自分は人と違う道を歩いていく。

 なぜなら、自分は他人とは違う。

 しかし、道は違えども交わることがある。

 歩いてきた道やこれから歩く道は違えども、この交わった時間は限りなく貴重な時間。

 貴重でかけがえのない時間。

 またいつか……道が交わる時がやってくるだろうか?

 

 

 

交錯する道たち(後編)

 

 

 

 2人の目の前にいるのは、帽子とメガネの男と長いマフラーの女の子。
 一見普通のトレーナーに見えるが、2人の醸し出す雰囲気にルイとカズハは息を呑んだ。

 そのトレーナーというのは、さっき着いた船に乗っていたコールとアンリだった。

「ねぇ……まさかあの光……」

 カズハがルイの裾を引っ張る。

「ああ……間違いない。さっきの白と黒の光……あの2人に憑依している」

 男の方からは白い光、女の方からは黒い光が滲み出ていた。

『この身体なら貴様らを叩き潰すことは容易い!ポケモンも持っているようだしな!さぁ、やれ!』

「来る!」

 ヤルキモノがジグザグに動いて接近し、シザリガーは飛び上がってルイに襲い掛かる。

「トロピウス!『守る』!」

 上からと横からの攻撃を身体で受け止めるトロピウス。
 しかし、いつまでも持つとは限らない。

 ズバッ!!

 接近してからのヤルキモノの切り裂くがトロピウスを吹っ飛ばす。

「(ダメ……トロピウスじゃ勝てない)」

 シザリガーが上からハサミを叩きつける攻撃が決まろうとしたそのとき、黒い突風が2匹を吹っ飛ばした。

「カズハ君、一旦間合いを取るよ!」

「ルイさん!?」

 ムウマージを戻しつつ、カズハの手を引いて逃げ出す。

『貴様ら……逃がすか!!追え!!』

 憑依されている2人の指示に従って、ヤルキモノとシザリガーは2人を追っていく。










「どうするの……?」

 走りながらカズハはルイに尋ねる。

「君はあの2匹のポケモンを同時に相手できるかい?」

「……わからない。この島の中では私は強い方だと思います。でも、あの2人の強さは私より同等か、それ以上だと思います。時間稼ぎにしかならないかも……」

「足止めさえしてくれればいいのです。その間に私が魔法で何とかします」

「魔法で?」

「ああ。あの二つの光を追い出さないことには始まらないからね」

「わかりました」

 カズハは後ろを振り向いてモンスターの入ったボールを放り投げた。

「『マッハパンチ』!!」

 飛び出したのはキノガッサ。
 高速の拳でシザリガーとヤルキモノに向かっていき、パンチを繰り出す。

 シザリガーにダメージを与えたのはよかったが、ヤルキモノは受け止めて、倍返しをやってきた。
 カウンターだ。

 吹っ飛ばされてキノガッサは怯むがカウンターのあとの大文字にすぐ反応して、何かのオーラで打ち消した。

『……今は……月舞踊か!?』

「『月舞踊:無姫』……全ての特殊攻撃を無効化するわ。そして……」

 キノガッサがその場で一回りすると、ズバッ!!と風が巻き起こり、ヤルキモノとシザリガーをダウンさせた。

「『月舞踊:朔凪』……その場に生じる風の斬撃で相手を切りつけます」

『ふっ、私がその月舞踊を知らないとでも思ったか?」

「え?」

 ズゴゴゴゴッ

 地面から地響きがなり、カズハはバランスを崩す。

 ズゴッ!!

