―――私は、まだ弱い。

―――旅に出て、それなりの実力は身についたと思ってた。

―――………だけど、私はまだ井の中の蛙だった。

―――その事を知って、私は今迄ずっと一緒に旅をしてきた少年と別れて、一人で旅を始めた…。

―――次に会った時、弱いままではない自分を見せるために。






チャレンジ・オブ・マスターズ   ジョウト篇
第5話
迷走 彷徨いの旅路






 あれから、1週間くらいが経ったと思う。
 マサシ君と一緒にこのジョウト地方に戻ってきて、私の故郷・ワカバタウンで別れてから。
 私は、その間ずっと町でトレーニングをしたりしてた。
 近所の親しかった子供達と競い合ったり、一緒にトレーニングしたりして…。

 ………だけど、それでも私が目標とするマサシ君には、全然届かない。
 もう、あの時みたいに自分が無力感に苛まれるのだけは嫌。
 その事を思い返す度に、トレーニングにも熱が入るんだけど…。
 成果は出てるの?って聞かれたら、返答は『微妙』になると思う。



 このままじゃ、駄目。
 私も、旅に出よう。
 旅に出て、色んな人達と出会ってバトルして…。
 自分に自信を持つ事から、始めていきたいと思った。






 …だけど。

「ここ、どこだろ?(汗)」

 ナギサは現在、どっかの海の上に点在する孤島にいた(爆)。
 おまけに、周囲の海は大きな渦が幾つも存在していて、とても普通に出入りできるような島ではないことは明らかだった。
 本当、どうやってこの場所にやってきたのやら(爆)。

「えっと、ここってうずまき島…かな?」

 現在彼女が居るのは、今言葉に出した『うずまき島』と呼ばれる場所。
 位置的にはジョウト地方西部、アサギシティとタンバシティを繋ぐ海道の中間点に位置する島。
 しかし、前述の通りこの島の周囲は常に大きな渦が存在するため、近寄ろうとする者は殆ど居ない。
 一応、『うずしお』と呼ばれる技を使えば、この海面の渦を打ち消す事も出来るのだが…。
 生憎彼女の手持ちに、その技を使えるポケモンは居ない。

「困ったなぁ…」

 仕方が無いので、島を散策してみる事に。
 もしかしたら、渦が発生していない場所があるかもしれないと言う、一種の可能性に懸けたようだ。

 …だけど彼女の場合、島を散策するうちにトーホク地方に戻ってきてたっていう可能性も無くはないんだけど(何)。

「結構大きい島ね…。岩ばっかりでちょっと殺風景だけど…」

 とか愚痴をこぼしつつ、ナギサはその島の周囲を回ってみるのだった。









 数十分後。
 彼女は、とある町中にいた(待て)。

「…あれ?今度は、何処なのかな?」

 都合のよい事に、彼女のすぐ側に立て看板があった。
 そこには…。

「チョウジタウン……??何で、こんな所にいるのかなぁ…」

 さっきまで彼女がいた場所とは、ほぼ正反対の場所だった(待て)。
 位置的には、先日シュンが戦った地点よりやや西寄り。
 どちらにしても、ジョウト地方の東側に位置する町だった。
 …だが、このチョウジタウンにやって来れたのは、ある意味幸いともいえた。

「この辺りって、ジョウト地方の中でも特にレベルが高いトレーナーが集まる場所なのよね、確か…」

 確かって…。
 まあ、現にゲームじゃこの辺りからレベル上がってきてたけど…。
 けど、レベル的にはアサギシティのジムのポケモンの方が上だったような気もするんだけど(何)。

 まあ、そんな事は置いておくとして。
 彼女は早速、近くを通りかかった同年代の少女にバトルを挑んだ。
 ナギサが予測したとおり、彼女はこの付近のトレーナー。
 ポケモントレーナーとしての力量も、相当な物だった。

「ロコン、『おにび』!!」

 ロコンは、その名の通り6本ある尾の先端からそれぞれ紫色の炎を灯す。
 そしてそれを、容赦なく相手が繰り出しているポケモン、グラエナに目掛けて発射した。

「グラエナ、『シャドーボール』だよ!」

 相手の少女も、若干幼い口ぶりで指示を出す。
 大きく口を開き、そこで漆黒の球体を作り出す。
 そして、向かってくる炎目掛けて発射!


 ズドォンッ…!


