―――SGのアジトの入り口。
そこには3人の玄関を守る者がいたのだが、ユウコが全員を倒してしまった。(といいつつもほどんとはトランが倒した)
さらにその場所では、ユウナとアルの激しい戦いが繰り広げられていたのだが……
「……くっ……」
アグノムとアルがその場に倒れていた。
強力な一撃を受けたようでアグノムのほうは凄まじい傷を負っていた。
そして、ユウナの姿はどこにも無かった。
「……まさか……あの女……あんな力を隠していたとは……」
この時点で、リュウヤがアウトを退け、ライトがSGの諸悪の根源のサキを倒し、ブラックことエースの父親のシルバーを助け出していた。
そして、その三人のヘッドを除いて最強と謳われていたのが彼……アルだった。
「SGは……もう……終わりだな……」
ユウナとの戦いで傷ついた腕を抑えながら、小さな声で呟いてアルは立ち去ったのだった。
そして、彼の行方を知るものは誰もいなかった。
TWENTY FIFTH
78:十数年の時を超えて……
やがて、諸悪の根源とされるサキは捕まり、警察に連行されていった。
他のSGのメンバーも希少のポケモン……伝説のポケモンを捕まえた罪で捕まっていった。
『希少ポケモン保護法』がポケモン協会の会長によって改正されたと言われていたが、ポケモン協会側の調査により、何者かが会長を拘束して、会長に成りすましていたことが判明した。
しかし、その会長に成りすました奴はまだ捕まってはいない。
警察の事情聴取を全て引き受けたのは、TCの年長者で一番信用のあるアクアだった。
そして、他のSGへ潜入したメンバーのライトやエース、及びヒロトたちは、近くの街……トキワシティへ向かっていた。
のだが…………
「…………」
「…………」
ライトはエースの後ろを歩き、『ただの友達だ』といわれたことにショックを受けて……
「…………」
「…………」
エレキは戦いが終わった後にすぐにエアーに会ったのだが、何かあったらしく黙り込んでいた。
その様子を受けてか、エアーも黙っていた。
「……くっ……」
「…………」
その後方を歩いていたファイアとシルバーもそれぞれ、何かを考えていたようだった。
「……何でこんなに空気が重いんだ?」
「そんなこと……私に聞かないでよ……」
SGとTCの戦争が決着し、全てが丸く収まったと思われていたが、各々の行動がまた新たな悩みの種を増やしてしまっていた。
そんな心配が全く増えなかったのは、最後尾を歩いていたヒロトとユウナだった。
右足をケガをしていたユウナはヒロトに肩を貸してもらって歩いていた。
「それにしても、あなただけじゃなく、ラグナまでこっちに来ていたとはね」
「ああ……。俺もユウナがこっちにいるとは思わなかった。そして、ライトとバンダナを会わせるために一仕事していたとはな……」
ヒロトはまだユウナに何のためにここに来たのかを話してはいない。
ちなみにヒロトとユウナが鉢合わせしたのは、ユウナがアルとの勝負を終えて、SGに潜入してすぐのことだった。
方向音痴であるヒロトは、アメ&ラナとの戦いが終わった後、迷いに迷って入り口付近に逆戻りしてしまったのである。
戦いが終わって、ヒロトは真っ先にリュウヤを探していたのだが、彼を発見することはできなかった。
「(あいつ……一体どこに消えたんだ……?)」
「……あなたにも会わせたい人がいるのよ」
「……ん?」
ユウナがポツリと言ったのを聞き、彼女の顔を見る。
「……俺を……? ……誰に?」
「……それが……今どこにいるかわからないのよね」
ヤレヤレとユウナは渋い顔で言った。
アクアは警察の事情聴取を受けるとともに一つだけエースに頼まれたことがあった。
それは、ジョカとプレス及びミナノの説明だ。
彼らは何も知らずに計画に加われてしまった被害者であるということを警察に説明してくれ……と。
恐らく、何とかなるだろう。
ちなみに、モトキとユウコはどこに行ったかわからなかった。
「着いたな。トキワシティ」
