オーダイルの、最大の攻撃が繰り出されようとしている。
 流石にそれだけは阻止しようと、ミルタンクが走り出す。
 だが、距離がありすぎた。
 ミルタンクが到達するよりも遥かに早く、オーダイルの攻撃準備は整った。

「喰らえ!『究極段階<エクストラレベル>:ハイドロスペイザー』!!」

「ミルタンク、避けて!!」

 咄嗟にミルタンクは避けようとしたのだが…。
 オーダイルの発射した光線の速度は、とてつもなく速い。
 その上、光線の大きさも半端ではなかった。
 ミルタンクの回避行動など、この攻撃を前にしては何の意味を持たなかった。
 そのまま、光の中に呑み込まれて行った……。

「そん…な!」

 光が消えると、ミルタンクが横たわっている。
 戦闘不能なのは、明らかだった。

「流石だなぁ…。やっぱり、そう簡単には勝てないね」

「よく言うな。そう言いながら、俺をここまで追い込んだのは誰だよ」

「…そうだね。マサシ君、オーダイルはまだ戦えるの?スペイザーを使ったけど」

「…いや、こいつは戦闘不能扱いでいい。知っての通り、あれを使うと能力回帰が解除される上、しばらく発動できなくなるからな」

「じゃあ、いよいよ…」

「俺は、残り1匹だ。だが、そう簡単に勝てるとは思わない事だ」

「解ってる。その強さは、私もよく知ってるから」

「じゃあ、行くぞ。グレイシア!!」

 マサシが、最後のポケモン・グレイシアを繰り出す。
 それを確認すると、ナギサも新しいボールを手に取り、放った。
 その中から現れたのは…。






チャレンジ・オブ・マスターズ   ジョウト篇
第19話
決着 確たる自信






「キュウコン…か」

 ナギサが5匹目に選んだポケモンは、キュウコン。
 マサシは、意外そうな表情をしていた。

「そいつが、一番最後だと思ってたんだがな…」

「誰も、キュウコンが私のパートナーとは言ってなかったと思うけど…」

「じゃあ、最後の1匹がお前の…」

「マサシ君、今はこのバトルでしょ?」

「そうだな。行け、グレイシア!」

 バトル開始早々、グレイシアが力の差を見せ付ける。
 傍から見ても凄まじい威力を持った、白い光線。
 キュウコンは口から発射した炎で相殺しようとした。
 だが、グレイシアの攻撃力は桁違いで、どんどんキュウコンの炎が押し返されていく。

 そんな状態で、キュウコンが9本の尾の先端に炎を灯す。
 そして、直接グレイシア目掛けて飛ばしてきた。

 それを見たグレイシアが、更にパワーを上げた。
 更に巨大化したグレイシアの光線は、後から放った火球をも飲み込んでいく。

「そんな…!?」

 咄嗟にキュウコンは『でんこうせっか』を発動して攻撃をかわす。
 だが、改めてグレイシアの強さをナギサはその身で感じていた。

「やっぱり、グレイシアはそう簡単に倒せないみたい…。だけど」

 その瞬間、ナギサの目の色が変わった。
 キュウコンが再び、炎を発射する。
 だが、そのパワーが明らかに先程よりも上がっていた。

 先程は圧倒できたキュウコンの攻撃を、今回は相殺するので精一杯。
 攻撃を打ち消した瞬間、『でんこうせっか』でキュウコンとの間合いを詰めた。
 が、そこにキュウコンの姿は無かった。

 一瞬驚くと、背後にキュウコンの姿が現れる。
 グレイシアと同じように、『でんこうせっか』で姿を隠していたようだ。

 グレイシアが後ろを振り向いたときには既に、キュウコンが炎を発射していた。
 その炎に飲み込まれ、グレイシアは吹き飛ぶ。

「グレイシア…!?」

 マサシが一瞬驚愕の表情を見せるが、グレイシアが容易く立ち上がるのを見届けると、冷静さを取り戻す。
 よく考えれば、あの程度の攻撃でグレイシアが倒される筈がなかった。
 マサシはその事を思い返していた。

