理の峰 〜闇をかき消す光〜


1話「受け継がれる魂」


10年前:〜トキワシティ郊外〜

今ここに、歴史の影に隠れた死闘が繰り広げられていた。

報われず。しかし確実に毒牙を食い止めた知られざる真実。

降りしきる雨の中。それは確かに終わりを告げた。


使命を終えた戦士は力尽き、天を向いて倒れた。

バタッ!

「・・・・・・・、終わった」

黒く長い髪を雨に濡らし、全身を泥と血に濡らせた。

せめて思うように身体を動かせぬ病の身ではない自分なら、無事に使命を果たせただろうか。いや、If(もしも)の話をしても仕方ないか・・・・。

今の自分に果たせるベストの仕事をしたという満足感はある。

ならば、悔いを残すことなく・・・逝ける。

そう思っていた。


「・・・・・それなのに・・・、」

そこまで呟いて、不意に視界が歪む。

「・・・・どうしてこうも、思い残すことが多いのかな、欲張りだなぁ・・・私も」

自分の思うように、存分に走り抜けてきた。

愛する人が出来て、その人と過ごした証も残せた。さらに自分の意志はほかの誰かに継がれる。

本当にもう思い残すことなど___________。

バシャバシャバシャ!


と、彼女のもとに近づく足音


「・・・・・・・シズカ・・・さん」

そこに立っていた彼女は、おそらく傘も差さずに近づいてくる

青色の髪と瞳・・・そして、愛用のサングラスをかけた彼女は それは地峰。宮地静香のもっとも親しい友人の顔であった。

「・・・・・・・・ああ、君か、久しぶり・・・・だね?」

まさか、このタイミングで会えるとは思ってなかった。

「そうですね、こんな偶然、狙ってもできる物じゃないんですけど」

・・・・・・心なしか。元気のない声。

「・・・・大丈夫かい?なんだか声に力が無いよ?君らしくもないね」

せめて、彼女の前では笑顔でありたいと思い、声を目一杯出して話しかけるが

「こんな時まで、人の心配しないでください」

そういって、静香の手を握る。


「・・・・・・暖かいね。」

「シズカさんの手が冷たいんですよ、こんなんじゃ風邪をひきます」

「・・・・風邪くらいなら、まだ可愛いけどね・・・・うっ!?」

突如・・・いや、この身を蝕み戦いの最中から襲ってきていた「ソレ」は、もう取り返しのつかないところまで彼女の容体を悪化させていた。

「・・・シズカさん!!しっかりしてください!」

苦痛に表情を歪める静香に、女性は話しかける

「・・・・・どうやら・・・もう時間みたいだね。」

そう、すでに悟っていた、近い死期が今であると、シズカは実感していた。

「・・・・・これも私の選んだ道だからね、納得して・・・・そういえば・街は・・・どうなった?」

「大丈夫です、街はちゃんと無事。それに・・・だって・・・」

「そうか・・・・・良かった・・・・・。それなら・・」

シズカは首にしていたネックレスを外すと、それを女性の手にしっかり握らせた

「シズカさん、これ。大事なものなんじゃ!」

「そうだよ、でももう私には必要がない・・・かといってこのままじゃ、あの子に何も残せないから・・・」

「そんなことない、___はもうシズカさんから大事なものをもらって_____。」

「それでも、これだけは、どうしても___。に持っててほしい。私があの子を天から見失わないように・・・」

「シズカさん・・・・」

「それと無理に私を目指さないで良い。自分の思ったままに生きて…、それだけを伝えてくれるかい?」

シズカはその・・・・水入り水晶のネックレスを女性に渡すと、不意に力が抜け

「・・・・・シズカさん、気を確かに持ってください!」

「・・・・・ありがとう・・・・あ・・・す。」

「シズカさん!!?」