 攻撃を、打ち消した。

「ロコン、『でんこうせっか』よ!」

 ロコンは、『タッ』と地面を蹴った。
 その勢いを利用して、動きを加速させてグラエナに真正面から突っ込んだ。

「グラエナ、『しっぺがえし』だよ!」

「! ロコン、駄目!止まっ…」

 しかし、遅かった。
 ロコンは既に、グラエナに攻撃を終え、姿勢を解いてしまった。
 その一瞬の隙を突き、グラエナが逆襲の一撃を繰り出す。
 この一撃だけで、戦闘不能となってしまった。

「そ、そんな…。やっぱり私、まだまだなんだ…」

 ナギサは、更に己の力量不足を痛感する結末となってしまった。






 途方に暮れながら歩いていた彼女。
 気がつけば、先程とは全く光景の違う場所にやってきていた(またか)。

 周囲を木々に覆われていて、大森林の中に作られたかのような小さな町。
 ここは、ヒワダタウン。
 ジョウト地方の南部に位置する町だった。
 つか、短時間でこんな遠くに来るなんて、物理的に不可能だと思うんだけど…。
 ナギサの方向音痴、進化してるのか!?(ぁ)

「あ…。もう夕方なんだ…」

 気がつけば、既に空は橙色に染まっていた。
 それに伴い、町中に点在する街灯も、少しずつ灯りを灯し始めていた。

「今日は、ここまでにしておこうかな」

 疲れも溜まっていたため、とりあえずナギサはこの町のポケモンセンターで一泊する事にしたようだ。

「明日から、もうちょっと真面目にトレーニングとかした方が良いかな…」

 そう考えながら、彼女はポケモンセンターに足を運んだ。
 そして、夜は更けていく………。



 翌日。


 彼女は、何処かの洞窟の入り口に立っていた(ぇ)。

「とりあえず、キキョウシティの方に行ってみようかな」

 何か、今回だけは迷わず普通に来れてるし…(ぁ)。
 とりあえず、現在彼女がいるのは、『繋がりの洞窟』とよばれる場所。
 位置的にはヒワダタウンの少し東に存在し、少し北にあるキキョウシティ方面と繋がっている。
 そのため、洞窟とは言っても中は舗装されていて、通る分には何の不便も無い。
 最も、ズバット等の野性ポケモンが生息している辺り、自然の洞窟としての雰囲気を残してはいる。

 ナギサはこの洞窟に足を踏み入れた。
 特に大きな危険は無いので、ナギサでも安全な筈だが…。

「う〜ん、薄暗いし、少し肌寒い…」

 まあ、洞窟だから仕方ないのだが…。
 しかし、この肌寒さはそれだけが理由とは思えなかった。

「ねえ、君」

「?」

 突然、横から声をかけられた。
 そこには、彼女と同年代と思われる一人の少女がいた。

「何かしら?」

「君も、この洞窟に時々現れるって言う噂のポケモンを捕まえに来たの?」

「え?ここ、そんな噂があるの?私、知らなかった…」

「う〜ん…、まあ折角だし教えてあげる。この洞窟、時々奥の方からポケモンの泣き声が聞こえてくるんだって。それで、私はそのポケモンが何なのかを突き止めて、ゲットしようと思っていたの」

「ポケモン…」


―――そのポケモンが何なのかは解らないけど…、行ってみる価値はあるかな?

―――私も多少の危険を冒す位じゃないと、今より強くなれない気がする…。


「私も…、一緒に行っていいかな?」

「良いけど…。そのポケモンは、早い者勝ちってのが約束だよ?」

「うん、いいよ。あ、そうそう。私はナギサ。よろしく」

「あ、こっちも名前まだだったね。私、アンリって言うの。よろしく」

 お互いに自己紹介を終えたところで。
 二人は洞窟の奥のほうへと続く道を歩き始めた。

「ナギサって、何処に住んでるの?」

「私?私、ワカバタウンに住んでるの。今は、自分の実力を上げるために旅をしてるの」

「結構遠いんだね。まあ、人の事言えないんだけど…。私は、タンバシティ出身なの」

「アンリちゃんの方が遠いんだ」

「…ねえ。そのちゃん付けやめにしない?何だか話しづらいわ」

「解ったわ。じゃあ、出来るだけ気をつけるね、アンリ」

「そう、それでいいの。私も、呼び捨てで呼ぶから。じゃあ行こう、ナギサ」

 何かどうでもいいような会話だ…(何)。
 まあ、それは兎に角として(蹴)。

 洞窟の奥へ進むのに比例し、視界も暗くなっていく。
 そんな中…。

「結構暗くなってきたね」

「大丈夫、私に任せなさい♪ ルクシオ、『フラッシュ』!」

 アンリが繰り出したポケモン、ルクシオ。
 そのルクシオが全身から電気を発して、洞窟の中を照らした。

「これで大丈夫。さ、行こう」

 とは言ったものの…。

「結構道が険しくなってきたね…」

「そりゃ、この辺りは人が行き来するさっきの場所とは大分離れてるからじゃない?」

 ごつごつとした岩が通路を遮っていたり、段差になっている場所が多かったり。
 洞窟特有の道筋が、彼女達の行く手に立ちはだかっていた。

 ………あれ?
 何でナギサ、今回に限っていつもの超絶方向音痴が発動してないんだ?(爆)

