吹雪の吹き荒れる中、ジョウト地方の中心部に聳える『ビスラ山脈』。
 そこに、二人組が姿を見せていた。

「ラムト!出て来なさい」

 その二人組の女の方、マニスが呼び掛ける。
 瓦礫のように粉々になった氷の陰から、一人の青年が姿を見せた。

「マニス、こっちはもう終わったよ。そっちは?」

「もう、全ての準備が整ったわ。そして、この方が『終焉の道標<エクストレーム>』幹部、『蒼固』ルハド様よ」

 とりあえずラムトにとって、これが初めての幹部との出会いだった。
 マニスが、その幹部を紹介した。

「僕は、ラムト。マニスの推薦もあり、今は亡きジルの称号『白帝』を継いだ者です」

「…お前がジルの後継者か。成る程、確かにジルと比べても遜色無い実力を持ち合わせているようだ」

「そう仰って頂けて光栄です」

「ルハド様、とりあえず暫くの間はこの場で力の蘇生をお待ちください。その後、組織の方に復帰という予定です」

「ああ。俺の力が復活するまでの間、この地方における活動の権利はお前達二人に預けておく」

「「解りました」」

 承諾を受けた後、二人はこの場を離れていく。
 それぞれ来るべき時に備え、準備を進める為に…。






チャレンジ・オブ・マスターズ   ジョウト篇
第10話
反撃 砕かれる氷樹









 ジョウト地方の中心から北に向かった先にある町、エンジュシティ。
 古風な建物が立ち並ぶ、この地方の中では異色な風景を演出している町でもある。
 そこに、マサシ達は居た。

 マサシが携帯電話で何処かに連絡をしている。
 その電話の相手とは、ヒワダタウンで共に戦った間柄のシュンだった。

『え…?氷の大樹<ドライ・ラシル>を破壊する!?』

 電話の向こうから、シュンの驚愕に近い声が返ってきた。
 先程マサシが提案した内容とは、『終焉の道標<エクストレーム>』によって作られた氷の柱を破壊すると言う事だった。

『でも、そんな事をして何の意味が…』

「これは俺の推測なんだが…。あれを破壊すれば、恐らくルハドの力の復活を阻止できると思う」

『どうして、そう思うの?』

「ヒワダタウンで、あのマニスって言う女が言ってただろ?思い出してみろ」

『!』

 マサシに言われて、シュンは記憶を辿り始める。
 ヒワダタウンで…、マニスの語った事…。








ルハド様は、命を落とした訳ではない。スバルとの戦いで力を使い果たした為に、眠り続けていただけ。そして今、氷の大樹<ドライ・ラシル>によって世界中から集められた氷の属性エネルギーが、ルハド様を再び目覚めさせた







『氷の大樹<ドライ・ラシル>によって集められた、氷属性のエネルギーで蘇ったって言ってたけど…』

「ああ。そして、ルハドは力を使い果たしていただけだとも言っていた」

『! そうか。今も尚集められている氷のエネルギーが、徐々にルハドを本来の力に戻している…』

「そうだ。その量が多くなるほど、奴の力は増大すると言う事だろう。更に…」

『え…、まだ何か理由があるの!?』

 これで話が終わったと思った直後に、まだ話を続けようとした為、一瞬シュンは戸惑った。

「今、このジョウト地方は氷の大樹<ドライ・ラシル>の影響で吹雪が続いている。これは多分、氷の属性エネルギーがジョウト地方を覆っているからだ。つまり、その影響でルハドの力も通常より大きくなっている」

『それで…?』

「氷の大樹<ドライ・ラシル>を破壊すれば、その影響で集められていた氷のエネルギーを拡散させて、奴の力の復活の阻止、そして奴自身のパワーダウン。二つの効果が狙えるかもしれないと言う事だ」

『そう…か。それなら、まだ僕達でもまだ何とかできるかもしれない!!』

 希望が見えてきた。
 そんな様子が安易に推測できる声が、電話の向こうから聴こえてきた。
 だが、マサシはそんな浮かれ気味のシュンを抑制する言葉を出した。

「だが、時間があんまり無いのも事実だ。あんまり時間を掛けすぎると、いくらパワーダウンしたとしても、あの時と同等の力になってしまうかもしれないからな」

『解った。僕もなるべく頑張ってみるよ。そっちも、気を付けて』

「ああ」

 そう言って電話を切ろうとしたマサシだったが、シュンが『それにしても…』と言葉を繋げた為、それは阻止された。

「どうした?」

『マサシって、凄いな…って思って。よくさっきみたいな事を考え付いたな…って感心しちゃって』

「俺一人で考えたわけじゃない。お前の姉のミキと一緒に色々と可能性を考慮した末の結論だ」

『ミキと…?マサシ、ミキと一緒にいるの?』

「いや、既に彼女も破壊へ向けて動き出している。それで、お前は今何処にいる?」

『タンバシティ。随分遠くまで飛ばされたよ』

「じゃあ、そのタンバシティの近くに柱がある筈だ」

『え?』

「ミキの話じゃ、ルハドが復活する際に発生したエネルギーは、ジョウト地方の中心地点に向かっていたらしい。その事から、柱はジョウト地方を囲うように設置されてる可能性が高いそうだ」

