―――全ては、運命に導かれていたのかもしれない。

―――俺がこのジョウト地方に来たことや、彼・シュン達との出会い。

―――そしてこのジョウトで巻き起こる新たな戦い。

―――まるで、俺がジョウト地方に来たことを皮切りに、全てが動き始めたような…。

―――無論、俺は最初にシュンと出会った時、これが運命の邂逅(かいこう)である事など知るはずも無かった。

―――それを知るのは、もう少し後になってからの事だった。














 先程ポケモンバトルを終えて、マサシは出発の支度を整えていた。
 そこへ突然、謎の少年少女の二人組が現れた。

「君は…?」

 最初に、マサシが言葉を発した。
 いきなり見ず知らずの素性のわからない人間が現れたのだから、そう訊くのは至極当然だ。
 だが、相手もまたマサシのことは何も知らない。
 同じ質問がマサシに返ってきた。

「俺は、マサシ。見ての通り、普通のポケモントレーナーだ」

「普通の…?だけどさっき…」

 その時、先程の船上の時と同じ鼓動のようなものをシュンは感じ取った。
 そして、その根源がマサシであることを、彼は直ぐに理解した。

「嘘は止めてよ。何で君が『天紋(ファルマ)』を持ってるの?」

「…!」

 『天紋<ファルマ>』。
 その言葉を聞いた途端、マサシは警戒の表情を見せた。
 その存在はリュウイチを含め、今から4年前に終焉の道標<エクストレーム>と戦った者にしか知られていないのだから。
 つまり、その存在を知っていると言うことは、敵である可能性も大きい。
 無論、それは彼も同じ。
 しかし彼は、マサシとリュウイチが兄弟だという事を知らないだけである。



「お前、何で天紋<ファルマ>の事を知っている?」

「訊いてるのは僕だよ。話さないなら、力ずくでも渡して貰うからね」

「…!」

 その直後。
 突然彼の上空から一匹のピジョットがマサシ目掛けて風を纏いながら突進してきていた。

「ピジョット、『エアーダイブ』!!」

「くっ!フローゼル、『アクアジェット』だ!!」


 ズゴォォォォッ!!


 風を纏い突進したピジョットと、水を纏って突進したフローゼル。
 この2匹が激突した瞬間、強烈な衝撃波・突風、水飛沫の3つが辺り一帯に広がっていった。






チャレンジ・オブ・マスターズ   ジョウト篇
第2話
邂逅 運命の出会い







 真っ向から激突した2匹だったが、徐々にピジョットがフローゼルを力で圧倒し始める。
 フローゼルも負けじと踏ん張るが、何分相手の力が異常に強かった。
 必死の抵抗も空しく、その身体は吹き飛ばされていった。

「フローゼル、『クロスウェーブ』!」

 マサシは、聞き慣れない技名を指示した。
 だが、フローゼルはその意味を理解しているようで攻撃の動作に入った。

 自分の尾を横に振りぬき、衝撃波を相手に向けて飛ばした。
 ごく一般的な『ソニックブーム』だった。
 しかしその直後、今度は尾を縦に振りぬき、風の渦から生まれた刃を相手に飛ばした。
 今度は、『かまいたち』という技だった。
 そして先程繰り出した衝撃波と合わさり、巨大な一つの衝撃波となってピジョットに牙を剥いた。

「ピジョット、『風渦の壁<ジャイロシールド>』!!」

 ピジョットは、羽ばたきながら自身の眼前に風による防御壁を作り出した。
 それでフローゼルの攻撃を防ぎにかかったのだが…。

 フローゼルの攻撃は想像以上に強いのか、じりじりと押され始めていた。

「風渦の壁<ジャイロシールド>が保たない!?ピジョット、こうなったら『エアブレイク』だ!!」

「……!?」

 突然の事だった。
 ピジョットが繰り出した、今までとは桁違いの勢いと威力を誇る暴風。
 それが、一気にフローゼルの繰り出した衝撃波を突き破ったのだ。

「『クロスウェーブ』を、突き破って…!」

「無駄な抵抗だよ。僕のピジョットには、そんな甘い攻撃は届かない。さあ、解ったら観念して大人しく…」

「後ろが、がら空きだ」

「!?」

 刹那。
 ピジョットの背後から、巨大な衝撃波が炸裂した。
 突然の出来事に、ピジョットは空中で姿勢を持ち直す事が出来ず、地上に墜落した。
 そして、ピジョットの飛んでいた場所の背後にはフローゼルが回りこんでいた。