「あ、ナギサ止まって!」

「アンリ、どうしたの?」

「……川だわ」

「え!?」

 そう。
 彼女達が進もうとしていた道。
 その道を、川が横切っていたのだ。
 その為、彼女達は足止めを喰らう羽目に…。

「ここも私に任せて、ナギサ。パルシェン、『れいとうビーム』!」

 次に彼女が繰り出したのは、とても硬い殻を持つポケモン、パルシェン。
 そのパルシェンが殻の内側から白銀の光線を川目掛けて発射した。


 パキィィィンッ!!


 その結果、川の流れを止め、氷による道筋が完成していた。

「アンリって、凄いね。こんなにポケモン達も強いし…。頼もしい感じがする」

「そんな事無いよ。ナギサだって、こんな所にまで旅してる位だし、それなりにポケモン達も強いんでしょ?」

「私は…。私も、まだまだだよ」

「まあいいわ。それより、先に進もうよ」

「…うん!」

 先程作った氷の道を通って川を渡り、反対側の岸へたどり着いた二人。
 そして、少し進んだ辺りから違和感を感じ始めていた。

「…ねえ、アンリ。少し、寒くない?」

「言われてみれば…。確かに、さっきより若干肌寒くなってきてる気はするけど…。単に、入り口から随分奥深くまできたからじゃない?」

「違うと思う…。この感じ、多分氷系のポケモンが近くにいるせいだと思う」

「氷系って、ここは普通の洞窟だよ?こんな所に氷系のポケモンなんて居る筈…」

「! アンリ、ちょっと静かにしてくれる?」

「?」

 強引に静寂な空気を作り出して、ナギサは聴覚を研ぎ澄ます。
 すると、微かに奥の方から何かの泣き声のような物が聴こえてきた。

「アンリ、やっぱりさっき言ってた噂って、本当みたいだよ」

「え!?」

「今、聴こえたの。奥の方から、ポケモンの鳴き声が…」

「じゃあ、ここからは競争だよ。先行くね!」

 と、言うが早く…。
 アンリは、一足先に洞窟の深部の方へ走っていってしまった。

「え?ちょっと、待って!!」

 ワンテンポ遅れて、ナギサもその後を追っていくのだった。













 しばらく進んだ地点にて。

「うう、寒い…。やっぱり、さっき感じた寒気は気のせいじゃなかったんだ…。ロコン、ちょっといいかな?」

 ナギサは、ボールからロコンを繰り出す。
 そして、炎でこの辺りの空気を暖めさせた。

「ふう、少しは楽になったわ。ロコン、ありがとう」

 とは言うが、彼女はロコンをボールの中に戻さない。
 ロコンを肩に乗せたまま、走り出した。

「アンリ、随分先に行っちゃったみたい…。私、強くなる目的で此処に来たんだし、頑張らなきゃ」

 と、そんな時だった。


 ズゥゥンッ…!!


 一瞬、微弱ではあるが洞窟の中で振動が起きた。

「何…?地震!?急いだ方が良いかも…」

 と、やや小走りで一直線の道を進んでいくのだった。
 その途中…。

「あれ、ナギサ?」

 何と、彼女の視線の先からアンリがやってきていた。
 引き返してきたのだろうか?

「どうしてナギサが私の進んでる方向から現れるの?何処かに近道があったの?」

「え…?アンリが、戻ってきたんじゃなかったの?」

 遂に発動、ナギサの超方向音痴!(爆蹴)
 一本道でさえこれほどの怪行動(?)となる彼女の方向音痴は、現在も成長途中なのだ(謎)。

「とりあえずナギサ、奥は今あんたが来た方向よ」

「う〜ん…」

 彼女自身状況を理解していないようだが、そんな事はお構いなし(待て)。
 そんな中…。


 ズガァァァァッ…!!


 先ほどと同じくらいの振動と共に、今度は奇怪な物音が響いてきた。

「え…?今の音、何!?」

「気になるわね。行ってみる!」

 活発な少女、アンリ。
 そそくさと音が聞こえてきた方角へ進んでいった。

「でもあの方角って、さっきポケモンの鳴き声が聴こえてきた方向…。何だろう…、胸騒ぎがする」

 一縷の不安を胸に抱えつつも、ナギサは走り出す。
 ちなみに進む方角は合っている(何)。

















 先ほどの地点から更に奥深くへ進んだ場所。
 そこには、地底湖とも呼べる場所が空間いっぱいに広がっていた。

「此処…、湖?」

 少し遅れて、ナギサもこの場所に到着した。
 それと同時に、少し辺りを見回した。
 すると、向かって右斜め前の方向で、なにやら煙が立ち込めていた。

「あれ、何かな?」

 その場所を眺めていたその矢先。


 ドゴォォォォッ!!


