―――やっぱり、僕達の予想に間違いは無かったんだ。

―――今、僕達の目の前に『終焉の道標<エクストレーム>』のメンバーが居る。

―――つまり、ここに僕達が4年前のあの戦いのあった日から、ずっと追い続けていた奴がいる。

―――そいつを倒す事、それこそが僕とミキがこのジョウトまでやってきた目的なのだから。








 山腹の広い場所に飛び出したシュン達。
 敵も二人を追って、その場所まで辿りついた。
 シュンとラムトが、向かい合っていた。

「先に名乗っておくよ。僕は『終焉の道標<エクストレーム>』のラムト」

「やはり君は『終焉の道標<エクストレーム>』のメンバー! なら此処にあいつが…、ルハドが居るのか!!」

「知る必要は無いさ。どうせ君はここで死ぬんだし」

「やれれるもんか…。こんな所で、僕は敗けない!!」


 ズガァッ!!


 突然、ラムトから少し前の部分の地面に亀裂が入った。
 目の前でそんな光景が起きたにも関わらず、ラムトは微動だにしない。

「風によって生み出された不可視の刃…か。この程度の攻撃で、僕が動じるとでも思ったのかい?」

「思ってないさ。この程度でお前達に勝てるんだったら、兄ちゃんだって…」

 シュンが独り言のように呟いた。
 その直後、彼の上空で待機していたピジョットが羽ばたいた。
 そしてその羽ばたいた風が刃となって、ラムトに襲い掛かる。

「マンムー、『ふぶき』」

「…!」


 バキバキバキィッ!!


 マンムーの繰り出した凄まじい冷気の風。
 ピジョットの放った攻撃は呆気なく飲み込まれ、逆に超大な冷気をピジョットは真正面から浴びてしまった。

「ふぅん」

 相手を倒したというのに、全くその喜びの素振りを見せないラムト。
 その原因は…?

「いつの間に繰り出してたんだろうね」

 彼がそう呟いた直後。


 ザシュッ!!


 マンムーが切り裂かれていた。
 それだけでなく、ラムトの右頬部分を掠っていた。

「『かげぶんしん』。まさかとは思うけど、最初から君の上空にいたのが分身体<ニセモノ>だったって事かな?」

「そうだよ。僕の攻撃は風を用いた物。だから、自分で風を発生させる事が出来れば、後は攻撃の軌道なんて自在なんだ。つまり…」

 シュンはそこで言葉をとめる。
 丁度そんな時、彼の上空を飛んでいたピジョットの姿が揺らぎ始めると、そのまま徐々に透明化していった。
 そして、その姿を完全に消失した。

「じゃあ、話は簡単だね。君を直接狙えば、君のピジョットは姿を現さざるを得なくなる。マンムー、『れいとうビーム』」

 マンムーは、直接シュン目掛けて青白い光線を発射する。
 その直前、『ヒュッ』という音と共にピジョットがシュンの目の前に姿を見せた。

「ピジョット、『エアスクロール』だ!!」

 ピジョットも両方の翼を振り下ろす事で、二筋の緑色のエネルギー波を繰り出した。
 双方の技がぶつかり合い、爆発して対消滅した。


 ズドォォォォッ!!


「ピジョット、『エアーダイブ』!!」

 そして最後に、周囲に風を発生させながらの突進攻撃。
 その猛烈な勢いとパワーで、マンムーは吹き飛んだ。

「! へぇ、結構やるもんだね」

「敗けてられないんだ、こんな所で!あいつを…、ルハドを倒すまでは…!!」







チャレンジ・オブ・マスターズ   ジョウト篇
第4話
激闘 荒れ狂う冷風






 僕が、ルハドという存在を追っている理由と言うのは、実に単純明快。
 そして、余りにも普通すぎる。
 下らないと罵られるかもしれない。
 けど、それでも構わない。
 それでしか、今の僕は行動できない…。








 仇討ち。
 それが、僕があいつを追い続ける理由。
 兄ちゃんは、4年前の戦いであいつと相打ちになった。
 それだけならよかった。
 命を懸けて、最強の敵の一人を打ち倒したんだから。
 …だけど、現実は余りにも無情だった。


