☆前回のあらすじ

 リブラ号で調査を続けようとしたジュンキだったが、アイによって無理矢理その場から離脱させられてしまった。
 だが、アイから『リブラ号に最近怪しい人物が出入りしている』と言う情報を手に入れた。

 そして、バンは温泉街キャメットで、サボっていた。
 何の情報の収穫もなく、漠然としていたところ、バンはチドリと言う女の子を悪漢から助け出したのだった。



「“ジュンキさんは、このままリブラ号の張り込みを継続。何か情報が入り次第メールします。”っと」

 『送信』をクイックして、リクは一息ついてテントから出た。

「このジュンキさんの手掛かりが事件につながりがあるといいのですが……」

 今日の空は、雲がチラホラあるものの天気は比較的よかった。

「バンさんとミナミさんの方も何か進展があるとよいのですが……。その前に、バンさんは定時報告が来ないんですけど……」

 ちょっと心配なリクだった。

 でも、次の日、バンからちゃんと『情報はなし』という連絡が入ったと言う。










 第7話「お灸は嫌い〜☆」










「うん。おいしいー」

「…………」

 近くの喫茶店……と言うか、売店でクレープを頬張るチドリ。
 その表情はとっても幸せそうだ。
 バンは微妙な顔をして、自分もクレープを頬張る。

「(確かに美味いけど……)」

「次、あっちに行きましょう!」

 バンの腕を引いて、チドリは走る。

「慌てるなっての、時間はあるだろ」

「でも、早く行きましょう?」

 にっこりとチドリは笑って微笑むが、やっぱりバンは複雑そうな顔をする。

「(この女……なんか悪いことでも考えてるんじゃねえか?)」

 朝から今に至る昼過ぎまで、バンはチドリに振り回されっぱなしだった。
 チドリはずっとハイテンションで次々と施設を回って楽しく遊んでいた。
 その姿に、流石のバンも疲れてきた。