「キャッ!!」

 カズハとキノガッサは地面から出てきたガルーラによって空に打ち上げられた。

『ほら、やっちまえ!』

 待機していたもう一匹……ルナトーンがサイコキネシスでキノガッサと叩きつける。

「キノガッサ……がぁっ!!」

 落ちてきたところ、操られたコールが待ち構えて、カズハの首を片手で締め上げる。

『月の踊り子……。あぁ、忌まわしき月の踊り子。あの『クレハ』のせいで私はあの狭く暗い棺の中に閉じ込められた。その恨みを忘れたことはない。今こそ、月の踊り子を根絶やしにしてやる!!』

「がはっぁ……」

 首を絞められてもがき苦しむカズハ。
 憑依されているコールの手の力は強く、次々と力を加わることでカズハを苦しませる。

『くたばれ!』

 しかし、次のときだった。
 手刀がコールの腹を抉り、吹っ飛ばした。
 そして、カズハは地面に落ちて、嘔吐する。

「待たせた。大丈夫か?」

「な、何とか……。もうちょっと遅かったらダメだったわ」

 ルイと傍らにいるチャーレムが今度は戦線に立つ。

「大丈夫だ。詠唱はもう完成した。一気に行くぞ!」

 そして、一息して最後の呪文を唱えるルイ。

「”全ての事象を囲いたれ……『ボックス=アラウンド』”!!」

 最初に詠唱したのは半径50メートルを包囲する結界。
 これで中にいるものを逃がさないようにする効果があるのだという。

『やれ!やっちまえ!』

 ガルーラとルナトーンが襲い掛かる。

「チャーレム、ムウマージ!」

 ポケモン同士のバトルは、相性の関係と実力の関係上を足し合わせて互角だった。
 殴り合い、砲撃しあい、結局は相打ちでポケモンたちは倒れた。

『クソ……役立たずが』

「”悪しき力を退けたれ……『アウカ=レイド』”!!」

 両手で水晶玉を押さえつけて、次の瞬間、水晶玉を上へと投げる。
 そして、両手を前へ出すと、不思議な光がコールとアンリを貫く。

『ぐわぁぁぁーーーー!!』

 悶え苦しむ二人。
 しかし、次の瞬間、白の光と黒の光はコールとアンリから飛び出していった。

 コールとアンリはそれぞれ地面にバタッと倒れた。

「これで……決める……」

 落ちてくる水晶玉をキャッチして、再び水晶玉に目を通す。

「”悪しき万物よ消えたれ……『アウカ=デストラクト』”!!」

 黒い光と白い光を包囲して、その包囲した中に向かって魔力がびしびしと謎の光を襲っていった。

「消え去れ!!」

 ボーンッ!!!!!

 包囲した結界も自らの破壊の魔力には耐え切れずに粉砕した。

「……終わった……か?」

「はぁ…はぁ……」

 カズハもルイも息が絶え絶えである。

”なんだ、この程度だったのか”

「「!?」」

 爆発から現れる2つの光。

”確かに多大なダメージは負った……しかし、私を消すには遠く及ばない!”

「そんな……」

「まさか……私の力でも……消せないなんて……」

 ルイはがっくりと地面に膝をつく。

”私を倒せるものなどいやしない!!……さて、もう一回この者たちに憑依を……”

 バキンッ!!

”!?”

 しかし、2つの光はアンリとコールを拒んだ。

”何故だ!?”

「さっきの『アウカ=レイド』という魔法には、退魔の遺伝子を刻み込む性質を持つ魔法だ。だから、その2人には乗り移ることは出来ない」

”ならば……”

「私に乗り移ろうとしても無駄だ。私にはこの退魔の包囲がある上に魔導師だからね。カズハ君も月の踊り子で耐性があるに違いない」

”…………。まあいい。貴様の魔力が切れるまで、この結果の中にいるとしよう”

「私がそれを許すと思うか!?」

 ルイは立ち上がって手を前に差し出す。

「ルイさん!?無理をしちゃ駄目!もう体力も魔力も残ってないんでしょ!?」

 カズハの目から見ても、ルイが限界なのがわかっていた。

「そうだ……けど、やるしかないんだ!」

 ルイは詠唱を始める…………そして…………

「『プリズムプリズン』!!」

 ルイは魔法を唱えた。
 しかし、魔力はまったく足りず、魔法は発動しなかった。

「くそっ……封印まで出来ないなんて……。私は何てことをしてしまったんだ……」

 ルイは地面を叩く。
 そして、結界が解かれていく……

”よし、このまま外に出て、世界の人間に憑依してやる!そして、準備が整った時、貴様らを滅ぼしてやる!!”

