この話は私の母方の祖父が教えてくれたお話だ。
 昔にあったと言われる話で、御伽話みたいな話だけど聞くか……?

 

 

 

交錯する道たち(前編)

 

 

 

「ヘクチッ!!」

 グスッと鼻を鳴らす可愛い女の子が一人いた。
 その女の子の名前はアンリ。
 緑色で長めのマフラーを首に3回くらい巻いているのが特徴だ。
 それ以外は黒のミニスカートにクリーム色で長袖のカーディガンをきっちりとは着用しているなど、ぴっちりした性格をしていそうな女の子だ。
 彼女は別段可愛いというわけではないが、引きつける魅力というものがある。

 ……が、その魅力は、今は説明せずに置いておこう。

「うぅ……なんか悪寒がする……」

 長いマフラーと一口で説明したが、どのくらい長いというと、3回首に巻きながらも、地面にすれすれの長さなのである。
 彼女の身長が150センチくらいと少し小さい子だからという理由もあるだろうけど。

 そして、寒いと思い、アンリはマフラーをもう2度巻く。

「……え?」

 マフラーを巻く際に後ろを向いた時に、ふと彼女の目に映ったものがあった。
 そして、もう一度アンリはその目に映った”もの”を見た。
 ”それ”は彼女を食入るように見て、決して目を離さなかった。
 あまりにもびっくりして、アンリは”手摺り”に飛びついて、しがみ付く。

「あんた、まだいたの!?」

「わりぃか!?」

 座りながら爪先立ち(一昔前のコンビニいる不良みたいな感じ)の男はやっぱり、アンリをじろじろ見ていた。
 メガネをかけた白髪で帽子を被った180センチほどの男。
 決してイケメンとは言わず、メガネと帽子を取ったら野獣に見えるだろう。

 ……とアンリは思っていた。

「コール!!いつまであたしに付きまとう気!?」

「ちげーよ!!別に俺はお前をストーカーしているわけじゃないぜ?ただ、俺が行きたい場所にお前がいるだけだ!」

「そんな嘘っぽい理由であたしが納得すると思うの!?」

「思う」

 ピキッ!

 バキッ!!

 キレたと思うと、アンリの右ストレートがコールという男の頬を打った。
 メガネが飛び、コールはゴロンゴロンと転がっていった。

「いてぇなっ!!女がグーで殴るかよ!?」

「たまには殴るわよ!」





 アンリとコール。
 別に一緒に旅をしているわけではない。

 2人が出会ったのはとある街のポケモンバトル大会でのことだった。
 トレーナーである2人はもちろんその大会に出場した。
 そして、決勝戦で合い見えることになった。

 戦いは熾烈を極め、最終的にはアンリが僅差でコールに勝った。
 それからというものの、コールはアンリを打ち負かそうと、何度も何度も挑戦してくるようになったのである。
 そう。やっぱりストーカーだ(ぁ)





 そして、2人は船で海を移動中だった。
 すっかり、アンリはしがみ付いた手摺りから離れている。
 しかし、コールの方は違った。

「うげぇ……」

 現在、船酔いをして地面に張り付いていた。

「何?あんた、船に弱いの?」

「お前が殴って吹っ飛ばさなければこんなことにはならなかったんだよ!」

 涙目でコールは呟く。
 そんな様子を見てアンリはため息をつく。

「何でもかんでもあたしのせいにしないでよね」

「うるせー!第一、俺はお前と勝負するまでついていくぞ!!」

「やっぱり、さっきのは嘘だったんじゃない!嘘はいけないのよ!」

「黙れ!バトルを……うぷっ……」

 慌ててコールはゴキブリのようにかさかさと動いて、顔を海に向けた。

「(とりあえず、島に着くまではコールとバトルはしなくて済みそうね)」

 コールと反対方向の海を見て、アンリは気付いた。

「島が見えたわね」

 その島は双子の島と近辺の者達から言われていた。
 そして、アンリとコールが向かう島の名のひとつは……月島と呼ばれていた。















 ポツッ ポツッ

 天然の鍾乳洞の洞窟。
 ポケモンが一匹もいないこの洞窟は地元の人でも近づこうとはしなかった。

 だが、この場所を歩く人影が2つ存在していた。

 一つの影はヒラヒラな服を着た女の子。
 もう一人も何かヒラヒラとしているが、身長はもう一方に比べるとやや高くがっしりしていた。

「ねえ……一体こんなところに案内させてどういうつもりなの?」

 ヒラヒラな服を着た女の子が後ろを向いて尋ねる。
 大人のような印象ものぞかせるが、少し子供っぽさが残る彼女は二十歳にはなっていないだろう。

「カズハ君。この場所にはとてつもないものが眠っているのだよ」

 後ろを歩くのはやはり声質から男の声だった。
 声は青年期を過ぎた男の声なのだが、男はまだ二十歳をやっとすぎたくらいの年齢だった。
 今歩いている少女……カズハとは3歳くらいはなれている。

