マサシの天紋<ファルマ>は、役目を終えた。
 即ち、覚醒。
 彼に天属性のエネルギーが発生した事が、それを物語っていた。
 そして一言、『ここからが、本番だ』と呟いた。

「ここからが本番…だと?いくら覚醒したとは言え、俺と貴様のこの圧倒的な差をすぐに埋めることは出来ない」

「それは要らない心配だ。既に、準備は整っている」

 今までのマサシの言動とは、何処か違う。
 その一言一句全てに、穏やかさを感じられる。

「オーダイル、準備は出来ているな?」

「な…!?」

 彼の横に居たアリゲイツ。
 それがいつの間にか、オーダイルへと進化していた。
 しかも、第1章の時のような力も曝け出している。

「あの時の感覚は、覚えているな?」

 顔を此方に向けることは無かったが、オーダイルが頷いた事だけは確かだった。
 その瞬間、オーダイルからマサシの瞳と同じ色のエネルギーが溢れ出す。

「これが、本当の究極だ。 能力回帰:究極段階完全形態=ャGクストラレベル・パーフェクトエディション>」

 オーダイルから溢れ出ていたエネルギーが、マサシのその言葉を合図に膨張し、弾ける。
 その瞬間、今迄とは桁違いの衝撃波と突風が一帯を吹き飛ばした。






チャレンジ・オブ・マスターズ   ジョウト篇
第16話
決戦−W 覚醒<めざめ>る力






 肉体的な変化は、特に無い。
 …だが、オーダイルの周囲に留まる銀色のエネルギー。
 あれは、見せ掛けではない。
 明らかに今までとは雰囲気が違う。

 そこへ、マサシが掌をオーダイルに向ける。
 掌から発した淡い金色のエネルギーが、オーダイルの周囲を覆っていく。

「これで、本当の究極段階<エクストラレベル>が完成した」

「…」

 ルハドは、オーダイルが動く前に攻撃を仕掛けようとした。
 が、その瞬間オーダイルの姿がマサシの横から消えていた。

 その一瞬にも満たない間を挟み…。


 バキィッ!!


 オーダイルの拳が、ルハドの顔面を捉えていた。
 そのパンチの勢いは凄まじく、ルハドを軽々と吹き飛ばす。

「ぐっ、がぁっ!?」



 何だ、今の一撃は…。

 途轍もなく速く、重い…!

 奴の身に、一体何が起きた…!

 これが、目覚めた天属性の力なのか…?


 今の一撃で、軽い目眩を起こしたルハド。
 それでも、強引に身体を起こす。
 だが、やはり足元がおぼつかない。
 今の一撃が、効いているせいだろう。

 だが、休んでいる暇など無かった。
 オーダイルが、銀色の輝きを発する巨大な水弾を発射してきた。
 それを掌で受け止め、何とか全体を凍結させたのだが…。

 その氷の塊が突然、砕け散る。
 と言うのも、一発目を発射したそのすぐ後に、二発目を発射していたからなのだが。

「ぐおああっ!?」

 その2発目は直撃を喰らい、再び吹き飛ばされる。

「…成る程。さっきとは違うと言う事は解った。だが」

 これも、一瞬の事だった。
 ルハドの蹴りがオーダイルの身体に減り込み、吹き飛ばす。

「!?」

 オーダイルは吹き飛ばされながらも、姿勢を戻して着地。
 そのすぐ後に姿が見えないほどのスピードを発揮すると、そのまま静寂が訪れる。
 およそ、10秒ほどだろうか。
 それ位の間を置き、突然ルハドが真後ろに拳を向ける。
 それとピッタリのタイミングで、オーダイルが背後に姿を見せていた。

 まさか見切られているとは予測もつかなかったのか、奴の拳が顔面に直撃。
 だが、今回は吹き飛ばされる衝撃を何とか持ち堪えた。


 そこで、オーダイルが後退する。
 後退しながら水系最強の技、『ハイドロカノン』を発射。
 だが、ルハドは周囲から集めた氷エネルギーを凝縮して、発射。
 無論この攻撃にも、魔属性も混合されている。

 と言うより、これから先の攻撃全てに魔属性が混合されてると思ってください。

「…っ」

 天と魔。
 互いに反発する2つの属性同士、力を打ち消す。
 となると、後は純粋な攻撃力勝負となるのだが…。
 ルハドの攻撃力は、想像を遥かに超えていた。
 究極段階<エクストラレベル>での攻撃を、容易に打ち消した。

「なっ…!?」

 想定外だった。
 相手の全力であるはずも無い攻撃。
 この程度で、究極段階<エクストラレベル>の技を破られてしまった。
 反撃しようにも、タイミングが間に合わない。
 ここまでか……?