「(それにしても、グレイシアの背後を取るなんて…。あのキュウコン、とてつもないスピードを隠していたもんだな)」

 グレイシアが、今の攻撃の仕返しとばかりに強大な冷気の暴風を放つ。
 突然の反撃に防御が間に合わず、まともに喰らうが持ち堪えていた。

 だが、何時までも持ち堪える事も出来る筈が無く…。
 『でんこうせっか』で強引に脱出した。

 すると今度は、渦を巻く軌道の炎を発射。
 そのサイズは、先程グレイシアの繰り出した光線と大差なかった。
 キュウコンの攻撃を見ると、グレイシアの身体が輝きだす。
 その状態のグレイシアに炎が命中すると、グレイシアから巨大な閃光が発生し、キュウコンを攻撃した。

「『ミラーコート』!?そんな技まで使えたんだ…」

「今だ、グレイシア!!」

 ダメージを受けて怯んだキュウコン目掛けて、懇親の打撃を叩き込む。
 その衝撃でキュウコンは思い切り吹き飛ばされる。
 そしてそのまま戦闘不能となった。

「キュウコンが、こんな簡単にやられるなんて…」

「これで、やっと追い付いたぞ」

「あ…」

 バトルに意識しすぎて気付いていなかったのか、そんな反応を見せた。
 マサシもナギサも、残りのポケモンは1匹だけ。
 いよいよ、決着が近付いてきていた。

「私の最初のポケモン、この子なんだよね…」

 ナギサが、最後のボールを手に取る。
 その中から現れたポケモンは、メガニウム。

「それが、お前のファーストポケモンだったのか」

「本当は、キュウコンより先に出そうと思ったんだけど…。相性悪いから、後回しになっちゃって…」

「だけど、これで最後のバトルである事に変わりは無いだろう」

「そうだね。これで…、決着が付くのよね」

「行くぞ、ナギサ!!」

 こうして、マサシVSナギサの最後のバトルが始まった…。














 ポケモンセンターの広間で、マサシは寛いでいた。
 何やら、非常に疲れているのが顔色から伺えた。

「あいつ、あそこまで強くなってるとは思わなかった…。まさか、グレイシアが負けるなんてな…」

 どうやら先程のバトル、ナギサが勝利という形で決着が着いたらしい。
 マサシは現在、ポケモン達の回復を待っている状態だった。

「マサシ君」

 何気に寛いでいたマサシの所へナギサが声を掛けた。

「どうした?」

「確か、3年後…だったよね。マスターリーグ」

「ああ、そうだな」

「私も、応援に行きたいんだけど…。私もヨハロ地方に行けるのかな…?」

「マスターリーグ出場者の紹介状があれば、特別便が出るらしい。ちゃんと紹介状送ってやるから心配するな」

「うん。私、今回はマサシ君に勝てたけどギリギリだった。だから今度バトルをする時は、今よりももっと強くなる! 今度こそ足手纏いにならないで、肩を並べて一緒に戦えるように」