『とりあえず僕達はバラバラに行動する事にして、合流場所を決めないと…』

「コガネシティで合流しよう。今話したジョウト地方の中心地、ビスラ山脈に一番近い」

『そうか…! ルハドが今尚力の復活を待っているのなら、そこにいる可能性が高いって訳だね?』

「そう言う事だ。俺とお前と、ミキ。後、もう一人俺の仲間も動いてくれている。4人で分担して柱を壊す!」

『OK。じゃあ、僕はタンバシティで柱を壊したら、エンジュシティに向かいつつ柱を壊していくよ』

「そうしてくれ。俺は、フスベシティの方に行く。ミキはジョウトの南西、ヒワダタウン方向に向かっている。ナギサ…、俺の仲間はワカバタウンの方角を任せたんだが、こっちは少し不安だ」

『どうして?』

「超方向音痴なんだ(汗)。下手したら、そっちの方に姿を見せるかもしれない」

『狽ヲ゛!? ワカバタウンとこっちって、方角が正反対だよ!?』

「可能性がある…って話だ」

『うん、気に留めておくよ。それじゃあ』

 ここで、シュンとの電話は終わった。
 大分遅れてしまったけれど、マサシも目的地を目指して進み始めた。














 一方。
 一足先に行動を開始していたミキは…。

「流石に、かなり冷え込んできてるわ…」

 雪が吹雪いてこそいるけれど、行動に差し支えが出るほどでもない。
 しかしそれでも、結構強い風混じりの雪が降ってきてた。
 彼女は、ヒワダタウン南の小さな林に足を運んだ。

 流石にこれだけの事を仕出かすのだから、人目に付かない場所で行動をしているはず。
 そう考え、ヒワダタウン近くでは人気の無いこの場所を探索していた。

「……?」

 ふと、気付く。
 上空で一部の風景に違和感がある事に。
 そして、その違和感を覚えた箇所の地上部分に視線を下ろすと…。

 その付近の地面が、凍りついているのがはっきりと見えた。

「あそこね」

 モンスターボールからドータクンを繰り出すと、灰色をしたエネルギーの球体を作り出す。
 そしてそれを目標方向に向けて発射し…。


 ズガァァァァッ!!


 透明な氷の柱を、粉々に破壊した。

「ふう。もう少し、周りを探してみようかな」

 此処での目的は、果たした。
 この辺りにまだ柱が無いかを探るべく、彼女は次の行動を開始した。



 それからしばらく時間が経過した後の事。
 ヒワダタウンに降り続いていた吹雪が徐々にその勢いを失っていったという。



















 場所は変わって。
 とある町中。
 ここに、緑髪ポニーテールの少女がやって来ていた。
 彼女・ナギサはこの場所が何処なのか理解していないようだった(ぇ)。

「えっと、ここ何処なのかな…」

 やっぱり迷っていた(爆)。
 しかし、町の中の案内板を運良く発見してそれを読み上げると…。

「ここ、ワカバタウンだ!」

 何と。
 運の良い事に自分の故郷に戻ってきていた(何)。
 とりあえずナギサも町の近くを散策し始めた。

「ミキさんの話だと、町から少し離れた辺りに作ってある可能性が高いって事だけど…。この辺りでそう言う場所って…」

 ナギサはしばらく周囲を見渡していたが、とある地点で視線が止まった。
 そこは、傍から見れば気付きにくい、ワカバタウン裏通りの入り口だった。

「(あの場所って、確かこの町の人でもあんまり気にも留めない場所。もしかして…)」

 直感的に、あそこが怪しいと感じたのだろうか。
 ナギサは一目散にその場所に向かっていった。



 その場所は、家と家の間に細い道が存在するだけ。
 更にその道が無数に枝分かれしている、迷路のような場所。
 方向音痴のナギサにとって、これ以上無い最悪の地形だった(ぁ)。

