☆前回のあらすじ
謎のタキシード男の正体は、“アジェンリミト”の次元を丸ごと支配しようとしていたエグザイルのメンバーの一人、ザンクスもといナポロンだった。
そのナポロンとバトルしたアイだったが、あっという間に倒されて捕まってしまう。
一方、フェナスシティでバンとオトハを介抱し続けていたカツトシ。
そこへ、オトハを狙ってクロノが襲い掛かってきた。
「くそっ!!」
ビシッと持っているムチを投げ捨てた。
「……ご主人様……」
廃れた工場の地下にある秘密のアジトのある一室で、シロは苛立っていた。
彼の部下であるハクは、その姿を哀れんだ目で見つめていた。
「あのシファーってヤツめ!!あいつが来なければ、幹部の座を追われることにはならなかったんだ!」
シファーがアルドスを連れて、風霧の本拠地にやってきた時のこと。
シロは相手のことが気に入らず、攻撃を仕掛けた。
だが、その結果、いとも簡単に返り討ちにされてしまった。
その行為から、シロはハクと共に幹部から外されてしまったのである。
現在、幹部としてではなく、下っ端総隊長として、この場所にいるのである。
「ご主人様……落ち着いてください……」
「……っ!! ……ハクか……」
じーっとハクを見るシロ。
「どうされましt」
ハクはシロの顔色をうかがおうとしたところ、急に身体を引き寄せられた。
そして、唇をふさがれる。
「……っ!? シロ様……?」
不意に唇を放すシロ。
そして、再びムチを持ってそれをハクに向かって振るう。
「あっ!」
ビチッと肌を打つ音を立てて、ハクは地面に転がる。
「言っただろ。僕のことはご主人様と呼べとね」
「は、ハイ……」
「まあいい。ハク。その辺を警備してろ」
「……ハイ……」
残念そうに返事をして、ハクは部屋を出て行ったのだった。
第18話「……バカ野郎……」
―――フェナスシティ。
一匹のポケモンがカツトシの頬を掠める。
鋭利なナイフのようにカツトシの頬は切られて、血がツーッと流れていく。
「『電光石火』!!」
相手が飛行系のスピードタイプと知るや否や、同じく飛行タイプのスピード系の技で対抗する。
ドゴンッ!!
2匹のポケモンが交錯する。
「……ッ!!ムクホーク!」
その一瞬のことだ。
カツトシのムクホークは地面へ叩きつけられた。
「切りつけろ」
先ほどカツトシにも襲い掛かった鋭い翼がムクホークに振り下ろされる。
「かわせ!『影分身』!」
ギリギリのところで指示を出し、影分身を発動。
翼がムクホークの分身を地面ごと切った。
切ったと単純に言うが、1メートルくらい地面の奥までを切り込みを入れている。
カツトシの目には、それを確認することはできないが。
「そこだ!『ブレイブバード』!!」
翼を広げて突撃する飛行系屈指の大技。
捨て身タックルと同じく、自らもダメージを受けるが、与える威力も大きい。
相手の翼が地面に刺さっている今なら攻撃を当てることができると考えたのだろう。
ムクホークの一撃が、クロノのポケモンを捕らえた。
ズドォッ!
手ごたえは完璧だった。
「よし……。 え!?」
だが、カツトシが見たものは、片方の翼で叩き飛ばされたムクホークの姿だった。
空中で体勢を立て直そうとするものの、地面と近かったために、翼を地面に擦ってしまい、不時着する。
「それなら……『ツバメ返……」
ズドッ!!