「…ああ。俺もトーホクに戻ったら、マスターリーグへ向けて修行を始める。だから、当分の間会えなくなるな」

「…うん。だけど、信じてる。また、ヨハロで再会出来るって」

「俺もだ。お前は、またここで過ごすんだったな」

「うん…。久々に家でゆっくり過ごしたいの。お母さんに、ずっと心配掛けっぱなしだったから…」

「じゃあ、俺はそろそろここを発つ。またな…」

「うん」

 受付でポケモン達を返却してもらい、外に出る。
 そしてマサシは、ワカバタウンを東に抜けていった。






 その途中…。

「あ、マサシ!」

「!」

 遠くから、声がした。
 共にルハドと戦った仲間、シュンとミキの姉弟だった。

「マサシ、これから何処に?」

「一旦トーホクに戻る。3年後のマスターリーグに向けての特訓だ」

「…ねえ、マサシ。一緒にマサシの故郷に付いていったら駄目かな?」

「え?」

「一度、会っておきたいんだ。4年前、兄ちゃんと肩を並べて戦ったって言うリュウイチさんに」

「まあ、俺は別に構わないさ。一人旅は飽きてたところだ」

「ありがとう!」

 ワカバタウン東の雑木林。
 そこで、マサシは二人の旅路の同行者を得ることができた。
 そして彼は、一路北を目指して旅を始めた…。



 というわけで、彼らがたどり着いたのはトキワシティ。
 ワカバタウンから東に続く道路を道なりに進んだ末にたどり着いた場所だった。

「ここから北に向かう。ジョウトへ行く時も、俺の故郷を南下してニビシティに行った。後は今迄通ってきた道のりを経てワカバタウンに辿り着いたんだ」

「じゃあ、まずはニビシティを目指すんだね?」

「ああ」

 彼らはこの町で少し小休止を取った。
 これから向かう先には、『トキワの森』と呼ばれる天然の樹海が存在する。
 何かあったときのためにも、万全の準備をしておく必要があった。

