「(雨が降ってきそうな天気ね……)」
窓越しから曇天の空を見ながらルーカスは白衣を羽織う。
ふと、ルーカスはカレンダーを見る。
そこにはぐるりと丸印が書かれていた。
「(そういえば、もう一ヶ月以上がが過ぎたわ。あの子達は大丈夫かしら?)」
丸印とは、ジラーチが繭に戻ってしまう日……つまり、ライトたちがこちらに戻ってくるタイムリミットである。
ライトたちがエースたちのいる世界へ飛び立ってから、ルーカスたちは大忙しだった。
その原因はマングウタウンの研究所の責任者のトミタ博士が長期的にオーレ地方へ出張してしまったためである。
博士不在のこの一ヶ月の間、ルーカスとトキオは預かっているポケモンたちの世話、研究資料の整理、自分の研究……そのほかにもたくさんの仕事がめまぐるしく襲い掛かってきた。
おかげで、ライトたちのことも考える暇がないほど、ルーカスとトキオは働き続けて今日まで至る。
トキオがいなかったら本当にどうなっていたか……とルーカスは真面目に思っていた。
そのトキオは現在、ブーグタウンの図書館へ自分の研究資料を探すために外出している。
だから、今日はルーカス一人でほぼ全てのことをやらなくてはいけなかった。
「心配だけど、自分のことで手一杯ね」
気を取り直して、窓から目を放そうとしたそのときだった。
人影が写り、さらに音を立ててズドドドドンッ!!と何かが落下した。
「何事!?」
慌てて外へと出てみると、そこにはルーカスの心配していた連中が顔をそろえていた。
「あんた達、帰ってきたのね!」
「イタタ……。あ、ルーカスさん!!」
真っ先にルーカスの言葉に反応したのは、トキオの妹、カレンだ。
「どうやら戻ってこれたようね」
「あっちの世界もこっちの世界もそんなに変わらないな」
カスミとサトシが顔をそろえて言った。
「無事に着地できたみたいね!よかったー」
「どこが無事よ!!」
カレンの言葉に反論するものがいた。
ふと、ルーカスを含め全員が彼らを見た。
「早く私の上から降りてよ!!重いわッ!!」
「重い。早くどけ」
「ハルキ……誰が重いって言うのかしら?」
その三人は面白い具合に積み重なっていた。
てゆーか、こいつら、あっちに行ったときもこんな感じだったよな(汗)
「ユウコ、ハルキ、ライト……」
ふとルーカスは周りのメンバーを確認する。
そして、あることに気がついた。
「イエローはともかく、後2人足りないんじゃないの?それにエースは?」
ルーカスはそのとき、雰囲気が悪くなるのを感じた。
みんな目を逸らしたり、俯いたりと、とにかくあまりにも反応が良くなかった。
その中でカレンは一人だけ不思議そうな顔でライトを見ていた。
「エースは戻らないことにしたって」
そうライトは言った。
少ししんみりしているようだが、何故かそんなに落ち込んでいるように見えない物言いだった。
このライトの様子をユウコは見て”諦めたのね”と思い、マサトは”無理しているね”と感じていた。
「私、決めたの!これから、一人でこの世界を冒険するの!」
ライトは両手を挙げて、背伸びをしつつ、高らかにそう誓ったのだった。
TWENTY NINTH
91:ヒロトとエース
ズドンッ!! ズドンッ!!