そして彼女の瞳が再び開かれることは、一度もなかった

「・・・・ゆっくり休んでくださいね・・・の事は・・・私に任せて。」



そしてそれから、5年の月日が流れた・・・。






5年前 オレンジ諸島 〜アーシア島〜



カントー地方、その先にあるナナシマのさらに南東に位置する、南海の美しく島々、オレンジ諸島

ここでは海神と祀られるポケモン、ルギアが生息するとされ。それにちなんだ古からの伝説を数多く伝わっている。

そして、ルギアの意志を受けるもの。アーシアの巫女が存在する。

そしてここにまた一人、新たなアーシアの巫女が、その力に目覚めつつあるのだった。




島の中心にある丘の上に、その社は建っていた。潮風も心地よく吹き抜け。付近にはキャモメなどの水鳥ポケモンが多く飛んでいる

そしてその心地よい風が入る中、日記を見つめる。ミントブルーの瞳と髪の、少し神聖な雰囲気のする服を着た一人の少女が居た。

あまり覚えていないけど、小さい頃に手に入れたブーケは、宝物で、押し花にして、しおりにした。

小さすぎて誰の結婚式かは忘れたけど、花嫁さんが、野球のように、足をあげて投げていたのは覚えている。……衝撃的だったなぁ。

いつか、私も、花嫁になれるとしたら――その時は好きな人と、幸せな気持ちでブーケを次の人に投げたいかな。

ブーケを受け取った人が次に結婚できる、という話は、花嫁たちの幸せをブーケに込めるからなのかな、なんてね。

もし、もし、結婚するならその時、私は_______。


「ユメノ?」

「ひゃあ!? な、なんだ。お母さん……」

「あらあら、日記?私も小さい時は書いてたわよ」

と言って、日記に手を取ろうとする、これまたミントブルーの瞳と髪のガーネットの首飾りをしてる女性が一人

ティアラ=アーシア・・・先代の巫女であり。私のお母さんでもあるんですが・・・・。

「み、見ちゃダメェ!」

私は日記の内容を知られるのが恥ずかしかったので、母さんを部屋から追い出して・・・。日記をすぐに机の引き出しにしまった

「・・・・でも、いつかいい出会いがあるって信じてても罰は当たらないよね?」

本音を言い合える仲間が欲しい。私を「ただの」ユメノ=アーシアとして見てくれる人が・・・・。

「ユメノ、そろそろ禊の時間よ」

「はぁい。」

そして部屋の外からの母さんの声にこたえ、私は部屋を出たのだった。




その後、彼女は日記にこう記していた。「今日の出来事こそ運命の出会い」であったと______。







ANOTHER BIEW

#:絶望


「・・・・・全くなにをやっても落ちこぼれだな。お前は」

「これだから『混血』は困るんだ。余所の血が高潔たる我々の一族を貶めるのだ」

「やはり、『天才』とは一代限りなのだな。『二世』などに期待するものではなかった」

・・・・・・黙れ。

「それに、最近では得体のしれない連中とつるんでいるとのこと、地に落ちたものだな直系は」

「もはや、その辺の猿と変わらん、宮地の名を名乗ることすら汚らわしい」

「・・・・色恋にうつつを抜かして、我を通すからこういう事になるのだ、あのような下女に期待した私達が間違いだったのだよ」

・・・・・ふざけるなっ!!!!

言い知れぬ怒りと、憎悪の心。そして何よりも『彼ら』は少年にとって最も貶めてはならない物を踏みにじった。


そこへ囁かれた、悪魔の一言。

「何も、きれいごとばかりが全てではないのです、良いのですよ。『怒り』を糧として、思うままに生きなさい」

思うがままに・・・・・・。奇しくもこのタイミングで、亡き母が言ったことと同じことを、少年は『彼』から言われる

「私が君の望むことを、お手伝いしてあげましょう。・・・フフフ」

違う・・・俺・・・・は・・・・・・。

どくんっ!

