カタカタ……とキーボードを打つ音が鳴り響く。

「……う〜ん六角形の西部ってところかしら」

 I☆NAを操作するのをやめて、左腰辺りにあるポシェットに戻す。
 そのポシェットは腰紐に括り付けていて携帯電話が入るくらいの大きさだ。
 続いて、上空に浮遊していたレアコイルを戻す。
 どうやら、レアコイルを通して全体を把握したらしい。

 え?どうやってかって?実は……

「とにかく、ここから北西に行けば一つの頂点にたどり着けるわね」

 え?あのー説明しなくていいんですか?

「それにしても、あの塔は大きいわね……。一体誰が建てたのかしら?」

 もしもーし?ユウナさ〜ん?ユウナちゃーん?ユウナ姉さん?弟君が呼んでいますよー。

「私に弟はいないわよ」

 ざっと歩いてユウナは足を止めた。

「(この気配……誰かいるわね)」

 自然とボールを手にかけるユウナ。
 そして、突然アクションは起きた。

「(『氷のつぶて』!?)」

 いきなり現れた高速の氷攻撃。
 即座にレアコイルを繰り出して防御をする。
 鋼の耐性があったおかげであまりダメージはないようだ。

「(どこ?)」

 ここは辺りが柱ばっかりで、隠れるには好都合の場所。
 相手を探し出すのは容易ではない。

「一体どこに…………え?(風?)」

 巻き起こる突風。
 いきなりのことで目を覆い一瞬判断がつかなかった。

 そう、そして、それが油断だった。
 同時に凄まじい冷気がユウナを襲った。

「っ!!コイりん!!『守る』!!」

 …………。

 やがて冷気は止んだ。
 しかし、そこでユウナは唖然としていた。

「っ!?テラりん!!」

 ユウナを防御していたのは、コイりんのレアコイルではなく、テラりんのプテラだった。
 そのテラりんはユウナを守るために盾になり、ダウンしていた。

「一番厄介なそのプテラを仕留めさせて貰った」

「っ!!」

 ユウナの前に現れたのは右目に片メガネをかけた紳士の男だった。

「君のポケモンはウインディ、ポリゴン2、ラグラージ、プテラ、レアコイル、ブラッキー……その中で私と相性が悪そうなプテラを先に倒させてもらった」

「(……!? 私のポケモンがバレている!? 初対面のはずよね……? それにいつの間にコイりんとテラりんがすり替わったの!?)」

「驚いたかね?それなら私の実力にもっと驚くがいい。このカネコウジの実力にな」

 

 

 

THIRTIETH

 

 

 

 ☆前回のあらすじ

 SGとTCの争いを終結させたエースたち。
 しかし、エグザイルという神殺しを謀った集団にエースの妹……ジョカが攫われてしまった。
 同じくエグザイルに拉致されたナミネを助け出そうとするリュウヤと一緒に、エースやヒロトたちはエグザイルの本拠地へと向かう。

 だが、そんな彼らの前にエグザイルのリリスが襲い掛かり、分断されてしまった。

 果たして彼らは、エグザイルの野望を止めることができるのか?