「『でんこうせっか』…!あの一瞬で、後ろを取られた…!?」

「確かに、真正面からのぶつかり合いでは分が悪い。だが、それならそれで別の攻撃手段を選べばいいだけの話だ」

「ふうん。やっぱり、解ってた事だけど一筋縄ではいかないね。流石は、終焉の道標<エクストレーム>って所かな」

「…ちょっと待て。お前が、終焉の道標<エクストレーム>じゃなかったのか…?天紋<ファルマ>の事を知ってるから、てっきりそうかと…」

「あ〜〜〜、思い出した!!!」

「「?」」

 今迄、この戦いを傍観していた少女、ミキが突然大声を上げた。
 それに反応して、マサシとシュンも戦いの手を止めてしまった。

「マサシって、何処かで聞いた名前だと思ってたけど…。貴方って、リュウイチさんの弟のマサシ君でしょ?」

「!」

 ミキの言葉を聞いて、シュンは驚いた表情でマサシの方を向き直った。
 一方のマサシも、リュウイチの存在を知っている事に驚きを隠せないでいた。

「何で、兄さんの事まで…。終焉の道標<エクストレーム>じゃないのなら、お前達は一体…」

「僕は、俊(シュン)。僕の兄ちゃんはリュウイチさんと同じ、今から4年前に終焉の道標<エクストレーム>と戦った仲間なんだよ」

「! という事は、互いが互いに敵だと勘違いしていた…?」

「どうやら、そうみたいだね」

 落ち着きを取り戻し、ピジョットをボールに戻すシュン。
 それを見たマサシも警戒を解き、フローゼルをボールに戻す。


 勘違いから勃発した戦いも、一先ず終末を迎えたのだった。











 シュン達が、4年前に終焉の道標<エクストレーム>と戦ったメンバーと関わりを持つと知ったマサシは、色々と話を聞くことにした。
 そのため、彼らは近くにあったポケモンセンターに足を運んでいた。

「マサシ君…だったっけ」

「呼び捨てでいい」

「うん。じゃあ、マサシは4年前の戦いの事について、どれ位知ってるの?」

「魔蝕害症<アロガルナビルス>…いや、全ての魔の属性の根源とも言うべきポケモンを巡る戦い…だったか」

「うん。4年前は、寸前の所で兄ちゃん達が勝利したんだ。だけどあの時、終焉の道標<エクストレーム>が滅びていなかったなんて、多分誰も予測してなかったよ」

「そうだな。それに、奴らはとてつもなく強い。もし今の状態でまた『奴』に襲われたら一溜りも無い…」

「え?マサシって、終焉の道標<エクストレーム>のメンバーと戦った事があるの?」

「それも、幹部級とな」

「!」

 驚愕。
 シュン・ミキの二人の頭の中はそれ一色で染まっていた。
 彼らも、敵の強さをよく知っているが故だった。

「最も、奴を退けるために使った『あの力』の代償として、今はほとんどの能力が失われているけどな」

「どんな力使ったのか解らないけど、凄いよ!あの『八素統』と渡り合えたなんて!」

「まあ、俺はその失った能力を復活させる可能性があるって、兄さんから聞いてジョウト<ここ>へ来たんだ」

「そうだったんだ」

「ところで、そっちの女の子は?」

「ああ、彼女は…」

「シュンの姉のミキよ。よろしく」

 シュンの言葉を遮って、勝手に自己紹介するミキ。

「姉弟か」

「さっきは本当にごめんね。シュンって思い込みが激しくて、時々ああなっちゃうの」

「迷惑だな(汗)」

 と、何処かズレた方向に話題が向きつつあった。

「ところで、終焉の道標<エクストレーム>を知ってるって事は、何か手掛りをつかんでこのジョウト地方に来たのか?」

「あ、そうだった。こんな所でのんびりしてる場合じゃなかった!」

「え?」

「実は最近、このジョウト地方でR団が不穏な動きを見せてるの。特に略奪行為をするわけでもなければ、不規則にジョウト地方のあちこちに姿を現してる」

「R団!? ひょっとして、その活動に終焉の道標<エクストレーム>との繋がりが…?」

「解らない。だけど一つだけはっきりしてる事があるの。R団が出現した場所は必ず氷に閉ざされている。それも、永遠溶けそうも無いほどの強烈な冷気で作られてるって話なのよ」