 今から半年ほど前のことだった。
 僕達の元に、ジョウト地方で氷を操るR団が暗躍していると言う情報が流れてきた。
 その情報をくれたのは、『終焉の道標<エクストレーム>』への対抗組織、『ラオックス』。
 4年前、兄ちゃんも所属していた場所だった。
 だけど今現在、あの組織はほとんど戦力が残っていないと言う話だった。
 だからなのかもしれない。
 僕のところに、その情報が届いたのは…。







 #シンオウ地方カンナギタウン
 今現在より、半年前





 その日も、平凡だった。
 僕もあの時は何時もと変わらない生活をしていた。
 だけど、運命の歯車は突然に動き始めた…。

「君が、シュン君だね?」

 突然だった。
 僕の前に、ダークグリーンの髪の毛をした男の人が現れた。

「私はラオル。君の兄、スバルの旧友だ」

「! 4年前、終焉の道標<エクストレーム>と戦った人ですね?兄ちゃんからの手紙で、その存在は知っていました」

「そうか…。それなら、話が早くて助かる」

「どうしたんですか?わざわざこんな辺境にまで」

「君の力を借りたいと思ってね。半年前、リュウイチから久々に連絡が入って、終焉の道標<エクストレーム>が活動を再開したと言う連絡を貰った」

「え…?終焉の道標<エクストレーム>って、3年前の戦いで壊滅したんじゃ…」

「私も、最初はそう思っていた。しかし、リュウイチの話も強ち嘘とも思えなかった。だから、私も色々と調べてみた。その結果…」

「……どうだったんですか?」

「事実だった。3年前の決戦の場となった地に、先日足を運んでみたんだが…。奴らの痕跡が、完璧ともいえるほどに無くなっていた」

「! それって」

「組織が、まだ生きているという証拠だ。そして最近掴んだ話では、スバルが倒した幹部・『蒼固』ルハドを復活させようと、ジョウト地方で暗躍しているらしい」

「…!!」

 その瞬間、シュンの心に何とも言えない感情が芽生えた。
 怒り、憎悪とも似た感情だった。

「もし…」

「?」

「もしそんな事になったら、兄ちゃんは何の為に命を落としたんだ!! そんな事になったら、兄ちゃんは無駄死にになっちゃうよ!!」

「…兄の為にも、奴らを止める決意はあるのか?」

「勿論だよ。もう、兄ちゃんはいない。だけど、兄ちゃんの戦いが無意味にならないようにするのが、僕の役割なんだ!」

「…!? シュン君、その『眼』は…」

「え…?」

 そこで、ラオルはシュンにとある変化が起きたのを見逃さなかった。
 先程までシュンの瞳は茶色だった。
 しかし今は、緑色に変化していた。

「やはり、兄弟か…」

「あの、僕の眼が何か…?」

「自分で見た方がいい」

「…? 何、これ」

 町の中心にある小さな池で、シュンは自分の顔を見た。
 そこで初めて自分自身に起こった異変に気付いた。

「力の目覚めだ。その力を操作<コントロール>出来れば、きっとスバルと同じ域に達する事が出来る」

「そうすれば、勝てるんですね?」

「いや、正直解らない。あいつ<リュウイチ>の話では、終焉の道標<エクストレーム>の力は、3年前とは比較にならないほど強くなっていると言う。事実、あいつも幹部相手に敗れたそうだ」

「なっ…!」

「…それでも、君は戦うのか?奴らと」

「勿論!」

「…解った。私も出来れば力を貸したいところなのだが、此方にもやらなければならない事がある」

「じゃあ、僕一人でやるしかないんですか?」

「いや、リュウイチの弟が近々ジョウト地方に来るらしい。しかも、最初から天属性が守護属性として宿っていると言う話だ。きっと、君の力になってくれるはずだ」

「はい」





















 話を終えると、彼はテンガン山の方へ歩き去っていった。
 彼を見送った後、シュンもその場を立ち去ろうとしたのだが…。

「シュン、聞いたわよ。あんた、一人で兄さんの仇討ちに行くつもりなの?」

「ミキ…」

 近くにあった建物の影から、姉のミキが顔を出した。
 どうやら、今の話を全部聞いていたらしい。

「一人で行く訳無いよ。兄ちゃんの仇を討ちたいって言うのは、ミキだって同じでしょ?」

「…そうだけど、私はあんたが暴走しないかどうかが心配なの。解る?」

「うん…。僕も、兄ちゃんと相打ちになったっていう奴と対面した時、冷静で居られるかどうかなんて、自信は無いよ…」

「その為に私が一緒に行くって言ってるの。あんたが暴走しそうな時は、私が必ず止めてあげるから」

「…ありがとう」

 決意は固まった。
 彼ら姉弟は、終焉の道標<エクストレーム>の陰謀を阻止するために、旅立つ事を決めた。
 これより半年が経過した後、彼らは故郷を遠く離れる事になる。