瞬間、少年の心は闇に包まれ・・・・・。

「■■■■■■■■ーーーーーーーーーっ!!!!!」

咆哮と共に理性を喪失した。

ANOTHER BIEW END




#アーシアの巫女

そして場所は変わり、アーシア島中央にあるサタク山。ここはアーシアの巫女が毎日祈りをささげる神聖な場所。いわゆる霊峰としても名高い区域である。

標高こそさほどでもないが、中腹にある泉は巫女の禊の場なのである。


と、そこに青き装束に身を包み。ユメノは清流に身をゆだねる


いつも島で私を信じてくれている人たちの為に。

母さんに負けない、立派な巫女の役目を果たすため。

と、巫女としての自覚をすでに持ち始めながら少女は____。


海 空 太陽 翼をひろげ いつか夢見てた はてしない世界

波にゆらめき 今は まどろむ

吹きすぎる風は この惑星の息吹

陸から陸への 距離をうめて

打ち寄せる波は この惑星の鼓動

幾億年もの 時をこえて

私は祈る あの水平線に

永遠の時が 舞い降りることを

海 空 太陽 翼をひろげ いつか夢見てた はてしない世界

波にゆらめき 今は まどろむ


たちのぼる雲は ときめくあこがれ

紺碧の空を 白く染めて

私は願う 生きとし生きるもの

すれちがいながら ひとつになる時を

海 空 太陽 翼をひろげ いつか夢見てた はてしない世界

波にゆらめき

今は まどろむ

いつか 目覚めたら

世界は変わるの?

と、静寂と心地よい風のみをバックに、海の巫女は謳う。

「・・・・・海神様。今日も私たちを見守っていてください。」

祈り、身支度を整え。街の見回りに向こう、今日も良い日になり・・・

ドォォォォォォン!

「!?」

だが、穏やかな日常を破るその爆音は街中で起こるのだった。

「お姉ちゃん!・・・・見たことない、『怪物』が街に!」

と、そこへユメノと瓜二つの容姿の、ミントブルーの瞳と髪の少女が走ってきた。

「化物・・・・?、サヤカ、すぐに案内して!」

そこには先ほどまでの花のような笑顔で歌う少女の顔はなく、凛々しく表情を引き締める「巫女」の顔があった。





それから少し経ちアーシア島・市街地


「ヴォーーーーーーー!!!!」

果てしない怒りと悲しみ、そして底知れぬ殺気。そう言ったものを全て内包したかのような咆哮。

そして、彼の怒りに反応するがごとく、彼と共に暴れ狂う獣・・・・、二人ともどす黒いオーラに包まれ、正体がわからない。

「ひっ・・・ひぃ!?」

「誰か助けてくれーーーー!」

逃げ惑う人々、そしてそこへ振り下ろされる荒ぶる獣の獰猛(どうもう)な一撃_____。

「水護陣!」

バシュッ!!!!

