―――きっかけは、言うまでもなく俺が無力だった事だ。

―――あの時は、大会に優勝したという奢りがあったからなのかもしれない。

―――だが、理由はどうであれ、事実は変わらない。

―――ポケモン達は全てを失い、俺は約束を果たすことが出来なかった。

―――兄さんは、失った能力を復活させられるとしたら、俺自身に眠るという天属性の力だけだと言った。

―――理由は深く教えてはくれなかったが、ジョウト地方に行けば全てが解ると言う。

―――それに、ジョウト地方でも大会がそろそろ開催されるという話を聞いた。

―――まるで、運命に誘われるかのごとく…。俺は一路、ジョウトに向けて旅立つことになった。

―――もう一人の仲間と共に…。



















 『始まりを告げる風が吹く町』。
 そう呼ばれるここは、ジョウト地方東部に位置する小さな町、ワカバタウン。
 今、この町に二人の少年少女が足を踏み入れた。

「マサシ君、ついたわ。ここがワカバタウンよ!」

「走るなって、ナギサ。また迷うぞ」

 最初に、緑髪のポニーテールの少女が走って町に駆け込んだ。
 次に、それを静止する言動をしながら、ゆっくり歩いて茶髪の少年が町に入ってきた。
 前者はこの町出身の少女、ナギサ。
 後者は遠方からやってきた少年、マサシ。
 この二人は、今迄ずっと一緒に旅を続けてきた。

 しかし、その一緒の旅は突然に終わることになる。
 そのきっかけは、ナギサ自身が作ったと言っても良い。

「ねえ、マサシ君」

「どうしたんだ?ナギサ」

 町に着いてからというもの、子供のようにはしゃいでいたナギサが、急に真剣な表情になった。
 その急激な変化に、マサシも若干戸惑っている。

「私、ここに来るまでに…。ううん、違う。あの時、マラギシティ(大会が開催された街)でR団と闘ったときからずっと考えていたことがあるの」

「…?」

「私、あの時何も出来なかった…。マサシ君と出会ってからも、ずっとポケモン達と一緒にトレーニングとかはしてきたし、少しは強くなったって思ってた。だけど…」

 そう、彼女はあの時、マサシを助けるつもりでR団と闘った。
 しかし、それが逆に彼の足を引っ張ってしまったことがずっと彼女の心の中で引っ掛かっていたのだ。

「マサシ君と一緒だと、やっぱり自分に甘くなっちゃうと思うの。だから、この町で一旦マサシ君から離れようと思うの」

「!」

 唐突も無く、衝撃の発言を聞いた。
 そのせいで、マサシは動揺に近い感情で心の中が一杯になってしまった。

「私は、一人でやってみたい。自分一人の力で、どれだけ強くなれるのか試したい。マサシ君に、少しでも多く近付きたい!」

 今迄と違い、彼女は自分の気持ちをはっきりと言葉にしている。
 それだけじゃなく、彼女の台詞の一つ一つから彼女の確固たる意思を、マサシは感じ取っていた。

「解った。だが、お前も知っての通り俺のポケモン達はあの時、能力回帰・究極段階『エクストラレベル』を使ったせいでレベルが一気に下がっている。その上、瞬間連射・能力回帰・スペイザー、これらの技が使えなくなってる。案外、お前が俺を超えるのはすぐかも知れないな」

「それじゃ駄目なの!私は、トーホク大会の時に見せてくれた、あの最強だったマサシ君を超えたいの!」

「………そうか。なら、俺もこの地方でやるべきことをしっかりやらないとな」

「…そうは言うけど、あの大会からもう1年も経ってるのよ?ユキヤ君と闘った時程じゃないにしても、少しは力戻ったんじゃない?」

「いや、それが…。アヤの事で頭が一杯で、修行に専念できなかったんだ…」

 大会期間中、マサシはアヤと一緒にホウエン地方を共に旅する約束を交わしていた。(トーホク篇第20話参照)
 が、マサシは自分に力を戻すことを優先してしまった。
 結果、アヤとの約束を果たす事が出来ず、現在に至っている。