二匹のポケモンが激突していた。
方や欺きポケモンのクチート、方やペンギンの帝王のエンペルト。
バトルは激しさを増していた。
鋼のエネルギーを持つ球体と鋼のボールがぶつかる。
同じような技に見えるが、エンペルトの繰り出す技は特殊技でクチートが打撃技という違いがある。
そして、威力はクチートの鋼の砲弾が打ち破り、エンペルトを吹っ飛ばした。
「ここまでだ。てめぇの負けだ」
クチートを戻すのは相変わらず黒いコートに白いさらしとどこかのとっても親切な人(ェ)にも見えなくない服装のラグナだった。
「まだだ……!!こっからが俺の本領だ!!」
「何度やってもてめぇじゃ俺には勝てねぇ」
「そうね。実力の差は明らかよ」
「……アクアさんまで!?」
指摘されてエンペルトを戻すファイア。
「俺じゃ……力不足なのか……?くそっ……」
「ファイア……」
リーフは心配してファイアに駆け寄る。
さてラグナとファイアがバトルしていたのにはわけがある。
少し時間を遡ろう。
「ヒロト!何で俺は残らなきゃいけないんだ!?」
ライトたちが”アワ”へ帰る少し前のこと。
リュウヤの言う潜入作戦のメンバーをヒロトは全員に告げていた。
ほとんどのメンバーがヒロトの意見を聞き入れて、”ティブス”で待つか、”アワ”へ帰るか、ジョカを助けに行くか決める中、ファイアだけが反対したのだった。
「俺の実力じゃ、あいつらには敵わないというのか!?」
「そういうわけじゃない」
「じゃあ、どういうことだよ!俺を抜くなんて!」
「ユウナにファイアは一応ハナダシティのジムリーダーだからって聞いたから、こっちに残っていた方がいいんじゃないかと思ったんだ」
「俺は行くぞ!?目の前のジョカを助けられなかったんだからな!」
ヒロトはそういわれて困ってしまった。だけど……
「それなら、ファイア、俺と勝負しようぜ!」
「……!?」
ヒロトとオトハの後ろから、ラグナが不意にそういった。
「俺とバトルしてファイアが勝ったら連れて行く。それでいいだろ?ヒロト」
勝手なことを……とヒロトは思いながらも頷いたのだった。
「てめぇは弱くねぇ。だけど、俺には敵わねぇ」
そう言い放つラグナ。
「くそっ……」
ぎゅっと拳を握り締めるファイア。
「だけど、一つ納得がいかないことがある!俺はダメでなんで、エレキを連れて行くんだ?」
「ヒロトとリュウヤの判断だ!俺が知るか!とりあえず、メンバーは決まった。後はリュウヤが目を覚ますのを待つだけ。早く目を覚ましやがれ」
早く戦いたくてうずうずしているラグナはその場を立ち去った。
「……ファイア……行こう?」
「…………」
リーフが手を差し出すが、ファイアは手を借りずに立ち上がった。
「リーフ……俺は決めた。もっと強くなる……アルにもラグナにもそしてあのアウトって奴にも負けないくらいに……。見ていてくれ。俺はもう二度と負けない!!」
「……うん」
立ち直ったファイアにリーフは笑顔を送ったのだった。
―――「もちろんイヤです」―――
彼女の返答を思い出して、ヒロトはため息をつく。
「(何を言っても無駄だよな……)」
病室の廊下を歩きながら、ヒロトは後ろからついてくる女性……オトハのことを思う。
ヒロトはジョカを助ける作戦にオトハを外そうとしていた。
しかし、オトハの答えはもちろん先ほど言ったとおり変わらずだった。
「(もう諦めているけどな。……念のために一応言ってみただけだけど)」
そして、トキワシティの病院の個室に入った。
手当てをされて、酷いケガで今は寝ているリュウヤの姿があった。
「今日はずっと寝ているのよ」
ヒロトとオトハにそういうのはアクア。
そして、アクアと一緒にユウナの姿もあった。
アクアは果物ナイフを持ってリンゴを剥いていた。
ユウナはモンスターボールをT☆NAにケーブルを繋いで何かをやっていた。
「リュウヤが動けるようになったら、出発するのよね……全員に伝えた?」
ユウナが携帯キーボードをいじりながら、ヒロトに尋ねる。
「ああ。俺がユウナに頼んだ一人以外はな。……で、そいつはどこに行った?」
「それなら、さっきここを出て行ったわよ」
「……そうか」
ヒロトは腕を組んで思考に入った。
そんなヒロトに椅子に座るようにアクアが勧めるが断った。
代わりヒロトが椅子をオトハに譲った。
オトハは遠慮がちにヒロトに譲り返しながらも、結局は椅子に腰掛けた。
「ユウナさん、何をやっているんですか?」
オトハが隣でユウナがしていることを気になって尋ねる。
「ちょっとしたポケモンの体調管理よ」
