柱がたくさんあって隠れながら戦うには絶好の場所……ここでも戦いは続けられていた。
 その柱の隠れて、彼女は息を切らして身体を休める。

「(相手のポケモンはジュゴン……でも、モンスターボールらしきものは見当たらない……一体どうやってポケモンを繰り出しているの!?)」

 ポシェットからI☆NAを出して必死に調べる。
 しかし、結果はERROR。
 まったく相手のバトルスタイルが読めずにいた。

「(ここは長期戦でじっくり相手を観察してから行くのがベストね……)」

 隣にいるブラッキーを横目で見ながら、ユウナは行動を開始した。
 いや、しようとした。

「隠れようが無駄だよ」

 ユウナが動くより先にカネコウジが行動を起こした。
 たくさんあるカードから一枚を引き抜くと、とある現象が起きた。

「っ!!(敵のジュゴン!?)」

 ユウナの隣にはブラッキーがいたはずなのに、何故か突然敵のジュゴンと摩り替わっていた。
 しかも、吹雪がユウナに襲い掛かる。

「くっぅ!! がはっ!!」

 凄まじい冷気と突風でユウナは吹き飛ばされて、柱にぶつけられる。
 気を失いかけたが、何とか意識は保つことができた。
 そして、ジュゴンが連続で攻撃を仕掛ける。やはり吹雪だ。

「そ…う何度も…やらせない…わよ!!」

 吹雪を繰り出す一歩前にレアコイルを繰り出して、強力な電気攻撃をジュゴンに叩き込み、一蹴した。

「はぁはぁ……ありがとう…コイりん……っ……!!」

 レアコイルを戻した後、不意にくらっと眩暈がして膝をつく。

「(これはかなり不味い…かも……強力な氷攻撃を受けた上に、身体ダメージを負った……。どこかで一度体勢を立て直さないと……)」

 ブラッキーがどこへ行ったかはわからないが、とりあえず、ブラッキーなら大丈夫だと判断し、ふらふらと柱で身を隠しながら、ユウナは移動を始めた。

「(逃げるつもりか……?まあいい、存分に楽しませてもらうぞ)」

 カネコウジは余裕の表情でこの部屋から立ち去ろうとするユウナの気配を感じ取っていたのだった。

 

 

 

THIRTY FIRST

 

 

 

 96:vsスティーブその2


 2匹のサンダーの強烈な攻撃により、綺麗だったステンドグラスの窓や椅子、女神の置物などが一瞬にして消え去り、更地に変えてしまった。
 そして、その中心にはバンギラスが力もなく倒れていた。
 スティーブは額に手を当てて慌てた。

「しまった!誤ってエースまで消してしまったヨ!」

 しかし、スティーブは気付かなかった。
 バンギラスが倒れている場所に、小さな穴があったことに。
 そのことが、彼の隙を突いた。

「『オーバーヒート』」

 一匹のサンダーの真下から、極大な火柱が立ち上がる。

「何!?」

 サンダーはすぐに炎から抜け出したが、かなりのダメージを負った様子。
 そして、すぐにその火柱を出した穴から、エースとバクフーンが飛び出してきた。

「……一匹は倒せると思ったのにな……」

「まさか穴を掘って逃げていたとは……驚いたヨ!お陰でユーを消さずに済んだネ!」

「バクフーン」

 シュッ!!ズドッ!!

「っ!!」

 エースの一つの指示で、オーバーヒートを与えたサンダーに火炎車の体当たりを繰り出した。

「隙がありすぎだ」

「ちょっと強いからって、のぼせすぎネ!サンダーA!『カミングサンダー』!!」

 ダメージを受けていた方のサンダーが鋭い電気を放つ。

「ぐっ」

 その電撃はバクフーンに向かわず、エースに直接ヒットした。

「この程度の…電撃じゃ…俺は倒せない」

「別にユーを気絶させるために撃った電撃じゃないのサ!『カミングサンダー』!!」

「バクフーン」

 火炎放射と電撃のクロスカウンター。
 とは言うものの、電撃の方はやはりエースに向けられたもので、回避しようと避けようとしたのだが、かわしきれずにヒットした。
 だが、代わりにバクフーンの火炎放射がサンダーに当たって、何とか一匹を消滅させた。

