「(ついに……ついにこの力があたしのものに!!)」

 目を開くと、自身が蒼白い”禁忌”と呼ばれた存在と同化したことを実感した。
 拘束されていた光の鎖を破り、翼を広げて、亜空間を飛び回る。

 彼女はいとも簡単に世界の壁を破り、次元の狭間を飛びまわり続けた。

「これで……神を消去する!!」

”ここにいたか……”

「!!」

 リリスは振り向いた。

「……神……ではなさそうね」

 しかし、神ではないものの神に似た神聖なものを感じて、リリスは構える。

”私は神の代弁者……と言いたいが、もうすでに私が神と言っても過言ではない”

「……どういうこと?」

”ゴットは……十数年前にお亡くなりになられた。それからは、私がお前たちの神罰を任せられた”

「つまり……神の意思を継ぐものね。……神本人を消してあげられなかったのは残念ね」

”……まさか、私と戦おうと言うのか?”

「戦う?話にならないわよ、あんたじゃ」

”……確かに凄まじいエネルギーを持っていて、以前神が封印したものに憑依しているようだが……。しかし、私がお前たちに神罰を下す!!”

「やれるものならやってみなさい!!」

 リリスがそういって手を前に出した。

”私がお前たちを罰し……私が神になる!!”

 神の代弁者と名乗る者も黄金の槍を持って、突撃する。





 チュゴゴーーーーーーーーーーーーンッ!!!!





 まるで街一個分を跡形もなくしてしまうような……例えて言うなら宇宙が始まるビックバンのような……凄まじい一撃だった。
 そして、戦いは一撃で決まってしまった。

「っ!!」

 リリスは左肩を抑えて、息を切らしていた。
 左肩には槍が貫かれた跡が残っていた。

”……ば、バカな……”

 しかし、消滅していくのは神の代弁者のほうだった。
 細胞の一つ一つが光の粒子になって消えていく。

”……ちくしょう!!神の座が……!! ……これで私に権利を委託されたお前たちの呪いが解けてしまう……!! だが、神は人となり生まれ変わっている……このままのさばれると思うなぁ!!”

 そして、代弁者は完全に消滅した。

「……呪いが解けた……これであたしたちの時間を取り戻すことができるのね……」

 右手の拳を握り締めて、クククとリリスは笑い始める。

「神が生まれ変わっている?そんなの恐るるに足らない!今こそ、あたしの手で世界を征服してあげるわ!そして、あたしが新たな神になる!!」

 異空間の中で、リリスは高らかにそう宣言したのだった。

 

 

 

THIRTY FIFTH

 

 

 

 106:格


「あなたは……モトキ?」

「♪ダイジョ〜ブかい?」

 ユウナを抱きかかえてモトキは歌うように気を遣う。

 歌いながらって気を遣ってんのかよ?(汗)

「よく見たら〜あちこちにケガをしているじゃないか〜俺が治して上げるよ〜! 〜痛いの〜痛いの〜飛んでゆけ〜」

「……そんなことして治るなら、医者なんて要らないわよ。とりあえず、降ろして!」

「わわっ〜!!降ろすから暴れるな〜」

 じたばたとユウナは暴れる。
 好きでもない男にお姫様抱っこをされているのはさすがに嫌なのだろう。

 ところで、ユウナの好きな男って誰だろう?(知るか)