「そんなこともできるんですか?」
「でもポケモンセンターの機能には負けるわよ?それに、この機能はそれだけじゃないの」
ユウナがやや悪戯っ子っぽい笑みを浮かべる中、ふとヒロトは部屋を出ようとする。
「ヒロトさん……どこへ行くんですか?」
「ちょっとな。少し散歩してくるだけだ」
「そうですか……」
3人はヒロトを見送る。
「無理矢理にでもついていけばよかったじゃない」
アクアが肘で小突く。
「いえ、ヒロトさんどこか真剣そうな顔をしていたので……」
「そう?あなたよく分かるわね」
ユウナがどこか意地悪そうな目でオトハを見る。
「やっぱり、好きな人のこととなると分かるのなのね」
「アクアさ〜ん!からかわないでくださいよぅ〜」
オトハは赤くなりながらポコポコとアクアの背中を叩いたのだった。
病院の庭にある大きな木の下。
そこで一つのモンスターボールを持って、意識を集中しているものがいた。
エースだ。
「バンダナ。本当にいいのか?」
その木の裏側から、声を聞いた。
「勘違いするな。リュウヤの女を助けるのはついでだ。俺は妹を助けるために行く」
ツンとしたようなムスッとしたような声でエースは答える。
「ジョカのことを言っているんじゃない。ライトのことを言っているんだ」
「……雑草。お前には関係ないことだろ」
雑草……とはヒロトのこと。
エース曰く、「頭が緑でボサボサだから」そう呼んでいるとか。
「ああ。確かに俺には関係ないことだ。お前がどこに行こうが、まして死のうが俺には知ったことじゃない」
フンっと。エースが鼻で笑う。
「だけど」とヒロトは付け足した。
「ライトには借りがある。だから、お前を無事に連れて帰らなくちゃと思ったんだ」
「……?」
エースは不思議そうな顔をした。その顔はヒロトには見えてないが。
「わりぃが、昨日、お前とライトが話しているところを俺は聞いた。ジョカを助けたらライトの世界に戻って再び会いに行くってな」
「……お前……どこから聞いていた?」
「……なに怒ってんだ?自然とドアの向こうから聞こえてきていたぜ」
「…………」
「このこと知ってんのは俺とオトハさんぐらいだな。オトハさんには俺が話したし。言ってはいないけど、ユウナも知ってると思うぜ」
「…………」
そういうと、エースは黙り込む。
そうやってどのくらいの時間が経っただろうか。
やがて、ヒロトは立ち上がる。
「バンダナ……ライトのために必ず生き残れよ」
「……お前に言われたくない。雑草」
目を瞑って無表情のまま、エースは突っぱねる。
エースとヒロト。
彼らのベクトルはいつもまったく逆方向。
ゆえに衝突を繰り返し、相手のことを忌み嫌う。
エースはヒロトのことが嫌いで、ヒロトもエースのことが嫌いだ。
だけど互いの実力は認め合っていた。
戦う時はいつも背中合わせ。
しかし、巨大な敵が相手であればあるほど、二人が背を向けて戦う時はどんな敵も撃ち滅ぼすことができる。
と、私は考える。
「え、えぇ? な、何でナレーションが思っているの!?」
ここへ急いでエレキが病院の中からやってきた。
彼は息を切らしてぜいぜい言っている……ようには見えないなぁ。(ェ)
「(一応走ってきたし、かなり疲れているんだけど……)ひ、ヒロトさんっ!!」
「エレキ?どうした?」
実はエレキはアクアとユウナが来る前からリュウヤの傍に居たのだが、交代して休んでいたのである。
「リュウヤさんが!!」
ヒロトとエレキ、そして、エースがリュウヤの病室に行くと、困った表情のオトハたちに出くわした。
「……!?リュウヤは?」
リュウヤが寝ていたベッドはもぬけの空だった。
「私がちょっとトイレに行ってユウナがバッテリーパックを買いにいっている間に抜け出しちゃったみたいなのよ」
アクアがヤレヤレと首を振っている。
「お、オトハさんは何をしていたんです?」
「ごめんなさい……寝ていました……」
「(ほんと寝るの好きだな……オトハさん(汗))」
突っ込む言葉が見つからないヒロトだった。
「手分けして探しましょう」
「その必要はないわ」
廊下へ飛び出しかけたオトハをユウナが止める。
クイックイッとユウナが窓を見るように手でサインしているのを見ると、そこにはリュウヤと何か喋っているラグナの姿があった。
「てめぇ……そんなケガで戦えると思ってんのか?」
ヒロトたちがラグナとリュウヤのところへ着くとラグナの言葉が耳に入ってきた。
「俺はどうなってもいい……ナミネ……ナミネさえ助ければ、僕はどうなってもいいんだ……」
「…………」
「(ここにも自己犠牲の強い人がいたのね)」