 94:vsスティーブ


「『ウォーターウォール』」

 強力な電撃を水の壁が阻む。

「なかなかやるネ。しかしコレでおしまい!」

 左手に持っているカードを一枚引き当て、それをかざす。

「『かみなり』!!」

「シャワーズ。『ハイドロポンプ』」

 水で電撃を押し返そうとする。
 だが……

「(先ほどより威力が上がっている!?)」

 かみなりがハイドロポンプをあっさりと切り裂いて、シャワーズを黒焦げにして倒してしまった。

「この程度ですか?」

 エース対スティーブの激突。
 並の相手なら簡単に勝てるエースなのだが、相手は並の相手ではない。
 今まで戦った奴の中でもトップレベルといっても過言ではなかった。

「(……相手はボールを使わずにポケモンを操っている……どういうことだ?)」

 しかし、そのことは考えないことにしたようで、すぐに次のポケモンを繰り出す。

「『エアカッター』」

「飛行タイプで来るとは愚かですネ。『ライトニングニードル』」

 電気の針が凄まじい勢いで飛ぶ。
 エアカッターをも軽く打ち抜き、エースとそのポケモンのクロバットに襲い掛かる。

「コレを避けられるものなら……」

「そんなのわけない」

 エースのとった行動はクロバットを一時ボールに戻すことだった。

「(チェンジですね?)」

 だが、エースは代わりのポケモンを出さなかった。
 襲い掛かる電気針の嵐を避けようとする。

 しかし、その針のスピードはエースの予想をはるかに超えて、エースを傷つけていく。

「くっ……」

「こんなの全て避けられる奴がいるのならみてみたいヨ。ユーの行動は無謀ネ」

「いけ。クロバット」

「次はそのクロバットに『かみなり』」

 ズドンッ!!

 よく狙いを定めて狙ったはずだった。

「……!?消えた!?」

 バキッ!!

 攻撃が外れた上に、サンダースは反撃を受けていた。
 しかも、その攻撃の強さはサンダースを一撃でダウンさせてしまうほどだった。

「……サンダースがやられるとは思わなかったヨ」

 すると、スティーブの持っているカードが一枚、燃えて消えた。
 同時に、サンダースも粒子になって消え去ってしまった。

「お前の”それ”は、カードでポケモンを繰り出しているのか?」

 カードが気になるエースは聞いてみるが……

「ユーに教えることなんて何も無いネ!サンダー!!『カミングサンダー』!!」

「!!」

 クロバットに直撃して、一撃で倒れた。

「ドンドンいくネ!『ビッグサンダー』!!」

 大きなかみなりがエースに襲い掛かる。
 さすがにコレを避けきることは不可能だ。

「させない」

 そんな大きな電撃を受け止めた。
 エースのバンギラスだ。
 特性の『砂起こし』のおかげでダメージを軽減しつつ、攻撃を受け止めたようだ。

「『ストーンエッジ』」

 ドガンッ!!

 攻撃は確かに当たった。

「!?」

「効かないネ」

 スティーブは一枚のカードをヒラヒラと見せびらかしながら、涼やかに言った。

「(……『ディフェンダー』?)」

 小さく書いてあるその字を確認した後、そのカードはすぐに消滅した。

「そのバンギラスは厄介ネ!ディフェンダーを使って、こんなにダメージを受けるとは思わなかったヨ!だから、次で倒す!」

 すると、スティーブはカードの山を懐にしまって、左手に右手と同じようにもう一匹のポケモンを召還した。

「……!!」

 その召還した2匹にエースは驚きを隠せなかった。

「終わりネ!サンダーA『ビッグサンダー』! サンダーB『オーバーロード』!」

 2匹の雷鳥。
 しかも、その力は絶大なものだった……。
 壁や地面を壊しつつ、辺りはいとも簡単に更地に変えてしまっていた。

 そこにはバンギラスが力もなく、横たわっていた。

「ちょっと本気を出しすぎたヨ!ミーの全力の攻撃を受けて立っていた奴なんていないの忘れていたネ!」

 エースの姿は見えない。
 果たして、エースは負けてしまったのだろうか……?










 95:vsヒロコ


 ―――……一方

 こちらも二人の女が激しい戦いを繰り広げていた。

「『火の粉の舞』」

「ペルシアン!!」

 無数の火の粉がペルシアンを燃やし尽くす。
 かわすことがトップクラスのペルシアンでさえ攻撃をまったくかわすことができず体力を奪われて、ダウンしてしまった。

「ウフフ……確かあんたよね?カネコウジが言っていた月舞踊のオトハって」

「ええ。私がオトハです」

「そう……。カネコウジに聞いたところ、只者じゃないって話だったわ」

「そうですか?私はどこにでもいるただの女の子ですよぅ」

「……キュウコン」

 破壊光線のような弾道を持つ、破壊的な炎がオトハの頬を掠めた。
 攻撃に触れてはいないが、オトハは頬にひりひりと熱気を感じていた。

「アタシはあんたみたいなぶりっ子が大嫌いなの。人をおちょくったようなその態度が気に食わない。……燃やし尽くしてあげるわ」

「えぇ!?ちょっと待ってくださいよぉ」

 しかし、ヒロコは容赦しない。
 先ほどの破壊的炎をまた繰り出した。
 でも、オトハも黙っていなかった。
 やられたペルシアンを回収し、変わりに青いベトベトンを繰り出して攻撃を押しとどめた。