「そんなレベルの氷なんて、四天王級でも扱えるかどうか解らないんだよね…。そんな事をやってのける連中といえば…」

「終焉の道標<エクストレーム>…か」

「うん。そして私達の推測が正しければ、このジョウトでのR団の暗躍の裏には長年私達が追い続けてきた『敵』が一枚噛んでいる。だからこそ、私達はシンオウから遥々このジョウトにやってきたって訳」

「成る程…。だが、そうなると俺も迂闊に大袈裟な行動が出来ないな…。奴らも俺がこのジョウトに来ていることを知れば、問答無用で襲ってくるかもしれないからな…」

「まあ、とりあえず色々と話を聴けて良かった。終焉の道標<エクストレーム>絡みでここに来たって事は、また会う可能性があるな」

「気をつけてね。このジョウト地方に居るR団、相当レベルが高い連中の集まりだって噂だから」

「ああ。それじゃあ、またな」

 と、会話を切り上げてマサシはポケモンセンターを後にした。
 だが、心なしかその表情は若干の曇りが見受けられた。

 終焉の道標<エクストレーム>。
 奴らがこのジョウト地方の何処かで暗躍していると言う話を聞いたからなのかもしれない。

「(今のまま、とても奴らに太刀打ちする事は出来ない…。遭遇しない事を祈るしかないな…)」

 心の中でそう呟きながら、マサシは東西に伸びる道を、西へ向けて一直線に歩いていった。







「話さなくても良かったの?僕らの追っている『敵』の事」

 一方、先程の二人組はマサシとは別の方角へ向けて歩いていた。
 進行方向は、北のようだ。

「まだ確定したわけじゃないし、何よりこれは私達の問題よ?彼を巻き込む事は出来ないわ」

「だけど、連中はマサシを狙ってる。だとしたら、必ずあいつも関わってくると思うんだ」

「どっちにしても、まだ結論は出せないわ。まだ、何も解ってないんだから…」

「…」

 それっきり言葉を発しなくなったシュン。
 ミキもそこで会話をとめて、そのまま進んでいった。




























 そこは、何処かの山中と思われる場所。
 周囲には、高い山がいくつも聳え立つ光景が広がっている。
 そしてこの場所も、薄い空気と冷たい風が大気を支配している場所。
 相当標高が高い場所のようだ。

「これで、良し」

 よく見るとこの場所、周囲一面が氷で覆われている。
 そしてこの場に、黒服・赤いRの文字が刻まれた格好の人物たちが密集していた。

「よくやったね。これで、計画の半分は達成された」

 そんな彼らの背後から、スーツを着た女性が姿を現す。
 空色の髪の毛をした、神秘的な雰囲気を思わせる雰囲気。
 だがそれ以上に、不気味な雰囲気を漂わせている。

「これで、やっと折り返し地点だ。『儀式』の準備は着々と整いつつある」

「マニス様。次はどちらへ?」

 ふと、下っ端のうちの一人が、現れた空色の髪の毛の女性に声をかけた。
 その女性、マニスは次の言葉を返した。

「次は…、南の方にでも行こうか。ヨシノシティ辺りだ。そこで、6箇所目だ」

「確か、このジョウト全域・10箇所で全ての準備が整った時…」

「ええ、そうよ。その時こそ…」














―――ジョウト地方が、滅びる時…。



続く


後書き
う〜ん、どうにもネタが浮かばなくて短めになってしまった今回です。−−;
でも、とりあえず思いついた内容は書くことが出来たので、良しとします(ぇ)。
というか、余計に謎を深くしただけなんじゃないか!?今回(爆)
R団の暗躍、シュン達がジョウトへ来た目的など、不明な部分もありますが、頑張って執筆していきたいと思います。
次回、ジョウト篇第3話『暗躍 蠢く悪意』。お楽しみに。

 

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