「誰だか知らないが、邪魔する奴は消えてろ!!ノイ!『10万ボルト』!!」

 ノイことライチュウが頬袋から一気に電撃を放出する。
 そのポリゴンZのトライアタックさえも軽く相殺した10万ボルトがモトキとユウナに襲い掛かる。

「ポワルン〜」

 すぐにモトキが繰り出したのは一匹のポワルン。
 そう、ただのポワルンだった。
 そのはずなのに、次の瞬間、トロイには信じがたい現象が生じた。

「っ!?消えた?!」

 モトキとユウナの姿がふっと、視界から消えてしまったのである。
 しかし、トロイはひんやりかつ湿った空気に触れて気付いた。

「……これは霧!?なぎ払え!『マルチ10万ボルト』!!」

 先ほどの威力の電撃が幾つも霧の中に向かって飛んでいく。
 しかし、電撃は霧の中を通過していくだけで、何の手ごたえもえられなかった。

「(爆発もしないなんて……一体どういうことだ!?)」

 霧を通れば、壁なり地面なり当たって爆発するもの。
 だがそれがなかった。
 トロイはただ霧の中で立ち尽くす。





「とりあえず〜ユウナちゃんは〜ここにいなさい〜。あの男は〜俺が倒すから〜♪」

「待って!!」

 おんぶで運ばれて今度は近くの壁に座らせられているユウナは一言尋ねる。

「何故あなたがここにいるの?トキワシティ……しかも、”ティブス”の世界の住人じゃなかったの?」

「あれ〜?言ってなかったっけ〜?俺は〜どの次元のどの世界にも属していない人間なんだよ〜」

「どの”次元”のどの”世界”にも……?」

「ま〜その話は〜アレを倒してからじゃないとね〜」

「ちょっ!!」

 しかし、ユウナが呼び止めようとした瞬間に、モトキは姿を消した。

「消えた……?」





「霧なんて吹き飛ばしてやる!ニーデ!『サイコストーム』!!」

 トロイはノイを戻して、ニーデ……フーディンを繰り出した。
 そして、またヒロトのフーディンのオリジナルの技であるエスパーの暴風を繰り出した。

「(これは……!?)」

 モトキがトロイのいた場所に駆けつけると、霧が吹き飛ばされていた。

「まさか……この霧の正体がポワルンそのものだったとはな」

 風で霧が吹き飛ばされたと思うと、その霧は一匹のポワルンに戻っていった。

「あ〜ばれちゃったか〜」

 舌を出してお茶目に笑うモトキ。

「俺のポワルンは〜『雨』〜『晴れ』〜『あられ』の他にも幾つもの形態変化をもっているのさ〜。その一つがさっきの霧さ〜」

「……なるほど。霧属性だから、風で吹き飛ばされれば変化は破れるということだな」

「ま〜霧の形態変化は〜風以外の攻撃は受け付けないから〜気がつかれなければ〜無敵なんだけどね〜♪」

「そうか。ニーデ」

 フーディンがスプーンをかざすと、ポワルンを超能力で壁にたたきつけた。
 壁が壊れてポワルンは瓦礫で埋まってしまった。

「だけど、俺のニーデの前には意味を成さないようだな」

「♪そぉ〜かなぁ?」

 モトキは焦ってもいないし同様もしていなかった。
 ただ、起こったことをのんびりと見ているようだった。

 そののんびりさは、ポワルンが瓦礫の中から出るまで続いていた。

「……効いていない!?」

「このくらいなら〜よけるまでもないね〜。ポワルン〜天候は『ストーム』〜」

 ポワルンが頷くと、周囲に風が吹き荒れ始めた。
 屋内だと言うのに、その風の威力は凄まじいものだった。
 トロイも、フーディンも、少なからずその風の影響を受けていた。
 ただ、フーディンのレベルが高いためか、ダメージは最小限でとどめられている。

 だが、驚くべきはポワルンだった。
 荒れ狂う風の中、平然とその場に浮かんでいた。
 いや、浮かんでいると言う表現は正しいのだろうか?
 ポワルンの現在の形は、確認できる4種類のタイプとはいずれも異なるものだった。
 背中に翼を生やし、頭に竜巻のようなものが渦巻いている……見るからに風属性……いや、飛行属性と確認できるような形をしていた。

「見たことない形だな……だけど……」

 ふっとトロイが笑うと、フーディンはポワルンの後ろに回りこんでいた。

「そんな姿になったからといって、この攻撃を受けきれると思うな!!『サイコバズーカ』!!」

 超能力を最大限にまで溜めて、レーザーのように収縮した攻撃だ。
 ポワルンの背後に命中しようとしていた。

「ポワルン〜『火炎放射』〜」

 振り向いてポワルンは火炎放射を放つ。

「なっ!?」

 トロイが驚いたのはその火炎放射の大きさゆえ。
 しかも、サイコバズーカを飲み込んで火炎放射はフーディンにまで達した。

 ズドンッ!!

 しかし、ポワルン、フーディンの両サイドから爆発が生じた。

「う〜ん……どうやら〜火炎放射の中心を〜超能力が打ち抜いたみたいだね〜」

 モトキは間延びした声でそう言った。

「と言うことは相打ちか……」

 トロイサイドの爆煙が引くと、瀕死寸前のフーディンの姿があった。

「ニーデ、『自己再生』……一撃の威力はこちらの方が上だ。もう一回さっきの一撃で倒してやる!!」

 フーディンに回復を命じながら、トロイはモトキに言い放つ。

「確かに〜今の一撃は〜あっちのほうが上だったね〜♪じゃ〜ポワルン〜次の攻撃行ってみよ〜」

「……!?」

 トロイは驚愕した。
 霧が晴れると、そこには、かすり傷しか追っていないポワルンの姿があった。

「あの威力の攻撃で、あれしかダメージを負ってないなんて……嘘だろ!?」

「いやぁ〜ポワルンのこの『風雲』状態は特殊攻撃を半減することができるのさ〜」

 頭を手に乗せてモトキは照れるように言った。

「そういうわけか……なら、この技ならどうだ!!『サイコストーム』!!」

 霧を吹き飛ばした、強烈な竜巻が作り出される。
 ポワルンが『嵐』の形態に変化したことにより、凄まじい風が巻き起こっているが、サイコストームの力はそれ以上である。

「『ウェザ〜ボ〜ル』!!」

 次の瞬間、そのサイコストームで作られた竜巻は、根元からそれ以上の異常な風のエネルギーを持った球体に打ち抜かれた。
 そして、球体は威力を落とさずにフーディンにぶつかると、凄まじい風のエネルギーを炸裂させて、サイクロンを起こして周りの壁や屋根を全て吹き飛ばした。
 この場に残ったのは、ナミネが閉じ込められている水晶体とトロイとモトキとポワルン……そして、倒れたフーディンだけだった。