 諦めかけた、その時だった。



 ゴォォォォォッ!!


 マサシのすぐ横から、とてつもなく強大な炎が発射された。
 そしてその炎は、先程オーダイルの技を破ったルハドの攻撃を喰い止める。
 否、喰い止めるどころか逆に、その攻撃を打ち破ってしまった。

「!?」

 何が起こったのか、解らなかった。
 マサシはすぐに炎が放たれた場所に目を配る。
 そこには、いつの間にボールから再び出てきたのか…。
 マグマラシが、そこで戦う姿勢を見せていた。

「マグマラシ…。休んでいろって、言っただろ?」

 マサシの言葉に対して、マグマラシは『大丈夫』と言った仕草をした。
 それどころか、先程までの疲労が無かったかのように回復している。

「(まさか、さっきの覚醒の時の影響?それで、マグマラシが完全回復したのか…)」

 何にしても、これは好機。
 マグマラシも戦線復帰したのだから。
 そして今の攻撃を見る限り、マグマラシの攻撃力はルハド以上。
 これならまだ勝ち目はありそうだと、微かな希望が見えてきた。

「解った。オーダイルは、少し下がっていろ」

 そう言われて、オーダイルはマサシの後ろに下がる。
 代わりに、マグマラシがマサシの前に飛び出す。

「オーダイル、究極段階<エクストラレベル>解除。そして、マグマラシ!」

 マサシの声で、オーダイルが発していた白銀のエネルギーが飛び散っていった。
 そしてそれが今度は、マグマラシを覆っていった。

「…!」

「よし。頼むぞ、マグマラシ」

 マグマラシはコクッと頷くと、ルハドを見据える。
 そして、炎を放つ。
 究極段階<エクストラレベル>の発動によって、そのパワーは桁違いに上昇していた。

「ぐぅっ…!?」

 その炎を防ごうとするルハドだったが、それこそ全くの無意味。
 マグマラシの発射した炎のパワーと勢いに押されていく。

 そこで、更に己の力を見せ付けるかのように、マグマラシが炎の威力をアップさせる。
 そうなっては、ルハドに成す術は無い。
 ただ、マグマラシの炎にやられていくだけだった。

「ぐっ…!」

 ここに来て、遂にルハドが膝を付く。
 今の攻撃が相当効いているようだ。
 だが、それを覆い隠すようにすぐに立ち上がる。

「どうやら…。俺は想像以上に貴様の実力を見誤っていたようだ…」

「……」

「はっきり言おう、貴様は強い。まだ全ての力を発揮していないとはいえ、俺を相手にここまで戦う事が出来たのだからな」

「まだ、全てを出し切っていない…?」

 マサシが疑問を口に出した直後の事。
 今までにも何度かあった、周囲の氷から発せられる光の粒子をルハドが集めると言う光景。
 だが、今度はそれだけに留まらず、ラムト達が氷の柱によってかき集めたジョウト地方全域の氷属性の力。
 それすらも集め始めていた。

「…!?」


 一瞬、空気が振動した。
 ルハドの今の力…、これ迄のとは桁が違う。
 想像を超える敵のパワーアップに、マサシも思わず歯を食いしばっていた。
 だが、ここで退く事も出来ない。
 今ここでルハドを倒せなければ、『終焉の道標<エクストレーム>』に巨大な戦力を与える事になる。
 それだけは、何が何でも阻止しなければならない。
 例え、敵の力が今の自分を遥かに超えているとしても…。
 ここで倒さなければいけなかった。

「…さて」

 力の掻き集めを終えると、ルハドはマサシの方に振り返る。
 そして、軽く腕を振り上げる。
 すると…。


 ガガガガガガッ!!