 そして、今いるのはゲームセンターのコーナーだった。
 コインを入れてボタンを押すだけと言うシンプルなスロットだ。
 タマムシやコガネにあるものと同じものである。

「…………今だ!」

 ポン ポン ポン

 バンはタイミングよくボタンを押す。

「残念ー」

 チドリは隣で笑いながら、バンの外す様を見ていた。

「くそっ!!当たるまでやってやる!!」

 躍起になってお金をコインに換金して、スロットに挑むバン。
 しかし、バンはひとつだけ忘れている。
 賭け事は好きだが、ギャンブル運はあまり良くないということを。



 ―――30分後。



「……1万ポケドルを使って……一回も大当たりが来ねー……」

 バンは呆然とスロット台の操作台に頭をつけて、真っ白に燃え尽きていた。
 いや、むしろ燃えカスと化していた。

「運がとても悪いんですね」

「いつもならもっと当たるんだがよ……って」

 と、隣のチドリの台をみてバンは目を丸くする。
 なんと山ほどのコインがチドリの手元にあったのである。

「いったい、何をしたって言うんだ!?」

「え?何もしてませんよ?ボタンを押したら、勝手に揃ったのですよ?」

「なぁ、ちょっとコインを分けてくれねえか?」

「いいですよ」

 ……こうして、日中を使ってバンとチドリはゲームセンターに入り浸っていたと言う。
 日が落ちた頃、バンとチドリはそれぞれ景品を持って出てきた。

「あー楽しかった♪」

「(てか、こんな遊んでる場合じゃねえのに。またユウナにどやされそうだぜ)」

 楽しそうなチドリの後ろでバンは複雑そうに考えていた。

「(とにかく、明日っから情報集めを再開しねえとな) じゃ、お前は早く宿泊先に戻るんだな」

「えー?イヤですー」

「イヤってなんだよ。イヤって」

「だって、これからが楽しいところじゃないですか」

「俺はこれからやることがあって忙しいんだよ」

「じゃあ、明日はー?」

「恩返しなら今日たっぷり受けた。それでいいだろ?」

 煙草を咥えて、火をつける。

「だいたい、女が一人でこんな街を歩いていること事態が悪いんだ。狙ってくださいって言ってるようなもんだ。明日でもいい。早く出て行くんだな」

「むぅー」

 チドリは頬を膨らまして、バンを見る。
 でも、次にはちょっとしょんぼりしたような顔をした

「わかりました……。言う通りにします……」

 チドリはそう言って、とぼとぼと歩き去っていった。
 そして、ワザとらしく大声で言う。

「もっと温泉とか楽しみたかったな……あーあ。もっと温泉に入りたかったなー」

「だから、早くこの街から出てけっていってんだろうが。次は助けてやらねえぞ。じゃーな」

 こうして、容赦なくバンはチドリを置いて宿泊先に戻って行ったのだった。





 ―――次の日。

 バンは昨日の無駄にした時間を取り戻すように、あっちこっち聞き込みをしていった。
 中には、ポケモンバトルを仕掛けてくる奴や、ナイフを持って切りかかってくる奴、お酒を飲んで絡んでくる奴などがいた。
 そんな連中を適当にあしらいつつ、情報を探すが、“風霧”に関する情報はまったくと言っていいほど集まりはしなかった。

 「名前は聞いたことあるな」
 「組織なんてこの辺にいっぱいある。いちいち覚えてられっか」
 「あたしたち、観光でここにきたからわからないわ」

 と、聞き込みをしてもこの程度しか情報は集まらなかった。

「(……ここでは、“風霧”はまったく関係してないのか?)」

 バンはそろそろこの街を離れてリクの所へ戻ったほうがいいなと考えていた。

「みつけたー」

 だけど、そうも行かなかった。

「……ゲ」

 チドリがまたバンの目の前に現れたのである。

「お前、あれほどこの街から早く離れろって言ったのに、何でまだいんだよ!」

「別にいいじゃないですか。私の勝手でしょう?」

「……そう言うなら、勝手にしろ」

 ふと、バンは聞いてみた。

「ところで“風霧”って知ってるか?」

「“風霧”ですか?」

「ああ。この街の近くに存在する組織の一つだと思うんだけどよ」

「まさか……あなたは“風霧”に入るためにこの街に来たのですか?」

「いや。少し気になることがあってな…………って、お前のその顔、なんか知ってそうだな?」

「はい。知ってますよ」

 にっこりとチドリは笑う。

「一体何を知っている?」

「何を隠そう私は……」

 チドリはスバメとポッポを繰り出して肩に乗せた。
 ピンときて、バンはモンスターボールを構える。

「“風霧”と同じように鳥ポケモンが大好きなのです」

「……は?」

 予想もしなかった内容に、バンはモンスターボールをポトッと落とした。
 中からハクリューが飛び出した。
 ハクリューは変な表情をしているバンを見て、首を傾げている。

 って、ハクリューのどこからどこが首かは不明だけど。

「“風霧”が鳥ポケモンが好きなこと……それは結構有名だと思いましたが、意外と知られていませんでした?」

「まあな。(言われてみれば、あん時も鳥ポケしか使ってこなかった気がするな)」

 バンの言う“あん時”と言うのは、もちろんジュンキのためにミラクルハーブを摘みに行った時のことを指している。

「わかりました。私も風霧の情報を集めるのに協力します」

「なんだと!?冗談言うな!!」

「昨日助けていただいたお礼です」

 そして、バンとチドリは何度か言い合いを始めた。
 だが、結局はバンが折れた。

「もう勝手にしろ」

「足手まといにはなりませんよ」

 バンは深いため息をついて、空を仰いだのだった。










 7年前。
 パイラタウンはミラーボというモンスターボールのようなアフロをしたシャドーの幹部が支配していた。
 シャドーの支配下にあってか、パイラタウンはゴロツキがふきだまる場所になっていた。
 ゆえに、他の街の人々は、この町に近づき難かった。
 しかし、ハルキとカレンがシャドーを倒してから、パイラタウンはギンザルと署長のヘッジが力をあわせて治安を守るようになり、幾分か平穏を保てるようになった。

 そして、今もパイラタウンは平穏を守っていた。

「う〜ん……全然いい手掛かりがないよぉ〜」

 とぼとぼと元気なさそうに歩くのは、チームトライアングルの紅一点のおバカキャラのミナミ。
 ずっと、パイラタウンを歩き続けて聞き込みをしているのだが、情報はまったく得られないという。

 その前に町外れのスタンドやフェナスシティへも行ってみたのだが、そこで得られた情報というのも「最近リブラ号で怪しい人影が出没する」とか「ポケスポットで狂暴なポケモンが現れるとか」とか「エクロ峡谷の近くで最近頻発して竜巻が巻き起こる」という情報ばかりで、ミナミは『情報無し』とリクにメールを送っていた。

