―――終焉の道標<エクストレーム>の脅威は、着々と世界中に広がり始めている。

―――俺が今居るジョウト地方でも、それは変わらない。

―――現在、R団が不穏な動きを見せていて、それが直接奴らに結びついているかはわからない。

―――ただ、嫌な予感がする。

―――杞憂だといいんだが…。










 ワカバタウンを出発し、約半日。
 途中、シュン達との出会いを経て、マサシは無事に隣町・ヨシノシティに到着した。

 ヨシノシティ。
 北と東に道が伸びていて、町の西端には海岸線が広がる町。
 これといった特徴も無い、ごく小さな町だった。

「ふう。結構ワカバタウンから距離があったな」

 現在、マサシはポケモンセンターで休憩を取っている。
 というより、自分の手持ちポケモンをポケモンセンターに預け、その回復迄の時間を潰しているだけ。
 中でも特に、フローゼルの消耗が大きかった。
 シュンのポケモンとあれほどの戦いをしたのだから当然と言える。

「それにしても、ナギサの言ってた事は本当だったな…」

 ふと、マサシの脳裏にナギサの言葉が蘇った。







”このジョウト地方のトレーナーは、トーホクよりも格段にレベルが上だけど…。きっと大丈夫だよ”







「確かに、これまでに何人かのトレーナーと戦ったが、その誰もが強かった。油断してたら、一気に敗けそうな位だった」

 マサシはジョウトに旅立つ迄の1年間、それなりに修行はしてきた。
 しかし、ワカバタウンでナギサにも語ったとおり、アヤの事が脳裏に引っ掛かり、十分な修行が出来ていなかった。
 それでも、ある程度自分で自信が持てる域に達したと感じていた。

「俺も、まだまだだな。まあ、今後少しずつ頑張っていくしかないか」

 丁度そんな時だった。
 マサシのポケモン達の回復が終了した。

 ポケモン達が入ったモンスターボールを返却してもらい、ポケモンセンターを後にした。
 しかし、彼は気付かなかった。
 ポケモンセンターに居た間、ずっと彼を監視していた怪しい存在が居た事を…。






チャレンジ・オブ・マスターズ   ジョウト篇
第3話
暗躍 蠢く悪意






 ポケモンセンターを出たとは言っても、時刻は既に夕暮れ。
 今から町を出るわけにもいかず、結局町を散策する事になった。
 マサシの故郷、フヅカタウンとあまり変わらない町の風景。
 それでも、活気に溢れた住人達、押し寄せては引く波の音。
 雰囲気は悪くなかった。

「しかし、このジョウトで天属性の覚醒の切欠があるって兄さんは言ってたけど、見当もつかないな…。はぁ…」

 気がつけば、マサシは海岸に足を運んでいた。
 そんな海岸と共に見える夕日が、何とも幻想的だった。

「まあ、このジョウトを旅していれば何か解るかもしれないな」

 と、言葉でそう結論をだしたが、そうやって強引に結論を導かなければ、解の無い問いにずっと悩み続けていたかもしれない。
 そう思ったからこそ、強引に思考を止めて歩き出したのだ。

「さて、明日はキキョウシティ辺りだな。R団の動きも気になるが、考えていても仕方が無い」

 マサシは、再び町中へと足を運ぶ。
 観光気分で、ヨシノシティを満喫したのだった。










 #翌日




 マサシは、とある異変を感じて目を覚ます。
 妙に、寒い。
 真冬の朝のような、全身を突き刺すような猛烈な寒波。
 それが、彼の睡眠を妨害したようだ。

「何で…、こんなに寒いんだ…」

 とりあえずコートを着て、マサシはポケモンセンターを飛び出した。
 その外では…。

「雪……だと!?」

 そう。
 空は灰色の雲に覆われ、天から真っ白な雪が降り注いでいたのだ。
 しかも、足の膝辺りまで埋まりそうなほど、地面には雪が積もっていた。
 当然、ポケモンセンターの出入り口の自動ドアを開けた際、その積雪の一部が建物の中に入り込んできたわけで…。

「おあああああっ!!?」

 一瞬驚くが、それほど高く積もっていたわけでもなかったので大事にはならなかった。

「何で雪が? 昨日まで、あんなに晴れていたのに…。 …ん?」

 と、そんな中マサシは町外れの方角でユキワラシに指示を出す怪しい人影を発見した。
 その影は、大きなRの文字が刻まれた衣服を身に纏っていた。

「(R団…?こんな所で一体何を…)」

 考えるまでも無く、マサシは飛び出した。
 R団の存在がちらついている以上、必ず何かしら企んでいる。
 そのことは、今迄の経験から安易に想像する事が出来た。

「…ん?」

 一方で、そのR団も向かってくるマサシの存在に気がついた。

「あれは、天紋<ファルマ>の持ち主のマサシ…!ユキワラシ、『こごえるかぜ』!」

 ユキワラシは、マサシ目掛けて冷気の風を放つ。
 マサシはそれに気付き、横に跳んで回避。
 …しようとしたのだが、雪に足を取られてそのまま転んだ(爆)。

「ぶっ!?」

 このままでは満足に動けない。
 そう考えたマサシは、とある一つのボールを手に取った。

「マグマラシ、頼む。『ヒート』!」

 中から出てきたのは、マグマラシ。
 1年前、アヤから約束の証として渡されたヒノアラシが成長した姿だった。
 そして背中から炎を出すと、周囲の雪をある程度溶かしていった。