「ベトベトンがハイドロポンプを?」

「私のベトベトンはちょっと特殊なのです」

「水系の技が使えようが関係ないわ」

 あっという間にハイドロポンプを押し返して、強力な炎をベトベトンに打ち込んだ。

「ベトベトン!?」

 まさかの一撃ダウン。
 オトハは慌ててベトベトンを戻す。

「弱いわね。どうやら、カネコウジの目は節穴に変わってしまったわね」

「チャーレム!」

「無駄って言っているじゃない!!」

 先ほどの強力な炎攻撃を再び繰り出す。
 チャーレムも避けられず、直撃した。

「あんた程度の敵なら、いくらでも戦ったことがあるわ。その程度じゃ、ここの誰にも敵いっこないわ。それに一番弱いアタシに勝てないようじゃね」

「…………つ…ぶ…う」

 そのときオトハは何かを小さく呟いていた。

「もう終わりよ。次でトレーナーのあんたを……え!?」

 キュウコンに攻撃をやめさせた時だった。
 あることに気付く。

 そして、チャーレムは踊り始めた。

「(何で、あのチャーレムはダメージを受けてないの!?それに何を踊っているの?人をおちょくっているわけ?)」

「チャーレム、『とび膝蹴り』です」

 踊り終えたと思うと、今度は強行に出る。

「そんなの、コレでどうよ!」

 ディフェンダーのカードを使って、チャーレムの攻撃を防いだ。
 弾き飛ばされるように、チャーレムは後退した。

「今度こそ終わりよ!『フレイムレイ』!!」

 破壊光線のような炎を繰り出してきた。今度こそ決める気のようだ。

「チャーレム……『月舞踊:無姫(なきひめ)』」

 精神を統一して、チャーレムは攻撃を受け止めた。
 そして、あっけなく攻撃をかき消していく。

「また!?何なのよ、あの技!?……でもいいわ!そのまま全力で燃やしてあげなさい!!」

 そして、一分くらいそのままの状況は続いた。
 だが、ついに倒れた。

「っ!?」

 信じられないようにヒロコは消えていくキュウコンを見た。

「一体何をしたって言うのよ!?攻撃をしていたキュウコンが倒れるなんて!!」

「それより、ジョカちゃんとナミネちゃんの居場所を教えてください。教えてくれたら教えますけど……」

「愚問ね」

 そして、ヒロコは次にブースターを召還した。

「特殊攻撃が効かないのなら、打撃攻撃でどう!?ブースター!!『バーストドライブ』」

 極大な炎をまとってチャーレムに体当たりを仕掛ける。
 見た感じフレアドライブに見えないこともない。

「強力な打撃攻撃ですね?チャーレム」

 相手の攻撃にあわせて両手をぐるりとゆっくり回しながら構える。
 向かって来るブースターの動きに合わせて、オトハは指示を出す。

「『月舞踊:流漂(りゅうひょう)』」

 流れるように動き、突進してきたブースターをいとも簡単にいなした。
 そして、勢いを増したブースターを押し出すように壁へと突き飛ばす。

 ズドーンッ!!という大きな炸裂音とともに分厚い壁が崩壊した。
 チャーレムは手をブンブンと振っている。どうやら、先ほどブースターを突き飛ばした時に炎で少しダメージを負ったようだ。