「!!」

 トロイは慌ててフーディンを戻して、次のポケモンを繰り出した。

「『砂嵐』!!」

 天候を『ストーム』から『砂嵐』へと変化させる。

「(これなら、相手は飛行属性ではなく、ノーマル属性のはずだ!)フォチアル、『ドラゴンクロー』!!」

 フォチアルと名をつけられたフライゴンは、先ほどのフーディン顔負けのスピードでポワルンの背後を取って、一撃を叩き込んだ。

「隙を作るな!!『ガーネットクロー』!!」

 連続で砂で洗練された光り輝く爪をポワルンに向かって繰り出す。

「ポワルン〜」

 しかし、ドラゴンクローを受けて、ピンピンしている上に、攻撃を右、左とかわしていく。

「『ウェザ〜ボ〜ル』!!」

 今度は巨大な岩属性のウェザーボールがフライゴンへと放たれる。

「『ガーネットクロー』!!」

 ズズズズッッパンッ!!

 ウェザーボールの威力に押されながらも、ウェザーボールを真っ二つに斬ってしまった。

「♪うわぁ〜お」

「次はポワルンを狙え!!天候を変えられる前に決めろ!!」

「おっと〜!」

 だが、次の瞬間、ポワルンが消えた。

「何!?どこへ行った!?」

「ここ〜ここ〜♪」

 トロイが振り向くと、そこにはモトキの姿があり、そして、モンスターボールの中にポワルンの姿があった。

「……!?いつの間に!?」

「今の間にだよ〜♪」

「ちっ!『竜の波動』!!」

 竜の力を持つ、エネルギー弾がモトキに襲い掛かって爆発した。

「いや〜さ。久しぶりだし〜みんな戦わせよっかなと思ってさ〜ポワルンを戻したんだよ〜」

「(後ろ!?)」

 トロイが振り向くと、モトキは能天気に踊るルンバッパを繰り出していた。

「フォチアル……『ガーネットクロー』!!」

 踊っていて隙だらけのルンバッパを狙い、フライゴンが一閃で切り裂く。
 だが……

 スカッ!!

「な!?」

 スカッ!! スカッ!! スカッ!!

 攻撃がまったく当たらない。
 ルンバッパはあざ笑うかのようにかわしていく。
 ……いや、あれはかわしているのだろうか?踊っているだけにも思える。

「(ただ踊っているだけなのに……どうしてかわされるんだ!?)……当たれば、ルンバッパなんて……」

「そ〜お?試してみる?ルンバッパ〜!」

 モトキが呼ぶと、ルンバッパは踊りながら、フライゴンのガーネットクローに合わせて、攻撃を仕掛ける。

「当たった!」

「そ〜だね〜」

 ルンバッパの攻撃とフライゴンの攻撃が拳と爪をぶつけ合う。

「な……!?オイ……」

 ガーネットクローが押し切られて、フライゴンは激しくぶっ飛ばされた。
 翼を使って何とか空中で止まろうとしたものの、勢いが強く、地面に身体をこすり付けてようやく勢いを止めることができた。

「(ただの”パンチ”でフォチアルのガーネットクローを止めるなんて……!!)次は…………!!……雨!?」

 砂埃はいつの間にか沈静され、紫と赤の混合色の空から降り落ちる雨へと天候を変えていた。
 どうやらルンバッパが雨乞いを使用したようである。

「『水のハド〜(波動)』」

「(出が速い!相殺は間に合わない!)フォチアル!」

 バシュンッ!!

 水の波動がまるで爆弾のように破裂する。いや……威力で言って爆弾と言っても言い過ぎではない。
 フォチアルがいた場所は隕石が落ちてきたあとのクレーターのようにでかい窪みができていたのだから。