「ふう。お前も親譲りで中々凄い炎を出すな」

 コクッと、マグマラシはうなずいた。
 その後、R団の方に向き直る。

「マグマラシ、『かえんぐるま』!!」


 ドゴォォッ!


 全身に炎を纏ったマグマラシの体当たり。
 親譲りのそのパワーで、相手のユキワラシを一撃でKOした。

「くそっ!ここは一旦逃げる!」

 そう言い放ったが最後。
 R団は海に出ると、ボートを駆って沖の方へ逃げ去っていった。

「逃げたか…。だが、R団がどうしてこんな町に居たんだ…。何かあるのか…?」

 まだ終わっていない。
 この後も、さらに何か悪い事が起きそうな予感がしていた。
 その証拠に、ヨシノシティ上空の雲行きはどんどん悪化していった。







 やがて、吹雪と遜色ないほどにその勢いは強くなる。
 無論、こんな天候で外を出歩く愚か者などいない。
 町中には人の姿は全く見当たらなかった。
 マサシも、一度ポケモンセンターに戻ってきていた。

「雪、止むどころかますます強くなってるな。このままじゃ先に進めない…」

 焦ったところで、状況は変わらない。
 なので、マサシは雪が止むまでセンターで待機するしかなかった。

 とりあえず、マサシはセンター内の宿泊している部屋に戻った。
 そこの窓から外を眺めていた。

「雪……か」




―――そういえば、昨日会ったあいつ、シュンだったか。

―――あいつ、R団がこのジョウトで暗躍していると言ってたな。

―――そしてその後は必ずといって良いほど氷に閉ざされている。

―――もしかしたら、今回の異変もあいつが言ってた事と同じなんじゃ…。






「正解だよ」

「!?」

 まるで、心の中を見透かされたかのごとく。
 マサシの疑問の回答は突如として返ってきた。
 そう。
 いつの間にかマサシの部屋の中に、彼以外の人物が進入してきていた。

「なっ!?いつの間に!」

「今、君が疑問に思っていた事、その結論は正しいって言ったんだよ」

「お前は…、R団か!?」

「いいや、違うね。僕はR団じゃない。僕は…」

「…っ!!」



 ドガァァァンッ!!!



 衝撃波が、部屋の内側から壁を粉砕する。
 その勢いで、マサシも吹雪の真っ只中に放り出された。

「クッ…!何て、攻撃だ…!!」

「へぇ、やるね。僕の攻撃を、間一髪で避けるなんて」

「はぁ、はぁ…。(今の攻撃、凄まじいパワーだ…。何者なのか解らないが、桁違いの実力を持っているのは確かだ)」

「次は、逃がさないよ」

「フローゼル、頼む!」

 敵の攻撃に対抗するため、マサシはモンスターボールからフローゼルを繰り出す。
 そして、ボールから飛び出すと同時に、水を纏った突進攻撃を仕掛けた。

「無駄さ」


 ドゴォォッ!


