ハリアー編第1回 (本編2話アフターストーリー)

これは2話の後の話を、ハリアー側の視点で書いたものです。





ショウやスイレンとのバトルに敗北し、スノーモービルで逃げるように・・・いや、文字通り逃げることになってしまったハリアーとハヤブサ。

「くうぅぅ〜、なんでだー!!!」

ハヤブサはポケモンバトルで勝てなかったことに相当腹を立てているようである。つーかこの性格なら当然だわな。他方、ハリアーはの方はたいしたことではないような感じでいた。

「まぁ焦るな。いきなり勝てるようなモンじゃないし」

ハリアーは彼をいなすように言っては見たものの、その効果は無いに等しかった。ハヤブサは「でも・・・」としか言わず、それきりで話は途切れた。スノーモービルの速度計は、依然として50マイル(80キロ)を僅かに超える速度を示し、下がる気配もない。正直なことを言うと、他人に気を使うのが苦手なのだ、ハリアーは。自分で突き進み、周りから支えてもらう方が、よっぽど楽なのである。ハリアーのほうは、バトルに負けること自体は苦にはならなかった。いろんな意味で仕方なかった。・・・後はもう、ため息しか出ない。

(非力だな、いろんな意味で)

自分を責めることしか出来ないハリアーは、自信の不甲斐なさに落ち込むことしか出来なかった。




そもそも、ハリアーたちステルス・コメットがシンオウに呼ばれることになったのは、ちょっとした理由があった。

あるとき、ステルス・コメットを管轄するトレーナー集団、ハイウェイSSS(スリーエス)のボス、トムキャット宛に1本の電話があった。その内容は「信頼できるトレーナーたちを派遣してくれないか」というものだった。電話の主は、ハヤブサの姉だった。トムキャットはその場で快諾したものの、当時のハイウェイSSSは、大学4年と高校3年だけの状態。グループ傘下の3つのチームのうち、進路確定率の最も高いステルス・コメットに白羽の矢が立ってしまったのだ。独立機動することでも有名だったし。自分たちを指名してきた理由は、ただ単に有名だからということだが、暴漢とかが寄り付いてこないわけじゃない。ハヤブサに恨みを持つ人間は少なからずいるからだ。

ハヤブサは3年前に数回の窃盗事件を起こした。結局、警察に就職した姉に捕まった。姉は姉で、警察になって初めての現行犯逮捕が、まさか弟だとは思っても無かったろう。地元でも有数の大地主の長男に生まれたハヤブサは、3歳のときからずっと英才教育を受けた。勉強が大嫌いな姉とは違い、ハヤブサは着実に知識をつけてきた。今では、17ヶ国語を読めるし、内日本語を含む5ヶ国語は会話も出来る。16歳のくせに、もとい、12の時には既に高校数学を完璧にこなした。漢検、英検、数検全て1級。天才にも程があるだろ!といいたくなるほどの天才野郎なのだ。ところが、13歳になって家を飛び出した。親との確執があった・・・としか聞いていない。家を出た後は、ポケモンアイテムの窃盗(子供が換金できるのはこういうのだけだし)を繰り返したらしい。

春先に彼に対し出た判決はそれなりに温情のあるものだった。禁錮1年半、執行猶予1年。今はその執行猶予の期間中だ。ただ、判決が出た後の彼は引きこもり状態で、夏場は1歩も外に出なかった。姉は、さすがにこれでは・・・と思い、何とか外出させようと考えた。結論として出たのが「社会復帰更生トレーナー制度」というもの。刑の軽い人間が社会復帰出来るよう、国が支援しているポケモントレーナー制度の更生プログラムだ。もちろん保護観察員がハヤブサに付きまとっているが、保護観察員はポケモンバトルに介入できないため、ステルス・コメットが呼ばれることになったのだ。




ここに来るまでにも、多少の問題があった。まずは、ハヤブサの手持ちについて。一応、姉が2匹(コイル・ポッポ)貸すことで決着が付いたが、あと3週間後には返さなくてはいけない。自力で捕まえたニャースとスボミーがいるけど、さすがにこの2匹だけでは心許ない。(ハリアーは手元に何匹かいるようだし、いざとなれば他のメンバーのポケモンを拝借すればいい)

次に、ハヤブサを除き、ステルス・コメットのメンバーはみんな18歳、高校卒業間近だ。メンバーのうち就職が決まったのが3人、AOでの進学が2人。後の4人は大学統一試験(センター試験)を受ける。その間、つまり、メンバーが不足しているときに問題が起こらないとも限らない。

ハリアーは子供もいる。16歳のときに産んだ子だ。この冬(ちょうど建国記念日)に2歳になる。去年の誕生日は、建国記念式典に反対する団体との抗争の末、大怪我をして一緒にいられなかった。