「そのまま、『サイコキネシス』です!」

 追撃がブースターに命中する。
 しかし、まだブースターは倒れない。

「頭に来たわ!!コレでどうよ!!」

「(パワーが増しています……?)」

 カードの中から一枚取り出すと、ブースターの炎が増していくのにオトハは気がついた。
 カードには『プラスパワー』と書かれている。

「これであんた達を終わりにしてあげるわ!!『バーストドライブ』!!」

 決死の一撃。
 先ほどと同じ攻撃とは思えない威力と迫力だ。

「チャーレム!『月舞踊:受風(じゅふう)』です!!」

 チャーレムに当たって強大な爆発が起きた。

「終わったわね。あんた達……」

 爆発の規模、飛んできた地面のコンクリートの破片、立ち上がる煙でヒロコは確信する。

「まだ終わっていませんよ」

「!!」

 煙の中からチャーレムが飛び出した。
 油断していたヒロコは何もできず、チャーレムの跳び膝蹴りがブースターにクリーンヒットをするのを見るだけだった。
 宙を舞って地面にドサリと落下するとキュウコンと同様にヒロコの一枚のカードとともに消滅した。

「どうして!?攻撃は確かにチャーレムに当たったはず……プラスパワーと合わせたバーストドライブを受けて立っていた奴なんて今までいないのよ!?」

 確かに、ブースターのこの攻撃の破壊力はライトのバシャーモの『オーバードライブ』やミナノのブースターの『ブラスト』級……いや、それ以上だったかもしれない。
 だが、現にチャーレムはダメージを負ってはいるものの、まだまだ余裕があるようだ。

「そんなこといわれても困ります。攻撃を受けて立っていたのですから」

 少し困ったように言いながら、最終的にはニコリと笑顔で言うオトハ。
 その様子にヒロコの堪忍袋の尾が切れた。
 ブチッ……と。

「もういいわ……あんたなんて骨も残してやらない……アタシを本気にさせたんだからね!!」

 二枚のカードを取り出して、2匹のポケモンを一気に召還した。

「このポケモンは!?」

「炎鳥と鳳凰……ファイヤー&ホウオウ!!この二匹を見て今まで生きていた奴はいないわ!!『聖なる炎』!『ゴッドバード』!」

「っ!!『受風(じゅふう)』です!」

 ホウオウの神秘に輝く炎とファイヤーの強襲が同時にチャーレムを襲う。
 ほぼ同時に2つの技がチャーレムを捉えて吹っ飛ばした。

 ズザザッと勢いよく吹っ飛ばされるもののオトハの手前で押し留まった。

「(いけませんね……『受風』でもダメージを軽減し切れません……このままでは負けてしまいます……)」

 2匹の伝説のポケモンを目の前に、オトハは少々焦る。

「アタシの全力の攻撃を見せてあげる。ファイヤー!『炎をもたらす』!」

 ヒロコのファイヤーの炎の力がドンドン強くなっていく。
 そして、その炎はホウオウへと譲渡して行った。

「(この2匹が要のようですね……それなら……)『月舞踊:星奪(せいだつ)』です!!」

「何を踊っているのかは知らないけど、消えて無くなりなさい!最大パワーの『聖なる炎』よ!!」

 ホウオウはしっかりと踊っているチャーレムを見て、攻撃を放った。
 オトハは悟った。温度、炎の密度、大きさ……全ての点でこの攻撃が今まで見たことのない力だということを。

「間に合ってください!!」

 炎がぶつかる瞬間までチャーレムは踊り続けた。
 そして、踊り終えた瞬間にオトハは指示を出す。

「チャーレム!『無姫』……」

 しかし、時はすでに遅し……攻撃がチャーレムに当たり、その炎の熱がオトハにも襲い掛かった。

 燃え盛る炎……。

 そして、辺りを灰にしていった……

「今度の今度こそ終わったはず……」

 とは言うものの今度はオトハのいる場所から目を離さなかった。
 相手の不思議な技を考えると、そうせずにはいられなかった。
 そう、それは未知なる物を恐れる不安からだった。