「そんな……『身代わり』で水の波動を退けて、空へ逃げたはずなのに……」

 ドザッと音を立てて、氷付けになったフライゴンが空から降ってきた。

「何でルンバッパの一撃が入っているんだ!?」

 フライゴンが落ちてきて数秒後、ルンバッパも地面へと着地した。

「ルンバッパ〜そのちょ〜しだよ〜」

 ルンバッパは相変わらず踊り、モトキはギターを片手にノリノリだ。

「(第一……俺のフォチアルのスピードに雨乞い発動中とは言え、ルンバッパがついて来れること事態がありえない!!)ユザム!!」

 ユザムことキノガッサは飛び出した瞬間にマッハパンチ。

 ガシッ

 しかし、いとも簡単にルンバッパは攻撃を受け止めてしまう。

「『パイドロポンプ』〜」

「『ソーラーパンチ』!!」

 至近距離からの同時攻撃だったが、ルンバッパのほうが早い。
 キノガッサの攻撃はかすりもせずに、ハイドロポンプの水圧で流されていった。
 しかし、抜け出してギリギリのところでとどまり、トロイが指示を出す前にすぐにキノガッサは技を撃とうとしていた。

「『波動弾』!!」

 だが、それでも、ルンバッパのスピードには対応できなかった。

「……嘘……だろ?」

 瞬時のうちにキノガッサの後ろに回り、両手を冷気でまとい、指を絡めて振り下ろした。
 ドゴゴンッと音を立てて、キノガッサは気絶をした。
 キノガッサは気絶したと言うが、キノガッサは地面の遙か地面の下に埋もれてしまっていために確認することは容易ではないが。

「ルンバッパ〜もどれ〜」

「一体お前は何なんだ……?」

「名乗ったはずだけどなぁ〜。俺の前はモトキ〜世界一のギタ〜リストさ〜」
 
 いや、世界一なんて絶対言ってない。(汗)

「あれ?そ〜だっけ?」

 てか、書き手に話しかけるな!!

「そして〜俺はヒロトの”影人”である君を〜捕まえに来たのさ〜」

 そして、いきなり地に戻るなッ!!
 僕が馬鹿みたいじゃないか!!(汗)

「”影人”?何それ?俺の名前はトロイ……2年前、記憶喪失でザンクスにここに連れてこられただけだ」

「”影人”は〜一つだったときの記憶はないのさ〜。だから〜それ以前の記憶がないこと事態が〜影人である証拠なのさ〜」

「わかんない」

「そして〜影人とは〜死の淵に陥った人物が生き返ったときに生まれるドッペルゲンガ〜?クロ〜ン人間?……よ〜するにそっくりさんなのさ〜。だから〜君はヒロトの影人なのさ〜」

「……俺が影人……?そんなの……そんなの知るか!!俺は俺だ!!ヒロトとか言うやつではない!そして、俺は誰にも負けない!!もちろんお前にもだ!!ニーレ!!」

 トロイがキレて繰り出したのはニーレことラプラス。

「『ハイドロポンプ』!!」

 雨乞いであることも考慮して、水系最強の技を繰り出した。

「『目覚めるパワ〜』」

 バシュンッ!

「……まさか……」

 目覚めるパワー一発で、最大の技のハイドロポンプが相殺されてしまう。

「それなら、『絶対零度』!!」

「ナッシ〜『にほんばれ』!!」

 ラプラスの絶対零度をもろともせず、雨を強制終了させて赤紫の空から太陽を照らしさせる。

「『黙想』……『アイススプレット』!!」

 技の威力を溜めてから、無数の氷の柱を繰り出すラプラス。

「『ヒートブラスト』〜(から)『火龍灰燼(ひりゅ〜かいじん)』」

 冷気に対して、ナッシーは光合成で集めた極太のレーザーのような業火を放った。
 しかもただ放っただけではない。
 サイコキネシスを応用して、まるで龍の如くレーザをクネクネと生き物の様に捻じ曲げて、ラプラスのアイススプレットをいとも簡単に氷から水へ……水から気体へと蒸発させてしまった。
 さらに、威力は衰えることを知らず、ラプラスを飲み込んで、一撃で体力を奪い去ってしまった。

「……くっそぉ!!イファズ!!」

 咆哮と共に現れるのはリザードンだ。
 
「にほんばれの今なら、こいつの力は上がる!!最初から飛ばしていくぞ!!『ファイヤーレイズ』!!『フレイムメイル』!!」

 尻尾の炎を最大にし、身体を炎で武装する。

「『火炎放射』!!」

 ズドンッ!!

 モトキとナッシーに向かって不意打ちとも言える一撃が決まった。
 火炎放射の過ぎて行った軌道が、地面を抉れ残り、その威力の印をはっきりと残している。

「ふ〜危なかった〜」

「後ろッ!?」

 トロイの声に合わせてリザードンが炎の爪を振るう。
 だがしかし、ナッシーは踊るように攻撃をかわしていく。

 いや、この場合、ルンバッパ同様ナッシー”も”というべき?