シルバーが言うとエースが前に出てきた。
「ここが……父さんの生まれた街……」
「ああ……。だが、実のことを言うと俺も子供の時にここで過ごしたという記憶がない。小さい時にいろいろあったからな」
「いろいろ……?」
エースはシルバーの顔を覗く。
「それはまた今度話してやる。とりあえず、うちへ行くぞ」
エースは頷いて、シルバーの後についていく。
どうしようかと戸惑うライトとファイアたちもシルバーに促されて、足を進める。
「俺たちも、行くか?」
「そうね」
ヒロトとユウナも彼らに従ってついていくことにした。
トキワグローブの家に着いた時、彼らを待っていたのは、とても意外な人物達だった。
その一人を見たとき、シルバーは足を止めた。
「……父さん?」
エースは首をかしげて、シルバーと同じ方向を見る。そして、彼自身も少しの間、息をするのを忘れた。
他の全員が何があったかわからないでいた。
しかし、2人だけ、その状況を飲み込めた人物がいた。
「「イエローさん!?」」
ユウナとライトは彼らの目線の先に、イエローがいたことに気付いた。
そして、イエローはシルバーの奥さん。さらに、エースはシルバーとイエローの……
「イエロー!」
「あなた……」
シルバーは走り出して彼女を抱きしめる。
「すまない……」
そう、シルバーは一言だけ言う。
「もう……どこにも行かないでください……。レッドさんみたいにいなくなるなんてことにはならないでください……」
ああ……とシルバーは頷く。
エレキは恥ずかしそうにその様子を見て、エアーは能天気にはしゃいでいた。
「母さん……? あんたが俺の母親なのか?」
エースが一歩踏み出して、イエローに問いかける。
しかし、自分自身、その質問が無意味なことはわかっていた。
夢でも見た姿と似ていたし、妹だと言うジョカとも雰囲気は同質なものだった。
だけど、エースにはある言葉が欲しかった。
自分がイエローの子供であるという確証が……。
「……こんなに大きくなって……」
ふと、エースを抱きしめるイエロー。
イエローとエース……身長は無論エースのほうが高い。
だから、抱きしめるとなるとどうしてもイエローがエースの胸に顔を押し付ける感じになってしまう。
「(……俺は……この温もりを知っている……)」
十数年も前に感じた母親の温もりを思い出した。
それは遥か記憶の彼方に忘れ去られ、奥に埋められたはずの記憶。
だけど、それが彼の欲しかった確証になった。
言葉なんて、無くても、もう平気だった。
「母さん……やっと……会えたんだ……」
エースはほろりと涙をこぼす。
「うん……やっと会えたんだよ……」
つられてイエローも涙を流す。
シルバーも涙こそさえ見せなかったが彼らと同じ気持ちになっていたことは間違いない。
「(……エース)」
一方のライトはとても複雑な気持ちだった。
「あれ?ユウナさん!!ライトさん!!それにヒロトさんまで!?」
「あ!?エースさんがいた!!」
そんな感動ムードもいずれ終わりが来る。
ピカチュウがトキワグローブ家から飛び出してくるとともに、その家にいつの間にか住み着いていたカレンとサトシが出てきた。
「カレンとサトシ……!?」
「あなたたち……トキワシティにいたの!?」
ライトとユウナは驚く。
「あとのマサトとカスミはどこへ行ったんだ?」
「ユウコさんとハルキもまだ見つからないし……」
カレンとサトシは落ち込むが、
「マサトとカスミならハナダシティに」
「ハルキならTCにいるわよ」
ユウナとライトが教えると、2人は明るくなった。
「あ……それより……オトハを知らない?」
ヒロトから離れて、カレンにひそひそと話すユウナ。
しかし、その問いは無意味だった。
「あ!ユウナさん!無事だったんですね?」
当のオトハが姿を現した。
そして、辺りを見回しているうちにオトハは彼の姿をも確認することになった。
「(……ヒロト……さん?)」
「(オトハ……さん……?)」