 そして、時は現在に繋がる。








 #現在



「…兄ちゃんでさえ相討ちになったっていう幹部、ルハド。そいつを倒せる自信なんて、本当は無いんだ。だけど、これは僕が自分で決めた事だから…。だから僕は、こんな所で立ち止まるわけにはいかないんだ!」

「ルハド様と相打ちになった…?もしかして君、あの憎むべき男、スバルの弟なのか!!」

「っ!!?」

 シュンの正体が、かつての戦いでルハドと相打ちになった男の弟だと知った瞬間、ラムトの雰囲気が激変した。
 彼の瞳が透明な水色に変化し、彼の居る方角から猛烈な寒波が押し寄せてきた。

「そうと解ったのなら、もう容赦はしない。貴様はこの僕の手で必ず始末してやる。マンムー!!」

「!」

 先程の攻撃で倒れたと思っていたマンムー。
 だが、そのマンムーは難なくその身体を起こす。
 さほどダメージが行き届いている様子も無い。

「マンムー、『れいとうビーム』」

「ピジョット、『エアスラッシュ』!!」

 マンムーが発射した白銀色の氷エネルギーの光線を、風から生み出した刃で迎え撃つ。
 …だが、マンムーの『れいとうビーム』が『エアスラッシュ』を突き破って、ピジョットに襲い掛かる。

「!」

 だが、ピジョットは咄嗟に横に移動して回避。
 その後、ピジョットは更に上空へ飛翔する。
 だがその途中で姿を消してしまう。

「!?」

「ピジョット、『エアショット』!」

 上空から、風を圧縮した砲弾の如き一撃がマンムーに炸裂。
 マンムーは、その勢いに完全に押し負けて吹き飛んだ。
 しかも、相当大きなダメージを受けていた。

「随分高い場所から攻撃してるな…。だったら、またお前を直接…」

「チルタリス、『アクセルクロー』!!」

「!?」

 突如、シュンが新たに繰り出したポケモン、チルタリスが奇襲を仕掛けた。
 凄まじいスピードを用いた『ドラゴンクロー』に似た一撃が、マンムーに大打撃を与える。

「悪いけど、これで終わりにさせてもらうよ。『エアショット・流星』」

 今度は、先程の風の砲弾が無数に飛来した。
 そしてそれは、この辺り一帯無差別に着弾していく。


 ズドォンッ! ズドォンっ!


 その中でも何発かが直撃した上、それを免れても度重なるその技の余波。
 マンムーを倒すには、それだけで十分だった。

「くぅっ!?」

 無論、トレーナーであるラムトにもその影響は出ていた。
 叩きつけるような衝撃波が何度もこの辺りを飛び交ったため、痛みが全身を迸っていた。

「もう、許さない…。ユキノオー、そいつをさっさと始末するんだ!」

「チルタリス、『りゅうのはどう』!!」

 チルタリスは、口元にエネルギーを集め始めた。
 そしてそこから、竜巻状にも似た衝撃波を繰り出す。
 だが…。

「ユキノオー、『アイスカッター』」

 ユキノオーは、全身の至る箇所から鋭く研ぎ澄まされた葉っぱの刃を発射。
 更にそれを凍りつかせて、弾丸の如き破壊力をも上乗せしてきた。
 その氷の弾丸が4〜5発ぶつかった所で、初めてチルタリスの攻撃を打ち消した。

「チルタリス、『エクストラブースト』!!」

 今度は、全身に炎にも似たエネルギーを身に纏うチルタリス。
 その状態から、己の最大限の力を持って一直線にユキノオーに向かっていく。

「ユキノオー、『ふぶき』」

 対するユキノオーは、冷気の暴風を発射するのみ。
 だが、チルタリスの纏うエネルギーはそれを全く寄せ付けない。
 ユキノオーの攻撃を突き破り、遂に…。


 ズドォォォォッ!!