押し黙るヒロトと、ため息をつきながら2人を見比べるユウナ。
「すぐにでも行くぞ……。もう時間がない……奴らが”あいつ”を復活させる前に片をつける……」
「あ、”あいつ”?」
エレキが不安そうに尋ねる。
しかし、それに答えず、リュウヤはラティオスを繰り出す。
「頼むぞ……『トランスゲート』!!」
「え?オイ、リュウヤ!」
時空の扉を開き、リュウヤはその中へと入っていってしまった。
刻々とその扉が閉まりそうになる。
「行けるのは今しかないわね。行くわよ」
ユウナが先に入ってしまった。
「そうだな」
残りのメンバーも続々と入っていった。
そして、最終的に一人が残された。
「がんばりなさいよ。みんな……」
誰もいなくなったこの場所でアクアはポツリと呟いたのだった。
92:エグザイル
「すごいです……」
「興味深いわね」
「き、気持ち悪い……」
周りの景色を見て様々な反応をする。
ヒロトとラグナはこの景色を一度体験しているため、物珍しくもなんともないようだが、オトハやユウナはすっかり周りの景色に目を奪われていた。
逆にエレキは目を背けているが。
「リュウヤ……落ち着けよ」
ヒロトがリュウヤに追いついて腕を掴む。
「っ!!」
「あ!わりぃ」
軽く掴んだつもりだったが、リュウヤのダメージが大きいらしい。彼の険しい表情がそれを物語っていた。
「俺やラグナも協力するっていっただろ。そんなに無茶するなよ」
「ああ。わかっている」
「それなら先に行こうとするなよ!お前が倒れたら元も子もないだろ!!」
正面からのヒロトの言葉を聞き、リュウヤは頷く。
「…………分かった。ヒロト、悪かったな」
「わかればいいんだ」
そして、彼らは歩き出す。
「歩きながら聞いて欲しい。これからの目的と俺たちが戦う相手について……」
「ナミネとジョカの奪還だろ?」
ラグナが気軽に言った。
「あと”エネルギーの解放”もしないと」
「え、エネルギーの解放?」
「ああ。これは俺がやるから心配しなくていい。それよりナミネとジョカが捕まっていると思われるのは、六角形の頂点だ」
「六角形の頂点……ですか?」
オトハが首を傾げる。
「ああ。あっちに行った時、敵がポロッと情報を漏らした。上空から見て六角形の敷地がある。その頂点となる場所にジョカやナミネたちは捕らえられているらしい」
「確認をしたわけじゃないのよね?」
ユウナが一応念のために聞く。
「俺が倒れそうになった時に冥土の土産だといって丁寧に絵まで書いて教えてくれたんだ」
「絵まで書いて……ね(汗)」
「そして、敵について説明して置く。……”エグザイル”についてな」
「”エ・グ・ザ・イ・ル”」
ユウナが復唱する。
「ああ。奴らは神殺しを画策した連中なんだ」
「”神殺し”?」
「か、神ってあの神?」
エレキは恐る恐る聞きなおす。
「ああ。正真正銘の神だ。この世界を作ったものと言っても過言ではない」
「神?バカらしいぜ」
ラグナは信じていないようにペッと唾をはき捨てた。
「”エグザイル”はとある世界にある治安維持組織だった。真面目で強くトップクラスのトレーナーや人材が揃っていた。だけど、あるとき、神がやってきてその世界を跡形もなく滅ぼしてしまったんだ。神の制裁だと言ってな」
「神の制裁ですか!?」
オトハが口を押さえて信じられないと言いたげだ。
「どうしてそんなことを……」
「その世界の化学力や軍事力……全ての学問をを極限にまで研究した彼らの世界は、いつか神の存在を脅かしかねないと悟って神はこんなことをしたんだ」
「反乱を恐れたって言うのね。よくある話ね」
「そ、そうなの?」
恐る恐るユウナにツッコミを入れるエレキ。
「だが、”エグザイル”のメンバー……それも最上級レベルの連中は生き残った。そして、彼らは全員神に復讐をしようとした」
「……復讐……」
「それが神殺しってワケね」
「ああ……そして、彼らは神と戦い敗走する羽目になる……。さすが神だったと言う話だ」
「……? 神に負けたのなら何であいつらは生きているんだ?」
エースがふと疑問に思い聞いた。
「”エグザイル”の連中は全員逃げ延びたんだ。しかし、神はそれと同時にある呪いをかけた」
「呪い……ですか?」
バブルの時もそのような話を聞いていたオトハが真っ先に反応した。
「ああ。その呪いにかかった者は年齢を重ねることができなくなる……つまり、死ななくなる」
「……そ、それが呪いなの?ぼ、僕としては嬉しいと思うんだけど……」
「エレキ……あなた、本当にそう思っているの?」