ふと、2人の間に奇妙な空気が流れていた。
「ユウナ……もしかして、俺に会わせたいといっていたのは……」
「答えるまでも無いでしょ?」
と、背中をユウナは叩いたのだった。
79:バーベキューパーティ in トキワシティ 〜ファイアとリーフ〜
エースたちがトキワシティに着いて早くも3日の時の流れた。
その2日前にアクアとジョカが、そして、プレスとミナノが警察の事情聴取から帰ってきた。
どうやら、ジョカたちは無事釈放になったらしい。
前日にはハナダシティからファイアの恋人のリーフとずっとハナダシティで待機していたマサトとカスミがトキワシティへやってきた。
そして、この日にはTCの本部にいたハルキ、ラグナ、ハナがトキワシティへやってきた。
そのときラグナはとても気分悪そうにしていた。
それはハルキのボーマンダの後ろに乗っていたからだというのは言うまでもない。
現在、その夜。
トキワシティのトキワグローブ邸では全員が揃ったということでバーベキューパーティが催されていた。
「あちぃ!」
「コラ!サトシ!急いで食べたら火傷するじゃない!」
「ラグナさん!それまだ生です!」
「……ぐわっ!リーフ!てめぇ、それを早く言いやがれ!!」
「ハルキ……どう?おいしい?」
「ああ……」
「キャッ!ごめんなさい!イエローさん」
「ミナノがこけてイエローさんの服にタレがついた!!!!」
「プレス!そんなに大きな声で言わなくていいんじゃないかな!?」
「大丈夫ですよ、ミナノちゃん。洗えば落ちるんだし」
サトシは急いで食べてカスミに注意されていた。
ラグナはまだ生のままの肉を食べてリーフに注意されて、カレンとハルキは仲良く食べている。
また、ちょっとしたハプニングも起きた。
ミナノが転んで、持っていたタレをイエローの服にかかってしまった。
ミナノは謝って、イエローに許してもらっていた。
「♪こ〜いつはサイコ〜だな」
「そうね〜♪」
「材料を刺し終えた!……って、ユウコさん!?いつの間にここに着たんですか!?」
「モトキお兄さん、それも焼けてますよ」
「♪お〜!ハナ、サンキュ〜」
マサトがバーベキューの材料を乗っけようとしたとき、いつの間にかユウコとモトキがバーべキューを仲良く食っているのを発見した。
ハナはモトキがずっと前からいたような口調で話していた。
「あれ?全員揃ってないアルよ?」
「ほ、本当だ……」
エアーに言われて、エレキは辺りを見回して気付いた。
「どうしたんだろう……?」
エレキに言われて、料理の手伝いをしていたリーフも辺りを見回す。
「……ファイア……?」
リーフの心配をよそに、ファイアはトキワグローブ邸のリビングにあるソファで横になっていた。
考え事をするように彼はボーっと天井を見ていた。
「ファイア?あなた、食べに行かないの?」
後ろから上から声をかけられたと思うと、そこにはユウナの顔があった。
「今……はしゃぐ気分じゃないんだ」
「……よほど昼間の話が堪えたのね」
「……!? どうしてユウナが知ってるんだ?」
「ごめんね。盗み聞きしちゃった。でも一つだけ言わせて。事実を受け止めないことには前には進めない。かつての私もそうだった。あなたもそれを認めないといけないわよ?」
ユウナはそう言い残して、外へ出て行った。
「事実を受け止めないことには……前へ進めないか……」
この日の昼のこと。
ファイアはシルバーに話を聞きに行った。
―――「一体、13年前に何があったんですか!?何で俺の父さんは死んじゃったんだ!?」―――
―――「13年前……」―――
その場にはシルバーだけではなく、イエローとその子供たち、エースとジョカも同席していた。
他のヒロトやライトたちは外へ出ていたようで、ユウナを除いてこの話を聞いていた者はいない。
イエローはレッド先輩のことが好きだった。
しかし、先輩はイエローではなく、当時ハナダジムのジムリーダーだったカスミを選んだ。
イエローはそれを自分のこととして喜んだけど、ショックだったんだ。