しかしその一撃は出現した清流の「障壁」により弾かれる

「アボシャン!時間を稼いで!」

そう、逃げる人の前に立ちはだかったのは、ユメノであった。


「巫女様!?」

「皆は早く逃げて、ここは私が何とかします!・・・・サヤカ!貴方は街の人を避難場所の高台まで誘導して!」

まだ11歳の少女とは思えないような冷静さで、的確に指示をしていくユメノ

「お姉ちゃん、気を付けて・・・・・」

だが、双子

「・・・・・だいじょぶ、私がサヤカの事、心配させた事ある?」

一瞬だけ、姉妹の姉の顔でサヤカに微笑みかける

「・・・・、わかった。でも無理はダメだよ?」

そう言ってサヤカは背を向け、皆の誘導をし始めるを確認し・・・・・・。

「ヴォォォォォォォォォ!」

「・・・・・これで、貴方の相手をすることに集中できる!」

黒き獣とそれを操る男・・・・背格好からして明らかに少年と思われる、彼の拳をとっさに避け、間合いを取りながら様子を伺う。

「ぐぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

だが、隙を与えないとばかりに少年は、黒いオーラに包まれたまま、彼が従える獣(ポケモン?)と共に猛然とユメノに襲い掛かるのでった


「この人・・・、黒いモヤみたいなもので正体がわからない!・・・・まさか____。」

だが、同時に島を守る巫女として、小さいときから教えられてさらに、自らの持つ感覚を鍛えた来た結果から、彼女はそれを見抜く

「間違いない、これ・・・・ダークオーラだ・・・・」

「あ"あ"−−−−−−!!!」

そして、理性無き獣のように突進とパンチを繰り返す

「アボシャン、ハイドロポンプ!」

ドォォォン!!!

それに負けじと、ヤドンのハイドロポンプで迎撃をするのだが

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「そんな、全くダメージが通らない!?」

どがっ!!!!バチバチバチ!!!!

一気に間合いを詰められ懐まで近づかれ、直接殴りつけられたのだが、激しくスパークするような感じがすると、アボシャンはその場に倒れた!

「この攻撃、かみなりパンチ・・・・・?なんて威力なの・・・」

理の峰としてかなりの修練を積んでいるユメノの手持ちである、だがこうまで簡単にやられるとは・・・と、彼女も驚いていた

「・・・・・・!!」

さらに、今度はユメノ自体に襲い掛かろうとする。

「・・・・っ、出てきてラクァタス!マッドショット」

だが彼女は間一髪のところでヌオーを出し、泥の連射を浴びせる


「ぐおお!?」

そして少年とダークポケモンは、その攻撃に反応し、飛び退くのであった。

「・・・・・・(ダークポケモンというより、この人自体が深い心の闇に囚われてるみたい、速く原因を探さないと)」

”ダークオーラは最近発見されているダーク・マテリアルという物質が原因のようだわ、私たちも調査を続けているのだけど、直にダークオーラを見られる人間が少ない以上、貴方の力も借りたいのです、ユメノさん。私たちに巫女の力を貸していただけないかしら?”

と、自分に眠る資質を評価してくれていた、女性の言葉を思い出した。

「・・・・・ダーク・マテリアル。そんなものがあるかどうかはわからないけど・・・・何とか止めないと・・・」

(この男の子からは怒りの他に凄く悲しい気持ちも伝わってくる、出来ることなら巫女の私がそれを癒してあげたい)

これは新しい巫女となったユメノが感じる、他人にはない感覚。彼女は魂を見ることができ、抱く感情を読み解くことができるのである

何とか攻撃をかわしながら、策を考えたいのだが、猛烈な攻撃を疲れることも知らず繰り出し続ける相手では、その場を耐え凌ぐのが精いっぱいである。

と、その時

「巫女様をいじめるなー!」

がつ!!!!

まだ避難が済んでいなかったのか、それともはぐれてしまったのか。一人の子供が石を投げつけて、男達にぶつけたのだった

だがそれは、少年を挑発する以外の何物でもない。投げつけられた石の方に振り向くと猛然と子供に向かって駆け出すのだった

「!?危ない!・・・速く逃げて!」

「あ・・・・・ああ・・・」

だが、子供はその場にへたり込んでしまい、恐怖に震えている。


(・・・だめ、今からじゃ間に合わないっ!)