「…」

 何て言葉をかけたらいいのか解らない。
 マサシの口からアヤの事を聞いた途端、彼女は言葉に詰まってしまった。

「俺は、果たしてこの選択をして正しかったんだろうか…」

「ねえ、マサシ君…。ここに来る途中、私に言ってくれた言葉、憶えてる?」

「…?」

「『どんな理由があったとしても、この選択は俺の意思だ。だから俺は、この道をずっと進んでいく。』 そう言ってたでしょ?」

「!」

「マサシ君らしくないよ?昔のことで、ずっと迷ってるなんて…」

「そうだったな…。確かに俺は、アヤとの約束は果たせなかった。だけどその代わり、あいつとはもう一つの約束を交わしたのを思い出した」

「もう一つの約束?」

「ああ。あいつがホウエンに旅立つとき、俺は見送りに行ったんだ。その時、『伝説の地で頂点を決めるときに最後の決着をつけようね!』って言っていた。それで、俺はやっと思い出したんだ。俺がジョウト地方に来たのは、そのもう一つの約束を果たすためだということが!」

「マサシ君!」

「迷いは吹っ切れたさ。俺はこのジョウト地方で必ず全てを取り戻し、伝説の地に行く!」

「良かった。やっといつものマサシ君に戻ったわ」

「ナギサ、ありがとうな。俺は、そろそろ行く」

「うん。マサシ君、頑張ってね。このジョウト地方のトレーナーは、トーホクよりも格段にレベルが上だけど…。きっと大丈夫だよ」

「ああ。じゃあ、お互い頑張ろうな」

 その言葉を最後に、彼は駆け出した。
 新たな冒険の舞台、広大なジョウト地方に向かって。
 途中、彼は後ろを振り返り、ナギサに手を振った。
 その時の彼の表情は、とても活き活きしていたという。







チャレンジ・オブ・マスターズ    ジョウト篇
第1話
始動  新たな旅の始まり







 ブオオオォォォ


 大きな船が汽笛を鳴らしながら、港に到着した。
 その船の甲板に、不思議な雰囲気を漂わせる少年が立っていた。
 綺麗に整えてある黄緑色の髪の毛。
 そして何より目を引くのが、左右で色違いの瞳であるということ。
 右の瞳が茶色、左の瞳が緑色をしていた。

「…」

「どう?その眼で、ちゃんと『反応』は感じ取れた?」

 ふと、彼の背後から一人の少女が姿を見せた。
 背丈と年齢は、少年と大差ない。
 青色の髪の毛、セミロングの少女だ。

「美紀(ミキ)…。うん、弱々しいけど、確かに反応はあるよ。『あいつ』の存在が…」

「…ねえ、俊(シュン)。今更だけど、本当に勝つ自信があるの?」

「勝つ自信云々の問題じゃないことは良く解ってるだろ?あいつは、絶対に許されないことを犯した。絶対に、倒さなければならない敵なんだ」

「そう……だったわね。その為に私たちは、わざわざシンオウからこんな所まで来たんだもんね」

「そう。僕は奴を倒し、使命を果たす」

 そこまで話した時、彼等二人は何かの鼓動のような物を感じ取った。
 その直後、二人は船を下りて走り出す。

「ミキ、感じた?さっきの波動は…」

「天属性のエネルギーだわ。だけど、どうして?何でこんな所で、天属性の波動が…」

「今から4年前、ある人物に力の一部を引き渡したって兄さんが言ってたけど…」

「シュン、その人の名前って確か…」

「………リュウイチさんだよ」




















 一方。
 マサシはこの1年間で新しく手持ちに加えたポケモン達の実力を見るため、バトルを行っていた。
 出しているのは、フローゼル。
 相手のトレーナーは、ヤミカラスを繰り出している。

「フローゼル、『アクアジェット』!」

 マサシの指示を聞き、攻撃の姿勢に移る。
 自分の周囲に大量の水を発生させ、その状態を維持しながらヤミカラスに向かって突進!

「ヤミカラス、『あくのはどう』!!」

 対するヤミカラスは、翼に溜めたエネルギーを、羽ばたきながらこちらに向けて放ってきた。


 ズドドドドドドッ!!


 怒涛の攻撃にで、フローゼルは吹き飛んだ。
 しかし、空中で姿勢を持ち直し、尾を振り抜きながら星型の無数のエネルギー弾を発射した。

「『スピードスター』かっ!」

 とっさにヤミカラスは翼を自分の体の前に広げて防御姿勢を取る。
 かなりのスピードで接近してくるため、回避が間に合わないと判断しての行動だった。

「攻撃を受けながらも反撃してくるとは…。中々やる」

「『ソニックブーム』!!」

 先程と同じ攻撃モーションから、今度は衝撃波を飛ばした。
 しかも、自分の体のサイズの2倍はある特大の『ソニックブーム』を繰り出した。

「ヤミカラス、『ナイトヘッド』!!」

 フローゼルの攻撃に対抗するべく、紫色のエネルギーを溜め、光線として発射!
 両者の間で、互いの技が命中した。


 ドゴォォォンッ!!