そんなイエローを俺は見てられなかった。
同じトキワシティという共通点が俺らにはあり、トキワシティへ来る口実に俺は度々イエローと会っていた。
やがて、俺とイエローは結ばれて、俺たちの間にエースが生まれた。
エースが生まれたことで俺たちはさらに幸せになると思っていた。
―――「…………」―――
―――「……一体どうしてこんなことになったんだ?」―――
エースは黙って聞いていたが、ファイアは尋ねずにはいられなかった。
シルバーは「落ち着け」とファイアを宥めて、続きを話し始めた。
だが、ある時、俺たちの前からエースが姿を消した。
まだ0才でハイハイができるようになったぐらいだから、そんなに遠くまで行かないだろうと思っていた。
でも、近くを捜したが見つからなかった。
仕方がなく、誘拐の線で当時SGのリーダーだったレッド先輩にも協力してもらってエースを捜すことにした。
2年間かけて捜したんだが、それでも見つからなかった。
―――「俺が誘拐された……?」―――
エースが確認するように言った。
―――「誘拐かどうだったかはわからない。突然お前が姿を消したんだ」―――
―――「…………」―――
―――「何が原因かはわからない……だけど、何らかの影響で別の世界へ飛ばされたんだ」―――
エースを失ったイエローを俺はとてもじゃないけど、放っておけなかった。
仕事を中途半端にしてイエローといる時間が占めるようになっていた。
その悲しみからだんだん薄らいできた頃に、俺たちの2人目の子供、ジョカが生まれた。
―――「……ボクが?」―――
今までずっと黙っていたジョカがキョトンと父親の顔を見る。
しかし、ジョカが生まれて1年も経たない頃だった。
レッド先輩の前にサキが姿を現したのは。
―――「……サキ。ライトが倒したあいつか」―――
―――「そうだ」―――
レッド先輩は奴と戦おうとした。
そして、レッド先輩と協力しようと俺とイエローはイエローのおじさんにジョカと留守番を頼んで、出かけていった。
そのことが、俺たちの運命を激しく変えるものだとは知らなかった。
―――「まさか……そのときが……」―――
ファイアの問いにシルバーが黙って頷く。
レッド先輩のピンチに駆けつけた俺とイエローだったけど、イエローは交戦中に不思議な空間に飲み込まれて、消息を絶った。
しかも、サキにはアウトという協力者がいて、レッド先輩は奴にやられてしまった。
さらに、俺はサキに操られて”ブラック”として洗脳されてしまった。
それから、13年もの間、SGはサキの奴に占領されてしまい、時は流れた……。
―――「あの時、俺はだれも守ることができなかった。レッド先輩もイエローも……。すまない……。君のお父さん……レッド先輩を死なせてしまって……」―――
ファイアは謝るシルバーの顔を思い出す。
父親の真相を知った今、ファイアはどうするべきなのかと、思う。
けど、何も彼には思い浮かばなかった。
ぶつけようが無いこの想いを漂わせているだけ。
どうしようもない、仕様が無い虚しさを持て余すだけだった。
アウトの奴に復讐したいとも思えない。
かといって、何もしたくないわけではない。
「ファイア……」
1人の少女がリビングに入ってきた。
「リーフ?」
彼女がソファの近くまで来た。
「隣……座っていい?」
「ああ、もちろん」
リーフが腰掛けるけど、しばらくは何も喋らなかった。
「ジョカちゃんから聞いたよ」
10分経ったところでリーフのほうから口を開いた。
「……アウトって人に復讐しようと思っている?」
「…………」
「……私、ファイアには復讐をして欲しくない……」
「……勝てなかった」
「……え?」
「……アウトって奴、強いんだ。戦ったけど、あいつの言うに父さんと同じところで負けたんだ」
「…………」
「でも、もし、もう一度あいつに会ったとしても、俺は復讐のためには戦わない」
「え?」
「……俺は父親を超えるために戦いたい」