「つぅ……」

 エースは膝をついて、身体を回る電撃に耐えていた。
 パリパリと傍からでもエースの体が帯電しているのが目に見える。

「これで終わりネ!サンダー!『かみなり』!!」

「バクフーン……『バーストフレイム』」

 背中から噴射する炎の翼を武装し、サンダーに突撃する。
 かみなりがバクフーンに襲い掛かるが、炎の翼で防御し、そのままサンダーにぶつける。

 ぶつかった瞬間に、バクフーンを纏っていた炎が全てサンダーに燃え移って爆発を起こした。

「バクフーン」

 サンダーと間合いを取ったバクフーンはとどめの炎を繰り出す。
 だが、サンダーもただでは終わらなかった。
 爆発から持ち直して、攻撃に入る。

「『オーバーロード』!!」

 火炎放射を押し切って、バクフーンに強力な電撃を叩き込む。
 さらに爆発が生じて、吹っ飛ばされた。

「……まだだ」

 ギリギリに着地すると、瞬時に前へと脚を蹴る。
 その一歩、二歩そして三歩目にはサンダーの射程距離を捉えた。

 ズドンッ!!

 電光石火と火炎車の両方の利点を生かした体当たりで、サンダーは地面を滑るように後退して消滅した。

「ミーのサンダーがルーズなんて!!」

「まだやるのか?」

 エースはバクフーンを一度ボールに戻した。

「ミーの役目はユーを捕えることネ!ここでミーが引くわけには行かないのサ!!」

「俺は捕まりもしないし、負ける気も無い」

「いいや。ユーは負け、ミーに捕まる。もうユーはミーの掌の中ネ」

 多くのカードの中から今度はエレキブルを繰り出した。

「何を根拠に…………なっ!!」

 ふと、繰り出したハクリューの姿を見て、エースは驚きの表情を見せた。
 どういうことか、まだ一度もダメージを受けていない……まして戦わせていないハクリューが激しい傷を負っていたのである。

「一体いつの間に……?」

「ミーの電撃はユーの身体だけじゃなく控えのポケモンにもダメージを与えるのサ!」

「!! (と言うことは、さっきのサンダーの電撃か!?)」

「エレキブル、止めを刺しなサイ」

「ハクリュー、『しんそく』」

 素早く動いてエレキブルの攻撃を回避する。
 その間にエースは控えのポケモンを見た。

「(後戦えるのは、バクフーンとメタグロスのみ……ハクリューほどではないがメタグロスもダメージを負っているな……これは不味いな……)」

 他のシャワーズ、クロバット、バンギラスはすでに倒れて、残り全ての3匹が傷を負っている状態。
 戦いはエースにとって不利な状況と言える。

「『竜の怒り』」

「『かみなりパンチ』!!」

 炎に近い色のエネルギーの球体を打ち出すが、エレキブルは拳で軽く消してしまった。

「その程度の攻撃、消すのなんてわけないネ」

「もう一発」

「無駄だヨ!!」

 同じく竜の怒りを放つが、やはり拳で弾かれる。
 そして、エレキブルはハクリューを捕らえた。

「これで決まりネ!『かみなりパンチ』!!」

 拳が振り下ろされる。

「この時を待っていた。『流星群』」

 同時にドラゴン系最強クラスの技を放った。
 至近距離で受けたエレキブルはただでは済まない……エースはそう思っていた。
 しかし……

 ズドンッ!!

「なっ……」

 流星群をまともに喰らいながらも、そのままハクリューを殴り飛ばしてダウンさせた。

「これだけで倒せると思った?甘いネ!」

「メタグロス!」

 少々傷ついたメタグロスが戦線に出る。

「『かみなり』ネ!」

「そんな攻撃なんて当たらない」

 エレキブルのかみなりはメタグロスが居た場所に落ちる。
 しかし、寸前にメタグロスは姿を消した。

「消えた!?」

 バキッ!!