「それなら私も聞いた事があります」

「うん。カズハ君が言うなら、やっぱり、私の魔術占いは間違ってはいなかったようだな」

「魔術占い……?」

「単純に魔力を使った占いだ。私はこう見えても魔導師でね、多少なり魔法が使えるのだよ」

「ルイさん。魔法なんて、本当にあるものなのですか……?」

 少し歩く足を緩めてカズハは男……ルイの横に並ぶ。

「超能力は知っている?」

「ええ」

「超能力は誰にでも備わっている。しかし、あるキッカケがないと目覚めることはない。まぁ、目覚めない人のほうがほとんどなのだろうけど」

「ですね」

「しかし、魔法は違う。あるときは儀式で継承され、あるときは親の魔力を受け継ぐ。それからたゆまぬ鍛錬で身につけていくもの。なかなか簡単に使えるものではない」

「便利なのですか?」

「まぁ、使いこなせればね。……しかし、魔導師や魔女の日当たりはあまり良くない。とある国では魔法使いは悪魔の使いとして駆逐された。魔女狩りなど、つい最近まであったことさ」

「……魔女狩りだなんて……」

「…………。魔法使いの中には、確かに魔法を悪用していた者のほうが多かったからあまり文句は言えないけどね。ところで……」

 ルイはう〜んと、まじまじとカズハを見ながら言った。

「その服装は……君の趣味なの?……メイド服」

「え?……これはメイド服じゃないですよ?」

 さらりと彼女は一回りしてみせる。

「白と黒のドレスです」

「(……もしくはゴスロリの服に見えるのだが……)」

 黒髪で頭のてっぺんで髪をまとめているカズハの姿を見て、ふとルイはそう思っていた。

「そんなこといったら、ルイさんもその服はなんですか?」

「私の服はちゃんとした法衣だよ。魔力が宿った退魔の法衣」

 ゴホンッとルイは咳払いをする。

「とりあえず、私の魔術占いでは、この地に”強大な光と闇の存在”が眠っていると聞く。私はその存在と戦わなければならない運命にある」

「でも、そのような存在……月島の伝書にしか残っていませんでした。だから迷信だと思っていました」

「……迷信……ならばいいのだけどな」

 彼らが歩いていたのは鍾乳洞の洞窟だが、それは月島の地下にある洞窟だった。
 危険であるため月島の住民でもあまり近づこうとはしない場所だ。

「ルイさん……。やっぱりやめましょう!これ以上進んでは危険だと思いますよ!?」

 しかし、指を振ってルイはちっちっと鳴らす。

「危険を怖がっていては、前に進むことなんて出来ないではないか」

 ズンズンと進もうとするが……

 ボコッ!!

「なっ!?」

 ヒュ――――――――――――――――――――――――…………

「えっ!?ルイさん!?」

 足元が抜けてルイは落ちていった。
 慌ててカズハはルイの落ちた穴を追っていった。

 …………――――――――――――――――――――――スタッ

 と、何事もなかったかのようにルイは着地に成功した。

「ふう……『エア』の魔法の応用が出来てよかった」

 メキッ!!

 しかし、悲劇はルイを襲った。

「ぐわっ!」

「キャッ―――!!ルイさん!?」

 ルイが着地した場所へ見事にトロピウスに乗ったカズハが着地したのであった。

「大丈夫ですか!?」

「……あんまり大丈夫…じゃない(汗)」

「ごめんなさい……」

「……っつつ……それよりここは……?」

 彼らが出たその場所は、まるで地下とは思えない広い空洞だった。
 そこに、ポツンと何かの棺が置かれていた。

「……これか?」

「”強大な光と闇の存在”……まさかコレがですか……? ……って、ルイさん!?」

 カズハが半信半疑で棺を見ていると、ルイがべたべたと棺に触り始めたのである。

「この中に目的のものが……。しかし、棺を暴くわけには行かないな」

 バキッ!!

「っ!?」

 頭を叩いたのはカズハだった。
 やや涙目で彼女は訴える。

「下手に触って、その”強大な光と闇の存在”とやらが目覚めたらどうするんですか!!」

「目覚めたら目覚めたで好都合だ。私が滅ぼす」

「戦う気満々なのね……」

「そのために来たのだからな」

 呆れてカズハが棺に触れたそのときだった。

”この波動……忌々しき『クレハ』か!?”