 ルハドの足元から直進的に次々と氷柱が生え始める。
 それは凄まじい勢いでマサシ達に迫っていた。

「…っ!」

 咄嗟にマサシとマグマラシはジャンプする。
 だが、ルハドは上空という逃げ場すらも奪っていた。

 上空に、数え切れないほどの巨大な氷柱が完成していた。
 ルハドのハンドシグナル一つで、それらは一斉に落下し始める。
 下からも上からも、まるでサンドイッチのように挟み込まれた。



 それとは別に、この状況でマグマラシは戸惑っていた。
 この状況を突破する手立てがあったから。
 自身を中心として、球体状に炎を発生させると言う方法。
 だが、それを行えばマサシにも怪我を負わせる事になってしまう。
 その事が、マグマラシの行動を躊躇わせていた。

「マグマラシ」

 だが、マサシはマグマラシの思考を理解していたかのようなタイミングで語りかける。

「お前のやりたいようにやれ。今の俺は、そう簡単にやられたりはしないさ」

 …信頼だった。
 根拠など全く無いただの強がりにも聴こえたマサシの言葉。
 だが、マグマラシは彼との付き合いが1年以上も続いている。
 彼の言葉一つで決意を固められるなど、そう容易な事では無い筈だった。

 だが、結果としてマグマラシは動く。
 先程自身が思い描いた行動を。
 超広範囲に炎を拡散させて、氷柱を次々と溶かす。
 無論、その中にマサシも巻き込まれていたのだが…。
 その間、マサシの周囲を銀色の不思議な輝きが覆い、怪我を防いでいた。

「天属性が、俺を護ってくれている…。この位なら何とも無い」

 炎を放ち続けてるマグマラシに、そう語るマサシ。

「…あの攻撃を凌ぎきるか」

 ルハドは、無傷のまま着地したマサシを見てそう呟いた。
 しかしその位は当たり前だろう…といった表情をしている。

 マサシ達とルハドは、結構な距離が開いている。
 再び炎を発射しようと身構えるが…。
 その瞬間!


 バキィッ!!


 ルハドの蹴り上げが、マグマラシを上空に吹き飛ばす。

「なっ…?」

 一瞬、上に視線が向いてしまった。
 その隙に、ルハドはマサシをも蹴り飛ばす。

「ぐぅっ!?」

 そのままマサシの身体は近くの氷の壁に激突。
 マサシは蹲ってしまう。

「ぐっ、ぁ…」

 ここにきて、ラムトとの戦いのときの傷が痛み出す。
 そんな状態のマサシに、ルハドが歩み寄る。
 それを阻止しようと、上空に吹き飛んだマグマラシが懇親の炎を発射する。
 しかし、それすらも通じない。
 パワーを集めたルハドの前に、マグマラシ程度の攻撃など意味を為さなかった。

 だが、マグマラシは諦めを知らない。
 空中で全身に炎を纏うと、そのままルハド目掛けて降下し始める。

「しつこい奴だ」

 そう呟くと、ルハドは左の掌をマグマラシの方に向ける。
 すると、マグマラシ目掛けて極大の氷属性の光線が放たれた。
 マグマラシは咄嗟に身体を空中で捩って何とかかわす。
 だが結果的に、ルハドに攻撃を仕掛ける事は出来ずに終わった。

 マグマラシの相手を終えると、ルハドはマサシの方に視線を戻す。
 だが、そこにマサシの姿は無い。

 一瞬、ルハドは周囲に視線を配る。
 が、それはすぐに止める。
 感じたからだ。
 …上空から、マサシの気配を。

 マサシは、ルハドがマグマラシの相手をしている僅かの間に、フライゴンに乗って空へ飛んでいた。
 と同時に、一旦マグマラシを回収する。
 そして、フライゴン共々ルハドへ鋭い視線を向ける。