 エレキブルはダウンした。
 ハクリューの先ほどの攻撃の影響もあり、その一撃で決まった。

「メタグロスがあんなスピードを出すなんて……信じられないネ」

「一気に片をつけてやる」

 エースはメタグロスを呼んで手を当てた。
 柔らかく暖かいオーラがエースから発せられたと思うと、メタグロスはさらにスピードを上げて、スティーブに襲い掛かった。

 バギンッ!!

「そうは行かないネ!」

「(メタグロスのコメットパンチを止めただと?)」

 スティーブの前に立ちはだかるのは、メタグロスを同じ属性を持つ鋼タイプのジバコイルだった。
 エースは攻撃の勢いならば属性も関係無く止められることは無いと考えていたが、そのジバコイルはメタグロスの攻撃にビクともしていなかった。
 いや、正確には攻撃は寸前のところで止まっていた。

「特性の『磁力』の応用なのネ!磁力は引き寄せることもできれば反発することもできる……つまりこれは反発を利用して攻撃は止めたのサ!」

 ジバコイルが磁力の力を解放するとメタグロスは一気に吹き飛ばされた。
 しかしメタグロスも負けていない。吹っ飛ばされながらもサイコキネシスを打ち出して、多少なりジバコイルにダメージを与える。
 でも、受けたダメージはメタグロスの方が大きかった。

「(接近できないなら特殊攻撃で一気に攻めるしかない。相手の特性が働いている今、戻すことはできないからな……)」

 エースの意思を読み取ったか、メタグロスは最大の技を打つために構えを取る。

「メタグロス、『ラスターキャノン』」

 『ラスターカノン』という鋼系の技があるが、メタグロスの『ラスターキャノン』はその技をさらにグレードアップした技だ。
 威力はカービィの戦艦ハルバードに搭載されている2連主砲の下の超強力なビームに匹敵する(ェ)

 そして、スピードもあった。
 ジバコイルは避けられずそのビームの中にすっぽりと巻き込まれた。

「(どうだ?)」

 しかし、エースの目に映るのはまだまだ余裕でそこに存在するジバコイルの姿だった。

「……」

 冷静にスティーブを見ると、その片方の手には序盤でバンギラスの攻撃を防いだ『ディフェンダー』のカードの存在があった。

「(またアレか……)」

「なかなか面白い攻撃だったヨ!こちらも面白い攻撃をお返しするネ!」

「(来る……)」

 身構えるエースとメタグロス。
 しかし、一瞬の出来事でエースもさすがになんだかわからなかった。
 そう、メタグロスがいきなり目を回して気絶したのだ。

「……!?(一体何を……?)」

「さぁ、もう一発!今度はエースに放つネ!」

「ぐっ……」

 身体の内部に衝撃が走ったと思うと、エースは膝をついて、さらに前のめりにバタンっと倒れた。

「ジバコイルの『マイクロウェーブ』は内側からの電磁波で相手にダメージを与える強力な技ネ!どんなにメタグロスの防御が高くても、内側からの攻撃はどうしようの無いのサ」

「くっ…………」

 不意打ちともいえるその攻撃がエースに致命傷をもたらし、意識を奪い去っていったのだった…………










 97:vsヒロコその2


 エースがピンチを迎える中、こちらは伝説のポケモン同士の戦いが激しく続いていた。

「『炎の渦』」

 今までのエンテイの怒涛の攻撃にオトハは何とかかわして隙をうかがっていた。
 しかし、連続で繰り出されるその攻撃はまったくオトハとスイクンにその隙を与えてくれなかった。
 いつエンテイの一撃がスイクンに入ってもおかしく無かった。