「「!?」」

 突然聞こえた謎の声。
 しかし、ルイにはわかっていた。

「棺だ!カズハ君。離れろ!」

 ざっと飛び退くと、棺から何かが飛び出してきた。

「あれは!?」

「白と黒の……光……?」

 二つが混ざり合ったような光だった。

「どうやらこれが”強大な光と闇の存在”か……」

”『強大な光と闇の存在』とは……随分曖昧な名前だ。だが、私に名前などない。好きに呼ぶがいい。それよりいつ以来だろうか?この地に蘇ったのは……”

「蘇ったのはいいが、ここで滅びてもらう!!」

 ルイが懐から水晶玉とモンスターの入ったボールを取り出した。

 なお、この時代にはモンスターボールというものはまだ存在してないために、モンスターの入ったボールと記述することにします(何)

”ヒヨッコが”

 白い光から細いエネルギー体が放たれる。
 ルイは慌ててかわすが、次のエネルギー体が次々と放たれる。
 ルイはかわすので精一杯だった。

「くっ!攻撃が出来ない」

”焼けろッ!!燃え尽きろ!!”

 ポケモンを出そうとするが、出した瞬間に攻撃を受けてしまうことを考慮して、ルイは出せなかった。

 しかしながら、その謎の光に攻撃を加えた存在があった。

 ズバッ!ズバッ!

”むっ!?”

「トロピウス……今度は『ソーラービーム』!!」

 葉っぱカッターで牽制し、続いてビームを撃った。
 謎の光は草系エネルギーを相殺させるために今度は黒い光を放った。
 徐々にソーラービームを押し返していく。

「強い!?」

 何とか攻撃をかわしたそのとき……

「今だ!」

 ルイのムウマージがシャドーボールを打ち出す。

”くっ!!”

 ソーラービームの相殺に気が散っていた謎の光はシャドーボールの攻撃を受けた。

「よし………………」

 ぶつぶつとなにやら詠唱を始めるルイ。

「『エアスラッシュ』よ!!」

 連続で攻撃を加え続けるトロピウス&カズハ。
 空気の刃で光を裂こうとするが、威力が足りないのか、その謎の光に当たって消滅する。

「…………よし、詠唱完了!”1つの万物を分かちたまえ!『Xカリバー』”!!」

 ルイが詠唱を終えたとき、水晶玉から瞬きもしない一瞬で斬撃が飛んでいった。

”ぐっわっ!?”

 スパンっと気持ちいように謎の光は真っ二つに切れた。

”バカな!?私を二つに分断するなんて……忌々しき月の踊り子『クレハ』にも出来なかったことなのに……貴様、何者だ!?”

 謎の光は黒と白の2つに完全に分かれた。

「私は名も無き魔導師さ」

 メガネを左手でクイッと直してその分断した光たちを見る。

「”クレハ”って……確か私のご先祖様の名前……?」

 カズハがそう呟く。

”……何!?そうか……そういうことだったのか……それなら、貴様を倒すことで私は恨みを果たすとしよう”

 黒い光と白い光がルイとカズハに襲い掛かる。
 しかし、体当たりの要領で突っ込んだが、黒い光はルイに当たって吹っ飛ばされ、白い光もトロピウスに当たって跳ね返された。

”何故だ!?”

「そんな”こと”、私には出来ない」

 ルイは水晶玉を構えつつ、そう言い放った。

”くそっ!!それなら……”

「!!」

「あっ!?」

 白い光と黒い光はルイたちが落ちてきた穴から脱出してしまった。

「まずい!カズハ君。急いで上に行こう!」

「ええ!!」

 トロピウスに乗って、2つの光を追いかけていったのだった。










「……ところで、どこまでついてくる気なの!?」

「お前がバトルをするまでどこまでもついて行くぞ!!」

 月島の集落の外れに今はいる最初のアンリ&コール。
 コールはモンスターの入ったボールを持って殺気立ちながらアンリを追いかけていた。

「あたしはあんたと戦う気は無いわ」

「問答無用!!」

 コールが繰り出したのはシザリガーだ。

「さぁ……お前も出せ!」

「やだよ」

「出せっつーの!!」

「や…だ……?」

「……?どこを見ているんだ?」

 ふと、空を見ていたアンリの視線を追うようにコールも空を見る。
 二つの光が飛び交っていた。

「なんだあれ?」

「あたしがわかるわけないじゃない」

 そのとき、謎の声が2人に届いた。

”ほう……いい身体があるではないか”

「なっ!?」

 コールとアンリに襲い掛かる光……
 ピカッと光った瞬間、2人の意識は遠のいた。

「どこへ行った!?」

「あの2人は?」

 そこへ到着するルイとカズハ。

『『大文字』』

『『冷凍ハンマー』』

「「!!」」

 トロピウスに襲い掛かるシザリガーとアンリが繰り出したヤルキモノ。
 攻撃をかわそうとしたトロピウスだったが、どっちの攻撃も受けて迎撃されてしまった。

「まさか……」

「あの2人は……」

『気付いたか……?』

 謎の声が響く。

『私がこの2人を乗っ取った。この2人で貴様らを叩き潰してやろう!!』





 つづく

 

[一言感想]

 乗っ取りは常套手段なのでしょうか。
 全く別のところにいた2人組同士が、思わぬ接触を果たしました。
 ちなみに、聞き覚えのある名称が多数出てきたのは気のせい? 狙い?(ぇ)

 

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