「(何だ…。何か、嫌な気配がする…。ずっと俺を付け狙っているような、そんな気配が…)」

 休憩中、マサシは言い知れぬ不安感を抱えていた。
 その証拠に、視線だけをあちこちに配ったりしていた。

「マサシ、どうしたの?何だか落ち着かない感じだけど」

「シュン、早いところ出発したほうがいい」

「ミキも呼んで、さっさとトキワの森を抜ける。さっきから、俺を狙っているような気配がずっと感じるんだ」

「解った。急いで呼んでくるよ」

 それから数分経ち、ミキも合流した。

「マサシ君、もう出発するの?もう少しゆっくりしててもいいんじゃない?」

「いいや、さっきから妙に俺達を付け狙っているような気配を感じるんだ。気のせいならそれに越した事は無いんだが、念のために…な」

「解ったわ。じゃあ、すぐに出発しよう」

 せっせと荷物を纏めて、3人はポケモンセンターを後にする。

「…参ったな。急いで町を出たのが裏目に出たらしい」

 トキワの森の入り口付近で、突然マサシがそんな言葉を口にした。
 疑問に思いつつも、二人は辺りを見回す。
 すると…。

「この気配は、覚えがある。確か…、ヒワダタウンで俺を襲ってきた連中だ」

「え…!?じゃあ、『終焉の道標<エクストレーム>』!?」

「否…、奴らとは関係なさそうな感じだった。多分、全く別の敵だ」

「一体、何者なの?」

「解っているのは、奴らがヨハロ出身だという事だけ。奴らの正体を、今度こそ突き止めたいところだ。俺を執拗に狙う目的も含めてな」

「…」

「二人は、少し離れてろ。…来る」

 マサシのその言葉の直後。
 トキワの森入り口付近の大木の枝の上。
 そこに突然、一人の男が姿を見せる。

 その男に、マサシは見覚えがあった。

「やっぱり、あの時の連中か…」

 記憶を掘り返すと、マサシは表情を険しくする。
 視線もより鋭くして、その男を睨み付ける。

「何で俺をここまで執拗に狙う!『終焉の道標<エクストレーム>』じゃないんなら、お前達は何者だ!」

「そんな事、普通に話すと思うか?」

「お前達の真意なんてどうでもいいが、こっちは迷惑しているんだ。訳も解らず得体の知れない連中に狙われる事がな」

「ふっ、なら俺に勝てたら全てを教えてやろう。だが…」

「何だ」

「貴様が負けた場合は、マスターリーグ出場の権利を剥奪する。俺達は、それを行使できるだけの力を持っている」

「何…だと!?」

 マサシの表情が、強張る。
 万が一ここで負けるような事になれば、今迄の苦労が水の泡になるというから当然だが…。

「敗けないさ。お前達なんかには…」

「ほう?」

「お前達程度に勝てないようでは、とてもマスターリーグを勝ち抜けないだろうからな」

「ふっ、威勢がいい奴だ」

 そう呟くと、その男が枝の上から地上に飛び降りる。
 それと同時にマサシはモンスターボールを構える。

「この間と同じだと思うなよ」

「俺の名はダムラ。…来い」

「…っ!」

 マサシは手にしたモンスターボールを開く。
 その中から、フローゼルが飛び出す。

「あの時のフローゼルか。何がどう変化したのか、見せてもらおうか」

 一方で、ダムラが繰り出したのも以前と同じくドサイドン。
 そして初手からいきなり、巨大な岩石を剛速球の如く投げ飛ばしてきた。

「その程度で…!!」

 フローゼルはその岩石を、尾を振りぬく際の衝撃波で簡単に破壊した。
 それから一瞬も間を置かず、水を纏った突進でドサイドンを打っ飛ばす。

「成る程、前より強くなっているようだな」

「仮にも、トーホクとジョウトの2大会を制覇したんだ。甘く見るな…!」

「なら、今度はこれだ」

 次にダムラが仕掛けてきたのは、以前の戦いでマサシに止めを刺した技。
 上空から数え切れないほどの岩を降り注がせる技、『ロックレイン』。
 だが…。

「今更その技が通用すると思うな。 瞬間連射=c!!」

 マサシが、一言呟いた。
 その瞬間…。

 ドサイドンの繰り出した全ての岩が、粉々に粉砕された。

「なっ…!」

 驚愕した。
 ドサイドンの持ち技の中でも、かなりの大技に分類されるこの攻撃を破られた。
 しかも、こんなにあっさりと。

「これで、終わりだ!」

 そして、とどめの一撃。
 先程の水を纏った突進。
 それを更にパワーアップさせたかのような一撃が、ドサイドンの胴体に炸裂する。

 打っ飛ばされた先で、ドサイドンは呆気なくダウンしていた。

「…ふっ、どうやら貴様の成長は俺の想像より遥かに上を行っていたようだ。その礼に、俺達の事を教えてやろう」

「…!」

 意外だった。
 向こうから自分達の正体を明かすと言ってきたのだから。

「俺達は、『頂点を目指す者を狩り取る意思』の元に結成された存在だ」

「何…?」

「結成したのは、マスターリーグ出場者の一人。自分がマスターリーグで優勝する確率を高めるために、他の参加者を減らそうという目的の元に結成された」

「!」

「マスターリーグ出場者を…、減らす!?そんな事をしてまで、君達の頭<ボス>はポケモンマスターになりたいの!?」

 後ろから、シュンが荒げた声で喋った。
 それに対する、ダムラの返答は…。

「真意は解らん。だが、マスターリーグ出場者を減らそうと思っている事は確かな事だ」

「…そんな」

「それと当然、大会にも我々は紛れ込んでいる。一際優れた実力を持つエリート達がな」

「…!」

「まあ、お前程度ではマスターリーグの最終トーナメントに勝ち残る事は難しいだろうがな」

「…っ」

 それだけ告げると、彼はこの場を去っていく。
 自分はまだ井の中の蛙だという事を思い知らされ、マサシは歯を食いしばった。

「上等だ。マスターリーグ…。必ず、全ての敵を打ち倒す!」

 背を向けて去っていくダムラに告げるかのように、マサシは自身の決意をこの場で叫んでいた。

 マスターリーグは、想像を絶する強敵が揃っているであろうという思いを秘めつつ、故郷を目指して再び歩み始めるのだった。



続く



後書き
最初に一言。ナギサとのバトルを途中放棄してごめんなさい!!
途中で気力が尽きてしまいまして、あんな半端なタイミングで終わらせてしまいました…。

まあ、それは兎も角。

これで、ジョウト篇で全ての伏線回収を終える事が出来ました。
長いようで短かったジョウト篇も、いよいよ次回で最終話です。
ジョウト篇のエピローグとなる話に、ご期待ください。
次回、ジョウト篇最終話『帰郷 頂点への意欲』。
お楽しみに。

 

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