「え?」
エレキは一人だけ頭に疑問符を浮かべていた。
「あ゛?ユウナ、どういう意味だ?」
いや、ラグナもだった(爆)
「神としては、神に逆らってしかも逃げ延びた連中をただで済ませるとは思えないでしょ。つまり、捕まったら最後……恐らく永遠に何かしらの苦しみを味わせられることになるでしょうね」
「……!!」
「いつ捕まるかもしれないという悩みにも苛まれる。というわけだな」
ユウナとエースの言葉にリュウヤは頷く。
「そう。それが50年位前の話だ」
「……!?」
「50年も前のお話ですか!?」
「一体そんな昔の話……どこから?」
ほとんどの人が驚く中、リュウヤは答える。
「俺の祖母はかつて”エグザイル”の一員だった。全てこの話は祖母から聞いた話だ」
「あの占い婆さんが……」
ヒロトが思い出したように呟く。
「アマ婆(ば)ぁは、かつてのいた世界の中で神童とも言われた一族の中でも最強のドラゴン使いだった。その実力を認められて18歳という若さで”エグザイル”のメンバーになった」
「…………」
「そして、その2年後に世界崩壊が起こった。瞬く間に神は世界を壊しつくした。そして、エグザイルがその神に仕返しをしようとしたんだが、アマ婆ぁだけはその作戦をに乗ろうとはしなかった」
「悪くいえば、アマお婆さんはエグザイルを裏切ったのね」
「そういうことになるな。……話を戻そう、そのエグザイルのメンバーは知っているだけで7人だ」
「つまり、人数的には互角というわけか」
「だが、一人一人の実力が飛びぬけて強い。俺はあっちの世界に行ったら3人に襲撃されて怪我を負った」
「3人にかよ」
「1対3とは卑怯です!!」
ラグナとオトハがそれぞれ言った。
「実質、敵は一番広い六角形の最下層のフロアの3人を倒せばいいだけの話。六角形の敷地にある真ん中の塔にいる敵はどうにかするとして、みんなは全員でそいつらを倒してくれ」
「分かったわ」
「それじゃ、ついたら2人一組位になって行動するのがいいな」
ヒロトの提案にみんな頷く。
「リュウヤ、一つ気になることがあるんだけどいいかしら?」
ユウナだ。
「なんだ?」
「エグザイルの連中がジョカやナミネを攫ったのって、もしかして、”あいつ”の復活とか、神殺しの計画と関係があるのかしら?」
「……それは……」
”ふふふ……あたしが答えてあげようか?”
「……!?」
どこからともなく響く妖艶な声。
みんなで辺りを見回してどこに敵をいるか探す。
”こっちよ。こっち”
「「上!?」」
ユウナとオトハが同時に気付いた。
見上げるとハイヒールを履き、赤いロングスカートの10代に見える女が全員を見下ろしていた。
……って
「う、うわぁ……」
「っ!!」
「…………(オイオイ)」
男たちはほとんどがそっぽを向いた。
何故なら、上を見ると、スカートの中のパンツが丸見えだったのである(ぁ)
「ちくしょう……何て強烈な先制攻撃だぁ……Tバックなんて挑発的なものを履いてやがる……」
でもラグナはじっくりと見ていた(ぁ)
ユウナがそんなラグナの頭を小突く。
「リリス=サッキュバス……」
「あんたがリュウヤね。まさか死にに戻ってくるとは思わなかったわ。しかもこんなに生贄をつれてくるとはね」
「生贄ね……そう簡単に私たちは負けたりはしない」
ユウナがボールを構える。
「まあいいわ。あたしたちの狙いはそこのバンダナのあんたよ」
「…………俺か」
指名されてもエースは冷静だった。
「そう簡単にはエースを渡したりしねぇぜ」
ラグナもスタンバイを完了している。
「ふふふ……楽しいゲームの始まりね」
パチンッ!!
「な、何!?」
「何でしょう?地震でしょうか?」
リリスが指を鳴らすと突然足元が揺らぎ始めた。
「まずい!!リリスの奴……この空間を壊す気だ!!」
「気付くのが遅いわよ」
ズドンッ!!!! ズドンッ!!!! ズドドドドンッ!!!!!!!!
そう。そして、空間は大きな音を立てて崩壊したのだった…………
93:ラハブの新境地
レッドパープルの空……
オレンジイエローの海……
グレーブルーの陸……
全てが普通といえないこの光景……
空が年中夕焼け色なんて有りえない……
海がオレンジジュースのように濁っているなんて有りえない……
陸が人工的、機械的な色をしているなんて有りえない……
どこの世界にも含まれない上に座標もはっきりとしない……こんな世界見たことない……
わしはこの世界をこう名づけることにした。
Dimensions Over Chaos
”混沌を凌駕した世界”
ザブンッ!!