カツトシの指示が行く前に、クロノのポケモンの攻撃が決まった。
翼を撃つ攻撃のみで、ムクホークはあっという間にダウンしてしまった。
「時間の無駄だな。一片にかかって来い」
「(あのゴルバット……何て攻撃力とスピードだ……)」
ゆっくりと飛んで、ムクホークを倒したゴルバットは、クロノの肩に乗った。
「(だけど、あのポケモンを倒すとっておきのポケモンが居る!)」
「来ないなら、これで終わりだ。『シャドーボール』」
ゴルバットが口からサッカーボールほどの黒い球体をカツトシに向けて放つ。
けど、カツトシはそう簡単に攻撃には当たるほど間抜けではない。
攻撃の方向を見て、すでに動き出していた。
ガッ!!
「なっ?イテッ!!」
……へ?
「運がなかったな」
どうやら、カツトシは足元の小さなでっぱりの岩につまづいて転んだようである。
訂正。やっぱ間抜けだ。シャドーボールはかわせそうもない(ぁ)
「うわぁ……!!トリトドンッ!!」
慌てて予定とは違った別のポケモンを繰り出した。
同時に、トリトドンは鏡のような壁を張った。
シャドーボールはそっくりそのままゴルバットの方へ向かって返っていった。
「(『ミラーコート』か!) ゴルバット、『つばさでうつ』」
返ってきたシャドーボールをほとんど動じずに、横へと弾き飛ばす。
さらにトリトドンに翼の一撃を加えて吹っ飛ばした。
トリトドンは何とかギリギリで耐えて水の波動で反撃する。
しかし、ゴルバットのスピードにまったく攻撃を当てることができない。
素早い動きでかわされて、結局2撃目の『つばさでうつ』であっという間に倒されてしまった。
「やれ」
そして、クロノはカツトシを指差して、連続攻撃を指示した。
「(こっちに来る!……今度こそ!)」
ズドッ!!
ゴルバットの強力な翼攻撃が、カツトシの出したポケモンに直撃した。
だが……
「ふーん……。退け」
クロノは攻撃が受け止められて弾き飛ばされたのを見ると、ゴルバットに戻ってくるよう指示を出す。
「逃がさないぞ!『ジャイロボール』!!」
攻撃を受けきったドータクンは、特徴である遅さを活かして、回転玉を打ち出す。
ジャイロボールはどういう原理化は謎だが、自分の素早さが低いほど威力が上がる技である。
攻撃はゴルバットに当たりそうだった。
「ゴルバット。少しだけ力を解放しろ」
クロノからの指示を受けると、ゴルバットは攻撃から逃げながら、力を溜めていく。
「(なんだ……!?)」
その様子をカツトシは不気味に思っていた。
「やれ。『ウイングスラッシュ』」
ゴルバットは方向を転回してジャイロボールに突っ込んでいった。
翼をクロスさせたかと思うと、ジャイロボールを切り裂いた。
「なっ!?」
カツトシの驚きを尻目に、ゴルバットはドータクンにも一撃を見舞った。
ぶつかった時、大きな衝撃を生み、ドータクンは貸家の壁にぶつかって大きな穴を開けた。
「まだだ!『怪しい光』!」
まだドータクンは耐えることができ、歪な光をゴルバットに向かって放つ。
だが、ゴルバットはそこにはいない。
ガブッ!!
噛み付く攻撃だった。
ドータクンの背後に回りこんで、こっそりと噛み付く攻撃を決めたのだ。
そのまま、ドータクンは倒れてしまった。
「嘘……」
「さぁ、どうするんだ?やるんならまだ相手になるぞ?ただし、もうめんどくさいから一片にかかってこいよ」
「(くっ……まともに攻めても勝ち目はない……。挑発に乗るのは癪だけど、これしか方法はない……!)」
クロノの言葉に乗って、残りのポケモンを全てモンスターボールから出した。
「行け!マスキッパ!マニューラ!ゴウカザル!」
パワーウィップ。
冷凍パンチ。
フレアドライブ。
3匹のそれぞれ出せる強力な技をゴルバットに向かって放つ。
それを見て、クロノは口元を緩ませた。
「お前は良くやったよ。でもこれまでだ。ゴルバット、『遊覧滑空<ゆうらんかっくう>』」
ゴルバットは指示を受けると、ゆっくりと宙に浮いた。
浮いたといっても緩やかに飛んでいるだけのことである。
絶好のマトのはずのゴルバットにマニューラは冷凍パンチを打つが、ひらりとかわされる。
同じくマスキッパのパワーウイップものらりとかわされ、ゴウカザルのフレアドライブもくらりとかわされてしまう。
「くっ!!3匹とも!もっと速く攻撃するんだ!」
そして、どんどん攻撃のペースを上げていく3匹。
3匹のコンビネーションは急造と言えども、息の合ったものだった。
「(決まれ……!!)」
ズドッ!!バキッ!!ドガッ!!ドスンッ!!バガッ!!ズドンッ!!