「それでこそファイアよ!」
にっこり微笑むリーフ。
「ありがとうな。励ましてくれて」
「ううん。そんなたいしたことしてないわよ。それよりも、バーベキューパーティへ行きましょう?」
リーフに手を引っ張られて、ファイアは外へと飛び出していったのだった。
80:バーベキューパーティ in トキワシティ 〜オトハ・ヒロト・アクア〜
トキワジムの前。
青いの髪のアクアと長い髪を先端の方で束ねたオトハの姿がそこにあった。
「一つだけ確認させてください。本当にヒカリさんじゃない……のですよね?」
オトハに質問されて、アクアはため息をついた。
「……その質問はあんたで何人目だと思っているの?」
「……ごめんなさい。本当にヒカリさんに似ていたもので……」
アクアはSGの本拠地でユウナに尋ねられ、トキワシティへ来た時にハルキとラグナに聞かれ、ついにはオトハにも聞かれるという事態。
ヤレヤレと首を振るのは当然だった。
「本当に私はそのヒカリって人とそっくりさんなのね」
「はい。性格まではわかりませんけど……」
ユウナやハルキ、及びラグナは、ヒカリと行動していた時期が長かったために、すぐにアクアとヒカリは別人だと認識することができた。
しかし、オトハだけは昏睡状態で眠っている所しか見たことが無い。
「それで……私に話ってなんでしょう?」
「ええ……」
一呼吸置いて、アクアは話し始めた。
「あんた、ヒロトのことが好きなんでしょ?」
「え……?」
「ちょっと、何赤くなってるのよ!ヒロトと二人っきりになったところを見てすぐにわかったよ。それにユウナからも聞いたしね」
「あ……そうでしたか」
深呼吸をして自身を落ち着かせるオトハ。
「ヒロトはよっぽどヒカリって子が好きだったみたいね」
「ええ。6年間も彼女のことを想いつづけて、捜し続けたのですから……」
「アイツは一途なんだね」
「ええ……」
「あんたも一途なんだね」
「え?」
「なんとなく思ったのよ。あんたとアイツが知り合ってどれくらい経っているかはわからないけど、あんたがアイツ一筋だということはわかる」
「…………」
「それに、あんたレベルの女ならどんな男だって黙っちゃいないでしょう?」
やや黒く笑うアクア。
しかし、アクアのいうことも間違いではない。
ヒロトに初めて会う前も会った後も、彼女に言い寄る男は数知れずいた。
でも、オトハは彼らに全く相手にしなかった。
ごく稀に、強引にオトハを手に入れようとしても、彼女のかわす力は例えるなら風だし、バトルの実力もジムリーダークラス……いや、四天王クラスと言っても過言ではないほど強かった。
「ええ……」
「それでも、1人の男を想いつづけられるあんたは凄いよ」
「…………」
「ごめん。話がずれてきちゃったわね」
アクアはオトハに背を向けて言った。
「ヒロトは私のことを諦めきれないみたいなのよ」
「え……?」
突然のことにオトハは思考を停止した。
「(まさか……ヒロトさん……アクアさんのことを……?)」
「正確にはヒロトは私とヒカリって子を重ねているのね……って、なんでホッとした顔しているの?」
ふと、アクアがオトハを振り返ると、安心した顔に出くわした。
「え?あ、いや、なんでもないですよぅ」
顔を隠すように両手で横にブンブンと振るオトハ。
ちょっと赤くなった顔を隠す仕草がとても可愛らしくみえることだろう(ぁ)
「私はアクアであって、ヒカリではない。ヒロトもそのことはわかっているんだけど、どうしてもダメみたいなのよ」
「どういうことです?」
「アイツはちゃんとヒカリじゃなく私をアクアとして見ると言ってくれた。それでも、ヒロトには私をヒカリとしてみている部分があるみたいなのよ」
「…………」
「1%でも疑念があれば、そうなってしまうものなのよね。頭よりも心が反応してしまう。悲しいわね」
「……それで……私に話したいことって……?」
「あんたがヒカリに代わって、ヒロトについてあげなさい」