「…………」

 モトキは黙って、突然ナッシーを戻した。

「あ〜き〜た〜。そろそろ降参しないか〜い?」

「……な!?」

 モトキの突然の発言に、トロイは怒る。

「なんだって言うんだ!?」

「だって〜俺〜まだ2割程度しか実力を出してないよ〜?」

「……!?」

「それに〜最初の3匹に勝てないようじゃ〜残りの3匹には絶対勝てないよ〜?それでもやる?」

「ふ……ふざけるな!!イファズ!!『ファイヤーレイズ・MAX』……『火炎放射』!!!!」

 トロイのリザードンが繰り出したのは超最大級の火球だった。
 ユウナのウインディのスパイラルショットより遙かに強力で、ミナノのブースターの『炎吸』からの『ブラスト』さえも凌ぐ温度と威力を秘めていた。
 例え、『光の壁』を張ろうとも、壁自体が温度で解けてしまうだろうし、『守る』を繰り出そうと、その温度や威力によって確実に攻撃を受けてしまうだろう。

 だが、モトキはまったく避ける気はなかった。ただ、一匹のポケモンを繰り出して、技を命じただけだった。

「『ファイヤ〜ボ〜ル』」

 まったく信じられない話だった。
 強化も何もしていないはずのこの攻撃で、しかもたった一撃で、火炎放射を飲み込んで、リザードンを炎攻撃でノックアウトさせてしまった。

「……ウインディ……だと……!?」

 モトキの傍らには賢い犬のようにおとなしいウインディがいた。

「最後は〜ライチュウだったよな〜?わり〜けど〜2つの技で終わりにするぜぃ〜?」

 モトキはウインディを戻しながら、ノリノリで言った。

「……そんなことになるかっ!!ノイッ!!『マルチ10万ボルト』!!」

 充電……そして、ユウナのスパイラルショットで防げなかった10本の電流がモトキへと襲い掛かる。

「避けられないこともないけど〜」

 といいつつ、モトキはポケモンを繰り出した。
 そして、その10万ボルトの電流一本一本をそれぞれたった一本の針で止めてしまう。

「(なっ!?『ミサイル針』で!?)」

「一瞬だぜぃ〜♪『ライトニングスパート』!!」

 トロイの目には何かが光ったぐらいしか確認できなかった。
 そして、ふと後ろを振り向くと、その正体を見ることが出来た。
 しかし、意識があったのはそれまでだった。

「こいつが俺のあいぼ〜(相棒)のサンダ〜スさ」

 トロイはモトキの言葉を聞かずして、ライチュウと共に倒れた。
 瞬く間もない刹那の出来事だった。

「よ〜し。任務かんりょ〜だな〜。……でぇ〜もう出てきたら?」

「…………」

 そして、彼女……ユウナは物陰から出てきてモトキに尋ねる。

「”影人”ってなんなの?もしかして、ヒロトがアマネお婆さんの力を借りて、自分の命と引き換えにヒカリに再び命を吹き込もうとしたことと関係があるの?」

「関係があるも何も〜それが一番のよ〜いん(要因)だね〜」

「いったい、どうしてそんな影人なんて生まれるの?」

「う〜ん……♪なんでだろ〜?なんでだろ〜?何でって何でだろ〜?」

 オイ。真面目に答えろや。ユウナが怒るぜ?

「作者も真面目にナレーションしたらどう?(汗)」

「人の心が生み出す闇……かなぁ〜」

「心の闇……」

「基本的に心に闇を持たない人なんて滅多にいないからね〜。影人はそれが具現化した存在なんじゃないかと俺は思うよ〜?」

「…………」

「もっとも〜影人が生まれるのは極稀な確率なんだけどね〜。俺だって〜影人に会ったのはコレが初めてだし〜」

「もう一つ聞いていい?」

「な〜に?」

「あなたはどこから来たの?」

「真面目に答えなきゃ駄目?」

「……」

 ユウナはモトキを睨む。

「言うけど理解できるかなぁ〜?」

 とモトキは頭を掻く。

「俺は〜君の住む”アワ”やアクアがいる”ティブス”世界の住人ではないんだ。それ以前に〜”アワ”や”ティブス”がある〜この次元”アジェンリミト”の世界の住人ではないんだ〜」

「”次元”……”世界”?」

「つまり〜”次元”という枠の中に”世界”が幾つも存在しているのさ〜。その世界の名前と言うのが”アワ”と”ティブス”。次元の名前というのが”アジェンリミト”要するに……」