だが、この結果を見てカツトシは自らの目を疑った。
最終的に残ったのは、無傷のゴルバットだったのである。
「……なんで……?」
自分のポケモンたちは、無残にも叩きのめされて、地面に伏せていたのである。
「このくらいのスピードで、俺のゴルバットが負けると思ったのか?」
3匹の連携は完璧だった。
しかし、それ以上にゴルバットの動きが上回っていたのである。
カツトシの目には、どのポケモンも2撃だけでダウンしたように見えただろう。
しかし、それは攻撃にあわせて、『つばさでうつ』攻撃をこっそりとカウンターしていたのである。
そして、最後の2撃の一撃目に強い攻撃を出して怯まし、トドメの一撃で叩きのめした。
これがゴルバットの攻撃の全てである。
「お前のポケモンはゼロだ。そこをどいてもらおう」
クロノはゴルバットを戻して、ドータクンを吹っ飛ばした時にあけた穴からオトハの寝ているベッドに近づいていった。
「……っ!!」
カツトシはポケモンを戻しながら、走ってオトハのベッドの前に立つ。
「……どうしても、邪魔をすると言うのか?」
凄まじく黒いオーラを纏って、カツトシを見るクロノ。
先ほどもそのオーラにカツトシは吐き気がしたが、今度は怯まなかった。
「……俺が命にかえてもオトハさんを守る!!」
クロノを睨みつけるカツトシ。
「そうか……お前は、オトハを守るためなら命はいらないんだな?」
そう呟いて、一つのボールを出した。
「ゲンガー」
「うっ!?」
モンスターボールから出たと思うと、ゲンガーはカツトシの頭を掴んだ。
「『夢食い』だ」
「なに…を……?うっ…?うわぁああああ―――――――――――!!!!」
強烈な喪失感と共に、声にならない叫び声をあげるカツトシ。
「俺のゲンガーの夢食いは、人間が対象の場合、生命力を喰らうことができる」
ゲンガーが手を放すとカツトシは地面に倒れた。
「人間が生命力をなくなるとどうなるか知っているか?言うまでもないよな。俺のゲンガーはこうやって幾人もの夢を食らって来た。今更お前の夢を食らったところで何の罪意識もない」
「……はぁ…はぁ……」
白目を剥きかけているカツトシは、オトハのベッドに手を伸ばしている。
だが、まったく届かない。
しかも、クロノは手を足で踏みつける。
顔を上げて、焦点が定まらない目でカツトシはクロノを見る。
「この苦しみを味わってでも、お前はオトハを命にかえて守ると言うのか?」
「……ッ!!!!」
ただ、クロノを見て純粋にカツトシは恐怖に慄いた。
踏みつけられているのに、手の震えがまったく止まらない。
手だけではなく体中がぶるぶる震える。
嫌な汗もそこらじゅうから噴出してくる。
「ご…ごめんなさい……」
カツトシは震える声で言った。
「命は……助けて下さい……。オトハ…さんは連れて行っていいから……俺の命だけは……助けて下さい……」
その様子を見てクロノはフッと笑った。
「最初からそういえば、こんな恐怖を味わうことなんてなかったのに」
そう言って、クロノはオトハに手を伸ばした。
脚と腰を抱えて、いとも簡単にオトハを持ち上げた。
「(所詮、人間なんて恐怖には勝てないものだ。誰もがみんな自分が可愛いんだ)」
そして、ゲンガーに指示を出し、黒い空間を出して、その中に入って行った。
空間が消えると、その場所に残ったのは、まだ目が醒めないバンと、壊れた貸家と、倒れたカツトシだけだった。