「……それは……できるならそうしたいですけど……」
「……?」
「アクアさんじゃダメなんですか?」
オトハのその言葉に、ため息をつくアクア。
「あんた……バカじゃないの?」
「バ……バカ?(汗)」
「……むざむざ自分の好きな男の子を紹介するなんてバカのすることじゃないの?」
「私は、ヒロトさんが幸せになれるなら……」
「私とヒロトが付き合ったら幸せになれる?それ本気で言っているの?」
「え?」
「私がアイツと付き合ったら、ただ悲しいだけじゃないの。絶対、私はアクアとしてみてくれない。アイツは私と似たヒカリの影を追い続けることになる。こんな悲しい生活をしろというの?私は御免よ」
「……」
「あんたしかいないのよ。オトハ」
「……」
「それなのに、この3日間……一体何をしていたの?」
まるで子供をしかる物言いのアクア。
「そ、それは……もちろん私も強気で行こうとしたんですよぅ……」
オトハがポツリと言う。
「ヒロトさんが私を避けているいるんです……」
トキワの森。
一匹のネズミポケモンが木から木へ素早く飛び移る。
こういう動きをするには、ただ素早さを鍛えるだけでは出来やしない。
バランス感覚と俊敏力、また、地形の適応力、それら全てを持ち合わせてこそこういう動きができるのである。
「行くぞ!!」
動いているネズミポケモンに向けて、葉っぱカッターが放たれる。
だが、葉っぱカッターがワンテンポ遅く、ネズミポケモンの残像を切り裂く。
攻撃の主は、葉っぱカッターの連射を繰り返すが、やはり紙一重で命中しない。
「『つるのムチ』!」
近づいてくるネズミポケモンが姿を見せる。
それは、ピカチュウの進化系のライチュウ。トキワの森にはいないとされるポケモンだ。
ライチュウはつるのムチをもかわして、攻撃の主のフシギバナへと接近する。
「今だ!フシギバナ!」
ブワッ!
シュッ!
ズドンッ!
「ライッ!?」
ライチュウはフシギバナに触れようとした瞬間に、吹っ飛ばされた。
しかし、攻撃を受けてから、くるくると回って、衝撃を和らげた。
「……まだ威力が足りないな。もう一度だ!」
「こんなところにいたのね」
「……!シオン!!」
バチバチッ!!!!
電撃がとんできた。
しかし、シオン……ライチュウが黄色のシャツのヒロトの前に立って、攻撃を防いだ。
「……いきなり攻撃してきてどういうつもりだよ!」
ヒロトは奥から出てくるレアコイルとワンピースとハーフパンツを両方着用したユウナに文句を言った。
「バーベキュー会場にいないと思ったら、こんなところで1人で修行をしていたなんてね」
呆れるようにユウナは言った。
「それにしてもロケット団の幹部のバロンと戦ってから、また随分と腕を上げたのね。あなたのライチュウの尻尾で、いとも簡単に電撃をいなされるとは思わなかったわ」
「あのバロン戦のときに出さなかったから、ユウナは知らないだろうけど、コイツはもともと尻尾攻撃を主体にして育てていたポケモンだ。今のコイツにとって尻尾は3つ目の手……いや、それ以上の武器だ」
「…………」
「……なんだよ?」
シオンを見た後、ヒロトを見て、最後には傍らにいたフシギバナに目線を移した。
「……なるほど。そのフシギバナにニックネームを付けていないのは、そういう意味だったのね」
「…………」
「そのフシギバナは、もともとヒカリのポケモンね?」
「………………。やっぱり、ユウナにはわかるか……」
「当然よ?どれだけ、ヒカリと一緒に過ごしたと思っているの?」
「……それは俺に対する皮肉か?」
「別にそういうつもりで言ったわけじゃないけどね」
ユウナの言葉を皮切りに、少しの間沈黙した。
「……ヒカリのポケモンを全て預かっているの?」
「いや、このフシギバナだけだ。残りのポケモンはトミタ博士や姉さんが研究所で預かっている」
「…………」
「用がないなら、戻っていろよ。俺はもうちょっとシオンとフシギバナを…………」
「あなた……いつまで過去を引きずる気?」