「宇宙で例えるなら、次元が太陽系で、世界が惑星というわけね」

「せ〜かい」

 ジャジャンッとギターを掻き鳴らすモトキ。

「……他の”次元”にもいくつかの”世界”があるというわけね……」

「ま〜その次元間を通して俺は〜困った人を助けていく〜みたいな〜そんなノリで任務をしているんだよ〜」

「……あなたはこのトロイを捕まえるのが任務だったんでしょ?それからはどうするの?」

「♪この世界の行く末が気になるなぁ〜。俺はそれを見てから去ることにするよ〜」

「ふーん……」

「あれっ?」

 ユウナはモトキを一瞥してナミネの水晶壁に手を当てていた。

「ど〜して〜「あなたも戦ってくれない!?」とか「力を貸してモトキさん〜♪」って頼まないの!?」

「……声色使わないでよ。気色悪いわ」

 ズバッといわれて、グサッと傷つくモトキ。

「これは私たちの問題よ。それに私はあなたのことを信用していないし……第一、私が頼んだからといって、あなたが力を貸すのかしら?」

「……う〜ん〜鋭いねぇ〜。俺は力を貸す気はないよ〜? この問題は君達で解決する問題だと思うし〜」

 「だけど」とモトキは続ける。

「”アジェンリミト”の神と互角に戦った”禁忌”という存在は〜しょ〜じき、今の君達でレベルでは勝てないと思うなぁ〜。そして〜エグザイルのメンバ〜の『ザンクス』、『アウト』、『TSUYOSHI』もね」

「…………」

 モトキはトロイを縛り終えて、肩に背負った。

「とりあえず〜バトルは手を出さないけど〜水晶壁の解放なら手伝ってあげてもいいよ〜♪」

 にっこりとモトキはそう言うのだった。










 107:”TSUYOSHI”が”ツヨシ”とカタカナでなくローマ字である理由


 ―――ラハブの新境地。塔の中層エリア……エグザイルの憩いの場所。

 外から見ると、塔の隙間から、爆発の煙やエネルギーの光がほとばしる。
 それは、凄まじい大激突を表していた。

「レイン!『アイススプレット』!!」

「ベロベルト、『パワーウィップ』!!」

 ガガガガガッ!!

 ズバンッ!!

 氷の柱を受け止めながら、ベロベルトがラプラスを長い舌でなぎ払って倒してしまう。
 しかし、TSUYOSHIの思った以上に、氷の柱のダメージが大きく、ラプラスが倒れるのを見て、ベロベルトは気絶した。

「(互角……か?)」

「なかなかやりますね」

 最初、ディン(フーディン)とウツボットの最初の一撃で両者共に相打ちでダウン。
 そして、ラプラスとベロベルトの戦いとなったわけだが、戦いは今のところヒロトの見立てとおり五分五分と見て間違いなかった。

「(次はリードする!)フシギバナ!」

「面白くなってきたな、キングラー!」

「『葉っぱカッター』!!」

 カキンカキン……ハサミで意図も簡単に弾く。

「『エナジーボール』!!」

「『メタルクロー』」

 ドズンッ!!……と音を立てて爆発するが、キングラー自体は無傷だ。

「『体当たり』!!」

「『クラブハンマー』」

 ドカンッ!!……とぶつかるが、ハサミで受け止めて、少し衝撃で後ろへズザザッと下がる程度だった。
 そしてキングラーは大きなハサミを振り回して、接近してきたフシギバナを打っ飛ばした。

「今だ!『ソーラービーム』!!」

 だがm打っ飛ばされながらも溜めていた光のエネルギーをキングラーに向かって放つ。
 直撃だった。
 だが、TSUYOSHIは言う。

「……なんだ……こんなもんか」

「…………」

 ソーラービームを直撃したはずのキングラーは無傷だった。

「隙なんて与えないぜ!『ウィップストーム』!!」

「!!」

 しかし、ヒロトはキングラーの防御の秘密を見抜いていた。

「(『守る』が気付かれたのか?)『破壊光線』!!」

 ヒロトの指示より遅れて、TSUYOSHIが指示を出す。
 両方のハサミから破壊光線を繰り出そうとするが、大量のムチの中の数本がキングラーのハサミを捉えて、ハサミをキングラー自身に向けた。
 キングラーは破壊光線を止められず、そのまま自らの攻撃を受けてしまった。
 さらに、たくさんのムチを一斉に受けてダウンした。

「ハサミが頑丈なら、それを封じて攻撃すればいいだけだ」

「……面白い」

 キングラーを戻してTSUYOSHIが言う。

「久々に俺の本気を出す時が来たようだな」

「!!」

 TSUYOSHIの雰囲気が変わった。
 今までのイメージは、ただノッポでのんびりとしたイメージだったのだが、今度はその身長の大きさから威圧感みたいなものを放っていた。

「(ここからがあいつの本気か……!!)」

 TSUYOSHIはガラガラを繰り出してくる。

「俺の名前はTSUYOSHI……知っているよな?」

「それなら聞いた」

「じゃあ、俺の名前が何故ローマ字であるか知っているか?」

「……知らない……『葉っぱカッター』!!」

 ガラガラが接近してくる前に、先制攻撃を仕掛ける。
 しかし、ガラガラは手持ちの骨で葉っぱカッターを粉砕する。

「『つるのムチ:居合い』!!」

 一本にだけ集中して、つるのムチを伸ばす。
 いあいぎりの威力とつるのムチのリーチを生かしたこの技は、一撃にかけては相当自信のある技だった。

「接近、『ボーンクラッシュ』!!」

 手持ちの骨でつるのムチを押しのけながら、接近して飛び上がり、一撃を振り下ろした。

「今だ!」

 ドズンッ!!