「(こうなったら賭けです……)スイクン!『影分身』です!!」

 オトハの指示にコクリと頷いて、何匹にもスイクンは分身する。

「ウフフ……その程度の分身で何になるって言うの?」

 炎の渦が少しずつ、少しずつ、スイクンの分身を消し去っていく。

「スイクン、『月舞踊:時月(じげつ)』です!!」

 本体同様、影分身たちも一様に舞いを披露する。

「また踊りね……そんなの発動する前に潰せばいいだけよ!」

 そして、ついに影分身は消え去って、残りは本体だけになってしまった。

「チェックメイトよ」

 炎の渦がスイクンへと襲い掛かる。

「いえ、成功です。スイクン、『聖なる衣』です!!」

 スイクンに指示をする直前、スイクンは淡い光を放つ。
 すると、エンテイから受けた傷が完全に回復したのである。

 そして、今度は煌く美しい衣を纏って、エンテイの炎の渦を弾き返した。

「やってくれるじゃない……!!」

「決めます……『月舞踊:朔凪(さくなぎ)』!!」

 エンテイが自らの炎で苦しんでいる間に、スイクンは精神統一をした。
 そして、次の瞬間、カッ!と動いた。
 それだけのことだった。

 ズバッシュッ!!

「えっ!?」

 見えない何かが、エンテイに一撃を与えた。
 それがヒロコには何なのか、まったくわからなかった。

 …………てゆーか、オトハもぶっちゃけ分かってない(オイ)

「多分、気合とか見えない風の刃とか……そういうものが発生するのだと思います」

 だってさ(蹴)

「エンテイの攻撃を弾き返し、見えない攻撃を繰り出し……どうやら見誤っていたのはアタシの方だったようね」

「……!!(まだ戦えるのですか!?)」

 あれだけの攻撃を受けながらも、まだエンテイは消えずにそこに存在した。

「さすがにさっきのカウンターと攻撃を連続で受けていたら、危なかったわよ。”これ”が間に合ったわね」

 ヒロコの左手には、『いいきずぐすり』と書かれたカードがあったが、それはすぐに消滅した。

「攻撃を跳ね返し、見えない強力な攻撃を繰り出すのなら、残る攻撃はこれしかないわね」

 エンテイは紅蓮の炎を身に纏う。

「『グレンライジング』!!行きなさい!!」

「スイクン!戻って!!」

 オトハは真剣な表情をして、再度ワタッコを繰り出した。

「今度こそ燃やし尽くしてあげるわ!!」

 エンテイがワタッコにぶつかろうとする。
 当たっていれば一撃でダウンすることだろう。
 そう、当たっていればの話……

「ワタッコ!『終の舞』です」

 攻撃は自然と離れるようにふんわりとワタッコは上空へ浮かんでかわす。
 その間にも、ワタッコは念力、自然の力で全ての風の力を自分自身に纏った。

 そして、その風の力を手の綿に乗せて解き放った。

「なっ!!」

 紅蓮の炎をも切り裂き、エンテイに最大の一撃を叩き込んだ。
 そして、ついにエンテイも姿を消した。

「……まさか……アタシが負けるなんて……くっ!!」

 すると、ヒロコの持っていたカードの束が燃え出して、全てのカードが消滅した。

「ワタッコ、ご苦労様です」

 労いの言葉をかけて、すっかり脱力しているワタッコを戻す。
 そして、オトハはヒロコを見る。

「教えてください……。どうして、ジョカちゃんとナミネちゃんを攫ったのです?」

「……仕方がないわね。少しだけ教えてあげるわ。それはね、遥か昔、神が封印したある天敵を復活させるためよ」

「神が封印した……天敵?」

「そのためには特別な生贄が必要なの」

「生贄なんて……そんなの良くありません!!やめてください!!」

「……そう。それじゃ、あんたはアタシたちが神によって永遠の苦しみを味わされてもいいって言うのね」

「……!! ……わ、私……そういうつもりで言ったわけじゃ……」

「いいえ、あんたの言っていることはそういっているのと同じよ。神に対抗できるのは”それ”を復活させる他に方法は無い。つまり、アタシたちが自由を手に入れるにはそれしか方法が無かったのよ」