 って、情報あるんじゃん!(汗)

「後は……ここだけだよね」

 ミナミはとあるエレベーターの前に来ていた。

 そのエレベーターを降りるとアンダーという街がある。
 だが、アンダーといわれる街が栄えたのは5年ほど前まで。
 その後は、住民達は引越しなどしてアンダーは建物が残るだけの廃墟の街となってしまっている。

 ここにミナミが来たのは、ヘッジ署長に怪しい組織がアンダーに潜んでいるという情報があったからである。

「よぉーし☆ ここでミナミちゃんが一発手柄をあげて、バンちゃんに褒めてもらうぞー☆」

 しかし、ミナミは忘れていた。

―――「ミナミ、一人で潜入とか探索を行うなよ?必ず俺かジュンキに連絡して増援を待てよ?わかったな!?」―――

 バンの言いつけをすっかりミナミは忘れてしまっているのである。
 いや、もしくは聞いてなかったのかもしれない。





「暗いな〜」

 アンダーに入っての一声がこれだった。
 それもそのはず。アンダーは地下に作って太陽が差し込まない場所。
 昔は昼でもネオンがピッカピカと輝いてアンダーはいつでも明るかった。

 しかし、今は住む人がいないために(電気さえも通っていないために?)辺りはほぼ真っ暗だった。

「こんなところに誰かいるのかなぁ〜」

 不安そうにライトを照らして辺りを見回すけど、何も見つかりはしない。
 数十分と歩き続けて、ついにミナミはその場にペタンとしゃがみこむ。

「疲れたしー暗いしー……もう帰りたい〜」

 ミナミは飽きるのも早かった。

「はははっ、そうは行かないよ」

「……え?誰ー?」

 ライトを照らして声がした方を照らしつける。
 すると、光がミナミに反射して怯んだ。

「まぶし〜……鏡?」

 よくミナミは目を凝らしてみると、鏡ではなくその声の主の頭だということがわかる。
 どうやら相手は、スキンヘッドらしい。

「目を覚まして、何事かと思っていたら、こんな女子(おなご)が迷い込んでいたとはの」

 ビシッとまるで格闘の構えのようなポーズをするその男。
 しかし、彼の手にはモンスターボールがあった。
 ポケモントレーナーであることは間違いない。

「少し、お灸を据えてあげるだの」

「え〜私、お灸は嫌い〜☆」

 甘い声を出してモジモジさせるミナミ。
 大抵の男相手ならば、その仕草を見て油断する奴はそう少なくはない。

「『ミサイル針』!!」

 だが、その男にミナミの甘える攻撃は通じなかった。

「キャッ!!」

 慌てて飛び退くミナミ。
 そして、一目散にミナミは逃げ出そうとする。

「逃がさないだの!!」

 そのポケモンは、尻尾を使って自分自身に攻撃する。
 いや、実際には攻撃ではない。

 その後、物凄いスピードでミナミの退路を防ぐように立ちはだかった。

「……!!」

「『ツボをつく』。ドラピオンの得意技だの。逃げても無駄だだの」

「うぅ……パチリス!カメール!」

 勇ましく二匹が飛び出す。
 放電と水鉄砲の合体技がドラピオンに向かって飛んでいく。

「これはまともに受けたら、まずそうだの」

 しかし、それでもドラピオンは避けようとはしなかった。
 代わりに、息を大きく吸い込んで、溜め込んだ空気を一気に放出した。

「え!?」

 すると、パチリスとカメールの合体技は軌道を変えて、自分に向かって返って来た。
 2つの属性の攻撃をまともに受けて、カメールはダウンした。
 しかし、パチリスはまだ立てる元気は残っているようで、すぐに反撃に出る。
 『怒りの前歯』だ。

「遅いだの」

 ズドンッ!!