「……くそっ……」
カツトシは自分の情けなさに涙を流し、そして怒って地面を叩いた。
「何がオトハさんを命をかえても守るだ……。俺の……バカ野郎……。くそっ……くそぉ……」
悔しさを叩きつけるが、ダメージは大きかった。
意識が遠のいて、そのままカツトシは気絶してしまったのだった。
―――廃れた工場(元シャドーの秘密工場)。
スクーターを走らせて、ジュンキとアイが到着してから1日で彼女らはこの地にやってきた。
「ジュンキが言っていたのはこの場所ね」
「ここがその謎の組織の場所かい?」
外観は大きなピラミッドのような形をしていて、まるでどこかの世界遺産な様な建物である。
しかし、中身は工場だと言うのだから驚きである。
「ログ……ここからは慎重に行くわよ。おそらく、トレーナーやトラップがたくさんあるでしょうから」
「そういえば、ジュンキから連絡がまったく取れないのも気になるね」
ここに来る間に、ユウナは他のメンバーと連絡を取った。
だが、繋がったのはミナミだけで、バンとジュンキは連絡がつかなかったのである。
「みんなは自分のすべきことをやっているはずよ。だから、あなたも自分のすべきことをして」
「……そうだね」
そして、ユウナとログは廃れた工場へと入っていった。
「入ってみると、本当に普通の工場だね」
「……そうね」
辺りを見回すけど、人の気配はまったくなかった。
「誰もいないようだけど……」
「もしかしたら、どこかに入り口が隠されているのかもしれない。手分けして探すわよ」
ログは入り口を入って右へ、ユウナは中央の部屋を探ることにした。
「(探すといっても……そう簡単に見つかると思えないけど……)」
ログはゴソゴソと地面を調べていた。
ツルッ
「え?うわぁっ!」
急に足元の床が抜けた。
そして、そのままヒューッとログは落ちていったのだった。
一方。
「案外、簡単に見つけることができたわね」
ユウナは機械の下に隠し階段を発見した。
すぐに、ユウナはI☆NAを動かして、ログにコールした。
「……あれ?繋がらない……?」
同じフロアにいるのだから、簡単に繋がると思っていたユウナ。
だが、通路をみつけた時にはすでにログはもう下へと落ちた後だった。
地下は電波が繋がらない。
だから、連絡を取ることはできないのである。
「(もしかしたら、下に落ちたのかも……。たくさん入り口が有りそうだし……)」
そう思い、ユウナはついに秘密のアジトに突入したのだった。
「つぅ……ココは……?」
辺りをキョロキョロと見回すと、そこは何もないフロアだった。
「地下三階のフロアB……? 後ろと前にそれぞれドアが二つか……」
とりあえず、ログはボールを持った。
「どっちにしても、敵が居るかもしれないから、気をつけないとね」
ガチャリ
その時、前のドアが開いた。
ログは慌てて構える。
「お前は……」
ログはその人物の顔を見て、小さく呟いたのだった。
第19話「私は脅しに屈しないわ」へつづく
[一言感想]
シロとハク、今までも名前ちらほら出てたけど……確かハクって元は『跳馬』とかいうチームの(ry
カツトシはやっぱりクロノには勝てず、精神的にも敗れてしまいました。
オトハ、大丈夫かなぁ……(カツトシの心配は?)。
さて、ユウナが到着し、ようやく反撃なるか!?