 しかし、フローゼルの『ソニックブーム』がヤミカラスの攻撃を打ち破った。
 そしてそのまま一直線にヤミカラスに直撃した。
 その攻撃でヤミカラスは墜落、戦闘不能となった。

「次だ!」

 今度は、エルレイドを繰り出す。
 格闘、エスパー両方の技を使えるバランスの取れたポケモンだ。

「だったら俺は、エレキブルで行く!」

 マサシもポケモンを入れ替えた。
 新たに放ったボールの中から現れたのは、全身に虎模様のあるエレキブルだ。

「エレキブル、『かみなりパンチ』!!」

「エルレイド、『サイコカッター』!!」

 エレキブルは電撃を纏った右拳で殴りかかる。
 対するエルレイドは、実体化させた念のエネルギーの刃を右腕の先端に発生させて斬りかかった。


 ガキィィィンッ!!


「エレキブル、もう一発!」

「エルレイド、また来る!!」

 こうして、両者お互いに一歩も譲らない肉弾戦が始まった。
 どちらもすさまじい勢いで攻撃を続けるが、ここ一番の決定打が与えられない。
 このままでは決着がつかない。
 そう判断した二人は、同時に距離を取る指示を出した。
 そして、同時に新たな技の指示を出す。

「エレキブル、『かみなり』!!」

 直後、エレキブルはジャンプ。
 地上のエルレイドに向かって懇親の雷撃を発射した。

「エルレイド、『サイコキネシス』!!」

 お互いに、それぞれのタイプの技の中で最強レベルの技を繰り出した。
 エレキブルの雷撃とエルレイドの念の衝撃波は、完全に拮抗していた。

「エレキブル、『でんこうせっか』!!」

 ところが、突如として上空にいたはずのエレキブルが視界から消える。
 数秒後、エルレイドの背後にその姿はあった。

「なっ!?速っ…」

「エレキブル、『ギガインパクト』!!」

 直後。
 エルレイドは自分の体がバラバラになるような感覚を起こすほどの凄まじい打撃攻撃を受けた。
 その余波で、凄まじい勢いで吹き飛んだ。


 ドォォォォォンッ!!


 無論、いうまでもなくこの強烈な一撃を食らって立っていられるはずも無く…。
 エレキブルは全身ボロボロで倒れていた。

「勝った…!!」

 このタイミングで初めて、マサシは自分が勝利したのだという実感を持った。

「参ったな。こんなに強いなんて…」

「こっちも、この2匹は修行の時意外に闘わせた時以外はこのバトルが初めてだったんだ。だけど、よくやってくれたよ」

「じゃあ、僕は行くよ」

 こうして、相手のトレーナーは立ち去った。
 マサシも荷物を纏めてこの場を出発しようとした。
 その瞬間…。

「ここだよ。ここから、さっきの波動が…」

「!?」

 マサシの前に先程の二人組、シュン・ミキが現れた。
 この出会いこそ、これからジョウト地方で巻き起こる新たな戦いの幕開けとなる。


続く


後書き
というわけで、遂に新シリーズ突入です。
今迄の仲間と別れ、一人新たな土地での旅が始まりました。
とかいいつつ、早速の新キャラと新しい伏線を作ると言う暴挙(違)。
まあ、いいか(蹴)。
後、マサシの手持ちポケモンが第1章の時と比べて大幅に変更されています。残りのメンバーに関しては、今後じっくり明かしていきたいと思っています。
では最後に次回予告。
次回、ジョウト篇第2話『邂逅 運命の出会い』。お楽しみに。

 

[夜波雪さんの一言感想]

 ※元々1話だけ載せられていたので頂いてきました。

 新シリーズ……私結構ジョウト地方好きなんで楽しみです♪
 つっても自分の小説でジョウトの話書いてないけd……(ぁ)
 マサシとナギサの2人旅……かとも思いましたが、どうやら別々に旅をするみたいですね。
 個人的にはナギサの活躍も見たい……(何)
 さて、新たなキャラが登場しましたが、一体彼等は何者なのでしょうか……?

 

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