(・・・今年も無理かな、一緒の誕生日は)

兄夫婦に預けているのでさほど心配はしていないが、こんな親を子供はどう思うだろう。少なくとも、まともな親とはとらえてくれないだろう。

こうした山積みの問題点は、結局たいした解決法もない(充分に対策が練られていない)ままシンオウに来ることになってしまった。




不意に、ハヤブサがスノーモービルの速度を落とした。何か見つけたようだ。

「んにゃ?なんだあれ」

氷雪に覆われた道の上に黒っぽくて、まあるいのが転がっていた。どうやら丸まったヒノアラシのようだ。

「凍えてるのかね、拾ってあげるか」

そんなことを言ってるハリアーも、よっぽど寒そうだ。さっき雪を被ったからだろうか、鼻声気味だし、なんか歩き方もふらついている。

「・・・風邪、引きましたね・・・」

「うぇ・・・?うーん、そうかも」

ハリアーはヒノアラシを抱き上げた後、ケータイでどこかに電話を掛けた。

「拾ってくれ〜」

5分もしないうちに、ダブルキャブ(4人乗り)の2tトラックがハリアー達の前に到着した。




「った〜く、なーに風邪引いてんだよ・・・」

ダイムラーは呆れ返っていた。他方、バルキリーも呆れつつハリアーを自分の膝枕に乗せてあげた。ハリアーは顔が赤くなって、明らかに熱がある顔をしている。肩で息をしている感じで、おおよそ大丈夫な感じはしないが、当分様子を見ることにした。

「ん、と。104.55度(華氏。摂氏の場合40.3度)か。やけに高いね」

バルキリーはハリアーの体温を測ると、凍りかけの濡れタオルをハリアーのおでこに乗っけた。一緒に拾ったヒノアラシはハリアーに比べると幾分元気で、バルキリーの荷物を勝手にあさり、木の実をほおばっている。

「で、でも、これからどうするんですか?」

ハヤブサは今後にかなり心配した。ハリアーがダウンしてしまった以上、代わりの人間が見守り役として付かねばならない。動かないわけにもいかないし・・・。

「列車でも乗ったら?デザート・ウィンディっていうのがあるらしいよ」

観光にまったく興味のないはずのバルキリーが、観光雑誌を見ながら提案。確かに、やたら動かなくてもいいし、密閉空間なので暴漢も少ないだろう。安全なのが一番だ。

「デザート・ウィンディか・・・。俺らにとっちゃ高級品だな」

「1等2等がやたら高いだけよ。のわりに人気みたいだけど」

「ふーん、そっか。じゃあ・・・」

そんなやり取りをしているうち、宿泊所に付いた。そこには、他のメンバーも集結していた。とはいえ、心配するような声は殆どなく、今後についての指示を聞きに来ただけといった感じだ。ハリアーダウンの報は、とっくのとうにメンバー全員の耳に入っていた。

「とりあえず、今までどおりの動きでいい。考えるのも面倒だし」

ハリアーはもう何も出来ないといった感じの声でみんなに指示を出す。

「りょーかーい」

そう言いつつ、やれやれといった表情で終結したメンバーたちは、元の通り3人1組のチームで散っていった。




とりあえずツインの部屋を取って、ハリアーの看病が1人付くことに。さすがにハリアーは消耗しきっているようだ・・・。「もぉだめ」といって部屋に入るなりベッドに倒れこんでしまった。ヒノアラシはハリアーに拾ってくれた恩返しをしたいのだろう、彼女のボールにいつの間にやら納まっていた。ハヤブサともう1人は、デザート・ウィンディの切符を購入し、列車旅を楽しむことに。お金はどっから出るのかって?気になさるな。さて、ハリアーとハヤブサの行動は決まった。残る2人はどっちがどっちに付くのか。

当初、ハヤブサはバルキリーと行動することになっていた。というより、ダイムラーが頑なに拒否していた。理由は「何でむさい野郎2人で豪華列車に乗らなきゃならないんだよ?」との事・・・。ま、わからないでもない。だがチームの策士、イーグルがスイレンの写真をどういうわけか入手、というより盗撮していた。その結果・・・。

「この子に限んないけど、こーゆー可愛い子とお近づきになれるかもよ。この写真のはスイレンちゃんっていってたかな」

「うぉぉ!!?俺好みの美しいお姉さん!!!」

と、あっさりのせられ、ハヤブサと共に列車にのる事に賛成してしまったのだ。だが、そこはダイムラーもちょっと考えて、自分だけ2等個室を取り・・・ハヤブサと保護観察員3人を3等のセミコンパートメントに放り込んだ!!!