「…………」

「ウフフ……あんたはどうするのかしら?アタシたちを放っといてその二人を助けるのかしら?それとも、アタシたちを見殺しにするのかしら?」

「……わ、私は……」

 オトハはそれ以上言葉が続かなかった…………










 98:vsカネコウジ


「はぁ…はぁ……ここまで来れば大丈夫かしら……」

 ふらふらとよろめきながら、先ほどの場所から10分くらい南にユウナは逃げてきた。

「(見る限り……相手はカードからポケモンを繰り出して攻撃してくるようね。でも、それだけじゃ説明がつかないことがいくつかある……)」

 柱の一つにもたれるように、ズズズッと彼女は腰を下ろした。

「(何もしていないのに私のポケモンが交換されたこととか、自分のポケモンが相手のポケモンとすり換わったことこととか……全然わからない……ポケモンの能力なの?でも、そうだとしてもジュゴンがあんな力を使えるなんてどういうこと?エスパーポケモンならまだわかるけど……)」

「鬼ごっこはもう終わりにしようか」

 男の声が聞こえたと思うと、白い冷気に気がつくと一気に地面が凍りついた。

「……!!(もう追いついてきたの!?)」

 ふと、柱から覗き見る。
 そこには先ほどの男がラッキーと一緒にいた。
 だが、それだけではない。ラッキーは一つのポケモンを抱えたいた。

「(っ!!ブラりん!?)」

 そのブラりんは氷漬けにされていて、まったく動きがとれずにいた。
 ユウナは冷静にその場から離れようとしたが、ゴツッと頭をぶつけた。

「……!?」

 恐る恐る手を触れると、何もないのに壁のようなものが存在していた。
 しかも、その壁は氷そのもののように冷たかった。

「『アイスバトルフィールド』。これで君は逃げることができなくなった。大人しく観念しなさい」

 カードを片手にそう告げるカネコウジに対してユウナは挑戦的な目で見る。

「……観念する?バカを言わないで」

 ボールを投げて中からスズりん(ラグラージ)を繰り出す。

「逃げられないからって、私が負けると決まったわけじゃないわ」

「君は負ける。そう、リリスの占いに出ている」

「……そうなの」

 白けた目でユウナはカネコウジを見る。

「そういわれると、破って見せたくなるのよ。私はね、データとか情報は信じるけどね、運命とか占いとかは大っ嫌いなのよ!!」

 スズりんは水鉄砲を放って、ラッキーに牽制する。
 しかし、ラッキーは並外れた体力を持っている上に、カネコウジのラッキーは攻撃にびくともしなかった。
 だが、それはユウナの計算のうちだったらしい。

「『マッドショット』!!」

 ラッキーは水鉄砲を正面から受け止めていた。
 水鉄砲が止んだ時、スズりんはその場から移動した後だった。
 ラッキーから見て右90度の方向から、地面タイプの攻撃技が襲い掛かる。

 ズドドドドッ!!

「……。『アイスボール』よ!!」

 一回の攻撃では倒せないと踏んで、ぐるりぐるりと時計回りに動いて、アイスボールの連続攻撃を繰り出す。
 このスズりんの攻撃は、自らが氷のボールとして体当たりするものではなく、氷の球を打ち出して連射するタイプの『アイスボール』だ。

 一回、二回、三回…………そして、最後の五回目を放った後、

「『ウォーターパンチ』!!」

 最後の巨大なアイスボールに隠れて、接近を指示した。
 アイスボールがラッキーにヒットし、そのまま水属性の拳をラッキーに当てようとした。

「今だ」

 ところが、ズゴンッ!!と衝撃音がしたと思うと、スズりんが地面を滑るようにユウナの元へ打っ飛んできた。
 スズりんは受身を取って、相手の次の攻撃を受ける構えを取ったが、ラッキーは動こうとはしない。

「(……『捨て身タックル』ね。でも……)」

 スズりんの腹部を観察してユウナは思う。

「(ラッキーの攻撃にしては威力が高いわ……。それに、あっちはその攻撃の反動しか受けてないみたい……。異常に防御力が高いようね)」

 しかし、ユウナは気にしていたことが一つあった。
 I☆NA(インフォメーションナビ)で相手のポケモンを検索したのだが、まったく反応がしないことだった。
 いつもなら、ポケモンや技、特性が発動した時は、分析してくれる。
 そこから、ポケモンを捕獲するなり、敵の攻略法を探すなりするのである。