「プラスル!10万ボルト!」

突如、子供の背後からプラスルが飛び出し、

「ぐおおおおおお!!」

その電撃の直撃を受けた少年と"獣"はダメージを受ける 


「・・・・・へ?」

ともかく万事休すかと思われた子供の命運は、突如現れたプラスルによって救われた

「君、大丈夫?怪我はないかな?」

・・・・・そこにはサングラスをかけた蒼い髪の女性が立っていた。

「あの・・・・・はい、大丈夫です」

「そっか、だったらここは危ないよ、早くママかパパのところへ急ぎなさい」

「・・・・・う、うん・・・」

その子供は、うなずくとすぐに避難場所の方へと駆け出して行った。

「助かりました、えっとあなたは・・・・」

そこへ、ユメノがようやく駆けつける


「今のは危ない所だったわね。君がティアラさんの娘、ユメノちゃんで間違いないのかな?」

「は、はい(この人・・・・母さんの知り合い?)」

「私はアイス、君のお母さんと、そこの少年・・・ユウトのお母さんとも縁があってね・・・・・助っ人させてもらうわ」

ウインクをしながら、目をユウトに戻すと。そこには真剣そのもののトレーナーの表情がある

「・・・ユウトって言うんだ・・・・この子」

「本当は、良い子なんだけどね。しばらく見ないうちに何をどうしてこうなったのか・・・・」

アイスはため息を一つ、そして「やれやれ」というような表情を見せる

「・・・・・ユウトさん・・・の魂からは深い悲しみと怒りを感じます、そしてそれを何らかの力で増幅されて"ダークオーラ"を纏っている状態だと思うんですけど」

「"ダークオーラ"・・・・・ポケモンを狂暴化させる闇のオーラ・・だったわね、ショウ君がよく言っていたわ、それが見えるなんてユメノちゃん、凄いわね♪」

(ショウ・・・・、もしかしてドームスーパースターのショウ=スカイマークさんのことかなぁ?)

特に自身の力に関して動じないアイスをユメノは不思議に思っていた。

「ごあああああっ!!!」

「いくら美人二人が居るからって、ガールズトークを邪魔してがっつかない♪早急な男は嫌われるわよユウト。プラスル!アイアンテール!」

「ぷらっ!!」

どがっ!

ユウトと"獣"の一撃は、狂化されているとはいえ中々のものであり、並みのトレーナーでは撃退は難しそうだが、アイスは余裕たっぷりで攻撃を避けたうえにすかさず反撃するのだった

「あ、あはは・・・・(その年で"ガールズ"は無いと思うんですけど・・・)アボシャン。戻って!・・・エリアスっ!」

ユメノはここでヤドンのアボシャンを下げ、マナフィであるエリアスにチェンジ

「へぇ・・・・マナフィ、良いポケモンじゃない」

「ありがとうございます・・・・・。まずは弱点がどこなのか探る必要がある必要があるんですけどね・・」

「ガアアアアアっ!」

「みずのはどう!」

そして、すかさず反撃、

その時、ユウトの胸元から光を反射する何かが転がり落ちる。

「・・・・!、プラスル!」

アイスはそれを見逃さずプラスルに指示し、それを回収する

「・・・・・・・!」

その落ちた物をみて、アイスの表情が変わる

「これは・・・・水入り水晶?」

そう、それは10年前・・・・シズカから預かり、彼女の大事な一人息子に渡した物・・・・。

「・・・・・これを大事に持っているなら、まだ完全に自分を失ったわけじゃない・・・・、そんな馬鹿なことはやめなさい、ユウト!」

アイスはなおも、ユウトと黒き獣と対峙しながら、説得を試みる。

「ぐおおおおおおおお!!!!」

だが、ユウトは獰猛に咆哮を上げるだけで、理性は欠片ほども残っていないのだ

(せめて・・・・・ダークマテリアルの位置がわかれば良いのに・・・・どこ、何処にあるの?)

"・・・・右手の甲・・・・・"

その時、ユメノに話しかける、アイスとも違う女性の声があった

「・・・え?」

"右手の甲だよ、お願いだ・・・・ユウトを止めてくれ!"

