鋭い爪を掲げて、背中がトゲトゲなポケモンが迫ってくる。
 2匹を狙って、ダメージを与えようと振り下ろす。

 だけど、ただがむしゃらに突撃するような単純な攻撃は当たらない。
 標的にしていた二匹……ヤドキングとガラガラは、各々に左右へかわして、攻撃をして来たサンドパンから遠ざかった。

『避けた場所を狙え!』

 リーダー格のケンタロスが命令するのと同時に、バグーダがヤドキングへ『大地の力』の突き上げる攻撃を繰り出し、ペリッパーがガラガラへ『ハイドロポンプ』を撃つ。

『くっ!』

 ヤドキングは大地の力を両手を前に出して攻撃を打ち消した。
 『月舞踊:無姫』だ。

 一方のガラガラは、骨をくるくると回して、ハイドロポンプを受け止める。

『ちっ!……ぐっ!』

 だが、空中で攻撃を受け止めたガラガラは、技によるダメージを受けなかったが、勢いで飛ばされて壁にぶつけられたダメージがあった。
 ダメージは軽いもので影響はほとんど無いが、追撃でキリンリキが迫ってくる。
 『サイケ光線』だ。

 ガラガラは骨で受け止めるが、先ほどのように弾き飛ばすことはできず、再度吹っ飛ばされる。
 ドスンッと音を立てると、そこには同じように吹っ飛ばされたヤドキングの姿があった。

『まずいね。あいつらの連携は現実的で本物だ。このまま戦ってたら勝ち目は無い』

『一旦退いた方がいいよね』

 すると、ヤドキングとシンクロを解くオトノ。

『何をする気?』

「任せて!パチリス!『放電』&『かみなり』!!」

 2種類の電気技を一度に放出するパチリス。
 空からは電撃が落ち、自身は周囲へ電撃を放出する。

 ちなみに、パチリスに技を出した時点でレイタはガラガラとのシンクロを解いた。
 ガラガラの特性である『ひらいしん』を発動させないためである。

 ドドドドドドドッ!!!!

 攻撃がケンタロスたちに襲い掛かる。

『そんな攻撃、恐れるに足らない!!』

 電撃に相性が悪いペリッパーやメガヤンマは防御に入るものの、他のポケモンはパチリスに向かって突っ込む。
 だが、かみなりがパチリスに襲い掛かる手前で落ちていく。
 その衝撃で地面に巻き起こる砂埃。
 あっという間に視界が遮られていった。

『……! 狙いはこれか!……おい!』

 ケンタロスに言われて、防御を解いたメガヤンマとペリッパーがきりばらいを繰り出す。
 あっという間に霧は払われたが、2人の姿はどこにも無かった。

『……逃げられたか。……草の根を分けてでも探すぞ!』





 とりあえず、オトノとレイタは物陰に隠れて、6匹が散っていくのを見ていた。

「各個撃破が一番得策だろうね。人数で負けるとどうしても勝つことが難しくなる」

「そうだね……。さっき、サンドパンとバグーダの攻撃を退けたのは良かったんだけど、ケンタロスの突撃とメガヤンマの追撃を捌き切る事ができなかった……。2人以上にさせたら危険ね」

 オトノはモンスターボールに入ったパチリスを見て頷いた。

「ところで、そのパチリスとシンクロしているところを見たこと無いが……」

 レイタが不思議に思って聞く。

「この子は♂だから、シンクロできないのよ」

「そうか。シンクロできるのは同性別だけだったね。違う性別や性別無しのポケモンとはシンクロできなかったね」

 レイタは納得して頷く。

「リーダー格は、さっきからずっと指示を出しているケンタロスだ。あいつを最初に叩きたいところだけど、そう簡単には行かないだろうね」

「……うん……」

「そう考えると、耐久力がなく、攻撃の核となるポケモンを先に叩くべきだね。後は弱点をつくことができるポケモンと……」

「……うん……」

「オトノ」

「……うん……。え?」

 名前を呼ばれて、バッと顔を上げるオトノ。

「…………。そんなにラグナのことが心配?」

「……うん。すごく……心配だよ。当たり前でしょ?……ラグナは……仲間なんだから……」

「ふっ」

 レイタは鼻で笑う。

「そんな心配は意味がないね」

「意味がない? …………。 そうだよね。ラグナならきっと心配ないよね」

「違う。自分がこんな危ない状況なのに、よく人の心配をしていられるね」

「っ!!悪いって言うの!?」

 オトノは険しい顔でレイタを睨む。

「ラグナのことを想うのは勝手さ。しかし、こんな状況で人のことを心配できるほど君は余裕なんだね。現実的に助からないかもしれないのに。……心配なんてものは、自分が助かってからするものさ」