 そして、その不安は的中する。

「……!!」

 自身最強の攻撃と言っただけあって、チャーレムをしっかりと倒した。
 しかし、オトハはほぼ無傷だった。
 オトハの隣にいるポケモンの存在が彼女を守ったようだ。

「スイクン……自分で出て私を守ってくれたのですか……?」

 スイクンはオトハの顔をふと舐める。

「くすぐったいですよぅ」

 オトハはむじゃきに微笑む。
 しかし、闘志を剥き出しにしているヒロコを見てしっかりと気を引き締めなおす。

「ヒロコさんは強いです。でも……私、負けるわけには行きません。ジョカちゃんやナミネちゃんを助けるために……私、負けません」

「ウフフ……口だけならなんとでも言えるわよ」

「全力で行きます」

 オトハはスイクンを戻して代わりに別のポケモンを繰り出した。
 そして、ヒロコはそのポケモンを見て呆然とした。

「あんた……そのポケモンで戦うと言うの?」

「はい。もちろんです」

「……バカにするのも大概にしなさい!」

 ヒロコが怒るのも無理はなかった。
 オトハの繰り出したポケモンは炎タイプに圧倒的分の悪いワタッコだったのだから。

「一発で仕留めて上げるわよ!!『聖なる炎』!!」

 先ほどの極大かつ高密度の炎がワタッコに放たれる。
 避けられるわけがない……ヒロコはそう思った。

「ワタッコ、『ソーラービーム』です」

 あろうことか、避ける指示さえも出さず攻撃の準備を始めた。
 オトハはその攻撃が巻き込まれないところまでトコトコと移動した。

「(一体何を考えてるの!?)」

 攻撃はワタッコを飲み込もうとした。

 だが……

「え!?」

 当たらない。
 かわす動作なんてしていないのに、攻撃が当たらなかった。
 まるでそれが自然のようにワタッコはのんびりとし、ソーラービームを発射し、ファイヤーに命中させた。

「くっ、もう一度よ!!」

「ワタッコ!今度はファイヤーに『宿木の種』です!!」

 もう一度、ヒロコのホウオウの最強の攻撃を繰り出す。
 だが、結果は同じだった。
 ワタッコは攻撃をスルーして、宿木の種をファイヤーに植え付けて、体力を吸っていった。

「これならどうよ!!ホウオウ!『虹色の翼』」

 7色の翼をはためかせて、ワタッコへと襲い掛かる。

「『影分身』です」

 何匹にも分かれて、ワタッコはホウオウの攻撃を完璧にかわしていった。

「ファイヤーも『ゴッドバード』で打ち落としなさい!」

 宿木の種を植え付けられながらも、果敢にファイヤーは攻撃を繰り出す。
 しかし、ホウオウ、ファイヤーの2匹同時攻撃でもワタッコにまったく当たらなかった。

「ワタッコ!最大チャージです!」

 そして、その間にも宿木の種でみるみるうちにファイヤーの体力は減っていった。

「何で当たらないの!?当たればワタッコなんて一発で倒せるのに!!」

 丁度そのときだった。

「ホウオウ!?」

 ホウオウが地面に不時着するように落下し、そのまま消滅してしまった。

「何で!?ホウオウは一度も攻撃なんて受けてないはずなのに!?一体何を…………まさか」

 ヒロコはこれがキュウコンがやられたときと同じだということを思い出した。
 そして、その共通点はチャーレムの謎の踊りを見たことによるものだったことに気付く。
 しかし、その思考の時間がヒロコの隙となった。