と、暴れ狂うユウトの背後に黒く美しい髪・黒い瞳のクールなイメージのする女性の姿が見える。

「・・・・・右手の甲・・・・・?」

「ユメノちゃん?」

常人には"視えざるもの"の言葉を確認するようにつぶやくユメノに、アイスは問いかける

「・・・・アイスさん、ユウトさんの右手をめがけてプラスルに攻撃するように、言ってもらえますか?私も水鉄砲で援護します」

「それも"アーシアの巫女"の力なのかしら?」

「はい、・・・・・ユウトさんを守って欲しいと言っている黒くて綺麗な髪の女性の姿が、この水入り水晶に手を触れた時から"視える"ようになりました」

その間にもユウトの猛攻は続いてるのだが、二人ともなんとかよけながら、タイミングをうかがっている

「黒くて長い髪の女性・・・・・そっか・・・・プラスル!」

アイスは何処か感慨深げな表情を見せると、

「ごああああ!!!!」

そのまま突っ込んでくるユウトを確認すると二人は

「エリアス!水鉄砲!」

「悪い夢は目覚めて初めて終わる物よ!でんきショック!」

水鉄砲ににより伝導率がきわめて高い状態になったところへ電流を右手甲に打ち込んだ!

「うおおおおおおおおおおお!!!!」

瞬間、ダークオーラがほつれ、ユウトの右手甲には暗く輝く黒い結晶がはっきりと確認でき、獣の本当の姿も浮かび上がる! そのコンセントのプラグのような形状の頭部から、トレーナーならすぐに分かるものだ

「・・・・・へぇ、連れてるのはエレキッドだったんだ、かみなりパンチを使えるようだったからひょっとしてとは思ってたけどね」

「やっぱり彼女の言うとおりの場所にありました、あの黒い結晶を壊せばユウトさんは元に戻ります・・・・・いえ、私が必ず元に戻して見せます!」

「ええ、それで・・・・ユメノちゃん、策はあるの?(・・・・・この意志の強さ、やっぱり両親の遺伝ね、優しすぎるのはまだまだ問題も多いけど)」

ユメノは、基本戦いにおいて、洗脳されている相手や、説得出来そうな相手には。その優しさゆえに攻撃を躊躇してしまうことが多いのである。
だが、同時それは。憎しみや怒りにとらわれず、時として敵ですら愛せる「彼女らしい強み」でもあるのだ。

「今から、あの結晶を剥すために、ちょっと特殊なものを使います、少し時間がかかるので、アイスさん・・・・引きつけておいてもらえますか?」

「わかったわ、・・・・ユメノちゃんの力を信じるわよ。うまくやりなさいね」

「はい・・・。」

そしてユメノは目を閉じ・・・・精神を集中させ始めた。

そこへ再び襲い掛かろうとするユウトとエレキッド、しかし

「あなたの相手はこの私よ!操られてるからって好き放題迷惑かけていい道理はないわ!プラスル!いばる!」

アイスが完全にユウトの進路を遮り、彼女プラスルはその愛らしい容貌からは想像もつかないような思いっきり高圧的な態度でユウトとエレキッドを馬鹿にした様な表情を見せる

「ぐあああああああ!!!!」

「うおおおおおおお!!!!」

そしてこの作戦は怒りに囚われているユウト達には効果覿面だった。

標的を完全にアイスに絞ったユウト達はそのまま攻撃を続ける。
だが、「いばる」は同時に相手の攻撃力をも上げてしまう。ゆえに下手に攻撃を受けてしまうとアウトなのだが・・

「いくら攻撃力が高かろうと、当たらなければどうということはないの!プラスル、かげぶんしん!」

すばしっこく動き、残像すら残すプラスルの機動力に、エレキッドはついて行けず、攻撃を外し続ける

この間の時間はわずか数分であったが、それはユメノの準備が整うには十分であった!