「それはどういう意味だ?俺が遺されたフシギバナを持っていることに対して言っているのか?」
少しヒロトは怒りながら言う。
「いえ、それは別にいいの!!」
控えめに言っているように見えるが、ユウナの口調はむしろ怒っている方に近い。
「あなた……オトハを何で避けようとするの?」
「…………」
「あなたがヒカリのことを好きだったのはわかる。でも、過去に縛られて、生きていたヒカリを想いつづける気なの!?」
「……ヒカリなら、今俺の心の中にいる。だから、1人でいたって何の不自由も無い」
「…………」
「それに、俺にはやるべきことがある」
「何を?」
「リュウヤに協力しなければならないんだ」
ヒロトはリュウヤにあった時の事、そして、これからしようとしていることを話した。
「囚われの彼女を救うために……ねぇ……」
「失った彼女の悲しみなら俺には痛いほどわかる。……だから、これ以上悲しむ人を増やしたくないんだ」
ユウナは少し間を置いて、フシギバナとシオンを見た。
2匹ともよく育てられていると思った。
「……そんなこと言って、本当はオトハから逃げているだけじゃないの?」
「何?」
「……それとも、アクアのことが気になるのかしら?」
「…………」
「図星……のようね?」
そういわれて、ヒロトは近くの木にもたれるように座った。
「ダメなんだ。頭の中で目の前にいるのはアクアさんだと思っても、心でヒカリだと思ってしまう。どうしても抑えきれなくなるんだ」
「…………」
「それが当たり前のように……」
「一つ聞くわ」
「……?」
「あなた、オトハのことはどう思っているの?」
「オトハさん……?それは勿論、かわいいし、スタイル抜群だし、性格もおっとりだし…………」
「そんなこと聞いているんじゃないの!私が聞いているのは”好き”か”嫌い”かの2択よ!」
「そんなの……選べるわけが無い」
「そう。それなら、オトハと一緒にいるのがいいわね」
「何でそうなるんだ?」
「これは、あなたの為であれば、オトハの為でもあるのよ」
「無理だ。俺にはリュウヤと協力しなければ……」
「オトハはそれでもあなたについてくるわよ」
「俺は……オトハさんと一緒にいることなんてできない……」
「『自信がない』とも言いたいの?」
「俺はヒカリを守りきることができなかったんだ……。そんな俺がまた過ちを繰り返すかもしれない……」
「じゃあ、あなたは何でここで1人で特訓していたの?」
「…………」
「強くなるためじゃないの?あのようなことを繰り返さないためじゃないの?」
「…………」
「一つ言っておくわよ」
ユウナは立ち上がって、ヒロトを見ずに言った。
「あなたが思うほど、オトハは弱い子じゃないわ。むしろ、あなたよりも強いかもね」
「……俺より強い?」
「バトルのことを言っているんじゃない。もっと別のことよ。彼女がどれだけの想いを持って、この2年間を過ごしていたかを考えればわかるわ」
「…………」
「(あなたに大切なのは過去の記憶よりも、自分を支えてくれる人なのよ)」
ユウナはそうして、ヒロトを残して去っていった。
81:これから
「これからどうするの?」
バーベキューパーティが終えた後、こちらの世界にワープしてきたメンバーの9人が集まって話し合いをはじめようとしていた。
しかし、実際にはライトが足りないのだが。
「俺、マサト、カレンがそろったから、いつでもあっちに帰れるぜ!」
「いつでもってワケには行かないよ!ジラーチが繭に戻る時間はもう1週間も切っちゃっているんだ!繭に戻ってからでは元の世界に戻れなくなるよ!」
サトシの楽観的な意見にマサトが厳しく言った。
「エースは見つけた。これで終わりだろ」
「でも、ライトとエース……かなりギクシャクしている気がする。アレって大丈夫なのかな?」
ぶっきらぼうな物言いに、カスミが心配を漏らす。
「私は戻らなくていいよ!ダーリンと一緒ならどこでだっていいし♪」
そんなのんきなことを言うのは勿論ユウコ。