「そこです!!」

 ワタッコがファイヤーの顔に引っ付き、零距離で最大パワーのソーラービームを放った。
 攻撃を受けたファイヤーは撃墜。ヒロコのカードとともに消滅した。

「炎ポケモンがダメならこれでどうよ!!」

 繰り出されるはケンタロス。

「『全力突進』!!」

 強靭な脚と巨体を持つケンタロスがふわふわとしたワタッコに突っ込んでいく。
 しかし、ふわりとケンタロスの全力の攻撃をいとも簡単にかわし、後ろを取った。

「行きますよ!!『壱の舞』!『弐の舞』!」

 そして、目に見えぬ綿胞子と種マシンガンの攻撃であっという間にケンタロスを倒してしまった。

「まだやりますか?」

 ヒロコはたった一匹のワタッコにこれだけ押されていることが信じられなかった。
 だけど、冷静になってヒロコは笑った。

「ウフフ……まだやるかですって?当たり前じゃないの。こっちはアタシたちにはやらなくちゃならないことがあるのだから!」

「それって神を殺すことですか?」

「あら……知っていたのね。ウフフ……そうよ。そのために、あんたたちが助けようとしているジョカとナミネを渡すわけにはいけないの」

「あの二人が神とどういう関係を持つのです!?」

「あんたは知らなくていいことよ。これで最後よ!」

「!!」

 最後にヒロコが繰り出すのは、やはり炎ポケモン。
 伝説のポケモンのエンテイだ。

「『炎の渦』!!」

「回避して『種マシンガン』です!」

 オトハは初めて回避の指示を出した。
 ワタッコは期待に応えて攻撃を回避して見せたが、種マシンガンはエンテイにまったく効いていなかった。

「あんたにいいこと教えてあげる。最強の攻撃を出すことができるのはホウオウだけどね、強さのバランスで言ったらこのエンテイの方が上なのよ!」

「…………」

「あんたのワタッコの攻撃は効かないわ!」

 オトハはふとワタッコを戻した。

「それなら、この子で勝負です!!」

 先ほどオトハを炎から守ってくれたポケモン……スイクンだ。

「相性で勝てると思うほど甘くは無いわよ!!『炎の渦』!!」

「スイクン!『水の波動』です!!」

 二つの相反する攻撃が激突する。
 両者、伝説のポケモンと言われている辺り、基本的な攻撃でも凄まじい威力を発揮している。
 だが、この激突は片方が押し切った。

「あっ!!スイクン!!」

 水の波動があっけなく蒸発して、攻撃が命中する。
 その怯んだ隙を狙ってエンテイは接近を仕掛けた。

「吹っ飛びなさい。『グレンライジング』!!」

「スイクン!『ハイドロポンプ』です!!」

 しかし、炎を纏ったエンテイにハイドロポンプはまったく効果は無く、そのままスイクンは打っ飛ばされた。

「いつもより、水タイプの威力が弱い気がします……」

「あら、よく気がついたわね」

 ヒロコはそういうと、一つのカードをオトハに見せびらかした。

「『グレンジム』。水タイプの攻撃を弱める効果があるのよ。これでアタシのエンテイの弱点は無いに等しいのよ!!」

「(やはり。一筋縄ではいきませんね……!!)」

 スイクンは戦えるものの深手を負い、かなり苦しそうだった。
 ヒロコのエンテイはまだ戦える。

 激戦は激しさを増しそうだ。










 95:謎の侵入者


「……始まったわね」

 塔の中階層から見下ろして、激しい爆発の様子や立ち上がる火柱、吹き荒れる吹雪に轟く稲妻などを余裕の表情で彼女……リリスは見ていた。

「リリス、何故リュウヤ=フィラデムを下で消せなかったんDA?」

「面白くないじゃない」

 ザンクスに怪しい笑みを送りながらリリスは続ける。

「あの子はザンクス……あんたを一番に恨んでいる。もしあたしが彼を消してしまったらその戦いが実現しないじゃないの」

「めんどくさいことを俺に押し付けるなYO!」

「いいじゃない。あんた暇なんだし」

「…………」

 ふと、ザンクスは近くにある矢を取った。
 矢といっても、ダーツで使うあの小さな矢である。
 シュッと手首のスナップを効かせて投げると、トスッと的の真ん中のやや下に刺さった。

「まぁ……別にいいですけどNE。問題が一つありますYO?」

「何?」

「このままリリスの計画通りに行ったとして、誰が最後の生贄を捕らえるのですKA?もし私が行くことになるとしたら、リュウヤと戦えなくなりますYO?」

「ふふふ……全然問題ないわよ」

「問題ない?それはどうしてですKA?」

 ザンクスが問いかけるが、リリスは答えず、代わりにキューを取って狙いを定めてボールを衝いた。
 1つのボールが7つの固まっているボールに当たって、弾け飛ぶ。
 それぞれボールはポケットに入ったり、残ったりと各々の方向に飛んで行って、全て停止した。