「困ったなぁ…。これじゃあこの辺りにあるとしても、探すのが大変だよ…」

 仕方が無いので、ナギサはモンスターボールからエアームドを出す。
 そのエアームドに、空から探すように指示を出した。

「お願いね!」

 エアームドは頷くと、すぐにナギサの視界から見えない場所へ飛んで行った。
 …そして。

「とりあえず私も、もう少し探してみよう」

 独り言のように呟いて、再び探索を始めるのだった。
 …数分後。


 彼女は雑木林の中にある、巨大な氷の柱の前に立っていた(待て)。

「…あれ?ここ、何処!?」

 また迷ったらしい(爆)。
 しかも、運の良い事に氷の柱の前に出てしまったらしい(何)。

「あ…、もしかしてこれが氷の柱?良かったぁ、すぐに見付かって」

 いや、これはもう運が良かったとしか言い様が無いんだけどね。−−;
 そんなタイミングで、先程飛ばしたエアームドがこの場にやってきた。
 自分より先に、主が目的地に辿りついていたため、エアームドは若干戸惑いの顔色を見せた。

「あ、エアームド。ごめんね、何か無駄な仕事をさせちゃったみたいで」

 エアームドは、首を横に振った。

「うん、ありがとう。さて、早速これを壊さないと」

 とは言うが、この氷の柱は高さが50m近くあるし、地面に接している面積も結構広い。
 これを破壊するには、相当な攻撃力が必要である事はすぐ理解する事が出来た。
 ナギサのポケモン達では、この作業をこなすには相当な苦だと思われたが…。

「早速、今迄の成果を試す機会ね。エアームド、お願い!」



 エアームドの翼が、輝き始めた。
 そしてそれに比例して、翼の硬度も上昇していく。
 一般的な『はがねのつばさ』だった。
 だが、その状態で自身の身体を高速回転させながら突進した。
 嘴の部分を中心として回転しながら攻撃する技、『ドリルくちばし』との合成攻撃だった。


 エアームドの突進で、氷の柱が粉々に砕かれた。
 更に、その砕かれた無数の小さい氷の破片を、高速回転しながらの翼で削るように切り裂いていった。

「やったぁ!成功だわ」

 実を言うとこの氷の柱、かつてのナギサのポケモン達のパワーでは、ここまで破壊する事は出来なかった。
 その点から見ても、ナギサのポケモン達は相当強くなっている事が伺える。
 最も、彼女の成長した真の実力が発揮されるのは少し先の話。
 そしてその時は、眼前に迫っていた。



















 マサシ達の活動は、『終焉の道標<エクストレーム>』側の二人も知っていた。
 否、感付いた…と言った方が表現としては近い。



 何処かの町中で突然足を止めた二人。
 そしてそれぞれ、先程氷の柱が破壊された方角に目を配る。

「マニス!」

「ええ、私も感付いたわ。このジョウト地方に仕掛けた、『氷の大樹<ドライ・ラシル>』が二つ程破壊されたわね」

「やっぱり、スバルの弟かな?それとも、マサシ?」

「或いは、その両方かもしれないわね」

「…」

「破壊されたのは、ヒワダタウンとワカバタウンに仕掛けた物。だったら、簡単な話」

「次に奴らが姿を見せそうな場所で、待ち伏せる。ワカバタウンから一番近いのは、ヨシノシティ。そして…」

「ヒワダタウンから一番近いのはここ、コガネシティよ」

「…それにしても、あれの破壊に動くとは正直想定の範囲外だったよ。あれを破壊される度に、ルハド様の力の復活、そして現時点で発揮できる力も落ちる事に気付いてる奴がいたなんて…」

「どうでもいい事よ。ラムト。あんたはヨシノシティへ向かいなさい。私は、ここでもう一方を待ち伏せする」

「OK。じゃあ、任せるよ」

 そう言うと、ラムトは彼女に背を向けて数歩前に進んだ。
 そこで、忽然と彼の姿が消え去った。

「…。!? また一箇所…、いや、違う。2箇所の氷の大樹<ドライ・ラシル>が破壊された…?場所は……。タンバシティとフスベシティ!? どう言う事…。二人で行動しているにしては、破壊の順序に規則性が全く無い…。一体、どうなっているんだ…」

 『終焉の道標<エクストレーム>』の誤算は、敵がマサシ・シュンの二人だけであると思っていた事。
 だからこそ、今の状況が理解できず、戸惑う羽目になっていたのだった。




















 無論、今さっき2本の氷の柱を破壊したのはシュン・マサシの二人。
 破壊した後、シュンはアサギシティへ飛び、マサシは再びヨシノシティにやってきていた。


 ……え?
 ヨシノシティには、ナギサが向かっているんじゃないのかって?
 彼女はあの後また道に迷ったらしくて、シロガネ山の洞窟に迷い込んでいたのだった(爆)。
 ナギサはそこでも、2つ目の氷の柱を破壊するべく動く事になるのだが、その話は割愛(待て)。