「・・・・・、ミスリルの力を常世に繋ぐ者、アーシアの巫女。ユメノ=アーシアの名の下に具現せよ!海神の洗礼を受けし聖槍!ポセイドン・トライデント!」

先ほどから目を閉じ、ひたすら集中力を高めていたユメノが。『宝具』を開放するときが来た!
その手には鮮やかなアクアブルーの三又の槍が握られていたのだ。

「エリアス、水の極意を今私と共に・・・・・激流葬!」

ユメノが言い終えると、強烈な水柱が宙を舞い、龍のような形状となったそれは不思議な光を湛えながらユウトとエレキッドに直撃した。

「「うおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーー!!!」」

そして、その強烈な水流の一撃は、ユウトの右手に貼りついた、黒き結晶を砕くのであった______。




ANOTHER BIEW

「・・・・・全くなにをやっても落ちこぼれだな。お前は」

「これだから『混血』は困るんだ。余所の血が高潔たる我々の一族を貶めるのだ」

「やはり、『天才』とは一代限りなのだな。『二世』などに期待するものではなかった」

・・・・ずっと、そう言われ続けてきた。

自分は落ちこぼれ 使命を背負って、最後まで誇り高く死んでいった母の為に、出来る限りの努力をしてきた。
だが、彼女のたどった道へ追いつくにはあまりにも遠すぎて、挙句の果てには住む場所を追われ。
境遇を恨んだことから、堕落し・・・・ついにはあの悪魔の手にかかってしまった。

俺に生きる意味なんて・・・・・あったのだろうか。そう思いながら
遂には自分の命の在り方すらわからなくなり、憎むままに破壊する”獣”となった。
恨んで破壊している方が楽だったからだ。