 まるで、見えない何かに攻撃されたようだった。
 マサシにいたっては何が起こったのかすら解らず、ただフローゼルがやられたと言う事しか認識出来なかった。

「(今、何を…!?)」

「駄目だね、君。まるで話にならないよ」

「…ッ、エレキブル!」

 このまま何もしないわけにはいかない。
 そう思い、マサシはエレキブルを繰り出すが…。

「無駄だよ。君は僕に勝つことは元より、この攻撃を見切る事すら出来ないまま敗ける」

「…舐めるな!エレキブル、『ほうでん』!!」

 エレキブルは、己を中心として360度全方向の広範囲に電撃を放射した。



―――敵の姿は見えない。

―――だったら、『ほうでん』のような広範囲攻撃が出来る技なら…。



「まあ、君程度の考えはその程度だろうね。敵の姿が見えないならあてずっぽでもいい、広範囲に攻撃を仕掛ける。まさに僕の思い描いていた通りの戦い方だ」

 その直後。
 先程フローゼルを倒した見えない攻撃。
 それがエレキブルにも次々と襲い掛かる。

「ッ!(あの攻撃が、効いた様子が無い…。どうなっているんだ…。奴は一体、何を…!?)」

「さて、そろそろ終わらせようか」

 そう言うと、奴は右手を上に伸ばす。
 すると、地面に積もった雪がまるで巨大な大波のようにマサシ達に襲い掛かってきた。

「うわああああああっ!!!?」

 成す術も無い。
 マサシ達はそのまま、雪の大波に飲み込まれていった…。



















「終わったの?」

 突然、別の声が聴こえた。
 マサシが戦っていた男とは別の、氷のように透き通った空色のロングヘアーの女性が姿を見せた。

「うん、今終わった所。全然大した事無かったよ」

「じゃあ、早くこっちに合流しなさい。さっさと作業を終わらせるわよ」

「はいはい。全く、せっかちだよね、マニス」

「ラムトが鈍いのよ。こんな程度の奴を相手に時間を掛けすぎよ」

「ハァ、相変わらず採点が厳しいな…。まあいいか。それより、合流するんだったよね、先に行くよ」

 そう言うと、その二人組はその場から立ち去って行った。






 そして、町中から某所へ向かう途中。

「でも、一つ気になる事があったんだ」

「何?」

「彼、情報よりも手応えが無かったんだ。もし情報通りなら、もうちょっと面倒だと思ったんだけど」

「そんな事は気にしないの。私達の活動は、結果が全て。相手の状態なんて関係ないのよ」

「まあ、それは同感だけどね」

 そんな二人は、視界が塞がるほどの吹雪の中をごく平然と歩いている。
 そんな光景は一種の異質さを感じさせていた。

「そういえばマニス。最近、僕らの周囲を嗅ぎ回ってる奴らがいるって噂、聞いた事ある?」

「そういえば、そんな噂がちらほら流れてるわね。何でも、『あの方』の事を探っているらしいわ」

「何でそんな事を調べて…。いや、関係ないね。僕らの事を調べている以上、必ず目の前に立ちはだかるって事。先手を打つのに越した事はないね」

「ふふ、貴方も少しは私達の事を理解してきたみたいね。そう、少しでも脅威になりそうだと感じた存在は、最優先で抹殺する」

「そいつらの正体については、僕が調べておくよ。マニスは計画の準備を進めててくれる?」

「解ったわ。ただし、貴方も私達のチームの端くれ。失敗は許されない事を自覚しなさい」

「大丈夫だよ。この僕が、何処の誰とも解らない連中に敗ける筈がないでしょ?何故なら、この僕は…」





―――『白帝』の二つ名を、持っているんだから…。























 ゴォォォォォッ!!



 ヨシノシティの一角で、火柱が立ち上った。
 そしてその場所から、茶色い髪の毛の少年が這い出てきた。

「はぁ、はぁ…。マグマラシが居なかったら、このままくたばっていた…。マグマラシ、ありがとな」

 そう言いながらその少年、マサシはマグマラシの頭を撫でていた。
 マグマラシも何処か、嬉しそうな表情をしていた。

「(それにしても、さっきの奴は何者だったんだ…。あいつはR団じゃ無かった。だけど、最近ジョウトで起きている事件について知っていそうな口ぶりだった…。かと言って、こっちの味方という感じでもなかった。第3勢力、そう考えるのが妥当か…)」

 と、色々と考え事をしているのだが、今彼が居るのは吹雪の中。
 このままの状態でいる訳にもいかず、ポケモンセンターへと戻っていった。
 彼の宿泊していた壁が大破していて色々と面倒事になっていたのは、別の話(爆)。



 #それから、およそ4日後














 何処かの登山道とでも言うべき、周りを山に囲まれた中での登り道。
 その道を、黄緑色の髪の毛の少年と、青色の髪の毛の少女が進んでいた。
 先日マサシの前に現れた姉弟、シュンとミキだった。

「この先で、最近R団が妙な活動をしているって言う噂があるんだね?ミキ」

「ええ、そうよ。フスベシティの北東、氷の洞窟のある山の山頂。最近、その辺りでR団がうろついてるらしいのよ」

「氷の洞窟…。ミキ、やっぱり奴らの活動には目的が…」

【見付けた】

「「!」

 突然、辺り一帯に声が響き渡った。
 その直後、辺りの風景が白銀の氷に支配された。

「!」

 その直後、二人の前に一人の男が現れる。
 ヨシノシティで、マサシに圧倒的な力を見せ付けたラムトと呼ばれる男だった。

「君達でしょ。ここ最近、『あの方』の事を嗅ぎ回ってる奴らって」

「シュン…」

「ああ、解ってるよ…。この男…」











―――終焉の道標<エクストレーム>だ…。









続く


後書き
執筆ペースは早い方でしょうか。第2話完成から、たったの3日(早すぎだ!!)
今回、今迄の敗北経験無しのツケをマサシに払わせるため、徹底的にやられ役にさせて頂きました(爆蹴)。
とりあえず、この3話目でやっと敵サイドの大幅レベルアップを表現できたと思いました。
このジョウト篇は、まだまだ序盤。もう少ししたら、物語を一気に加速させたいと思っています。
今回は、この位しか語ることが無いなぁ…。では、次回予告で締めとさせていただきます。
次回、ジョウト篇第4話、『激闘 荒れ狂う冷風』。お楽しみに。

 

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