「あたしの予言が当たるとすれば、あのフィラデムたちの中でここまで来れるのは…………これだけよ」

 リリスはビリヤード台をザンクスに示す。
 それだけやると、適当にキューをポイと投げ捨てた。

「じゃあ、その中で俺は2つ落とそうKA……」

 宙を舞うキューを取ったザンクスは白いボールをついて、一気に二つのボールをポケットに納めた。
 そして、残ったのは2つのボールだった。

「それより、あたしが気にしているのは、ラハブの新境地の南の外れにいる奇妙な存在ね」

「奇妙な存在って何ですKA?」

「少なくとも敵じゃなく、味方でもない……突然現れたってところよ。そいつはどうやら、さっきフィラデムたちと一緒にいた奴と出会いそうね」

 ふふふとリリスは怪しく微笑むのだった。





 さて、そのリリスが言っていたラハブの新境地の南の外れ……
 そのライトブルーの色をした木の枝に引っかかっている一人の男の子の姿があった。

「た、た、た、助けてー!!」

 特徴的なダークグリーンの前髪を垂らしたネガティブなエレキだ。
 どうやら、不時着の際にものの見事に木の枝に引っかかったらしい。
 その高さは5メートルほど。普通に着地したら何とかなりそうだが、不時着したら怪我しそうな高さである。

「た、助けてー!!」

 我を忘れて助けを呼ぶエレキ。
 もやは自分のポケモンで何とかするという考えはすっかり無いらしい。いや、むしろ余裕が無いと言えるみたい。
 それにしても、こんなところで助けてくれる人なんて誰がいるだろうか……

「助けてやろうか?」

「え?」

 って、居たし(汗)
 でも、彼はその木に火をつけた。
 一気に木は燃え上がって、木の枝まで……エレキのいる場所にまで燃え移ろうとしていた。

「え、え、えぇ!?ちょ、ちょっと止めて!!」

 さらに慌てるエレキ。
 パニックに陥ったエレキは引っかかっている枝を揺らす。
 そのお陰で何とか、枝から解放された。
 しかし、その代償に不時着という痛い結末が待っていたが。

「っーー!!い、痛いよー!!(泣)」

「どうやら助かったようじゃな」

「そ、そんな助け方無いよッ!!」

 半べそで助けてくれたフードを被った男性に文句を言うエレキ。

「あれっ?」

「ん?どうかしたのか?」

 エレキはふと一枚の写真を取り出した。
 そして、その男性と写真の男を照らし合わせた。

「…………っ!!しゃ、写真の男!?」

「……どうやらワシを知っておるようじゃな」

 男性はモンスターボールを取る。

「し、知らないよ!!ぼ、僕はハナさんにこの写真の男を見かけたらバトルして勝つようにって言われただけだよ!!」

「っ!!ハナじゃと?……お主はどうやらわしと戦わなければならぬようじゃ。この”死神バブル”と」

 さらに真剣な目をしたバブルの前に一歩足を後退させるエレキ。

「わしとバトルをして負けた者は10年以内に必ず死ぬという呪いがある。お主はそれを知ってわしに挑むのか?」

「……ぼ、僕は勝てるなんて思ってないよ!!は、ハナさんが僕なら勝てるって言ったんだよ!!」

「ほう……それは酷く心外じゃ。わしはお主に負ける要素が微塵も感じられないのじゃがな」

 一歩踏み出すバブルにもう一歩足を後退させるエレキ。

「まあいい。お主の実力を見せてもらう」

「る、ルージュラ!!」

「そして死へ誘い……存分に味わうがいい!!ギャロップ!」

 ルージュラの冷凍ビームとギャロップのフレアドライブが激突した。
 そして、爆発が生じたのだった。










 to be continued










 キャラデータ


 オトハ(19歳)……月島出身の美しき踊り子。
           過去に月島が滅ぼされると言う経験をし、妹のコトハと一緒に月島崩壊から逃げてくる。
           以来、2人で旅を続けたが、ひょんなことから2人は別れて旅をすることになった。
           ヒロトのことが好きなのだが、彼にその気持ちを素直に受け止めてくれる日は来るのだろうか?
           ちなみに、どこにいても寝れるし、寝れない場合でもワタッコの眠り粉と言う荒業を使う(ぁ)