音を立てて大きな水飛沫が起こる。
高いところから落下したらしく、一度、深い海を潜る羽目になってしまった。
次に彼が思ったのはこの海が凄まじい光沢を放っていたことだった。
その色でまともに目を開けられなく、海面へ浮上するまでに労力をかなり使っていた。
「ぷはっ!!レイン!!」
顔を出したヒロトはすぐに水ポケモンのラプラスを繰り出した。
レインに咥えてもらってすぐに背中に乗り、シャツを脱いで、絞り上げた。
「まさかいきなり襲撃に遭うとは……しかも、全員とはぐれちまった……」
キュゥ〜とレインがなく。
ヒロトはレインもこの世界の様子がおかしいと思ったのだと思っていたのだが、そうではなかった。
顔を水面の方にツンツンッと指し示すようにしている。
「……?」
ヒロトはレインに示されたその場所を良く見る。
すると、オレンジ色の海のせいで少々判りにくかったが、小さな泡がブクブクと浮かんできているのが見えた。
「……なんかいるのか?レイン!潜ってくれ」
レインに指示を出すと、代わりにフライゴンを繰り出して飛び乗った。
「ふぅ……しかし、ここは一体なんだ?」
レインが浮上するまでの間、空から辺りを見回した。
「空も海も……何から何まで奇妙な色をしているし……それに太陽や月もないのにこんなに明るい……不気味な世界だな。……ん?あれは陸か?」
辺りを見回して、何もないと思っていたが、よく目を凝らすと陸の姿が確認できた。
「あっちに行って見るか」
そう決心した時、丁度レインが浮上して来た。
その背中には一人の男が乗っていた。どうやら気を失っているようだ。
フライゴンを戻して、レインの上に再び乗ると、ヒロトは呆れた様に呟いた。
「ラグナかよ……」
海水を飲んだようで、息をしていなかった。
とりあえず、腹をグイって押してやると、噴水のように口からピューーっと水を吐き出した。
「ゲハッ!!ガハッ!!こ、ここはどこだ?」
「気がついたか?」
「っ!ヒロト!!」
慌てて起き上がるがすぐに下を向いた。
「どうしたラグナ?」
「こ…こっち…くるな…うげぇ…」
起き上がって数秒ほど……ラグナはすぐに乗り物酔いに陥った。
「どれだけ弱いんだよ……(汗)」
「早く…陸にィ…!! うげぇ…」
完全にラグナはダメダメだった。さっきまでリリスと戦う気満々だったのに今は戦闘意欲ゼロである。
「何で溺れていたんだよ」
「俺…泳げねぇ…んだよ…」
「それならオーダイル出せよ。乗り物酔いでもそこまでして頑なにポケモンに乗るのを拒まなくてもいいだろ?」
「俺の…オーダイルは…泳げねぇんだよ…ぐえぇ…」
「…………(泳げない水ポケモンってなんだよそれ……)」
ただ呆れるしかないヒロトであった。
「とりあえず、このまま陸に向かうぞ」
「揺らさ…ないよ…に…頼む…」
「それは無理だ(汗)」
こうして、2人はラグナの汚いものを海へ撒き散らして進むことになってしまった……
「(ここは……?)」
静かに目を開けていくリュウヤ。
あたりは紫色のシャボン玉が散布している空間だった。
「(まだ移動空間の中?それに、みんながいない?)」
リュウヤはたった一人、取り残されていた。
空間は飛び散ったのだが、何故かリュウヤだけはその場に残されてしまったらしい。
「(……っ!! 身体が……?)」
まるで、見えない鎖か何かが自分を縛り上げているかのように動くことができなかった。
「(動け……動けッ!!動けッ!!動けッ!!動けッ!!動けッ!!動けッ!!動けッ!!動けッ!!……動けッーーーー!!!! 動いてくれ……僕の身体!!)」
友を助けるため……
世界を救うため……
そして、最も愛する人のために想いを最大限にして、動こうとする。
だが、それは叶わない。
まったく無駄だった。
ただ、労力を使い果たし、ぐったりと倒れるだけだった。
どれだけの時間が経っただろう?
リュウヤの目がドンドン淀んできた。
「(僕は……もうダメだ……友を救えず……世界を救えず……愛する人も救えない……僕はずっとこのまま憔悴して行くんだ……)」
絶望が見えていた。
周りには誰もいない。
ずっと一人で戦ってきたリュウヤ。
孤独に押されて、ついに彼の限界が来ていた。
「……みんなごめん……僕は何もできなかった……」
目を瞑って諦めた。
”リュウ!!”