 『ツボをつく』でスピードの能力を上げているドラピオンのスピードに対抗できず、後ろに回りこまれて尻尾で叩きつけられてパチリスはダウンした。

「どうだの?まだ戦う気だの?」

 拳法を使うように構えているスキンヘッドのトレーナー。
 隣でドラピオンも変なポーズを取る。

「あ……まさか、あの人は……」

 ミナミはふとスキンヘッドの男のことを思い出した。

「確か〜『お灸拳法のディオ』ちゃん?」

「ほぉ〜よくわかっただの」

「確か懸賞金が33万ポケドルなんだよね」

「と言うことは、お前は賞金稼ぎか」

「え〜?私は違うよー。ここへ情報を集めに来たの〜」

「情報だと?」

「うん☆ ポケモン総合研究所を襲った人物について〜」

「……ポケモン総合研究所……その場所か……知らんだの」

「なんだー。知らないのかー。がっくり」

 だが、ミナミにがっくりしている暇はなかった。

「知りたいことはそれだけだの?それなら、大人しくつかまるだの。私がここにいることを知って外へ出すわけには行かないだの!ドラピオン!」

「……!!くっ……フワンテー!!」

 ミナミからいつもの余裕が消えた。
 ドラピオンの猛攻にミナミは切り札のフワンテを繰り出す。

「シャドーボール連続攻撃だよ☆」

 小さい黒い塊を連射するフワンテ。
 相手のドラピオンはパチリスやカメールを超えるほどのスピードを持っていたが、フワンテのスピードはそれ以上だった。
 それに加えて、フワンテのシャドーボールの連射速度もかなりの精度があった。

「スピード、連射能力……かなりのものだの!だが……」

「!!」

 ドラピオンがシャドーボールの嵐を受けながらもフワンテに接近してくる。

「そのくらいの威力では、ドラピオンは倒せないだの!」

 『辻斬り』がフワンテを切り裂いた。

 ……ように見えた。

「『影分身』だの?」

「そこだよ!『小爆発』☆」

 ドラピオンの背中にしがみつくと、エネルギーを程よく溜めて、自らの身体を爆発させた。
 しかし、大爆発と違うのは、自分が意識を保てる程度だけ体力を残しておくことである。
 ゆえに威力も『自爆』や『大爆発』には及ばない。

 爆発を受けて、ドラピオンは吹っ飛ばされて、壁にぶつかった。

「むぅ」

 ディオは爆発の煙が晴れてから、辺りを確認した。

「逃げられただの……。だが……まだ遠くまでは行ってないはずだの」

 ダメージを受けたドラピオンは体を起こしてディオに寄り添った。





 薄明かりの中、手探りで壁を伝いながら、ミナミは急いで出口を探す。
 さっきのディオに見つからないためにライトは当然消していた。

「どうしよ〜……次にあのディオちゃんに会ったら、勝ち目ないよ〜……早く逃げて助けを呼ばないと……」

 自分のポケギアを使おうにも、ここは地下で通信不能。
 助けを呼ぶには、地上へとでなければならない。

「フワンテを除いてあと3匹……困ったよ……」

 ドスンッ!!

 前を見ずに下を向いて歩いたのが悪かった。
 そのせいで、何かがぶつかってきたことに気付かなかった。

「だ、誰なの?」

 ミナミはディオが追いかけてきたのかと思い、ライトをつける。
 だが、予想はいい意味で外れた。

「ふぁ?眩しー」

 赤い髪に翡翠色の瞳。
 額にバンドを巻き、黄色いシャツに青いダフッとしたGパン。
 そして、腰のサイドバッグがおしゃれにベルトに繋がっている。

 その少年は目を瞑って、かなり慌てていた。

「子供……?」

「あれ?さっきの人達じゃない?」

 少年はきょとんとしていた。
 だが、それも束の間のことだった。

「そこだ!!サワムラー!!」

「決めて!!エビワラー!!」

「終わりだ!!カポエラー!!」

 別の方から、3人の声が同時に飛んでいた。
 見ると、サワムラー、エビワラー、カポエラーが襲い掛かってきていた。

「……!! ビーダル!!『ばかぢから』!!」

 少年が反応よく攻撃の方向へモンスターボールを投げて技の指示を出す。

「「『さんみいったい』!!」」」

「……っ!!」 「なにこれ〜!?」

 凄まじい音と共に衝撃音がその場に響き渡った。










 第8話「夜這いのこと?」へつづく

 

[一言感想]

 チドリは引き続きバンに付きまとうらしい……意図もせずフラグが強まってきた(ぇ)。
 一方ミナミは情報(と本人が認識できるもの)は得られないまま、変な奴に遭遇しちゃいましたね。
 その先では更に一人の少年と、迫りくる超必殺技?
 何しろ『さんみいったい』は、スマブラXにおけるポケモントレーナーの最後の切り札ですから(笑)。

 ……そして、次回のタイトルが著しく不穏な件←

 

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