちポケモンは4匹のはずだよ。だから、降参しなさい!」

「残念だったな!もう一匹いるんだよ!とっておきがな!」

 ガンが繰り出す最後のポケモンとは、ファイヤーだった。

「伝説のポケモンのファイヤー……?なんで……?」

「燃やし尽くせ!!『火炎放射』!!」

 命の炎ともいわれる強力な炎がジョカに襲い掛かる。
 しかし、ジョカはマグカルゴを繰り出して炎を防いだ。

「『光の壁』で防ぐとはな!だけど、そいつはもう限界のはずだぜ!」

「それはどうかな?」

 ジョカがマッグに手を当てると、淡い光を放ち、先ほどガンの銃で受けた傷が治ってしまった。

「何!?」

「これで終わりだよ!!マッグ!『ロックレイン』!!」

 どこからとも無く、空から岩の雨が降り出し、ファイヤーに命中していった。
 さすがのファイヤーもこの攻撃を避けきれず、ダウンしてしまった。

「く……くそっ!!」

 ガンはファイヤーを戻して逃げ出してしまった。

「やった!ありがとう、マッグ!」

 マグカルゴを労わって、ボールに戻す。

「急いでプレスやミナノを探さないと……」

「探す必要はない」

「!?」

 ジョカの目の前に現れたのは、”ライトアーム”のリーダーであるアルだった。

「え……?ミナノとプレスは……?」

「ミナノはラムが相手している。プレスなら、今頃は地面に転がっている。なに、死んではない。気絶しているだけだ」

「…………」

「お前がガンと戦う、俺がプレスと戦うと決まったことから、俺とお前の戦いは決まっていた」

「どういう意味?」

「そのままの意味だ。プレスは君の中で弱い方。ガンはこちらの中で弱い方。つまり、早く決着がついて、こうなることはわかっていたと言うことだ」

「ボクはそう思わないよ。プレスなら、君に勝てると思っていたんだよ」

「本当にそう思っていたのか?」

「……思っていても、現実は違うということが言いたいんだよね?」

「別に言いはしない。だが、お前を倒して、先に行った3人を倒させてもらう」

「そうは行かせないよ! ……あれ!?」

 フラッと……ジョカは眩暈がした。

「(まずい……トキワの力の副作用がもう……)」

「『リーフストーム』」

「!!」

 ズドドドドーンッ!!!!

 ドダイトスの攻撃が無防備なジョカに襲い掛かった。
 ジョカは吹っ飛ばされて、木に頭をぶつけて気を失ってしまった。

「……隙を見せるとは……意外にあっけなく片付いたな」

 アルは油断しない。
 ジョカが気絶していなかった場合も想定しながら、ゆっくりと近づいて、ジョカを動けなくした。
 動けなくしたと言うのは、ロープで木に縛り付けたと言うことだけど。
 
「ミナノはラムに任せて、俺は追いかけるか……」

 アルはピジョットに乗って急いで、SGに侵入せんとする者たちを追跡していった。










 to be continued










 キャラデータ


 ジョカ(14歳)……生まれたときから運命に翻弄される見た目は男の子に見える女の子。
           テンガロンハットを被ってさらにショートカットなのでより男の子っぽく見える。
           エースの妹で基本的な性格は興味津々で余計なところに首を突っ込みたがる。
           しかし、SGに入ってからは自分の性格を抑えてより冷静な性格になろうと努めていた。
           口癖は基本的に”〜だよ”。

 手持ち……ピッチ/ピカチュウ(♀) ドドすけ/ドードリオ(♂) ユッキ/ユキメノコ(♀) 
      ラッル/エルレイド(♂) ビッダ/ビーダル(♂) マッグ/マグカルゴ(♀)


 プレス(14歳)……ジョカに手を差し伸べたやや太目の少年。
           口はやや乱暴だが、心はとっても優しい。
           ミナノに意地悪を言うことが多い。
           果たしてその真意は……?

 手持ち……カメックス(♂) ドンファン(♂) ハリテヤマ(♂) ケッキング(♂) ボスゴドラ(♂) ハガネール(♀)


 ミナノ(14歳)……ジョカ、プレスと一緒に行動を共にする少女。
           3人の中では冷静な性格なのだが、テンパッた時、性格と口調が明らかに変わる。
           地は後者らしく、冷静に装っているだけらしい。
           恋に恋する女の子タイプらしく、エースのことを憧れの眼差しで見ているようだ。

 手持ち……ムクホーク(♂) サメハダー(♂) ヘラクロス(♀) ソーナンス(♀) サイドン(♂) ブースター(♀)





 オリジナル技


 ガン
 『エレクトリックリボルバー』……詳しくは14話参照。

 ジョカ
 『ロックレイン』……マッグ(マグカルゴ)の技。巨大な岩を落としまくる。
           どうやって落としているかは謎(ぁ)





 アトガキ

 ジョカの過去が明らかになる今話。
 そして、ジョカが動き出す。

 注目はエースとユウナの再会シーンというところかな。

 …………。

 この話、あんま語る事ないなぁ(汗)
 次回は、アルの強さが明らかになります。

 

[一言感想]

 プレス、ジョカ、ミナノ……何気にDOC第1話から登場している面々だったりして(何)。
 以前ライトはミナノと勝負し、歯が立たなかった訳なのですが。
 …………。なんつーか、ミナノの胸中の事といい、再戦がもし起こったら血の雨が降る女の戦いになりそうで怖いです(ぇ)。
 ちなみにもう1つおさらいすると、エースとジョカが正式に対面したのは、第13話でした。
 そうか……ジョカ、弟じゃなくて妹だったのか(何)。

 

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