 …と、話が逸れた(ぁ)。
 兎に角、マサシはヨシノシティにいた。
 そして、そこで因縁の敵と再び相対する事になる。

「最初にこの町に来たあの時、R団が妙な動きをしていた。今考えれば、あれは氷の柱を作っていたからだったんだな。だとすれば、やっぱりこの辺りに…」

「悪いけど、そうはさせないよ」

「!」

 聞き覚えのある声がした。
 声の聴こえてきた方に振り向くと、そこに一人の青年が佇んでいた。
 その姿を見た瞬間、マサシは全身でその男に対する警戒の姿勢を見せた。

「お前は…!!」

 『あの時の…』という言葉を加えようとも思った。
 だが、そんな余裕が無い事をマサシは理解していた。
 かつての敗北経験が、そうさせているのかは解らないが。

「この前は、自己紹介せずに終わっちゃったからね。今度は、自己紹介を先に済ませておくよ。僕の名はラムト。『終焉の道標<エクストレーム>』の『白帝』ラムトだ」

「!」

「さて、これ以上氷の柱を壊されるのはこっちとしても都合が悪い。消えてもらうよ」

「あの時と同じだと思うなよ…!俺だって、あれから少しは強くなっているつもりだからな」

「じゃあ、少しお手並み拝見と行こうかな」

「…!」


 ズドォッ!!


 ほんの一瞬で、マサシはマグマラシの入ったボールを後ろに放った。
 ボールから出た瞬間、マグマラシは炎を発射。
 その先で、握り拳より二回りほど大きい氷の塊を相殺した。

「『こおりのつぶて』か。しかも、ほとんど透明な氷だから普通じゃ見抜く事も難しいな。これが、前に戦ったとき使ってきた攻撃だな。そして…」

 マサシはそこで言葉を止める。
 そのタイミングで、マグマラシは全身を炎で覆った。
 そこから横回転をして、熱風による竜巻を発生させた。
 竜巻の中に、一匹のポケモンが巻き込まれてきた。

「マンムー…か。あの時エレキブルの『ほうでん』が効かなかったのも当たり前だな」

「…成る程ね。どうやら、前より実力がアップしてるって言うのは間違ってないみたいだ。これなら、十分見せられるかもしれないな。この僕の、『白帝』としての全てをね…」

「…!!」



 前にも、同じ感覚を体験した。

 そう、あれはヒワダタウンで、マニスと戦った時の事。

 突然相手の雰囲気がガラリと変わり、とてつもない悪寒が全身を駆け巡った事。

 これはまるで、あの時の事を再現しているかのようだった。

























 大きなビルが立ち並ぶジョウト一の大都市、コガネシティ。
 その町中の広場で、二人の女性が向かい合っていた。
 片方は、透き通った氷色の髪をした『終焉の道標<エクストレーム>』のメンバー、『零姫』マニス。
 もう片方は、先程ヒワダタウンで最初に氷の柱を破壊した、シュンの姉・ミキ。

「お前は…、何者だ?此処に来るのは、シュンだと思っていたのに」

「私は、ミキ。シュンは、私の弟よ」

「シュンの姉?…ならば、お前もスバルの血縁の者か」

「スバルは、私にとっても兄。シュン同様に、貴方達の計画を食い止める為に此処に来たのよ」

「出来るかな?私は、ルハド様の右腕的存在。お前程度に敗ける要素など、無い」

「だとしても、私達は戦う。兄さんの活躍を、無意味な物にしない為に!」

 ジョウト地方コガネシティ。
 ここでもまた、一つの戦いが始まろうとしている。


 そして、一足先にヨシノシティでは戦いが始まっている。
 それぞれが戦う敵は、共に『終焉の道標<エクストレーム>』。
 マサシとミキ。
 二人の戦いが、今ここに始まろうとしていた。

 そして、残りの二人も必死に活動を続けていた。
 破滅の時は、刻一刻と迫っていた………。



続く


後書き
えーっと、今回色々と展開が速すぎてどうなったのか解らないと言う人がいそうなので、今回の後書きは今回の活動の軌跡を書いておこうと思います。

最初に、マサシとシュンが電話(この時点で、ナギサとミキは行動を開始していた)
    ↓
1本目の氷の柱を、ミキがヒワダタウンで破壊
    ↓
ナギサがワカバタウンで、2本目を破壊(この時点で、敵がマサシ達の活動に気付く)
    ↓
それとほぼ同じタイミングでマサシがフスベシティ、シュンがタンバシティでそれぞれ氷の柱を破壊
    ↓
ナギサがシロガネ山に迷い込む
    ↓
マサシ、ヨシノシティへ。そこで、ラムトと戦闘開始
    ↓
ミキ、コガネシティに到着。マニスと戦闘開始


大まかに要約すると、こんな感じかなぁ。
また、今回の話を完成させた事で、おおよそのジョウト篇完結の目処が立ちました。
ジョウト篇の完結は、およそ22話前後です。
話数的に言えば、次で折り返し地点に入るわけです。
今回語るのは、この位ですね。
次回、ジョウト篇第11話『激突 因縁の戦い再び』。
お楽しみに。

 

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