「え?」
どこからか、誰かの声が聞こえた。
しかし、誰の姿も見えない。
”起きて……リュウ君”
”しっかりするニ!”
”リュウ……あなたは一人じゃないわ。私たちがいるじゃない”
”こんなところで諦めるなんて、リュウらしくないでんな!”
次々に聞こえてくる声。
はっとリュウヤは誰だか知った。
「リザードン、フライゴン、ボーマンダ、カイリュー、ガブリアス……」
”リュウ!幻覚に惑わされるな!!目を覚ますんだ!!”
「(幻覚……?コレが……?)」
”本当はリュウはここにいない”
”意識だけが拘束されているでんな”
”おれっちたちがリュウの意識を引っ張り出すニ”
”しっかり……気持ちを強く持って……”
「みんな……」
ポケモンたちの声にリュウヤは今までの想いをさらに高めていった。
「僕は……友達を救いたい!! 僕は……みんなのいる世界を元に戻したい!! 僕はナミネを助け出したいッ!!!!」
強く願った瞬間に光が弾けた……
「っ!!」
リリスが慌てて手持ちポケモンのヨノワールと一緒に飛び退いた。
そして、リュウヤが目を覚ます。
「まさか……あたしの悪夢を破るなんてね」
「リリス……お前の仕業だったのか」
目を覚まし、改めてリュウヤは辺りを見回す。
すると、建物の中のようで空や海などは確認できなかった。
「このまま精神を壊してあげようとしたのに……上手くいかなかったわね。さすが、フィラデム……エリートドラゴン使いの孫は違うようね」
「そんなの……関係ない!!仲間をどこへやった!?」
「あんたが集めてきた仲間ねぇ……知らないわ。勝手にそこら辺に散らばっているんじゃない?どこへ行こうが関係ないわ。全てあたしの部下たちが殲滅させるからね」
「そう簡単にはいかない。あいつらは強い」
「はぁ……。そうはいうけど、あたしたちの実力を知らないわけじゃないでしょ?それを承知した上で言うの?それをなんていうか知っている?”井の中の蛙大海を知らず”」
「…………」
「所詮、あんたもその一人なのよ。いいわ。あたしが相手してあげる。ただし……」
徐々にリリスの姿が消えていく。
「塔の最上階層まで来る事ができたらの話だけどね。ちなみにここは”ラハブの新境地”の中心の塔があるフロアよ……。期待してないで待ってるわ」
そして、完全に消え去った。
「何が”ラハブの新境地”だ……。ただのイカれた建物じゃないか」
ぎゅっと拳を握り締めて、ドアを開けると、塔がそびえたって赤紫の天空にまで伸びていた。
「僕が……全てを終わらしてやる!!」
そして、リュウヤは走り出した。
「(ナミネ……待っててくれ……リリスを倒して、奴らの目的を阻止したら、すぐに会いに行く!!)」
「ええと……ここはどこでしょう?」
オトハは目が点になっていた。
「急に空間が割れたと思ったら、落ちてしまって、気がついたらここに立っていました……」
てか、誰に説明しているんだ?(汗)
「う〜ん……とりあえず、歩いてみましょうか……」
おっとりとゆったりと彼女は花畑でもあるかのように華やかに歩き出す。
「あれ?これって何の跡でしょう?」
ふと、辺りの壁が壊れているのを見つけた。
「(これ……まるで炎で燃やされた跡みたい……でも、跡形もなく溶かすなんて、どれだけの熱量を……)」
「ウフフ……どうやらリリスの言っていた生贄が来たようね」
「……!!」
声を聞いてふと振り返る。
しかし、そこには誰もいなかった。
「(どこへ……? ……!! この熱は!!)」
オトハは慌ててその場から飛びつくように離れた。
すると、上空から火柱が立ち上がり、オトハのいた場所を燃やし尽くした。
「……あら、アタシの攻撃を避けるなんてやるじゃない……ウフフ」
声のするほうへ行って見ると、そこはまるで何かの建物の廃墟だった。
……真ん中にあるのは噴水の名残だ。
「先ほどの攻撃はあなたのですか?」
噴水の頂点に立つように先ほどの声の主がいた。
その出で立ちは赤い色の髪にゆるくウェーブしたツインテール……そして、身体にぴったりと密着した赤と黒のチャイナドレスっぽいものを着ていた。
「ウフフ……その通りよ。アタシは炎のクイーンヒロコ。アタシの怒涛の炎攻撃をたっぷり受けるがいいわ」
「……!!」
「……お前は」
エースはラハブの新境地の最下層……六角エリアの最東部にいた。
丁度、北か南へ行けば、リュウヤの言っていたナミネやジョカが捕まっていると言う六角形の頂点に行けるのだが、彼の前にとある影が立ちふさがった。
「ヘイ!ユーがエースネ?大人しくミーに捕まるのだヨ!」
「……うるさい。ジョカを返してもらうぞ」
エースがモンスターボールを構える。
「はぁー無駄!ミーには勝てないネ!」
懐から男はカードを取り出した。
そして、光ったと思うと何かが飛び出した。
「『ライトニングニードル』ダヨ!!」
しかも、そのカードから飛び出したのはポケモン……サンダースだった。
いつの間にかエースの背後を取り、ミサイル針と電撃を融合した連射能力の優れた強力な攻撃を放った。
「これで終わり!『かみなり』!!」
しかも、最初の攻撃がエースに到達する前に次の攻撃がエースを襲っていた。
ズドーーーーーーーーンッ!!!! チュドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!