「(相手はポケモンであり、ポケモンではないということかしら? ……いずれにしても、負けられないことには変わりがないわね)スズりん!!」

 スズりんが頷いて、サンドストームを起こす。

「視界を悪くして、どこから襲うかわからなくすると言うのか?無駄なことだよ」

 ラッキーとカネコウジはお互いわかる位置に立っている。

「下だ」

 カネコウジに言われてラッキーはジャンプした。
 スズりんが凍った地面から飛び出してくる。
 捨て身タックルがそのままスズりんへと落下する。

「(読まれていた!?)スズりん!『砂嵐』全開!!」

 自分の周りを台風のように砂利と砂埃を撒き散らす。
 少しでもラッキーの攻撃の直撃を避け、あわよくば、外してくれるようにと意図を込めた指示だった。

「コレでどうじゃ」

 カネコウジは一枚のカードをかざした。

 ズドンッ!!

「っ!!」

 スズりんは自らが掘って来た穴へと叩きつけられた。
 ラッキーは台風のような砂嵐の中、何事もなかったように、攻撃をやってのけたのである。

「この『見えない壁』の力の前に砂嵐やあられなどは無意味だ」

「…………」

「さぁ、観念するんじゃな」

「あら、甘く見ないで欲しいわ。スズりん!!」

 スズりんに合図すると、地面がゴゴゴゴッと揺れ始める。

「なっ!?」

 二本の水柱がラッキーを捉えた。
 アッパーのような二つの水柱はラッキーを上昇させた後、引力に従って地面へと打ちつけられた。
 そして、カネコウジの持っている一枚のカードとともに消滅した。