「な、なんでー!!?ひどいじゃないかよ!!!」

ハヤブサが文句を言うのも頷ける。傍から見ても理不尽だ。が・・・。

「いーの。子供は大人しく(この言い回しって不思議だよね)言うことを聞きなさい。俺は女の子と旅を楽しみたいの」

ダイムラーは最早、心ここにあらずという感じで悪気も無く言ってのけた。

因みにイーグルはどこでスイレンの写真を撮ったのか・・・。本人曰く「企業秘密」だそう。何のためにと聞くと「ダイムラーを動かしやすいのよね」だそうだ。名前を知っている理由は、盗撮の際に聞いちゃった〜、との事である。現像が早いって?今はデジカメという文明の利器があるのだよ。

ダイムラーは出かける前に、自身の持つメタモンをハリアーの倒れているベットの上に広げてあげた。あったかいかも知れんが重たそうだ。

「ちゃんと大人しく寝てろよ。子供じゃないんだから。(いい大人って年でもないけど)」

そう言い残し、ハヤブサとダイムラーは、デザート・ウィンディの乗り場に向けて、宿を後にした。




野郎2人がいなくなってから、浴衣に着替えたハリアーは、とりあえず布団にもぐった。とはいえ・・・。言いたいこと、やりたいことはたくさんあるようで。

「頭痛い、気分悪ぃ」

「当たり前じゃん」

「重い・・・」

「仕方ないじゃん」

「ホットウィスキー欲しいよ〜・・・」

「あったかいココアならかって来たげる」

「煙草吸いたい・・・」

「駄目!!」

「・・・ちょっと外行って涼みたい。熱い」

「駄目ったら駄目!!!」

「温泉入りたいよ〜〜〜〜」

「駄目なモンは駄目!!」

「じゃあ・・・内湯でいいから」

「いい加減寝てよ!!!!!!!」

「ん〜、じゃあさぁ・・・(他になにを思いつくのだろう)」

「考えてもなにしても駄目なモンは駄目よ」

「うぅ〜〜〜〜〜〜」

「あきらめて寝なさいっ」

必死で駄々をこねるハリアーだが、全てバルキリーに一蹴されてしまった。いつも昼寝ばかりしているバルキリーにここまで言われたくないが・・・仕方ない。普段泣き言を口に出さないハリアーも、こういったときだけはかなり子供じみたことを言う。都合のいいときだけ甘えたいというわけだ。だが、あきらめて寝るにも体が熱くて意外と寝付けないのである。結局ずっとうかされっぱなしで、ようやく寝たのは宿についてから5時間たってからだった。

果たしてハリアーはいつぐらいに風邪が治って、再登場してくれるのか。ハヤブサとダイムラーの異色コンビは今後どうなるのか。個人的に楽しみではありますな。






用語解説/
ステルス・コメット:ハリアーたちの所属するトレーナー集団。構成員は9名で、ハヤブサは所属していない。結成当初は4人からのスタートで、チーム移動や加入希望者の受け入れで、現在の9名体制がとられている。9人まとまっての活動はほぼ皆無で、本文中にもあるとおり3人の小隊3つで動くことが多い。チームリーダーはハリアーだが、実際はハリアーが自ら前線に立つことが多く、また、メンバー全員からバカにされている感があるので、リーダーとしての力を発揮できてない。

ハイウェイSSS(スリーエス)グループ:ステルス・コメットが籍を置いているトレーナー集団の集合体。正式名称はハイウェイ・スーパー・シューティング・スター。中にステルス・コメットを含む4チーム、計30人が所属する。元々はストリート・シューティング・スターズという10人程度のチームだったが、他チームの吸収や加入希望者の増加に伴い、4チームに再編しグループ化、現在に至る。現在の構成員のうち、大学4年生が10人、高校3年生が20人で、受験や就職を控え解散する見込みだったが、一部の活動を縮小する形で存続することになる。理由は次回にでも書ければいいかなと思ってはいるが。

社会復帰更生トレーナー制度:先にも書いたとおり、国が、刑の軽い若者の社会復帰を支援するシステム。通常は刑期終了後に行うが、希望により執行猶予期間中に行うことも出来る。尚、一般人への攻撃をしないよう、保護観察員2ないし4名が付きまとうが、常時監視されることも問題になっている。そこまでやっておきながら、保護観察員はポケモンバトルに介入しない。しかも、期間中はジム戦、公式大会への参加は出来ないなど制約も多く、あまり普及していないと言われている。

 

[一言感想]

 今回は、にょろさんが書かれたサイドストーリーでした。
 ハリアー編……これはこれで十分アリですね。
 しかし、さすがに子持ちだとは思わなかったです。
 そして、浴衣姿というのは良いものです(ぇ)。

 

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