だが、間違いであることに気づき、取り戻したいと思う自分も居る。

「俺は・・・・、どうすりゃいいんだ、母さん・・・?」

「簡単なことだよ・・・・・私とユウトは同じじゃない・・・・。だからユウトは自分の持つ者で、命を輝かせれば良いんだ」

「けどっ、俺は!」

「・・・・・・・悔いてる心があるなら尚更、まだやり直しは聞くよ。どんなに辛いことがあっても、後悔しても、前を向こうとする意志は、ユウトにしかないんだから」

「・・・・・やり直していいのかな?俺」

「まだ、何も始まってないんだよ・・・・これから、始めなきゃ、貴方はこれからを生きることができる・・・・、私の生き方を追う必要はないんだ」

「ま、待ってくれ!母さーーーーん!?」



ANOTHER BIEW END


「・・・・・・・ぐっ・・・・俺・・・は?」

頭に心地よい感覚を感じながら、少年・・・・城田裕人は目を覚ました。

「良かった、気が付いたんですね」

と、目の前には、ミントブルーの髪の少女がいた、たぶん自分より少し年下だな

「・・・・あんた・・・・は・・・・うっ!?」

良くわからないが・・・・・・、体中が痛てぇ・・・・

「無理はダメですよ、横になってて・・・、大丈夫。私がちゃんと治しますから」

・・・・・・・起き上がるのもやばそうだし、おとなしくいう事を聞くしかないか

「・・・・・ああ、・・・・あんた、名前は・・・・」

「私はユメノ=アーシアって言います、ユウトさん。」

「どうして俺の名前を・・・」

「貴方の名前は、私の知り合いの女の人が教えてくれました、貴方が元々は地面使いの一族『宮地家』の直系であることも」

目の前の少女は穏やかに笑みを浮かべている。それがなんともかわいらしいのだが、だがそれは今の彼にとっては不思議だった

「そうかよ・・・・・、そこまでわかってて何も聞かないのか?」

ユウトは、どうしてここまで目の前の少女が、ここまで自分に対して優しく接してくれるのかがわからなかった

「貴方が話してくれるまでは、私は何も言いませんよ」

「そんな馬鹿なことがあるかよ!俺は。まわりの全てを憎み。呪い・・・・気が付いたときには良いように操られて、好き放題暴れたんだぞ!」

闇に飲まれているときの記憶はおぼろげだが、その間に手にをかけた人間の感触などは十分残っている。それを己の意志で止めることもできなかったことが悔しかったのだった

「・・・・確かに、やったことは許されないと思います、けど、貴方はそれを望んだわけじゃないでしょう?・・・・助けを求めていたんですよね?」

「・・・・ああ、そうだよ。助けを求めていた時期もあったさ、でもアンタら峰は何もしてくれなかったろう?母さんを見殺しにしたときみたいにな!」

ユウトは行き場のない怒りを何処へぶつけていいのかわからなかった。

「なら、今からでも私が助けます。自分から一人になろうとしないで・・・・・そうじゃないと悲しむ人が居るんです、ユウトさんはもう一人じゃないんですから・・」

そしてユメノはそんな彼をどうしても放っておけないと、巫女としてということでもなく、一人の同じ『孤独』を持つ人間して放っておけなかったのだ。

(私は「巫女」として見られることしかないと思ってたけど、今はキヨミさん、アイスさんが居るもの・・・・、「ユメノ」を見てくれる人が)

「・・・・・・・、お前。泣いてるのか?」

ユウトにしてされ、ユメノははっと目元を擦る

「・・・・とにかく、私はユウトさんをユウトさんとして見続けるから・・・・お願いだから自分は一人なんて言わないでほしいかな」

「・・・・・・」

ユウトはここまで、誰かに自分を自分として見てもらったことが無かった。故に、少々不器用ではあったが・・・。

「ユウトだ」

「え?」

「俺の事は呼び捨てで構わねぇ、その代り俺もアンタを『ユメノ』って呼ぶぜ。それでもかまわねぇならダチとして認めてやるよ」

「・・・・うん、わかった。これからもよろしくね、ユウト」

ああもう、こいつは。どうしてこうも愛らしい顔で笑いやがる!?

「・・・・うっ、言っておくけどな。俺は他の峰とつるむ気はまったくねぇからな!?、お、お前だけだぞ?」

照れ隠しのつもりが、全然動揺を隠せてないのだが(ぇ)

「・・・・・これからお互いのこと、わかって行こう、とにかくこれからは怪我を直さないとね」




こうして、二人は運命の出会いを果たしたのだった。




そして二人がユメノの部屋で話している頃、家の傍にある祭壇では。


「・・・・・・、こちらも彼の情報をきいてここまで追ってきたのですが、貴方とユメノさんが止めてくださったようですね、礼を言います。アイスさん」

白いローブを纏った、シスターにも似たような風貌の女性、後から駆け付けた其峰・キヨミはアイスと話していた

「別に、私は大したことはしてないわよ、ユメノちゃんの力があってこそ、ユウトを助けることができたわけだし」

「ここの所、多くの峰の命が失われています・・・・。足がかりがつかめず私としても不甲斐ないですけど」

本当に悔しいのであろう、持っている杖を握る手は小さく震えていた

「・・・・貴方の所為ではないでしょ?ユメノちゃんもそうだけど、貴方も少しは誰かに頼ることを覚えるべきね、キヨミちゃん」

「そう・・・ですね。その為にも、今は新しく入ってくる人をしっかり育成することが今の私の使命です。これからが忙しくなりそうです」

年若き峰のリーダーにも、かなりの葛藤があるのだろうとアイスは思うのだった

「正直、私はユメノちゃんだけでなくユウトも峰として迎え入れるべきだと思うの」

「・・・・・でも、彼が自ら望まない限りは、わたしは入るべきではないと思います・・・・彼のお母様、シズカさんには辛い任務ばかり当たってもらっていたので・・・」

キヨミも少なからず、シズカを死なせてしまった罪悪感はあるのだろう。とアイスは思うのだった。

「・・・・なら、もう少しユウトが大人になるまで、待ちましょう、あの子ならきっと自分で自分の道を歩けるから。それじゃ私はこの辺で失礼するわ、道の遺跡が私の呼ぶの!今度こそお宝ゲットよ!」



こうして、出会いの物語は幕を閉じるのであった。

 

[アットの一言感想]

 ユウトとユメノの初対面は相当波乱に満ちたものだったようです。
 ユウトもだいぶ痛々しい過去を持っているようですが、ユメノとの出会いをきっかけに変われると良いですね。
 アイスはWWからのゲスト出演でした。

 

戻る