「…………」

「余計なことを考えて、自分が助からなければ、本末転倒。まさに意味がないってことだね」

 反論をせずにオトノは黙ってレイタの話を聞いていた。

「でも、俺がいる限り、この場は切り抜けられるけどね」

 そういって、ヨノワールを繰り出すレイタ。
 一匹のポケモンをレイタが見つけたようだ。

「おっ、ちょうど倒そうと思っていた奴が現れた。とりあえず、俺が囮になる。それから君が攻撃を仕掛けるといい」

「そんな……レイタを囮にだなんて……」

「現実的に考えて、俺があの程度の連中にやられるはずがないね。奴らは能力の低さをコンビネーションと数でカバーしているだけだ」

「わかってはいるけど……」

「じゃあ、文句はないね。行くよ」

 レイタはヨノワールとシンクロした。





『リーダー!奴ら、なかなか見つからないよー』

 そう情けない声を上げているのはペリッパーだ。
 リーダーと呼ぶケンタロスに、飛んで近づいてくる。

『ソーヤ。もっとしゃきっとして探せ。他の連中はそんな弱音を吐かずにきっかりと探しているぞ。まして、そんな報告なんてしてなんか来ないぞ』

『そんなこと言われてもなー』

『何より、お前とシークは空から探せるんだ。他の連中よりはましだろ』

『そうだけど……何でリーダーは探さないのさ?』

『俺はここで待機だからだ。……む?』

『どうしたの?』

 ケンタロスの様子を見て、ソーヤと呼ばれているペリッパーは顔を覗き込む。

『シークがやられた』

『え!?シークが!?いったいどうやって!?』

『おそらく、奴らは各個撃破を狙ってきたんだろう。固まって戦うべきだな。場所は……』

 腕につけたレーダーを見る。
 そのレーダーには、5つ光が点灯していたが、シークがやられたことによって、一つ消えた。

『あっちだ!ソーヤ、行くぞ!』

『うん!』





『おっと!』

 空気をジワジワと熱する炎をヨノワールは、振り返ってかわした。

『よくもシークをやってくれたわね!!』

 さらにサイコキネシスがヨノワールに襲い掛かるが、もう一つのヨノワールを作りだし、攻撃を受け止めた。

『やれやれ……増援が早いね』

 地面に伏しているのは、一人の男の子とメガヤンマ。
 ヨノワール=レイタは、『金縛り』で行動を封じ込めて、ヤンヤンマを一気に撃墜させたのだ。

 しかし、早くも駆けつけたのはバグーダとキリンリキ。
 遠距離攻撃が得意な二匹だった。

『ちょっと厄介だね』

『『シャドークロー』!!』

『……!』

 ドガッ!! ドゴンッ!!

 空中に浮かぶヨノワールを叩きつけて、着地したのはトゲトゲの背中を持ったサンドパンだった。

『くっ……シークをよくもやってくれたな!』

『『ツッキー!!』』

 ツッキーと呼ばれるサンドパンに2匹は群がる。

『アーヤ、ズーマ……大丈夫か?』

『大丈夫だよ』

『それに、レイタは倒したから、あとはオトノを倒せば……』

『ふっ。『黒影波動砲弾<シャドーキャノン>』!』

『『『!!』』』

 ズドーンッ!!!!

 特大の威力を持った暗黒のレーザーが3匹を中心に炸裂した。

『ツッキー!ズーマ!』

 自身はノーマルタイプも帯びているキリンリキは、ダメージをさほど受けなかったが、残りの2匹は吹っ飛んでかなりのダメージを受けていた。

『つぅ……何でだ……?』

『くっ……さっき……叩き落したはずなのに……』

 何とか立ち上がるものの、サンドパンとバグーダはふらふらだ。

『君らが攻撃したのは全て俺の『身代わり』だよ。当の俺はまったく攻撃なんて受けていない』

『クッ……油断した!だが、終われない!』

 バグーダは大文字を繰り出す。
 しかし、ヨノワールは攻撃をかわして、サンドパンへと急襲する。

『援護するよ!』

『行かせない!』

 キリンリキとバグーダが援護をしようとする。

 バシャッ!! バリバリッ!!

『なっ!?』

『キャッ!』

 後ろからの攻撃に、怯む2匹。
 慌てて後ろを確認すると、それぞれパチリスとヤドキングの存在が見えた。

『……っ!オトノね!』

『(どっちとシンクロをしているんだ?)』

 パチリスが先陣を切って、『電光石火』でキリンリキとバグーダを錯乱する。
 先制攻撃をできる速いスピードに、照準がなかなか合わない。

 ドガッ!!