 地響きと共に、煙の立ち込めていた場所の方から爆発音が鳴り響く。
 流石に異変が起きていると察知した二人は、即座にその場所へと走り出した。




 その音の発信源たる場所では。

「このっ、大人しくしやがれ!!」

 にRの文字が刻まれた黒服の男達数名が、一匹のポケモンを取り囲んでいた。
 そのポケモン…、ラプラスは必死に抵抗を続けていた。

「こいつは、偶にしかこの洞窟に現れない貴重なポケモンだ。こいつは、必ず役に立つ。何としても、マニス様の所へお連れするぞ!!」

「…いや、待て。どうやら、邪魔者が居るようだぞ」

 その中のリーダー格と思われる一人の男が、一つの岩陰の方に視線を向ける。
 そこに隠れていたナギサ達に、緊張が走る。

「何、あの人達?何してるの!?(小言)」

「あれは、R団だよ…。こんな所で何してるのかな?(小言)」

「R団? もうとっくの昔に壊滅した組織じゃないの?(小言)」

「ゲンガー、『シャドーボール』」

「「っ!」」

 ズドォォォンッ!!


 突然だった。
 ナギサ達が身を潜めていた岩目掛けて、R団の一人が攻撃を仕掛けた。
 漆黒の球体が炸裂して、岩が粉々に砕け散る。
 その衝撃で彼女達も吹き飛ばされた。

「痛っ…」

「生き延びたか。ゲンガー、『シャドーボール』!」

「また来る…!ロコン、『かえんほうしゃ』!」

 向かってくる球体を、ロコンの炎で迎え撃つナギサだが…。
 相手の攻撃力が凄まじく強く、抵抗などまるで意味を持たなかった。

「きゃああっ!?」

 その球体がすぐ近くで炸裂し、ナギサは吹き飛んだ。

「(こんな所にR団がいるなんて…。このままじゃ、無事にこの洞窟を出られない…。一体、どうしたら…)」

「ルクシオ、『ほうでん』!!」

「むっ!」


 バチバチバチッ!!


 ナギサの背後からルクシオが飛び出し、前方のR団目掛けて電撃を広範囲に発射した。
 それを見たR団の集団は一歩後退する。
 それによって、ラプラスから彼らを遠ざける事に成功した。
 無論、今の指示を出したのは…。

「ナギサ、大丈夫?」

「うん、何とか大丈夫。アンリ、有難う」

「ナギサのポケモン、よく鍛えてあるみたいだけど、その力を上手く発揮できてないみたいだね」

「…え?」

「何かのきっかけさえあれば、きっとナギサは凄く強くなれるよ」

「きっかけ…」

「お喋りとは余裕だな。ゲンガー、『シャドーボール』!」

「あ!アンリ、危ない!!」

「…え?」

 完全に油断していた。
 敵に背を向けたまま、のんびりと話していたが故の事態。
 攻撃は、既に眼前にまで迫っている。
 アンリに、危機が迫っていた。








 ………その時、ナギサの中で、『何か』が弾けた。

「アンリ、下がって!ロコン、『かえんほうしゃ』!!!」

 咄嗟に、アンリはしゃがみこんだ。
 その直後、再びロコンが炎を発射した。
 しかし先ほどとは異なり、炎の勢い、大きさ、パワー。
 その全てが今迄の攻撃とは桁が違っていた。

「なっ、莫迦な…!!?」

 ロコンの炎は『シャドーボール』を突き破り、一撃でゲンガーを吹き飛ばす。
 更に爆発の余波でこの場にいたR団全員が吹き飛んだ。

「やった……の?」

 敵を倒した。
 しかしその事を一番実感していないのは、他ならぬナギサ本人だったという。


 続く


後書き
本当、とんでもないスピードで進んでいると、我ながら恐ろしく思います(ぇ)。
ジョウト篇に入ったのが8月の終わり頃で、それから1月も経ってないのに4話も完成って…。
まあ、それはともかく。
今回は、ナギサに視点を向けてみました。
そうしたら、彼女の方向音痴を書いてて何と楽しい事か(爆)。
とりあえずナギサの視点向けは次回の冒頭で終了して、再び元のマサシ視点に戻ります。
その先で何が起こるのか、ご期待ください。
次回、ジョウト篇第6話 『襲来 新たな敵』。
お楽しみに。

 

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