 ブワッ!

 ガラガラの一撃がフロアを砕く。そして、地面に穴が空いて、螺旋階段が丸見えになった。
 しかし、肝心のフシギバナは当たる瞬間に消えた。

 シュッ!

 そして、ガラガラの後ろから姿を現し……

 ズドンッ!

 ガラガラに捨て身タックルをぶちかました。

「よし、完全に決まった。特訓の成果が出たな」

 この技はトキワシティでユウナが話しかける前に練習していた技らしい。
 影分身の応用で、分身を攻撃してきたところを、後ろから強力な打撃技で倒すらしい。

 だが……

「油断できないな」

「!!」

 しかし、ガラガラはとっさにフシギバナの攻撃が当たる際、衝撃を和らげるようにフシギバナが向かうベクトルと同じ方向へ飛び、さらに骨でとっさに防御していたのだった。
 ゆえにダメージはそれほど大きなものを望めなかったようだ。

「さて、ここからが本番だ。ガラガラ、行くぞ」

 ガラガラは頷く。
 すると、ガラガラの力がどんどん高まっていった。

「(なんだ!?これは!?)」

 ヒロトもガラガラの発する威圧感をヒシヒシと感じて警戒した。

「『オーラフラット』発動」

 ガラガラの骨に何かが纏っていた。
 しかし、それは炎でもなければ氷でもない……属性としてカウントされるものではなかった。

「(接近させる前に……)『眠り粉』!!」

「小細工は通用しない!」

 骨を振るうと、眠り粉が一気に拡散した。

「いや、これはただのフェイントだ」

 すると、フシギバナのハナの光が最大になった。

「ガラガラ、『ボーンクラッシュ』!!」

「上だ!『ソーラービーム』!!」

 ガラガラは飛び上がり、フシギバナに向かって骨を振り下ろそうとする。
 一方、上空に跳ぶガラガラを狙い撃ちをするフシギバナ。

 威力から言って、ソーラービームのほうが上だった。
 だが……それはガラガラが『オーラフラット』を発動させる前の話だった。

 ボゴンッ!!

 ソーラービームを何かを纏った骨が打った斬り、そのまま衝撃を巻き起こした。

「あぶねっ!!」

 ヒロトは慌ててフシギバナを戻したために、攻撃をかわすことができたようだ。

「俺の名前がローマ字である理由を教えてやろう」

「……(こいつの力の理由と関係あるのか?)」

 ゴクリとヒロトはツバを飲み込む。

「それは……カッコイイからだ」

「…………は?」

 ヒロトは呆然とした表情を見せる。

「表記はこっちの方がカッコイイだろ」

「呼べば同じだろ!」

 どうでもいい話にツッコミを入れるヒロトだった。










 ―――ラハブの新境地の中心エリア。

 最大の一撃が吹き荒れていた。
 その中で立っていたのは、ダーテングのみ。
 ストライクは地面へと伏していた。

「てめぇの残りポケモンはあと一匹だな!」

「違うな。私の残りはまだ2匹いる」

 軽くボールを放ると、中からハッサムが出てきた。
 だけど、ラグナのレントラーの戦いで体が麻痺しているようだった。

「しかし、この麻痺は問題じゃない。ハッサム、『リフレッシュ』」

 自然にハッサムは麻痺を治してしまう。

「つまり、君と私……最後の2匹同士の戦いというわけさ」

「そうか……」

 バキンッ!!

 ダーテングとハッサムが接近戦で打ち合う。

「『裂水』!!」

「『シザークロス』!!」

「『リーフスラッシュ』!!」

「『スタンブレード』!!」

「下がれ!!」

「『エアスラッシュ』!!」

 強烈な一撃、回避しての一撃、退避し、右へと跳ぶ……。

 アウトの技の応酬にラグナとダーテングはどんどん追い詰められていく。

「(基本的な技の威力が互角じゃ、やっぱ『裂水』で押し切るしかねぇ。だが、当たらないことには意味がねぇ。どうやって当てるかが問題だ)」

 攻撃を受けながらラグナは必死に考える。
 その攻撃でどんどん地面はボコボコになっていく。
 ずっと今までのアウトとのバトルで、地面はエアスラッシュで削られたり、水系の技でドロドロになったりしてた。
 その度に、ラグナは足場のいい場所を選んでアウトの攻撃を避けていた。