雷が落ちて爆発してから、電気の針が爆発の煙に入っていった。
「ユー、ルーズ!あっけない!口ほどにもないとはまさにこのことネ!サンダースティーブの敵ではないヨ!」
サンダースをカードに戻して懐にしまおうとする。
だが、スティーブはやめた。
「(これはどういうことネ?まさか……まだ……?)」
スティーブは身震いをした。
まさかこの攻撃で立ってはいないと思っていた。
「これで俺がやられると思ったか?」
そう。エースはまだ倒れていなかった。
エースのシャワーズがかみなりを水で受けきって、電気の針を防御したようだ。
しかし、それでもサンダースの攻撃を完全に止めることはできなかったようだ。
シャワーズは傷を負っていた。
「倒したと思ったのに……!仕方がないネ!ミーの全力を見せるあげるヨ!」
「お前にかまっている暇はない。すぐに倒してやる」
カードをパラパラと構えるスティーブとモンスターボールを構えるエース。
壮絶な戦いが今始まる…………
to be continued
アトスペ〜最終回〜
さて、本日は全てのコーナーを休んでアトガキ座談会スペシャルをお送りいたします〜♪
最初h(ゲフッ)
ライト「最初はじゃないわよ!!28話と29話の間にあったはずの私とエースのシーンはどうしたの!?」
ええと、それはあまりにもラブラブすぎるので却下しました。
エレキ「え、えぇ!?ラブラブだったの!?」
ラグナ「そんなの初耳だぜ?」
ヒロト&オトハ&カレン「…………」
ユウナ「だって、ラグナには言ってないもの」
ラグナ「ちくしょう!俺だけ除け者か!?」
いや、ほとんどの人が知らないと思うけどね(汗)
アクア「とりあえず、ヒロトとオトハがくっ付いてくれて一安心ね」
ユウナ「そういうことね」
ヒロト「いや、別に俺はそういうつもりで……」
ユウナ「いいのよ。きっとあなたはオトハが好きになる」
アクア「そうね。あんな可愛い女の子を好きにならないなんてありえないわ!むしろ、あんたにはもったいないわね!」
ヒロト「……(汗)」
オトハ「……そして、今後の展開はどうなっていくのでしょう?」
リュウヤ「そんなの決まっている!!僕がナミネを助けるんだ!」
エース「俺も妹を助け出す」
ユウナ「そう簡単に行けばいいけどね……。相手は一筋縄では行かないみたいよ」
エレキ「か、勝てるかなぁ……」
ラグナ「てか、ほんとに俺も何でエレキがこのパーティに入っているのかがわからねぇ」
ヒロト「エグザイル……そんな奴らに負けない……!」
30話から最終局面に入ります。
かなりバトルが多くなるので、話的にしつっこくなるかも。
それでも、今後の展開もよろしくお願いしますね。
[一言感想]
別にいいんですが……リュウヤが思い出す名はナミネばかり?
ネスカ(夜波雪さんのサイト掲載小説「DD」参照)とかの名前が出てきた試しはあっただろうか(ぁ)。
エースとライト、ヒロトとオトハは、どちらも良い方向に向かっていると見ていいのでしょうかね。
エースとヒロトは相変わらず仲は悪いですが、力だけでも認め合っているという関係も良いものかも知れません。
……にしても今回、ラグナが色々と面白かったな(何)。
リリスもリリスだけど。
あと、泳げない水ポケモンは別にいてもいいと思います(ぇ)。