 手持ち……ワタッコ(♀) チャーレム(♂) ベトベトン(♂) ペルシアン(♀) メタモン スイクン
 控え……バルビード ロズレイド ラッキー マリル マッスグマ 他





 オリジナル技


 スティーブ
 『ライトニングニードル』……サンダースの技。ミサイル針の強化版で、スピードを強化し、電気を付加している強力な技。
 『カミングサンダー』……サンダーの技。飛び出した瞬間に無差別でヒットさせる恐ろしい電撃。今回はたまたまクロバットに当たったらしい(ぁ)
 『ビッグサンダー』……サンダーの技。その名の通り大きな電撃。避けるほどが困難なほど広範囲で強力な威力を持つ。
 『オーバーロード』……サンダーの技。早い話、オーバーヒートの電気版。あれ?どこかで聞いたことあるんだけど、忘れました……とりあえず、ごめんなさい(ェ)

 ヒロコ
 『火の粉の舞』……キュウコンの技。火の粉を広範囲に振りまいて踊るように襲う技。オトハのペルシアンでもかわすことはできなかった。
 『フレイムレイ』……キュウコンの技。破壊光線と炎を融合させた技。
 『バーストドライブ』……ブースターの技。フレアドライブに似ているが……そのまんまフレアドライブかも(オイ)
 『炎をもたらす』……ファイヤーの技。自らの炎を味方ポケモンに譲渡する技。与えられたポケモンの力は極端に上がる。
 『虹色の翼』……ホウオウの技。普通にバトルで使うよりもコンテストで使ったほうが用途が高いと思われる命中重視の技。
 『全力突進』……ケンタロスの技。その名の通り全力で突進する技。
 『グレンライジング』……エンテイの技。紅蓮色の炎を纏って突進するため威力が高い……らしい。

 オトハ
 『月舞踊:無姫(なきひめ)』……オーラで特殊攻撃を無効化する。しかし打撃攻撃は防げない。
 『月舞踊:流漂(りゅうひょう)』……自分を自然と同化させて、打撃攻撃を無効化する。しかし、特殊攻撃は無効化にできない。
 『月舞踊:受風(じゅふう)』……攻撃の弱所を見切って、ダメージを最小限にまで抑える。相手を油断に誘うときやどうしても攻撃をよけられないときにオトハは指示を出す。
 『月舞踊:星奪(せいだつ)』……神秘的な舞でその踊りを見た相手の体力を徐々に削っていく。防御不能。ただし見なければ意味がない。『呪い』のような技だけど体力は減らない。





 アトガキ


 いよいよ始まった最終決戦……の今話は第2話目。
 1話目でオトハとエースがそれぞれヒロコとスティーブと遭遇。
 多分、気づいている人はいると思いますが、ヒロコ、スティーブ、カネコウジはポケカGBのキャラです。
 ……いや、気付かないはずがないですよね?
 アットさんの外伝を見ずにこの話を見ている人というのはまずいないはずですから(笑)

 ……とりあえず、誰の決着もつかず、戦いのシーンが増えて次回へ続きます(蹴)

 

[一言感想]

 こっちの小説でも出した事ありましたね、ポケカGBのグランドマスター達。
 ヒロコはうちでもここでも、対戦相手に恵まれません(ぇ)。
 カネコウジは、うちでは一番あっけなく敗れてたので、こっちでは頑張ってほしいです。
 え、敵を応援するなって?(ぁ)
 うーん、でも最終決戦で、味方サイドが全勝という展開はあまりに出来過ぎてて好きになれない自分がいる(何っ)。
 さて、DOCではどうなるのか???

 

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