 外に飛び出す2つの光。
 ルイとカズハはもう絶望に陥っていた。











「てめえ!!人を操っといて勝手にとんずらするんじゃねえ!!」

「あたしに何させてんのよ!!このバカッーーーー!!」

”何!?”

 ボシュッ!! ……コトン ……コトン

 ルイとカズハは一瞬目を疑った。

「……ルイさん。今、あの2人……」

「……どういうことだ?」

 目を疑うのも無理はない。
 ”強大な光と闇の存在”と呼ばれるものが、コールとアンリの怒りによって投げたモンスターを捕獲するボールの中に納まってしまったのである。
 この光景をどう理解できようか?いや、理解しがたい。

「あれ?なんか、捕まえることが出来たみたい」

「これって、ポケモンなのか?」

 …………。

 何はともあれ、”強大な光と闇の存在”と呼ばれた存在は、ボールに封印されたのだった。










 ”強大な光と闇の存在”の存在は、4人が二度とこんなものがこの世に現れないようにと、再び月島の地下深くの棺に眠らされることになったという。










「……アンリ……本当にもう行くの?」

 月島の港でカズハが寂しそうに尋ねる。

「うん。だって、いつまでもここに留まっている訳には行かないから……。あたしの旅はまだまだ続くのよ」

「そうか……」

 アンリの言葉を聞いてカズハは無理にでも笑った。



 4人はそのあとすぐに打ち解けて、仲良くなった。

 アンリは誰とでも仲良く、ポジティブに。
 コールは図々しくうざったくも、周りの雰囲気を調和させるように。
 カズハは自然と溶け込んで、和やかに。
 ルイは口数が少なくとも、みんなを驚嘆させる知力に。

 4人の性格は違えども、親友と呼べるくらい4人は仲良くなった。

 だが、月島に一生住む以外は、必ず別れはやってくる。
 ルイも修行のためにもう月島を発っていた。
 アンリもこの島を発とうとしていたのである。



「元気でね」

「カズハもね!」

 握手を交わした後、船は沖へ飛び出した。

 カズハは流れ出る涙を拭って、アンリを送っていた。





 それはアンリも同じだったのだが……

「やっぱり……寂しいよな」

「……っ!!」

 慌ててフェンスに飛びつくアンリ。
 そこにいたのは、爪先で立ちながら座って、食い入るようにアンリを見ていたコールだった。

「あ、あんた、まだあたしについてくる気なの!?」

「当たり前だろ!!まだ決着はついてねーんだよ!!」

「月島で5戦やってあたしの4勝1引き分け……どう見てもあたしの勝ちじゃない!!」

「俺が勝つまで、俺はてめえについていくって決めてんだよ!信念は曲げねえ!」

「そう……立派な信念ね……」

 アンリはスチャッと、フェンスから降りて、跳んだ。

「そんな信念曲げちまえ!!」

 バキッ!!

 小さい身体から繰り出す跳び蹴りがコールにまともにヒット!!
 コールはゴロンゴロンと船の上を転がっていった。

「ぐふぅ……ピカチュウ柄……」

 そう呟いてコールは気絶した。が、アンリはボッと一気に顔を赤くした。

「見ーたーね!?」

 ドガバキボコドガバキボゴ!!!!

 …………。

 こうして、アンリとコールの凸凹コンビの旅はまだまだ続いていったのだという。






























「魔法に光と闇?」

「そんなことって本当にあるの?」

 幼い男の子と、その姉が話を聞いて頷いていた。

「パパにも信じがたい話だけどね」

 話をしていた男は20台の半ばあたり。
 2人の父親のようだった。

”パパー。挑戦者が来たみたいよ?”