 ユキノオーにぶつかった途端、爆発が発生した。

「今の攻撃…、『ゴッドバード』と『ドラゴンダイブ』の合成技!?」

「そうだよ。チルタリスの使える技の中でも、最大級の威力を持つ技だよ」

「…だけど、『全力の』攻撃をすればまだまだ止められる程度だね」

「…え?」

「ユキノオー、フルパワーの『ふぶき』」

「(…!さっきより威力が上がってる…!)チルタリス、こっちもフルパワーでいくよ。『エクストラブースト』!!!」

 今再び、互いの最大級の攻撃がぶつかり合う。
 そして…。



 ズドォォォォォンッ!!!



 先刻とは比較にならないほどの大爆発。
 お互い、吹き飛ばされないように身を屈めて持ち堪えていた。

「僕の全力と、互角のパワー…!?あいつ、僕以上に威力を抑えていたのか…?」

 その事を悟った瞬間、ラムトは歯を食いしばる。



 …ふざけやがって。




 心の中で呟いた瞬間、ラムトは一気に攻めに転じた。
 ユキノオーに冷気で氷柱を作らせ、それを直接シュン目掛けて飛ばしてきた。

「チルタリス、『かえんほうしゃ』!!」


 ゴォォォォォッ!!


 チルタリスの口から放たれた炎が、向かってくる全ての氷柱を溶かす。
 だが、ラムトは既に次なる手を打っていた。

「オニゴーリ」

「!?」

 突然、シュンは悶絶した。
 気がつけば、いつの間にかラムトのオニゴーリが、シュンの胴体に『ずつき』を喰らわせていた。

「ぐっ…!」

 シュンは思わず腹を押さえ込んだ。
 その隙を、ラムトは逃さない。

「オニゴーリ、『ふぶき』」

「ぐっ…。ピジョット、『ふきとばし』…!!」

 咄嗟に、ピジョットが翼を羽ばたかせ、強烈な暴風で応戦するのだが…。
 相手のパワーがそれまでの比ではなかった。
 その為、じりじりと押され始めていた。

「チルタリス、『かえんほうしゃ』…!」

 そこへ、チルタリスが加勢する。
 並の炎ポケモンとは比較にならないほどの強烈な炎を以って、ピジョットと共に相手の攻撃を迎え撃つ。
 相性の良い攻撃が加わった事で、次第に形勢がシュンの方に傾いてきていた。

「(こいつ、まだこんなに粘るのか…。これ以上長引くと、ちょっと面倒だな…。仕方ない)ユキノオー、あれを…。がはっ!!?」

 ラムトは、突然背中に激痛が走る。
 後ろを振り返ると、いつの間にかエアームドが攻撃を仕掛けていた。

「間に合った…。エアームド、助かったよ」

 ラムトが突然攻撃を受けたため、ユキノオーの意識は其方に向いていた。
 その隙を、当然シュンのポケモン達は見逃さない。

「ピジョット、『エアスクロール』!! チルタリス、『エクストラブースト』!!」

「! しまっ…」

 一瞬の虚を突かれ…。


 ズドォォォォンッ!!!


 その場で、最後の爆発が発生した。
 爆発が収まった時、ラムトはその場から居なくなっていた。

「逃げた…!?」

「シュン!!」

 背後から、声がした。
 姉のミキが、駆け寄ってきていた。

「大丈夫!?」

「平気だよ。あの位で参るほど、僕は弱くないよ」

「良かった…」

「それより、早く目的の場所に向かおう。あいつらの計画を、食い止めるために!」

「…そうね」

 二人は戦いを終えて、歩みだす。
 一先ずの目的地は、山岳にそびえる町、フスベシティ…。



続く


後書き
今回は、シュンメインの話でお送りしました。
シュンに関する伏線も、早い段階で回収する事が出来て良い感じです。
同時に、シュンの強さも表現する事が出来て、内容としては満足のいく仕上がりとなりました。
彼は、現時点でのマサシよりも強いです。まあ、見れば解る事なんですg(ry)。
さて、次回は『あのキャラクター』をメインとした話です。
偶には、息抜き目的の話もいいかな〜……と思います(何)。
次回、『迷走 彷徨いの旅路』。お楽しみに

 

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