「(消えた……?)」

 スズりんが穴からヒョコッと出てきて、ユウナの元に戻る。
 相手の不意打ちを警戒してだ。

「(ポケモンはカードから出している実体を持ったモノと考えていいわね……。でも……)」

 ユウナはカネコウジが持っている数十枚のカードに目をやった。

「(ポケモンの他にもあのカードから何か特殊な効果をもたらす攻撃をやってくるときがあるのよね……。アレはいったい……)」

「こいつでどうだ」

 次に引き出したカードで出たものは、氷のボディを持った氷山のようなポケモンだった。

「(レジアイス……)あなた氷使いね」

 ジュゴン、レジアイス、ラッキーと見て使っているポケモンのタイプを見抜く。

「そのとおり。しかし、それがわかったところで勝てはしない」

「スズりん!!」

 水に乗って接近する。滝登りのようだ。

「凍らせろ」

 レジアイスが冷たい冷気をスズりんへと飛ばす。
 するとみるみるうちに滝登りの水が凍り付いていった。
 スズりんが凍りつくのも時間の問題である。

「『砂嵐』よ」

 自分の周りに砂嵐を起こして、冷たい冷気を当たらないようにする作戦のようだ。

「『冷凍ビーム』」

 さらにレジアイスは氷攻撃を撃ってくる。しかし、砂嵐が攻撃を防御する。

「そのくらいの冷気なら、砂嵐で防げるわよ!!」

 ユウナは自信満々だった。

「伝説のポケモンと言えども、たいしたことないわね」

「そうか。それなら、レジアイス。本気の冷気を見せてやれ」

「え?」

 カネコウジに指示されると、レジアイスの持つ空気が一気に変わった。
 ぶわぁっ!と言う風と共に周りの気温が一気に低下した。

「っ!!」

 あまりの寒さにユウナもぶるぶると震えだす。

「真の冷凍ビームを見せてやれ」

「……っ!!スズりん!『あなをほる』!!」

 嫌な予感がして、すぐに地面へと潜らせる。
 ユウナの直感は正しかった。
 レジアイスの放った冷凍ビームは先ほどのモノとは別物だった。

「(……っ!!さっきの威力の5倍……いや、10倍はあるかも!?)」

 しかし、スズりんは勇敢にもレジアイスの下から水の拳のアッパーをかます。
 上空へと打ち上げられてから重力に従って落下した。

「スズりん!冷凍ビームを打たせないで!連続攻撃よ!!」

 隙を作らずに一気に畳みこもうとする。だが……

「……!? どうしたの?スズりん!!」

 その場所から動こうとはしなかった。いや、動けなかったと言う方が正しい。

「『冷凍ビーム』」

 そして、あっけなく冷凍ビームが被弾してスズりんは倒された。

「(一体何があったの?)」

 レジアイスにセンサーを向ける。しかし、結果はやはりERROR。

「(レジアイスによる攻撃?それとも、あの男によるカードの効果なの?)」

 カネコウジを見るけど、特に何もしていないよう。ユウナはすぐに前者だと判断する。

「それなら、全力で倒すだけよ!ウイりん!!」

 ここぞとばかり相棒のウイりん(ウインディ)を繰り出す。

「一発で決めるわよ!!『スパイラルショット』!!」

「『冷凍ビーム』」

 凄まじい威力の技の激突。
 炎も氷も負けてはいなかった。

「いけっ!!」

 ウイりんのスパイラルショットが押し始めたが、レジアイスの前に来たところで爆発した。

「(厄介だな。あのウインディ)」

「ウイりん!『フレアドライブ』よ!!」

 一吼えすると、炎を纏って突進して行った。
 しかし、突然凄まじい烈風が襲い掛かった。
 慌てて、目を閉じようとした。

「(……!!コレって最初の時と同じ!?)」

 やがて風が止むと、ウイりんの変わりに別のポケモンの存在があった。

「『冷凍ビーム』だ」

「っ!! ポリりん!『高速移動』で回避!」

 最初の時の不意打ちの時とは違い、今度は的確に反応ができた。
 恐ろしい冷凍ビームを何とかかわす。

「(あんな攻撃を受けたら一撃でお陀仏よ)そこで『トライアタック』!!」

 レジアイスの後ろを取ると3種類のエネルギー体をヒットさせた。
 ふらりとレジアイスはよろけるものの、たいしたダメージはない模様。
 反撃の冷凍ビームを繰り出してくるが、ポリりん(ポリゴン2)は難なくかわす。

「それならコレでどう!?ポリりん!『トライアタック・ファイヤー』!!」

 トライアタックは基本的に炎、かみなり、氷の3種類を合成した技である。
 しかし、この技はファイヤー……つまり炎を特化して放つトライアングルの攻撃なのである。

 接近してレジアイスの攻撃できない死角から攻撃をぶつけた。
 氷のレジアイスが炎で燃え上がる。

 やがて氷の冷たさが勝り、火は消されるだろうが、少しの間はなんとかなるだろう。

「よし……ポリりん!!……え?」

 ユウナの呼びかけにポリりんは動けなかった。

「(さっきのスズりんと同じ!?)」

 レジアイスはまだ炎上しているために攻撃どころではない。
 その隙を突いて、ユウナはポリりんを戻して、代わりにコイりん(レアコイル)を繰り出す。

「『ラスターカノン』!!」

 その間にユウナはポリりんの状況を観察する。

「(麻痺している……。どうやら接近からの攻撃だと何かしらのカウンターを受けるようね)」

 ズドンッ!!