『こっちは外れね』

 早いとは言え、シンクロしている2匹の能力に、人間とシンクロしてないパチリスが勝れる筈がない。
 キリンリキのサイコキネシスを受けて吹っ飛ぶパチリス。
 一撃でダウンは確実と思われていたが、ギリギリで立ち上がった。

『パチリスがつけているのは、“気合のタスキ”か!?』

 バグーダが目を凝らして、パチリスの体に装備しているものに注目した。
 “気合のタスキ”とは体力が全開の時に、攻撃を受けると絶対に倒れないと言うアイテムだった。
 おそらく、何かの気合が入っているのだろう。

 …………。

 何の気合だろう?(知るか)

『なら、もう一回!』

『って、』

『ええっ!?』

 ズドンッ!!

 サイコキネシスによって持ち上げられたバグーダが、キリンリキに打つかって、そのままのしかかる様子になってしまった。

『ズーマ!重いッ!!』

『とは言うものの、動けないから!……うわっ!』

 ドバンッ!!

 そして、強大な水の波動を受けて、バグーダとキリンリキは吹っ飛んだ。
 バグーダはこの一撃でシンクロが解けて、ズーマと共に吹っ飛んでいったのだった。

 キリンリキの方は、地面を擦るように転がった。
 ダメージは受けているものの、まだ倒れないようだ。

『シークに続いて、ズーマまでやられるなんて……。許さないんだから!』

 そういって、口に溜めるのは破壊光線。
 しかし、その前にパチリスがキリンリキを捉えた。

『しまっ……』

 ドドドドドッ!!!!

 『じたばた』攻撃。
 体力がなければないほど強力な攻撃になるという起死回生の一撃だ。
 それによって、破壊光線は中断させられ、体勢を崩した。
 今度は『じたばた』をしながら『必殺前歯』が襲い掛かる。

『それが……何よっ!!』

 バキッ!!

 体は横たえながらも、尻尾の動きだけで、パチリスをなぎ払った。
 『アイアンテール』だ。
 最初のキリンリキのサイコキネシスですでに体力が限界だったパチリスは、この攻撃でダウンした。

 だが、パチリスの役目は充分果たしたと言える。

『ヤドキングが……来る……!!』

 ヤドキングの最大の一撃がキリンリキに入った。
 水飛沫を上げてキリンリキと女が宙を舞い、ズドンと音を立てて落ちた。

『あとは君だけだよ』

『クッ……!!』

 一方のヨノワールとサンドパンの戦いの行方は、一目瞭然だった。
 ヨノワールは不敵な笑みを浮かべて、拳を凍らせる。

『『砂嵐』っ!!』

 地面の砂を巻き上げて、体を回転させて竜巻を起こす。

『(ジェドとソーヤが来るまで退却するしかない!あたし一人じゃ勝ち目は……)』

『俺にそんな作戦は通じないよ』

『あっ』

 ガシッと顔を掴まれるサンドパン。
 いつの間にかルカリオにスイッチしているレイタ。

『俺は目を閉じても、波動の力で相手の位置を確認することができる。目暗ましなんて現実的に意味がないんだよ。そして、これなら避けられないよね』

『……あぐっ!!』

『召されるんだね』

 ボンッ!!!!

 顔に強烈な波動を打ち込んだ。
 サンドパンは吹っ飛んで、村の自然の壁にぶつかった。
 そして、一人の女とサンドパンに分かれた。

「あう……」

『まだ息があるのか……?しぶといな』

 近づくレイタ。 

 ドガンッ!!

 しかし、近付けまいと攻撃をする一匹の水ポケモンが空から滑空してきた。

『よくも、お前ら……仲間達を……』

『ジェド……これは僕ら、本気出さないとね!』

 ケンタロスとペリッパーだ。

『さて、あと2匹だね』

 ルカリオは腕を軽くストレッチして、相手を見据えた。
 ヤドキングも空を見上げて、ペリッパーと対峙する。










「…………」

 テンガン山にある自然の洞窟。
 そこがマイコンことマイデュ・コンセルデラルミーラのアジトである。
 広さもあり、入り組んでいる道もあり、生活観もあった。

「おっ。戻ってきたんだな〜♪」

 灰色の長袖に白い半袖のセーターのダークグリーンの男が目を瞑ってじっとしている女の子の肩を叩く。
 女の子は赤渕のメガネの奥に隠されている瞳でそいつを確認する。

「……エデンっ」

 明らかに嫌悪の表情で彼の手を払う。
 雪のように白いショートカットの髪に目立つ赤のカチューシャ。
 さらに緑の襟有りのノースリーブに胸元にピンクのリボン、黒の短パンに白と黒の縞々のニーソックスは子供っぽさと大人っぽさの両方を醸し出していた。
 年齢は……20代前半辺りだと思われる。

「そんな怪訝になることないじゃないか〜、サニエル」

 しかし、そんな彼女の態度に怯むこともなく、今度は後ろから両手を両肩に置いて、耳元で囁く。

「俺と君の中だろ?」

 バチッ!!