 ラグナは唇を噛み締める。

「(一か八かだが、悪路で戦ってアレを狙うしかねぇ)ダーテング!!」

「どうやら、足場の悪い場所で戦って、私たちの隙を狙おうというのか……作戦としてはいいがハッサムは飛べる。不利になったのは君だと思うが?」

「うるせぇ!『裂水』!!」

 飛んでいる(というより少し浮いている)ハッサムを狙い、強烈な斬撃を放つダーテング。

「そのくぼみの中に落としてやるよ。『ロストセフィティ』!!」

 ダーテングの懇親の一撃をかわすと、ハサミ攻撃の応酬を仕掛ける。
 手の葉っぱで受け止めようとしているが、ハッサムのスピードとパワーに押されて行く。

「やれ!」

 一撃を振り下ろすと、ダーテングは窪みにずるずると落ちていった。
 同時に、止めを誘うとハッサムは窪みの中へと飛び込む。

「止めだ。『サイレントブレード』」

 だが、ラグナはにやりと笑った。

「ここまで接近すれば、避けらんねぇだろ!?」

「な!?まさか……悪路で戦っていたのは、ハッサムの隙を狙うためじゃなく、ダーテングがワザと隙を見せて、接近させるための布石……!?」

「てめぇは引っかかったんだよ!!ダーテング!『裂水』!!」

 ダーテングはずるずると背中から大きな窪みに落ちていくが、その体勢からハッサムがハサミを振るう前に強力な斬撃を放った。
 その一撃はまっすぐ伸びて、塔にさえも達して傷を残したという。










 to be continued










 キャラデータ


 モトキ(18歳)……自称世界一の『ギターリスト』と名乗る青年。ハナの兄。
           間延びした口調で話し、いつもギターを背中に、もしくは片手に欠かさず持ち歩く。
           どんな相手にもペースを譲らず、マイペースを貫くのだが、ユウコと出会って少しは変わった……のかなぁ?
           モトキにはハナ以外にも姉弟がいるらしい。
           トレーナーとしても実力があるが、キャプチャの力も備えている。
           ペラップのトランとは漫才コンビを組んでいるんじゃないかと思うほどノリである。
           ちなみに1番強いポケモンはサンダースではないらしい。

 手持ち……サンダース(♂) ルンバッパ(♂) ナッシー(♀) ポワルン(♀) ウィンディ(♂) ???



 トロイ(16歳)……2年前にふと出現したヒロトの”影人”。ゆえに、年齢は2年前の16歳で止まっている。
           手持ちポケモンも2年前のヒロトと同じで能力も技も同じものを使う。
           しかし、独自に鍛えていたり、彼の特殊能力によりポケモンの基礎的力が増大しているため、恐らくヒロトが彼と戦って勝てる可能性は低いと思われる。
           時空を彷徨っていたところをアウトが見つけて仲間に引き込んだらしい。
           声もヒロトとまったく同じである。

 手持ち……ノイ/ピカチュウ(♂) ユザム/キノガッサ(♂) イファズ/リザードン(♂)
      ニーレ/ラプラス(♂) フォチアル/フライゴン(♂) ニーデ/フーディン(♂)





 オリジナル技


 モトキ
 『ヒートブラスト』……ルンバッパが使用。光合成を利用した炎系の技。一直線のビームで相手にダメージを与える。
 『火龍灰燼(ひりゅうかいじん)』……『ヒートブラスト』からの派生技。サイコキネシスで龍の如く動かす。
 『ファイヤーボール』……ウインディの技。火球を放つ。
 『ライトニングスパート』……サンダースの技。光の領域にも達する光速の電気突進系技。しかし、一直線にしか進めない。

 トロイ
 ※トロイの技は全てヒロトがWWSのときに使った技なので省略。





 アトガキ

 今回はモトキメインの話でした。
 と言うか、モトキのバトルは実際の3分の1か4分の1くらいで、圧勝と言う形でさっさと終わらせるつもりだったのに、だいぶ容量を使って、半分以上を占めてしまいました。失敗です(汗)
 原因はモトキのポケモンの活躍をペラップとポワルンだけで終わらせるつもりだったのが、他のポケモンも書いたためですね。
 でも、2匹だけと言うのもつまらなかったので(苦笑)

 ちなみにこの話でトランがモトキについていないのはミスじゃないです。
 けっして、私がトランのことを忘れていたからじゃありませんよ!!(何)

 次回は……エグザイルがついに本気に!?

 

[一言感想]

 つまり影人とは、その人間の心の抑圧された内面が具現化した姿『シャドウ』なのですね。
 倒して受け入れれば、人格の鎧『ペルソナ』という力を得るのですね(違)。

 ちなみにトロイは最初、トロヒだったんじゃないかと。
 でも発音が悪いので、諦めてヒをイにしたのかと(ぇ)。

 モトキは圧倒的でしたね。
 でもある意味ユウナは、彼の上を行くのかも知れません……言動的に。

 次元と世界の話は、他のポケモン小説でも関わることがあるそうです(何)。

 

戻る