「えっ!?」

 ふと、振り向くと、コイりんに冷凍ビームが当たっていた。
 属性防御のお陰で威力を軽減させたもののダメージは絶大で、間一髪のところだった。

「さすがに一発は受けてしまったな」

 カネコウジのカードがまた1枚燃える。

「(『なんでもなおし』?)」

 そのカードをユウナは見逃さなかった。
 どうやらそのカードの力で炎上状態を治したようだ。

「(トレーナーとポケモン……両方を見ていないといけないわね)」

 同時に10万ボルトを指示。電撃を飛ばす。

「レジアイス。『アイスリフレクト』」

 コイりんの攻撃のタイミングを見計らって、レジアイスが突っ込む。
 10万ボルトを直撃しながらも、レジアイスは体当たりでレアコイルを押しつぶそうとした。

「コイりん!!」

 ユウナの指示は避ける指示だったのかわからないが、コイりんはかわせなかった。

「『大爆発』よ!!」

「発動せんよ。『アイスリフレクト』は接近攻撃した者を麻痺させる攻撃。今、レアコイルは麻痺をしている。発動できるはずが……」

 しかし、カネコウジは気がついた。コイりんの体内のエネルギーがドンドン上昇していっているのに。

「残念だったわね」

 すると、コイりんの片割れの一匹が地面の中から現れた。

「な!?まさか?」

 レジアイスがコイりんから避けると、コイルが2匹だけで1匹足りなかった。

「私のレアコイルは分裂できるの。それに一匹が何も状態異常がかかってなければ……」

 一匹のコイルのエネルギーもドンドン上昇して行き、最大パワーになった。

「もう2匹のコイルも誘発して爆発するのよ!」

 ズゴーーーーーーーーーーーンッ!!!!

 レジアイスを巻き込んで文字通りの大爆発が起きたのだった。










 to be continued










 キャラデータ


 ユウナ(20歳)……オートンシティにあるショップ・GIAの秀麗な女性。
           以前ロケット団として組織に加担していたが、ショップ・GIAで働くようになってから、情報を駆使して悪を駆逐する仕事をしているらしい。
           ラグナとはロケット団時代の仲間であり、互いに通じ合っている仲だが、恋愛感情があるかどうかは不明。
           スタイルも顔も長身もどれもがセールスポイントで雑誌に載るモデルのような魅力があるが、あまり彼女はそれを気にしていない。
           『ロケット団の娘:ユウナ』と周りの組織から恐れられているが、彼女はこの通り名をひどく嫌っている。

 手持ち……ウイりん/ウインディ(♂) ポリりん/ポリゴン2 スズりん/ラグラージ(♂) 
      テラりん/プテラ(♂) コイりん/レアコイル ブラりん/ブラッキー(♂)

 控え……カラりん/ガラガラ(♂)





 オリジナル技


 エース
 『バーストフレイム』……バクフーンの技。背中から繰り出す炎を翼のように形作る。そのあとは自在に攻撃として使ったり防御したり、用途は様々。
 『ラスターキャノン』……メタグロスの技。本文の通りラスターカノンのバージョンアップ版。

 スティーブ
 『カミングサンダー』……サンダーの技。ランダムに場所を攻撃することもできるのだが、トレーナーのモンスターボールに直接狙うことも可能。
 『マイクロウェーブ』……ジバコイルの技。相手の内部に微弱な電気を送り込む技。内部への攻撃のため、防御能力が無視されてしまう。

 オトハ
 『月舞踊:時月(じげつ)』……自然の力を借りて、自らの体力を回復する。
 『聖なる衣』……スイクンの技。ミラーコートのような技だが、属性がエスパー系ではない。
 『月舞踊:朔凪(さくなぎ)』……回避不能の斬撃。絶対命中をほこるのがうり。

 ユウナ
 『スパイラルショット』……ウイりんの技。以前の話参照。
 『トライアタック・ファイヤー』……ポリりんの技。トライアタックの属性を炎タイプ一つに絞ることにより、炎系を強化した技。なお『サンダー』や『フリーズ』もあるらしい。

 カネコウジ
 『アイスリフレクト』……レジアイスの技。接近して攻撃してきた相手をカウンターで麻痺させる。





 アトガキ


 展開はなかなか進みません。
 ユウナ、エース、オトハがそれぞれカネコウジ、スティーブ、ヒロコと戦うという場面です。
 オトハは辛くも勝利。ユウナは活路が見えてきた?そしてエースはまさか……?

 そんなこんなで次回に続きます。

 

[一言感想]

 ヒロコ……やっぱり相手が悪かったとしか(ぇ)。
 何気に実戦でなら、オトハは負け無しの気がしますし(試合形式バトルでは一度サトシに負けてます)。
 そしてスティーブは凄まじく強く、エースがまさかの敗北……かも。
 ユウナとカネコウジの勝敗はいかに!?

 

戻る