 若い女性の声。恐らく、奥さんだろう。

「おっと。この話はまた今度な。これからジム戦だからな」

「わー!パパのジム戦!?僕も見る!」

「私も見たいかもー!!」

「わかった、わかった。一緒に行こうか」

 2人の子供を連れて、父親はジムフィールドへと向かっていったのだった。










 キャラクター紹介


 アンリ(16歳)

 元気で明るいトレーナー。誰にでも公平に話しかけるという平等さを持ち合わせている。
 しかし、怖がりでビビリ屋なところがあるようで、驚かす攻撃やお化け屋敷、暗いところが苦手。
 藍色のショートカットで、地面すれすれの可愛く長いマフラーとキュートなミニスカとクリーム色のカーディガンが特徴。
 身長は150センチ程度。

 作中では謎の光へ突発的にモンスター捕獲用ボールを投げたという珍事をやらかしていたが、あれは本当に捕まえる気だったらしい。
 ちなみにこの時点ではコールに好意はなかったらしい。

 cv:豊口めぐみさん

 手持ち……ガルーラ(♀) ヤルキモノ(♂)



 コール(17歳)

 アンリに一度負けて、雪辱を果たすためにアンリにストーカーをするうざったい男。
 しかし、意外と知識があって頭の回転もいいのであるが、ワザと馬鹿を装ってアホな行動に走ることがある。
 ゆえに、他の3人からは行動バカと認識されている。
 180センチで、白髪で、メガネと帽子を取ったら野獣に見えることから、馬鹿と言われるのも納得である。

 作中ではアンリ同様の行動を取ったが、アンリとは違って、怒りでボールを投げつけたらしい。
 ちなみにアンリを追っかけているのは雪辱を果たすためで、決してアンリに好意を持っているからではない。そして、彼がアンリに好意を持つことは無かった。

 cv:中井和哉さん

 手持ち……シザリガー(♂) ルナトーン



 ルイ(21歳)

 代々から伝わる魔導師で、月島に眠る”強大な光と闇の存在”を消滅させるためにやってきたのだが、失敗した。
 性格は常にクールで、彼といると安心感を得られるのだという。(3人とも感じていた)
 緑の長髪で、ヒラヒラの法衣(退魔の法衣)を身に纏っている。
 身長は170センチ台。

 作中ではカズハと共に”強大な光と闇の存在”を探して消滅させようとしたが、アンリとコールにおいしいところを持っていかれた。
 この後、彼は”強大な光と闇の存在”を倒すために修行をしていたが、結局力を得られずに、次の世代達に託すことになった。

 cv:浜田賢二さん

 手持ち……ムウマージ(♂) チャーレム(♂)



 カズハ(18歳)

 代々から伝わる月島の踊り子で、月島の踊り子の初代”クレハ”の血を受け継ぐ者。
 性格は多少おとなしい普通の女の子。
 長い黒髪を頭のてっぺんでポニーテールのようにまとめている。
 そして、何故か白と黒のゴスロリ風味のメイドっぽい服を着ている。結構お気に入りらしい。

 作中では”強大な光と闇の存在”の居場所をルイに案内していたが、そのルイに出会った経緯は、ルイに惹かれたからだという。
 かといって、その恋が実られることは結局無かった。

 また、月舞踊とは『流漂(りゅうひょう)』、『受風(じゅふう)』、『桜舞(おうぶ)』、『無姫(なきひめ)』、『時月(じげつ)』、『星奪(せいだつ)』、『朔凪(さくなぎ)』の7つがある。
 だが、全ての技を完璧に踊れて、そして、ポケモンに使えさせるようにできた者は初代のクレハだけだったという。

 cv:島本須美さん

 手持ち……トロピウス(♂) キノガッサ(♀)





 アトガキ

 ふと、ある日思いついた短編です。
 短編とあるけど、いつも書いている短編じゃなくて……えーと、WWSの外伝みたいな存在?
 しかし、この話の時代は、すんごく昔の話なんですよね。
 どのくらいかというと、例えるならDOCでエグザイルが神によって世界を壊されたとか……そのくらい前かも。
 ……いや、DDの巨大ヒードランが暴れるのをミヤビが止めるくらい前か!?

 …………。

 まぁ、要するに、100年くらいも前の話と思ってください(ぁ)
 そして、この話はテールデュ(WWSシリーズ第3部)へと繋がっていく……?

 

[一言感想]

 カズハが聞き覚えのある技名を出してましたが、そう言う事でしたか。
 そして個人的には、アンリとコールの今後がどうなるのか結構見たい(ぇ)。
 第3部がどうなるのかはまだ分かりませんが、楽しみにしたいと思います。

 

戻る