「フライゴン、今度はお前の番だ。こうなった以上、出し惜しみしている暇は無い。俺のポケモン達全員のをフルパワーでぶつけるしかない。俺達の最強の攻撃、『スペイザー』を」

 フライゴンも頷いた。
 その瞬間、マグマラシの収まったモンスターボールが銀色に輝き、散った。
 先程と同様、その輝きがフライゴンに移っていく。

「余力すら残さない、文字通り全力の攻撃をぶつけろ。究極段階<エクストラレベル>の全力なら、奴にも通じる筈だ」

 マサシがそう言うと、フライゴンは空中で静止する。
 それを合図に、フライゴンの前面に究極段階<エクストラレベル>の白銀のエネルギーが集まり始める。

「『究極段階<エクストラレベル>:アークスペイザー』…!!」

 直後。
 フライゴンから、その体躯の何倍もある銀色の光線が発射された。
 それを見たルハドの表情が、一瞬固まる。

 …あの攻撃は、まずい。
 今迄のとは、桁が違う。
 喰らったら……、終わる!!

 しかし、敵の攻撃は途轍もなく速い。
 回避が…、間に合わない。

「…っ!」



―――それならば、選択肢はたったの一つ。



「おおおぉっ!」

 ルハドの右手に、エネルギーが集まり始める。
 その膨大な量はスパークにも似た現象を生じる。


―――己の全力を以って、この攻撃を打ち破るのみ。


「この…、程度!」

 フライゴンの攻撃に勝るとも劣らない、膨大なエネルギーが解き放たれた。
 お互いの攻撃はぶつかり合い、ジョウト全域からもはっきり見えるほどの光を発した。
 そして…。


 ドゴォォォォンッ!!


 ジョウト地方の中心に巨大な光柱が立ち上る。
 その場所では、想像を絶するほどの大爆発と衝撃波が吹き荒れる。

「きゃああああっ!!」

 その場に居合わせたナギサとシュン。
 二人は、吹き飛ばされないように這い蹲るので精一杯だった。
 そしてその光は弾け飛ぶ!





 あれだけの攻撃の痕跡など、全く見当たらない。
 フライゴンとルハド、お互いの攻撃は完全に対消滅してしまったようだ。

「はぁっ、はぁ…」

 ここに来て、ルハドの呼吸が乱れる。
 流石にあれ程の攻撃を繰り出しては、疲労の色が大きかった。

「この時を、待っていた」

「!?」

 突然、後ろから声がした。
 その声は明らかに、先程まで上空のフライゴンに乗っていた少年のもの。
 だが、それを認識する前にルハドの身体は吹き飛ぶ。
 再びボールから繰り出した、オーダイルによって。

「ぐぁっ…。き、貴様…!!」

「フライゴンの攻撃は、貴様に全力で攻撃を繰り出させて消耗させるのが目的だ。その間に俺は密かにフライゴンから飛び降りて、チャンスを待っていた」

「…ぐっ」

 そして最後に。
 再びオーダイルに『究極段階<エクストラレベル>』の力が戻ってきた。
 それを確認すると、攻撃の態勢に入る。
 オーダイルの持つ最大の攻撃技。

「これで、終わりだ」

「…!!」

「『究極段階<エクストラレベル>:『ハイドロスペイザー』」

 ルハドは今、消耗している。
 そして、この距離。
 回避することも、まず不可能。
 先程のように攻撃を打ち消すだけの力も、まだ戻っていない。
 即ち…。

「くっ…、ぐおおおあああああああっ!!!!」

 ルハドには、オーダイルの最大の攻撃をただ喰らう他、選択肢が残されていなかった。


続く


後書き
長いっ!! と、パソコンの前でこれを読んでいる方の大半がこう叫ぶ頃でしょう。
安心してください。僕も長いと思ってますので(爆蹴)。
今回は第1章以来久々の能力や技を存分に使わせていただきました。
が、やっぱり簡単にはいかないですね…。−−;
今回で決着付けられると思ってたんですが、どーしても無理でした(汗)。
まあ、次で決着なのでもうしばらく読んでやってください(ペコリ)。
次回、ジョウト篇第17話『決戦−X 氷王の末路』。
お楽しみに。

 

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