「はぁ……そういえば、こっちも問題を抱えていたのね……」
「こっちもって何のことだ?ユウナ」
「ハルキが気にすることではないわ」
頭を抱えるユウナ。
「戻るのはいいんだけど、ライトとエースがはっきりしてくれないことにはどうしようもないのよね……」
「え……?それってどういうことです?」
ユウナの言葉に先ほどまで悩ましげな顔をしていたオトハが尋ねる。
「実は、エースが私達の世界に戻らないと言っているのよ」
「え?」
「そして、もう一つ驚くことは、ライトも帰れと言っているのよ」
「「えぇ―――――――――!?」」
一番驚いていたのは、カレンとカスミだった。
「あんなに仲が良かったのに!?」
「一体どんな心境の変化なの!?」
カスミとカレンがぺちゃくちゃとお喋りを始めた。
そこを置いといて、ユウナが告げた。
「マサトのジラーチのことも考えて、ここにいられるのは2日後の朝までね」
現在、バーベキューパーティが終わって日が落ちている。
つまり、明日の1日を過ごして、次の日の朝にはここを発つことをユウナは決定した。
「エース!!」
ライトは意を決して、トキワグローブ邸にエースを尋ねに行った。
しかし、中から出てきたのはイエローだった。
「ライトちゃん?エースなら、外へ呼び出されていったわよ」
「誰に?」
「そこまでは教えてくれなかったよ」
ライトは駆け出した。
とても嫌な予感がした。
それは、エースが最初の発端となった謎の3人組……ジョカたちに攫われたのと同じように。
「エースッ!!!!」
そんな予感とは裏腹に、エースを簡単に見つけることができた。
だけど、そこには予想外の展開があった。
「……あんたは!?」
エースの傍らにいたのは、ジョカと仲良しの女の子のミナノだった。
あろうことか、ミナノはエースの腕にぴったりと引っ付いていた。
「エース……これ……どういうことよ?」
「見てわからないのですか?」
エースの代わりに話すのはミナノ。
「エースが私の告白を受けてくれたんですよ?」
「嘘よ!!」
「嘘じゃないわ」
「エースは私だけを愛しているもの!」
「それは、昔の話でしょう?今は私を愛してくれているのです」
「…………」
「そこまで言うのでしたら、ポケモンバトルで相手をしてあげます。勝った方がエースさんと付き合えることにしましょう」
「いいわよ!」
「…………」
「エースもそれでいいですよね?」
エースは先ほどから黙っているが、ミナノの問いに頷いた。
「勝負は決まっているでしょうけど」
「以前に戦ったようには行かないわよ!!」
ライトは、そういってボールを構えたのだった。
to be continued
キャラデータ
ストム(31歳)……とっても短気な男。”右翼”のリーダー。
13話の説明では『見た目は不良っぽいヤンキーで、クラスの中には必ずいそうな教室でスケボーをして遊び、教師に反感を買っていそうなタイプの男』……と。
ポケモンは気が短い奴が多い。
アウトにスカウトされてSGに入ったらしい。
ボイスイメージは”ヴォオーイ!”が口癖の剣豪とか(ぁ)
手持ち……ロトム オコリザル ラムパルド フローゼル サンダー
アトガキ
バトルが終わって一段落のお話です。
ややーオリジナル技の説明がなければ楽かなと思っていたけど、全然楽じゃありませんでした(滅)
内容を語るには……多すぎて何を語っていいかわからない(汗)
だって、シルバーの話やら、ファイアの話……ヒロトにオトハにエースに……
ほんとに何を語ればいいんですか、自分(オイ)
次回……一人の男をめぐって2人の女が戦う……ようです(汗)
[一言感想]
第1話以来からの因縁、ライトvsミナノの戦いが繰り広げられるようです。
エースは家の事情もあるし、ライトのこともあるしで、結構大変な立場なのかも知れません。
ヒロトはヒロトで、未だに過去に縛られている様子。
アクアはオトハを、ユウナはヒロトの背を押してくれますが、2人が結ばれる時はくるのでしょうか。