 大きな音が部屋に響いた。
 エデンは頬をひりひりさせながらも、毅然とした表情で女の子を見ていた。

「近寄らないで……人でなし!」

 そして、じりじりとエデンから離れようとする。

「あんたなんて……排水溝で溺れて死ねばいいのに!」

「まったく、大人しそうな顔して随分と跳ねっ返りなことをするなぁ……」

 そういって、エデンは目を細めた。

「ちょっと、お仕置きが必要かな」

 ゴツン

「イテッ!」

 下心丸出しの顔で女の子に迫るが、いきなり殴られて、エデンは後ろを振り向いた。

「いったい何をやっているの」

「つぅ……アソウ婆さん!痛いだろ!」

 年老いた婆さんに説教を受けるエデン。

「まったく、大丈夫?チョコ」

「…………」

 しかし、女の子は呼ばれても返事をせず、プイッとしたままだった。

「元気そうね。それなら良かった」

「私は元気よ……それより……」

「……そのことは心配しないで」

「…………」

 女の子は立ち上がる。

「約束は守って……絶対に」

「……ええ」

 婆さんは頷いて、その場から去る女の子を見送った。





「サニエルが帰ってきて嬉しいな〜♪」

「ほんとエデンはチョコが好きなのね」

 腕を組んでエデンの隣に腰をかけるアソウ。

「アソウ婆さん、俺は別にサニエルが好きなだけで甘い光<スウィートライト>に選んだわけじゃないぜ」

「そんなのわかっているわよ」

 ため息をつくアソウ。

「俺は目的のためなら、どんな手段も選ばない。汚い手だろうがな」

 そういってから、立ち上がって手をアソウの前に差し出す。
 アソウは首を傾げた。

「調整をするからシンクロパスを出してくれ」

「お願いするわよ。……それにしても、さすがね。シンクロパスをこんなにも改造しちゃうなんて」

「まあな」

 そういって、アソウのシンクロパスを持って、エデンは自分の部屋へと帰ろうとした。

「ところで、カミヤの奴はまだハクタイシティを落とせないのか?」

「どうやら苦戦しているみたい」

「そっか。まぁ、落とせないならそれでもいいだろう。んで、バニラは?」

「ハレを仕留めて帰ってきたと聞いたときは、驚いたけどね……」

 と言いつつ、アソウの表情はちょっと暗かった。

「女侍を追いたかったみたいだけど、止めさせた。その代わり、バニラをカンナギタウンへ向かわせた」

「カンナギタウンに何かあるの?」

「ちょっとした不安要素ね」

 そう言うアソウは、やはりどこか暗かった。
 だが、そんな様子をエデンは汲み取ることはなかった。

「不安要素と言えば、カナタの方が厄介なんじゃない?海戦の精鋭5人がかりで襲ったのに、沈めることができなかったって言うじゃないか」

「…………」

「まー、あのデカ物女はちょっとした有名人だしね。甘い光<スウィートライト>のカラメル辺りをぶつけたほうがいいんじゃない?」

「……そうね……」

「そういえば、ベリーに連絡がつかないけど、どうしたんだろう。俺が逃がした3人を追ったってバニラから聞いたけど」

「それは……まだわからない。もしかしたら、今パソコンを見たら情報が入っているかもしれない」

「…………。まぁいいか」

 エデンは持っていた板チョコを口に含んでそう呟いたのだった。










 第40話 増殖する危機 終わり










 淡い希望は粉々に打ち砕かれるのが、この世界の道理。

 第41話へ続く。

 

[アットの一言感想]

 アソウ婆さん、その正体はいかに!?(ぇ)
 性別不明とは誰もシンクロできないとなると、多くの伝説・幻のポケモンや、他でも性別不明ポケモンにとっては辛い環境かも知れない(苦笑)。
 レイタとオトノは今のところ優勢ですが、ラグナは消えたまんまです。
 打ち砕かれるという淡い希望って、ラグナの存命のことなのでしょうか←

 

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